平成十年九月十八日(金曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 小川 元君
理事 栗原 裕康君 理事 小杉 隆君
理事 中山 成彬君 理事 増田 敏男君
理事 肥田美代子君 理事 藤村 修君
理事 富田 茂之君 理事 西 博義君
岩永 峯一君 大野 松茂君
奥山 茂彦君 倉成 正和君
栗本慎一郎君 佐田玄一郎君
下村 博文君 高橋 一郎君
松永 光君 宮腰 光寛君
目片 信君 渡辺 博道君
池端 清一君 山元 勉君
池坊 保子君 旭道山和泰君
松浪健四郎君 石井 郁子君
山原健二郎君 保坂 展人君
粟屋 敏信君
出席国務大臣
文 部 大 臣 有馬 朗人君
出席政府委員
外務省総合外交政策局国際社会協力部長 上田 秀明君
文部大臣官房長 小野 元之君
文部省生涯学習局長 富岡 賢治君
文部省初等中等教育局長 辻村 哲夫君
文部省教育助成局長 御手洗 康君
文部省高等教育局長 佐々木正峰君
文部省学術国際局長 工藤 智規君
文部省体育局長 遠藤 昭雄君
厚生省健康政策局長 小林 秀資君
厚生省保険局長 羽毛田信吾君
委員外の出席者
国立国会図書館長 戸張 正雄君
厚生省医薬安全局麻薬課長 山本 章君
文教委員会専門員 岡村 豊君
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本日の会議に付した案件
文教行政の基本施策に関する件
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○小川委員長 次に、石井郁子君。
○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
この夏、文部省発表の数字によれば、不登校の子供たちが十万人を超えました。十万五千四百十四人ということですね。また、いじめが原因で自殺をする子供、事件を起こす子供が後を絶たないわけであります。今の子供たちは二十一世紀を担うわけですから、本当にこのままでは日本の社会の存続、発展が危うい、私は、日本社会の危機と見なければいけないと考えているところでございます。
折しもこの五月に、国連子どもの権利委員会で、子どもの権利条約の我が国の実施状況についての審査が行われまして、その中で、六月に同委員会から日本政府に対する最終見解が示されたわけであります。それを見ますと、今日の文部行政への重要な指摘が行われていると私は考えておりまして、きょうはこの問題について質問をさせていただきます。
まず有馬文部大臣にですが、この子どもの権利条約、そして最終見解、お読みになられたと思いますが、どのような感想を持たれたでしょうか。御感想をまずお聞かせいただければと思います。
○有馬国務大臣 まず、児童の権利というものがあるわけでございまして、これについて十分私も認識をいたしております。
そのことに関して、日本の対策ということに関するいろいろなコメントが、勧告等与えられましたけれども、これの中で十分考えていかなければならないことが多々あるという認識をしております。
ただ、この提案及び勧告は法的拘束力を有しているものではございませんが、同委員会からの指摘を踏まえまして、文部省といたしましては、もう既に従来からも児童の権利を実現するための施策をさらに一層の充実に努めてまいりましたので、今後もまたこれをさらに努めていきたいと思っております。
○石井(郁)委員 先ほど来出ておりますように、もう少し大臣の率直な御感想を大臣のお言葉でお聞かせいただければというふうに期待をしたのですけれども、それはおきまして、この最終見解は、「肯定的要素」それから「主な懸念事項」、そして「提案及び勧告」という三つの項目でなされておりまして、その「肯定的要素」というのは、これまでどういうことがやられてきたかということですが、評価は三点しかないのですね。「提案及び勧告」というのは二十二項目にわたっているという内容なんですけれども、私は、特にその中で、きょう問題にしたいのは四十三項目めなんです。
「児童が、高度に競争的な教育制度のストレス
にさらされていること及びその結果として余暇、運動、休息の時間が欠如していることにより、発達障害にさらされているしというふうに書いてありまして、これは「主な懸念事項」のところですけれども、高度に競争的な教育制度の是正ということを勧告しているのですね。国連の機関が教育制度のあり方の是正を求める勧告を行うというのは異例のことだと言われているわけです。子どもの権利条約について、各国別にいろいろ審査をされてきていますからね。そういう他の国の勧告では、こういう形のものは見られないと言われているわけであります。
そういうことで、今大臣に御答弁いただきましたが、高度に競争的な教育制度の是正を求めるという勧告を文部大臣としてどう受けとめているのか、またどういうふうにこの勧告に対応されようとしているのか、先ほども御答弁いただいたのですが、もう一度伺いたいというふうに思います。
○有馬国務大臣 この競争的な問題点というのは中教審でも随分問題になったことでありまして、その一つの要因として、入学試験をどうするかというふうなことも入っているわけですね。そういう意味で、先ほどの答弁でも申し上げましたけれども、さまざまな観点から入学試験を多様化する、改善をする努力を現在図っているところであります。こういうところから徐々に、余りにも過度な競争社会というのは教育の上からは外していきたいと思っております。
そのための具体的な方策は、まず、入学試験の上で、先ほども申し上げましたけれども、アドミッションオフィスを導入するとか、あるいは口頭試問をより積極的に使うとか、そういうふうに単に学力だけを検査するというやり方ではない方式を導入するというふうなことで、多面的な方向からこの競争的な社会を解消するべく努力をさせていただきたいと思っております。
○石井(郁)委員 入学試験という問題で具体的に御答弁いただいたのですが、それは一つでありまして、これは後でもう少し突っ込んで議論をさせていただきますけれども、これは国際条約なんですね。実施の義務があるものですよね。
そこで、きょうは外務省にもお願いしているのですが、こういう勧告を受けているわけですから、子どもの権利条約を実施していく上で、この最終見解、いわば勧告というのがどういう意味を持つのか、この勧告に対して今後政府としてどういう対応をしていかれるのかということを、取りまとめが外務省だということですので、ちょっと外務省の見解を伺っておきたいと思います。
○上田政府委員 お答え申し上げます。
この児童の権利に関する条約は、国連の場で提唱されまして条約の形になりました。我が国がこれを批准いたしましたときには、当然のことながら、国内法との整合性を図りまして、国会で承認いただき、批准したわけでございまして、我が国が条約の遵守義務を持つことは当然でございます。
この条約に基づきまして、児童の権利委員会というのが、国連の機関ではございませんで、この条約の機関としてつくってございます。そこに専門家という方々が、知見を有される方々が個人の資格で選ばれて委員として活躍しておられます。その委員会がそれぞれ締約国との間で、報告書を求め、それをいわば審査し、そして質問もし、また答えも出し、そして今御指摘のような見解を示すわけでございます。
それで、当然でございますけれども、先ほど文部大臣から御答弁ございましたように、この委員会の見解そのものが法的拘束力を持つわけではございませんけれども、この条約の効果的な実施を促進するという観点から、十分に検討して、適切と考えられるものについてはこれを尊重するということに努めてまいる所存でございます。
現在、関係省庁の連絡会議を開催いたしまして、各省庁におかれてそれぞれの所掌事項がございますので、それぞれ検討していただいているところでございます。
こういった検討の結果を踏まえまして、また、我が国の第二回の国別の報告というようなことを含めて、また、委員会、先ほど申し上げました専門の委員から成る委員会でございますが、その委員会の方々とのいわば対話と申しましょうか協議と申しましょうか、理解を深めていただいて、一面、まだまだ我が国の事情について必ずしも十分な理解が得られていない点も散見されますので、十分またお話もし御説明もしてまいりたい。
いずれにいたしましても、目下関係省庁でそれぞれの所管事項につき検討いたしているところでございます。
○石井(郁)委員 随分御丁寧に御答弁いただいたのですが、要するに、この子どもの権利条約の実施に当たってやはり勧告は意味を持つ、検討しなければいけないというふうに確認をしたいというふうに思うんですね。
この際、外務省に一つお願いをしておきたいのですけれども、この勧告の中の最後のところでは、最終見解そのものが国民に広く入手ができるようにするということをわざわざ書いていますよね。その点で、まだインターネットにも入っていないというふうにちょっと伺っているんですが、そういうのは至急やはり盛り込むべきじゃないのか、取り入れるべきじゃないのかというふうに思いますので、これは御答弁は要りません、ぜひ検討してください。やはり広く国民に知らせるということは、まず第一義的に政府がやらなきゃいけないことですから、そのことをぜひお願いをしておきたいというふうに思います。
どうもありがとうございました。
さてそれで、次、文部省の方に具体的なところで幾つかあと質問をさせていただきますけれども、子どもの権利条約の第四十四条で、この条約に基づいて政府がとった措置あるいはもたらされた進歩、こういうことを政府に報告の義務づけをしているわけですよね。私これは大変重要だというふうに思うんです。
今外務省から御説明いただきましたけれども、批准してから二年以内にまず一回目の報告があって、それから五年ごとに報告をしていかなくちゃいけないということで、こういうふうに書いています。「この条約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告」を国連総長を通して委員会に提出しなきゃいけないというふうになっているわけですね。
だから、それが今回一回目の政府の報告書、そしてそれに基づく審査だというふうに思うんですが、次回は二〇〇一年に提出するということになるわけですよ、五年ごとにですから。だから、これまでどうしたのか、これから五年後をどうやっていくのかということがもう国連で審査されていくということですので、私は、文部行政、そういう意味では非常に重要になってくるというふうに考えているわけです。
それで具体的になんですが、まず広報関係について伺います。
この勧告の三十三項目めにこういうことがありますね。「条約の規定が児童及び成人の双方に広く知られ理解されることを確保するために一層大きな努力が締約国により払われるよう勧告する。」「権利の完全な主体としての児童の地位を強化するため、委員会は、条約が全ての教育機関のカリキュラムに取り入れられるよう勧告する。」と。つまりこれは、今までにこの広報が不十分だったということを指摘をされたということなんですね。
それで文部省、いかがでしょうか。子供たちがこの子どもの権利条約についてどのくらい知っているのか、そういうことを文部省として把握しているでしょうか。
○辻村政府委員 文部省として、子供たちがどのくらい理解しているかということにつきましての調査を行っているわけではございませんけれども、一つただいま先生の御指摘のとおり、子供たち一人一人に児童の権利条約についての趣旨と申しましょうか内容というものが伝わらなければいけないということで、そのために教育活動を通し
て学校でこれは子供たちに教えていくということが必要になるわけでございますが、その主たる教材でございます教科書には、小中高を通しまして社会科の教科書等を中心に、教科書によりましてはいろいろ書きぶりはさまざまでございますけれども、この児童の権利条約につきましては記述されてございます。
したがいまして、そうしたものを主たる教材としながら、各学校ではこの内容については教えられているものであるというように思います。その結果、子供たちがどの程度ということにつきましては私どもは調査はいたしておりませんが、そんなふうに思っております。
○石井(郁)委員 教科書の話が出されましたので、私は、教科書についてこれは文部省にもいろいろ教えていただきまして調べてみました。
これは文部省からいただいた資料で、私たち自身が何十冊も小中高の教科書を見るのは大変ですから、これをいただいて大変参考になったのですけれども、大変がっかりいたしました。局長は、そういうふうにして教科書を通して教えているというふうに言われますけれども、例えば小学校六年生の社会科で見ますと、ここでは発展途上国の子供たちの問題ということを記述している。その欄外に子どもの権利条約が書いてあり、あたかも発展途上国の子供たちのためにあるかのように読めるというものがあります。
それからもう一つの例で挙げますと、この中には、子供の権利について「人の独立した人間としての人権を保障する国際条約」という書き方なんですよ。これは非常に抽象的ですよね。一人の独立した人間としての権利、こんなふうに言われても、その権利の中身は何なのか書いていない。これは大人だってわかりません。これで小学生にどうやって伝わるのか、わかるのかということは私は本当に疑問に思いました。
中学校、高校に行きますと確かに具体的な記述は出てくるんですよ。しかし今大事なのは、子供たちと言う場合は小学生からなんですよね、権利条約の精神というのは。だから小学生の子供たちに知らせなきゃいけないということなんです。私は必ずしもこれは教科書にこだわるものではありませんけれども、子供たちはこうした権利がありますよ、あなたたちは権利を持っているんですよということを知らせるという努力は世界でいろいろしているでしょう。
例えば、スウェーデンなんかでは年齢別にこの権利条約というのがパンフレットになっていて、私たちがちょっと調べたところでは、七歳、八歳の子供用に、「だれも私をたたいたりばかにしたりすることはできない。」とか「私にはよい暮らしをする権利がある。」だとか、こういうことで書いてあるんですね。だから、まさにその年齢に見合って子供たちに、あなたにはこういう権利がありますということをこの権利条約の精神として知らせなきゃいけないというふうに思うんですよね。
こういう点で文部大臣、どうでしょうか、お考えございますか。
○有馬国務大臣 現在小学校で使用されている教科書につきましては、すべての社会科の教科書において、先ほど先生もお話しになられましたように、児童の権利条約について取り上げてはおります。
ただ、確かにおっしゃるように、具体的なことに関しましては、ページ数の制約等々がありまして非常に短いということはございます。しかし、ともかくこの権利条約について教科書がすべて書いているということをまず申し上げておきたいと思います。
教科書の具体的な記述は、しかし、今申しましたように、限られた紙幅の中でどのように取り上げるかということは、それぞれの著者の考え方もあるし執筆者にも任されているものですから、やはり、学校でこの教科書を使うときに少し工夫をするという必要があろうかと思います。学校での指導を通じてこの条約の趣旨、内容がわかりやすく教えられるように努めていきたいと思います。
これは北海道の方で出したものですね。これはとてもよくできていますね。小学校一年から三年まで、四年から六年までと、こういうふうなパンフレット、副読本というふうなものがそれぞれの地域で工夫されることを私としては願っているところであります。
○石井(郁)委員 大臣、せっかくの御答弁ですけれども、すべての教科書にあるというのは事実と違うんじゃないでしょうか。たしか文部省からいただいた調査でも、教科書で載っていないのもある、載っているのもこういう形だということでありましたので、それはちょっと後でお確かめください。
それから、私は、最初に申し上げたのは、この権利条約が子供の中に届いているのかどうか、やはりそれを文部省はつかむ必要がある、それをつかまなくてどうして次の施策が打ち出せるのかということがありますよ。今各都道府県でもそういうパンフレット、いろいろ努力をされています。しかし、これは政府が第一義的にやらなければいけない、国際条約としての義務事項でありますから。それが子供たちにやはり届いていないという事実があるわけでしょう。
NGOの団体がいろいろ調査をしていますよ。これは九五年の条約の批准の間もないころ、内容について知っているというふうに答えた子供たちは三割です。ところが、一年後には二割と比率が低下しているのですよ。だから、本当に今どうなのかということをやはり文部省はつかむ必要がある。
その場合に、勧告の三十四項目めはへ条約の実施に当たってNGOと緊密に協力をすることということもあえて呼びかけているわけですから、そういう協力などをすればいろいろな調査ができるだろうというふうに思うのですね。もちろん本当にいろいろな形のサンプリング調査などがあっていいと私は思うのですが、やはり子供たちにどういうふうに周知しているのか。このことをやはり政府として、文部省としてつかむという点ではいかがですか。ぜひこれはやってほしいと思います。
○辻村政府委員 先ほど御説明しませんでしたけれども、先ほど大臣から一つリーフレットの例が示されたわけでございますけれども、各県が児童生徒に対してどんな取り組みをしているのか、リーフレットの作成をしているかどうかとか、あるいは広報誌等に掲載してそういったものを伝えるようにしているかどうかというような調査はございます。それから、教職員に対してどんな施策を講じているかというような調査はございます。こういったものにつきましては、さらに継続をして実施をしていきたいというふうに思います。
○石井(郁)委員 それでは、もう一方で学校関係者あるいは教育関係者がどういうふうに権利条約について知っているのかという問題なんですが、今局長から出されましたけれども、例えば初任者研修のプログラムについて見ますと、子どもの権利条約というのは本当に入っているのでしょうか、どうですか。
○御手洗政府委員 私ども、初任者研修、各都道府県のプログラムをすべて見ているというわけでございませんけれども、ほとんどの都道府県におきましては、人権教育に関するプログラムというのは必ず入っておられます。
例えば東京都で見ますと、その初任者研修に、対象としております新任の教員に渡す手引書の中に、具体的に児童権利条約に言及し、さらに児童権利条約の経緯と趣旨等についてきちっと取りまとめたものを手渡しながら研修しているという事例もございますので、今後とも十分意を用いるよう、各都道府県教育委員会等を指導してまいりたいと考えております。
○石井(郁)委員 本当になかなかお寒い実態があるのですね。私は幾つか聞いてみました。確かに、東京都は副読本的なものを持っていてされているというのを聞きましたが、大阪では人権教育ということはあっても、子どもの権利条約については入っていない。それから埼玉県でも入ってい
ないというふうに聞いています。恐らくそういうことで、ちゃんとつかんでほしいというふうに思うのですね。
これは勧告の中にもありますように、日本政府の報告を見るといろいろなことをやっているというふうにあるけれども、その達成された進歩を容易に評価できるようなデータの収集がないじゃないか、これはデータの収集をすべきだとわざわざ書いていますよね。私は、そういうことで、まず子供についてもどう周知されているのかとちゃんとつかんでほしい。それから、教職員関係の皆さんもどうなのかということでつかんでほしい。
それから、いろいろな研修を行う際にも、NGOの団体からも講師を招くとか、NGOの団体の方がこの間一生懸命取り組んでいらっしゃるわけですし、それなりの専門家を集めていらっしゃるわけですから、そういうことを本当に考えてもいいのじゃないかというふうに思うのですね。
先ほどサンプリング調査をされるというふうにはちょっと御答弁なかったと思うのですが、もう一度、これはちゃんとあらゆる教育機関のカリキュラムに入れるべきだと指摘されているわけでしょう。少し前向きに御答弁いただけませんか。
○辻村政府委員 この条約の趣旨でございます一人一人の子供の人権をしっかりと守る、そして一人一人の子供の教育を大切にしていくということは大変大事なことだと思います。そのために、どんな形でやるのか、これはなかなか難しい点もあるわけでございますけれども、大変大切なことでございますので、先生の御意見を承りまして私どももいろいろと検討してみたいと思います。
○石井(郁)委員 どうもまだ抽象的な御答弁にとどまっているのですけれども、決して人権一般じゃないのですよ。子どもの権利条約で言われている趣旨を子供たちに伝える、これが新しい点なんですよ。それはまだ伝わっていません。私はそこをきょうは申し上げているのですが、ぜひ検討してください。
それで、時間がないのですけれども、私は、過度に競争的な教育制度ということで、あえてというか、日本の教育制度が国連という場で問題になった、このことを本当に正面から今受けとめなければいけないというふうに思うのですよ。文部大臣の方からは入試についてのいろいろ改善を図りたいという御答弁がありましたが、そこにとどまらないのですよ。
実は、この勧告は、もうお読みになっていらっしゃるから繰り返すのもなんですけれども、なぜこの問題を指摘するか。今子供たちというのは、過度なストレス及び登校拒否などをいろいろ起こしているじゃないか、これと闘うために適切な措置をとりなさい、こう言っているわけでしょう。なぜそれを言うかというと、この権利条約の三条、六条、十二条、二十九条、三十一条に照らしてこれを考えなさい、ここまで言っているじゃないですか。
それはもうあえて言うまでもありません。三条は子供の最善の利益を第一次的に考慮する。六条、生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。十二条というのは意見表明権ですね。二十九条は教育の目的、三十一条は休息、余暇、遊び、レクリエーション活動の権利ということでしょう。こういうものを考えて検討しなさいと言っているわけですから、どうも文部省はそういう視野がないのですよ。それで、今入試の改善をしているということで終わりにするという点では、子供たちの今置かれている状況の全体を見ない、あるいはとらえることにならないというふうに私は思うのです。
それで、大変時間がないのですけれども、もし例えれば、この国連の審査において、こういう過度の競争的な教育制度ということをめぐって、例えばどんなやりとりがなされたのか、一つ御紹介されるとしたら何か具体的に言っていただけませんか。
○工藤政府委員 最終報告で、過度に競争的な制度という先生の御指摘のような表現があるわけでございますが、私どもこれは、二日ほどのヒアリングといいましょうか、意見交換あるいは質疑応答を経てこういうまとめになったと聞いているわけでございます。
その二日間でのやりとりを出席した者等から聞いてみますと、特に日本の教育制度について何か突っ込んだお話というよりは、御案内のとおり、近年残念なことに子供たちのいじめでございますとか、あるいはいじめ等に起因する自殺などが頻発いたしまして、それが先方の専門家の方々の耳にも届いていたようでございまして、その原因として、何か子供のストレスを高めるような日本独特のものがあるのではないか。それが例えば受験であったり、あるいは学校内での子供たちの閉塞状況であったりというようなことが話題になりながら、その意見交換の中でこういう文章になったと聞いてございまして、格別日本の今の教育制度のどこをどういじるということではなくて、御提言にもありますように、学校における体罰でございますとかいじめ、登校拒否、あるいは少数民族の子供たちへの差別、人権教育の学校でのカリキュラム導入問題等、幅広くいろいろの御意見があってこのようになったと聞いているところでございます。
○石井(郁)委員 この国連の審査の二日間には、日本のNGOの団体からもいろいろ参加されたと思うのですね。私もその方々からも御意見を聞きましたし、そのNGOの参加された方々が議事のやりとりを録音され、そして起こしもされているのですね。間もなく国連そのものが議事要録を発表されるというふうに思うのですけれども、本当に興味深いですよ。
日本の教育について各委員の方がこれほどいろいろよく知っていらっしゃるのかという点も、随分私なんかも勉強になりました。本当にそれは御紹介したいのですけれども、それはもう時間がありませんので。
私はここで、例えばある委員の方は、こういうこともおっしゃっているのですね。日本には学習指導要領が存在している。これは、学校にとって極めて厳格な基準となっていると思う。この考え方、態度の変化が求められる。この条約は、まさに考え方と態度の変化を求めるものだ。もし民主的社会となりたいのであれば、この条約をそのための強力な道具として用いることができる。ここまで踏み込んで言われているのです。
私は質問をしたいのですけれども、この子どもの権利条約の批准は一九九四年ですね。そうすると、当然この条約は、今審議されている教育課程のあり方の審議に根本の問題として取り上げられなければならないというふうに思うのですね。六月三十日には中央教育審議会の答申、七月二十九日には教育課程審議会の答申が出されたわけですけれども、この権利条約、勧告を審議したというようなことが見受けられないわけであります。これではもうこの勧告や条約も全く無視をして日本の文部行政が進められているというふうに受けとめざるを得ないわけですけれども、これは重大なことだというふうに思うのですね。
それで、文部省に伺うのですけれども、こういう審議会の審議に当たってこの勧告を本当に受けとめているのかどうか。いかがですか。
○工藤政府委員 先ほどの答弁の中でお話ありましたように、専門家の方々の、個人の資格での御参加でのいろいろなやりとりがあったわけでございまして、それぞれの方々の日本の教育制度あるいは教育の現状についての御理解が、深い方、浅い方、あるいは偏っている方、いろいろあったかと思います。
それで、日本政府側とのやりとりの中で、ある程度理解が深まって誤解が解けた部分とそうでない部分があるかと思いますが、いろいろなやりとりで今先生の御指摘のようなこともあったかもしれませんが、また、私どもで聞いておりますのは、ある委員は、日本は教育制度も保健制度も進んでおる、加えてこの条約により、児童も人権を有していること、権利の正当性が明確に定律されたと思うというような、むしろ積極的な御発言の方もいらっしゃって、いろいろだったようでござ
います。
今のお話についていえば、日本の教育制度について、学習指導要領がさも瑣末なことまで縛り、学校なりあるいは子供たちの自由な伸び伸びとした教育を妨げているかのような誤解が一部に、国内でもあるわけでございますけれども、一度学習指導要領をごらんになっていただければわかりますように、近年極めて大綱化してございまして、さらに今回の教育課程審議会での御審議におきましても、さらにそれをより大まかなものにし、各学校での、あるいは各先生方の専門性に応じての自由度を増すような形での、生き生きとした学校づくりに資する大綱的な指針にしようというふうに進められているところでございます。
○石井(郁)委員 私が伺っているのは、中央教育審議会や教育課程審議会のメンバーの方々あるいはその会合で、子どもの権利条約あるいは今回の勧告というようなことについて討議をされたのかどうか。単純な話なんです。それをお聞かせください。
○辻村政府委員 いわゆる児童の権利条約というような文言をテーマにしてということではなく、この児童の権利条約の趣旨というものが、先ほど申し上げましたとおり、一人一人の子供たちにしっかりとした学力を身につけさせて、基礎、基本をしっかりと身につけさせて、そして一人一人が自立していく子供を育てていく、一人一人の個性を大切にした教育を展開していくのだ、こういうことでございまして、そういう観点に立ちますと、教育課程審議会においては、冒頭の総論の一年間というのは、まさにそういうやりとりをしたわけでございます。したがいまして、十分にこの児童の権利条約の趣旨というのは踏まえた議論が行われたものというふうに確信をいたしております。
○石井(郁)委員 局長がそうおっしゃるのは自由なんですけれども、事実の話として、審議会のメンバーの方々に権利条約や勧告は渡されているのでしょうかというふうに聞いているのですよ。それはちょっとここでは置いておきます、残念ですけれども。
この権利条約ではそういうことを問題にしているのですね。皆さんがちゃんとこれを審議してください、そうして施策を考えてくださいと。それを文部省がやはり率先してやるべきじゃないですか。やっていないでしょう。それで、こういうことがいろいろ出されてくる、次から次という話なんですね。
ぜひ私は、学習指導要領、近く出されるという話も聞いていますけれども、本当にこの時点で改めて権利条約と勧告に戻って考えるべきだ、考えてほしいということを強調しておきたいというふうに思います。
きょうは、とても残念なんですけれども、私は子供の参加の問題についても質問をしたがったのですが、それはまた次回に回すことにしたいと思います。
いずれにしても、本当に国際的にこの子ども権利条約というのはこういう形で議論されている。ここから外れたことで文部行政を進めていくというのは、やはり日本は国際社会から大きく立ちおくれていくということになるわけですから、そういう点をぜひ踏まえてほしいということを重ねて申し上げまして、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。



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