139-衆-文教委員会-2号
1996年12月12日
石井郁子議員 質問部分 採決部分 会議録


平成八年十二月十二日(木曜日)
    午前九時十分開議
出席委員
  委員長 二田 孝治君
   理事 稲葉 大和君 理事 河村 建夫君
   理事 栗原 裕康君 理事 田中眞紀子君
   理事 岡島 正之君 理事 佐藤 茂樹君
   理事 藤村  修君 理事 山元  勉君
      栗本慎一郎君    佐田玄一郎君
      阪上 善秀君    島村 宜伸君
      戸井田 徹君    中山 成彬君
      柳沢 伯夫君    山口 泰明君
      渡辺 博道君    池坊 保子君
      旭道山和泰君    西  博義君
      西岡 武夫君    福留 泰蔵君
      三沢  淳君    鳩山 邦夫君
      肥田美代子君    石井 郁子君
      山原健二郎君    保坂 展人君
      岩永 峯一君
 出席国務大臣
        文 部 大 臣 小杉  隆君
 出席政府委員
        文部政務次官  佐田玄一郎君
        文部大臣官房長 佐藤 禎一君
        文部省初等中等教育局長    辻村 哲夫君
        文化庁次長   小野 元之君
 委員外の出席者
        労働省労働基準局監督課長   青木  豊君
        文教委員会調査室長      岡村  豊君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)
     ――――◇―――――

○二田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。小杉文部大臣。
    ―――――――――――――

○小杉国務大臣 このたび、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 我が国の著作権制度については、これまでも逐次改正をお願いし、その充実を図ってまいりましたが、近年の著作権をめぐる国際的な動向の変化や情報化の進展などの社会状況の変化には目を見張るものがあり、新しい文化立国を目指して内外への積極的な貢献を進めるべき立場にある我が国としては、その文化を支える法的基盤である著作権制度の一層の改善を進めていく必要があると考えているところであります。
 このたびの改正は、このような内外の情勢の変化及び我が国の占める国際的地位にかんがみ、著作権制度のさらなる充実を図るため、所要の措置を講ずるものであります。
 次に、この法律案の概要について申し上げます。
 第一は、写真の著作物の保護期間に係る特例を廃止することであります。
 現行の著作権法では、写真の著作物の保護期間については、他の著作物と異なり、公表後五十年まで存続することとされているところでありますが、最近は、国際的にも、これを著作者の死後五十年までとする国が先進諸国の大勢となってきていること等を考慮し、写真の著作物の保護期間に係る特例を廃止し、著作者の死後五十年までとするものであります。
 第二は、民事上の救済規定及び罰則規定の整備を行うことであります。
 近年の情報化の進展等、社会経済情勢の急速な変化により、著作権に関する法的紛争の多様化、複雑化が進んできており、著作権法においても特許法など他の知的所有権法制との整合性を図りつつ、著作権の実効的な保護をより一層充実することが、民事、刑事の両面にわたって求められております。このため、著作権法におきましても、著作権等を侵害する行為によって生じた損害の額を計算するため必要な書類について、当事者の申し立てにより裁判所が当事者に対しその提出を命ずることができる旨の規定を設けることとするとともに、罰金額の上限を引き上げることとするものであります。
 第三は、著作隣接権の保護対象を遡及的に拡大することであります。
 世界貿易機関、WTOの加盟国に係る実演、レコード及び放送については、平成六年の著作権法及び万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律の一部を改正する法律により、我が国に著作隣接権制度が導入された昭和四十六年一月一日以降に行われたものが著作隣接権による保護の対象とされたところであります。しかしながら、その後、先進諸国において、五十年前に行われた実演等までを保護する国が多数を占める状況となっており、我が国としても、国際的な協調を図る観点から、我が国及び世界貿易機関、WTOの加盟国に係る実演、レコード及び放送について、他の諸国と同様に、五十年前に行われたものまでを著作隣接権の保護対象に加えることとするものであります。
 なお、これに伴い、旧法において保護されていた演奏歌唱及び録音物の著作隣接権による保護期間に関して現行法で定められている経過措置についても、所要の見直しをすることとしております。
 最後に、施行期日等についてであります。
 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、所要の経過措置を講ずることとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概略であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
 以上でございます。

○二田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――

○二田委員長 石井郁子君。

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 著作者、芸術家の権利を守ることは、将来にわたって文化の創造的な営みを保障するために欠かせない条件であることは言うまでもありません。日本共産党はこれまで、著作権法を日進月歩の技術革新の実態に見合うように速やかに改正し、芸術家の著作権を守ることは急務と考えてきたところでございます。
 今回の著作権法の改正で、今問題の写真の著作物の保護期間が一般の著作物と同様に著作者の死後五十年までということになりました。写真家の方々の悲願が実ったわけでありまして、本当に前進だというふうに思います。私自身も、一九八八年の著作権法改正のときには国会、文教委員会におりまして、この保護期間の問題を質問したことがございます。そのときに、公表後五十年を死後五十年に改めるべきだということで主張したわけで、それを今思い起こして、私にとっても感無量だというふうに思っておるところであります。
 しかし、既に議論されているところでありますけれども、保護期間が切れた写真の保護の問題ということで、今回の改正をもってすべてよしとするわけにいかないということでございます。
 文化庁の方からもいろいろお答えがあったとおりですけれども、ちょっと具体的に見ていただきたいというふうに思うのですね。
 これは日本写真家協会会長の田沼武能さんの作品でありますけれども、平成八年八月二十五日に発行されているのです。東京の「下町今昔物語」という写真集ですね。この中では、百三十一ページ中三十六ページ、二七・五%が一九五六年以前のものなんですね。だから、法改正ではこの部分が脱落をすることになるわけです。この方はまだ六十七歳で存命中でございますから、無断使用されても法的権利が主張できないという問題ですね。
 それからもう一点ですけれども、これは土門拳さんの「こどもたち」という写真集なんですが、九五年九月一日の初版発行です。これですと、百五十九ページで八十九ページ、だから五六%が一九五六年以前のものということになるわけであります。ですから、もしこの八十九作品を全部精密にコピーして発行して大ベストセラーになっても何も請求できないという、いわば無権利状態ということになるわけですね。
 ですから、これまでも議論されましたが、レコードなどの著作隣接権の保護期間が五十年前にさかのぼるということで遡及的保護ということになったわけですから、なぜ写真がそうならないのかという疑問が多くの方にあるのは当然であります。だから、この写真についてもぜひ遡及して保護してほしい、こういう関係者からの強い要望があるのはもう文化庁御存じのとおりであります。
 そこで、私は、答弁を繰り返していただくのは結構ですから、肥田さんの質問も今ございましたけれども、ここは大臣に重ねて、今改正ではできなかったけれども、今後の改正というか、今後の保護のこういう措置についてぜひ強い御決意を伺いたいなというふうに思います。

○小野(元)政府委員 先ほどお話がございました写真集等ございますが、現実に、出版におかれましては出版界の慣行がございまして、旧法を機械的に当てはめるのではなくて、仮に保護期間が切れた写真等が含まれておる場合であっても、出版界の慣行としてはそれについても含めた印税を払っておられるというのが実態であるということはお聞きしておるのでございます。
 それからもう一点は、昔の写真等を放送局や出版社等で、例えば、特に放送局では資料映像で使っておるわけでございますけれども、大変有名な写真家の方の写真というのはある程度わかるわけでございますけれども、これはプロの方以外にアマチュアの方の写真もすべて同じ権利が働くわけでございまして、仮に今までフリーだということでいろいろ使われていたものが、データベースもつくっておるわけでございまして、それを遡及的にすべて一律に権利を復活させてしまうということになりますと、やはり既存の利用関係に重大な影響を及ぼすことは事実なのでございます。
 そういったこともございまして、先ほど来御答弁申し上げておりますように、写真家協会の御意見、本当によくわかるわけでございまして、昔十年というのは非常に短かったことも私は一つの反省材料だと思っておるのでございますけれども、国際的にも条約の検討も進められておるわけでございまして、そういう中で引き続き一つの課題として検討させていただきたいと思っているのでございます。

○小杉国務大臣 今具体的に、写真集を持ってこられて指摘をされまして、そういうお話を聞きますと大変胸が痛むのでございますが、今回の改正については先ほど来答弁しているとおりでございますが、今次長からもお話しのとおり、写真の著作物についてはこれからも大量かつ多様な利用が予想されるということで、保護の問題、より一層重要になってくると思います。
 そこで、文化庁、文部省としても、今後、写真の著作物の適切な保護のあり方について十分検討していきたい。しかも、今WIPOにおきまして検討されております新条約がどうなるかというようなことも、十分そういった国際的動向も留意しながら検討していきたいと思っております。先ほど肥田委員にもそういうお答えしたのですけれども、今後十分検討して前向きに対処していきたいと思っております。

○石井(郁)委員 どうぞそのようによろしくお願いをしたいと思います。
 次に、実演家の権利保護の問題でお伺いをいたします。
 これもるる言われているように、ちょうどWIPOの会議が並行して進行中だということでもありますけれども、しかし、私はやはり国内の問題として検討が急がれるというふうに考えるわけであります。
 一九九一年の改正のときには、我が党の山原議員がこういう例を申し上げました。「役者には未戸銭無用と旧作ラッシュ」だということで、映画の二次使用における実演家の権利保護ということを要請したわけですね。それで、衆参で附帯決議がもう相当上がっているわけですけれども、この問題で、当時の井上文部大臣がこのように答弁されておられるわけであります。歌手や俳優、こういう実演家の方が我が国文化の創造と発展に寄与している役割には重要なものがある、関係機関の努力の推移を見きわめながら、また国際的な動向や国内的な合意形成にも留意しつつ、今後さらに著作権審議会等の場で検討してまいりたいということですね。
 この点も、著作権審議会、そしてさらに映画の二次的利用に関する調査研究協議会がこの間設けられてきたということは私も承知をしておりますけれども、しかし、このときから五年以上が経過しているわけであります。だから、この間にどういう前進的なことがあったのかという点で、もう時間も余りありませんから、本当に要点をお知らせいただければというふうに思います。

○小野(元)政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、映画の二次利用につきましては、実演家の方々は、当初の契約の時点で二次利用の分は払ってもらっていないのだという御主張でございます。一方で、映画会社の方は、一回の契約でその後の分も払っているのだ。いわば全く言い方は違うわけでございます。
 ただ、お話にございましたように、二次利用といいますか、映画が劇場で見られるというだけではなくて、テレビあるいは衛星放送で再放送されるというようなことが非常に進んできておるわけでございます。そういう意味で、私どもとしては、先ほどの二次利用の調査研究協議会は残念ながら結論がまとまる段階に至っていないわけでございますけれども、マルチメディア小委員会等におきましてさらに検討を続けていただくつもりにいたしておりまして、先ほど来御答弁申し上げておりますように、日俳連や芸団協の方々、実演家の権利についていろいろな御要望もいただいておるわけでございます。そういったことも十分念頭に置きながら、国際的な動向も踏まえながら検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

○石井(郁)委員 先月十一日、衆議院の会館会議室で、日本俳優連合の方が多数見えられました。その中で、三崎千恵子さん、「男はつらいよ」に四十七回出ている、それでテレビでの再使用料をということで交渉したけれども、聞いておきますだけに終わっているということでございました。そういうことで、非常にテレビで再放送が盛んになるにつれて仕事の方は来なくなったという話がされておりました。私もその場で直接お聞きいたしまして、本当に何か胸が詰まる思いがしたのですけれども、今お話しのように、二次利用の問題、それに対する権利の保障というのがほとんどないという実態であります。
 それで、日俳連の調べでも、九三年度で、日本映画はビデオカセットで年間二百二十二億円販売されているのですね。しかし、俳優には映画利用報酬は一円も払われていないということですね。
 それから、これからどんどんデジタル化、ネットワークの時代だ、録音・録画された著作物が自由に改変、切除されるハード機器も簡単に買うことができるということで、これを使用して俳優の実演を勝手に改変、切除し、ネットワークに乗せて世界中にばらまくこともできるというようなことになっています。
 ですから、今、実演家、とりわけ俳優の皆さんの権利侵害というか、権利が保障されない事態というのは、私は大変危機的な状況に来ているのじゃないかというふうに思うのですね。
 そういうことで、俳優、日俳連の皆さんを初めとして関係者の方がぜひ、「実演家の権利」ということが著作権法で言われているけれども、俳優の著作隣接権が及んでいないという映画の例外規定、ですから、この九十一条第二項、九十二条第二項二号のロの撤廃をするということを含めて、そのWIPOの決定とは独立して、今、実演家の保護、俳優等の人格権の保護ということにもう踏み出すべきではないのか、そういう事態に来ているのではないかというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。

○小野(元)政府委員 今お話がずっとあっているわけでございますけれども、これは、映画としての実演に最初に固定されるときにといいますか、最初に映画を撮影されるときに、そのときの契約のあり方というのも当然問題になってくるわけでございます。そこの中で実演家の方々と映画会社の方々がうまく話し合いができればより望ましいと私どもは思っておるわけでございます。
 ただ、この問題につきましては、そうはいっても、やはり実演家の方々、俳優の方々は、そんなにうるさく言うのだったらこの映画にもう出ていただかなくて結構ですというふうに会社側から言われてしまいますと、非常に立場の弱いことも事実でございます。
 しかしながら、実演家の方々の権利をできるだけ保護していくということを私ども文化庁としては考えていかなければいけないと思っているわけでございまして、先ほどお話もございましたけれども、WIPOの新条約の中で実演家の方々の権利がきちんと保護されるように文化庁の立場としては努力をしておるつもりでございまして、今後とも積極的に検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○石井(郁)委員 実演家の方々は、著作者に準ずる権利が保障されてしかるべきだということでの人格権ということをやはり要望されていると思うのですね。契約という話がありましたが、なかなか日本では契約ということがそうすんなりいかないということがありますから、最低のルールをつくってほしいということがあるかというふうに思います。
 そういうことで、私は、文化の発展にとっても創作活動の促進ということが大事ですから、それはやはり物をつくる人間を大切にするということだと思うのですね。だから、そういう立場でこの問題をぜひ積極的に検討されてほしい、していくべきだというふうにお願いというか要望したいと思います。
 最後に、この点でもちょっと大臣の御決意のほどをぜひお聞かせいただきたいと思います。

○小杉国務大臣 芸術、文化の振興を図っていくためには、俳優や演奏家などの実演家が安心し、誇りを持って芸術活動に専念できるようにするということは大切なことだと思います。そのために、著作権法の分野においても、実演家の権利の保護というものを充実強化していくということが大変重要になっているわけでございます。特に、マルチメディア時代と呼ばれるデジタル化、ネツトワーク化の進む中で、実演家の適切な権利保護はますます重要な課題になってきていると思います。アメリカなどと違って、まだまだ日本にはそういう風土といいましょうか、共通理解、共通認識が得られない、そして、利害がいろいろ対立をしているという中で、そういった国民の理解というものを得るために、そういった活動もぜひ、委員の側でもやっておられると思いますけれども、そういうことも重要だと思います。
 今、再三お答えしておりますように、WIPOにおけるこの審議の状況等も見きわめ、そして、著作権審議会でも積極的にさらに検討していただきまして、実演家の利益が適切に保護されるように今後とも努力をしていきたいと思っております。

○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

○二田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

○二田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。


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