2002年6月30日「しんぶん赤旗」より

学校5日制はいま

「少人数授業」で学級がバラバラに

子の様子も分かりにくく

「きめ細かな指導」というが


 「余裕がなさ過ぎる」「いつ過労死が起きても不思議ではない」――。「ゆとり」を売り物にした学校五日制の開始とともに、各地の学校現場でこんな声が上がっています。いったい何が起さているのでしょうか。

 問題の一つに「少人数授業」があります。特定の科目に限って少人数で授業をする仕組みです。例えば二クラス六十人の学年を算数の時間だけ三つに分割(各グループニ十人)して教えるといった具合です。

 「少人数授業」用に教員が新たに配置(加配)された京都府のある小学校。クラス担任の大橋明さん(仮名)は、「少人数で援業できること自体はいいこと。一人ひとりの子どもを大切にできるよう努力しています。でもがんばるほど矛盾が深まります。現場はいつ過労死がおきても不思議でない状態」と話します。

◎毎日深夜まで

 「加配教員の負担が大変。際限のない仕事が毎日、夜九時、十時、十一時と続いていくのです」と大橋さん。加配の教員は、いくつもの学年に入るため、学年の数だけ授業準備が必要です。各グループの内容、進度を学年全体で合わせるために、学年ごとに打ち合わせが必要になってきます。教育委員会が重視している施策なので公開授業も多く、指導案は一字一句チェックされ、修正のために、また時間をさかなければなりません。

 さらに担任を持っていないため、学校全体にかかわる仕事や、対外的な仕事、出張、代行など目に見えない仕事も多いのです。その背景には、音楽などの専科教員がいないなど、教員配置の不十分さがあります。

 大橋さんの学校では、少人数授業は国語と算数で一日二時間程度。そのたびに、子どちたちは教室を移動することになります。移動のたびに持ち物を取り違えたり、紛失することも多く、休み時間を五分から十分にするケースもありますが、給食や下校の時刻を遅らせています。

 そうでなくても新年度になって子どもたちの負担が増えています。朝は一時間目の授業が始まる前に十分間の「朝自習」。先生が配るプリントを便って「自習」です。掃除が終わったら「読書タイム」。毎週金曜日の六時間目は「補習」の時間です。

◎担任なのに…

 「クラス担任なのに、子どもの様子をつかんだり、子どもと仲良くなったりするのに時間がかかる」。大橋さんは、そう感じることが多いと言います。全体の四割を占める国語と算数が少人数授業で、クラスの子どもがバラバラに分かれてしまうのです。担当していない子の様子が分かりにくく、子どものサインにも気付きにくくなります。

 授業内容も、少人数授業は、進度や宿題も含めてほかのグループと歩調を合わせることが重視されます。

 「工夫して自分なりの授業をくみたてることが、かえって難しくなります」と大橋さん。「これでは、忙しくなっただけで、授業の準備も不十分になり、気になる子どもの指導もできないという悪循環。理解できていない子が置いていかれることにもなりかねません。行政は、現場の実態をよく知ってほしい」

◎30人学扱こそ

 いま文科省や教育委員会は「習熱度用指導」導入にやっきになっています。成績順にグープを割り振るやり方です。少人数授業にもこのやり方が持ち込まれようとしています。

 京都教職員組合書記長の梶川憲さんは「どの子にも確かな学力を保障するのでなく、ふるいわけを固定するやり方ではいろんな弊害を生みます。『少人数学級』なら、こんな苦労はしなくてすみます。本当に『きめ細かな指導』をするのなら、こんなやり方でなく、三十人学級を実現してほしい」。現場の教師たちの切実な願いです。


「苦手な算数がわかった」

「ゆっくり休ませたら」の声も

「土曜補習」の試み

 「土曜も日曜もお休みで、子どもの学力はだいじょうぶ?――。学校五日制に伴って、公立小学校で「土曜補習」の試みを始める自治体が生まれています。算数ドリルでの学習をすすめる、千葉県野田市の「サタデースクール」では…。

 学校休みの土曜の朝。バッグをさげた小学生が校門をくぐります。十五の小学校がある千葉県野田市。一年かち六年までの希望者に算数を教える「サタデースクール」を始めました。

 児童数約六百人の山崎小学校で、二年生の教室をのぞいてみました。

◎教え合ったりおしやべりも

 子どちは二十三人、指導者は一人、ボランティアは四人。各校で三、四年生の算数の少人数授業を行う講師に加え、市が地域住民を雇用して、各学年に一人ずつ指導者を配置。ボランティアは市内にある東京理科大学の学生。子どもたちはさっそく市販のドリルに向かい、終わった子から教育委員会や指導者手作りのプリントにかかりました。

 「せんせ−っ!」と学生に声をかける子。指を折りながら問題と格闘する子。「あと十問!」と叫び、休み時間も鉛筆を走らせる子。隣の子にちょっかいを出したり、学生とおしゃべりしたりする姿もあり、しんと静まり返った教室で…というわけにはいきません。

 「家族一緒の時間が大事だから、行かなくていい」と母親に言われたという女の子は、「でも、算数が苦手だからきた。わかるようになったよ」とニコニコ。友達と教え合っていた男の子は「お母さんが『行く?』って聞いたから、『行く』って。友達もいるし」。

◎子どもの学習助ける熱意が

 しかし、物足りなさを感じる親もいます。「勉強の中身は塾の方が楽しい」ど話す三年生の愛美さんは、通院と重なり六月は不参加。母親は「父親は土曜休みに一緒に出かけたりして過ごしていたので、『行かなくてもいい』と言っていました。ドリルだと飽きちゃうみたい。理解度に合わせた段階を設けてやってくれればいいけど」。

 別の小学校に三年生の孫を通わせる祖母は、「子どもは喜んで行ってるけれど、できる子もできない子も一緒というのが疑問。近所の人も成績が上がるとまでは考えていない感じ。かえってゆっくり休ませてあげた方がいいのかも」。

 指導者自身も試行錯誤の段階です。しかし、「進度の速い子の対応は?」「〃増える〃という概念がわからない子もいるので、算数セットがほしい」「教室が大きすぎる」など、反省会の議論からは子どもの学習を助けたいという熱意が伝わってきます。「少人数授業等講師」の菊田佳子さん(25)は、「大学生だと質問しやすいようです。教師も放課後に教えたりして努力していますが、先生を増やすなどの手立ては学校の授業でも大事。その上で苦手な子はサタデーヘ、という形も考えられますよね」。

◎土曜の過ごし方模索は続いて…

 「土曜補習」は、秋田県全市町村や茨城・古河市、埼玉・深谷市、東京・台東区などでも始まりましたが、居場所としての色合いが濃いようです。その結果、学習内容に詳しくない指導者が子どもの質問に答えられず、「勉強がわかるようになりたい」との願いとずれが生じて参加者が減る事態にも。「土曜補習」がどんな形で定着するかは未知数というのが現状です。

 野田市でも「オープンサタデータラブ」(第一・三・五土曜)を同時に開催しており、学校教育部次長の加藤保夫さんによれば、「クラブの日には、スクールの参加者が減る。友達と一緒に勉強できる居場所としてきているようですね」。

 「ゆとり」だったはずの学校五日制の一方で、文部科学省も「土曜補習」を事実上容認。土曜の過ごしをめぐる模索は続さます。


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