2002年9月25日「しんぶん赤旗」より

「学力向上」で予算要求したが
…文科省

経済「活性化」の人材育成が狙い


 文部科学省は来年度予算の概算要求に、「学力向上アクションプランと銘打って、さまざまな「学力向上」策を盛り込みました。今年度の5.5倍、総額77億円を要求する力の入れようですが…。

 「学力向上アクションプラン」には、「学力向上フロンティア事業」など今年度から始まっている事業の拡充のほか、さまざまな新規事業が盛り込まれています。(別表)

事業名 内容 今年度 来年度の要求
学力向上フロンティア事業 習熟度別事業等をすすめる拠点校をつくり成果を普及(小・中学) 850校
5億円
1700校
10億円
★同ハイスクール事業 学習意欲・学力向上のとりくみを普及
特色ある教育活動の収集・分析・提供
200校
2億8000万円
★放課後学習チューター配置 教員志望者が放課後に子どもへの個別指導や学習相談にあたる 282校
5億円
★「総合的な学習の時間」推進 モデル地域での実践研究
学習プログラムの開発 など
3億円
★学習意欲向上策
  • 「その道の達人」派遣
  • 「学びんピック」(子ども達が培った力を競い、優秀者・グループを表彰)の開催
  • 英語検定、漢字検定などで優れた学校を表彰 
    など
10億円
★理科大好きスクール 科学技術・理科教育を重点的に推進する小・中学校を指定 200校
2億7000万円
スーパーサイエンス・ハイスクール 理科・数学に重点をおく高校を指定
現在20校を段階的に100校に拡充
7億円 16億円
スーパーランゲージ・ハイスクール 英語に重点をおく高校を指定
現在16校を段階的に100校に拡充
8000万円 2億9000万円
★は来年度新規事業

「学力低下」不安が背景に

 文科省が「学力向上策を打ち出すのは、同省自身「国民の間には依然として子どもの学力が低下するのではないかという不安が広がっており」(学力向上アクションプランの趣旨)というように、学力低下について同省の責任を問う世論を意識しているからです。

 しかし、保護者の不安にこたえてすべての子どもの学力向上をめざしているかというと、そうはなっていません。

 「学力向上アクションプラン」の中心で、予算額も大きいのは「学力向上フロンティア事業」と「スーパーサイエンス・ハイスクール(理科高校)」です。

 「フロンティア事業」は、習熟度別授業を全国的にすすめるのが目的です。「フロンティアスクール」に指定された学校で習熟度別授業などをおこない、そこを拠点校として、うまくいったやり方を周辺校にも広げるというものです。

 学力低下不安を招いたのは、小・中学校でことし4月から実施された新学習指導要領で、子どもの学習内容が系統牲なく削られ、教科授業時間が減ったことでした。

学習指導要領そのままに

 肝心の学習指導要領はそのままにして、子どもを能力別に分け、「理解のすすんでいる子」だけに「発展的な学習」をさせていこうというのが、文科省が習熟度別授業をすすめるねらいです。

 「スーパーサイエンス・ハイスクール」は、特定の高校に重点的に予算配分し、「将来有為な科学技術系人材の育成に資する」というものです。

 どちらも、小泉内閣の「骨太方針」(6月)が推進を求めています。「学力向上アクションプラン」全体が、「骨太方針」にそって打ち出されたものです。「骨太方針」が求める、日本の産業競争力強化を担い、国際的な経済競争にも勝ちぬけるような人材育成が同プランの最大の目的です。

 「学力向上フロンティア事業」は、ことし4月に始まったばかりで、まだ1学期を経過しただけ。文科省は、各指定校でどんなとりくみをしているか実情をつかんでいませんが、指定校を今年度の850校から倍にしようとしています。

振り回される教育現場

 学校現場は首をかしげています。

 首都圏のフロンティアスクール指定中学校の国語の教員は、「学力向上アクションプラン」に並んだ事業に、ため息をつきつついいます。「教員は、いろいろな施策が出るたびに『ああ、また絵に描いたもち』と感じている。本当に現場で必要なことではないので、上から言われて形をつくるためにやる、となっている。思いつきのような机上のプランに振り回され、『これで学力がつくのか』と話している」

 梅原利夫和光大教授は「学力向上のために本来やるべきこと、つまり学習指導要領の抜本的改正、競争促進路線≠フ見直し、少人数学級などを正面から改革しようとしていない。正しい処方せんにもとづかない施策を、さらに推しすすめることになり、お金をかけた分だけ、ゆがみが拡大するおそれがある」と指摘します。

(西沢亨子記者)


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