平成十二年八月四日(金曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 西 博義君
理事 岩永 峯一君 理事 河村 建夫君
理事 下村 博文君 理事 渡辺 博道君
理事 田中 甲君 理事 藤村 修君
理事 池坊 保子君 理事 都築 譲君
岩崎 忠夫君 小渕 優子君
奥山 茂彦君 鈴木 恒夫君
馳 浩君 林 省之介君
原田 義昭君 福井 照君
森岡 正宏君 森山 眞弓君
柳澤 伯夫君 大石 尚子君
牧 義夫君 松沢 成文君
山口 壯君 山谷えり子君
山元 勉君 石井 郁子君
山内 惠子君 谷本 龍哉君
松浪健四郎君
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文部大臣 大島 理森君
文部政務次官 鈴木 恒夫君
政府参考人(文部省初等中等教育局長) 御手洗 康君
政府参考人(文部省教育助成局長) 矢野 重典君
政府参考人(厚生省児童家庭局長) 真野 章君
文教委員会専門員 高橋 徳光君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
文教行政の基本施策に関する件
午前九時開議
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○西委員長 これより会議を開きます。
文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
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○西委員長 次に、石井郁子君。
○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。
きょうは、教育基本法の問題で文部大臣にお聞きをいたします。
小渕前首相の私的諮問機関として、懇談会として教育改革国民会議が発足を見たわけでございますけれども、その時点で私は、教育基本法と教育改革国民会議との関係はどうなのかと、これは二月二十五日の予算委員会で質問をいたしました。そのとき青木官房長官は、「教育基本法の基本的な考えは変えない」、「この教育改革国民会議が教育基本法を変えるための会議である、そういうふうな御理解をいただいては間違いだろう、」と御答弁されたわけでございます。これは私が、政府としての教育改革国民会議に対する真意は一体どこにあるのかと尋ねたところの答弁でございまして、私はこの答弁が政府の正式見解だというふうに受けとめたわけであります。当然だというふうに思うんですね。
ところが、森内閣にかわりまして、五月十一日、森首相は教育改革国民会議に対して次のようなあいさつをされました。
教育基本法につきましては、既に委員の方々からご意見が出されているところでありますが、私といたしましても、教育基本法について見直すことが必要であると考えております。例えば、我が国の文化や伝統を尊重する気持ちを養う観点や生涯学習時代を迎える観点から、充分なものであるのか。あるいは、教育において家庭や地域が果たすべき役割が充分規定されているかなど、教育基本法についての議論を深める必要があると考えているところであります。皆様方におかれましては、この際、我が国の教育のあるべき姿について、是非根本的なご議論をお願いしたいと存じます。
こうなりますと、これは首相が教育基本法の見直しを要請したというふうになるわけですね。これはまさに国会答弁と違うことを行ったと言わなければなりません。国民と子供に対して範を示さなければならない首相自身が、いわば国会答弁と違うことを堂々と行う、こういうことがあっていいのかというのが、きょうは私の第一の問題点です。つまり、国会答弁あるいは国会というものをないがしろにするものではないのか。
この点で、長らく議院運営委員会で御活躍をされた大島文部大臣でございますから、どのように受けとめていらっしゃるのか、御見解をまずお聞きしたいと思います。
○大島国務大臣 石井委員が御指摘されている部分は、青木前官房長官がお答えされたことと今の森総理のお話しされていること、方針とは、内閣の継続性という観点から違うのではないかという御指摘ではないかと思うんですね。
私も、石井先生の御質問をいただいて前の青木官房長官の答弁を、議事録をちょっと読ませていただきました。そこには、基本的な問題については云々という言葉がございましたね。多分青木官房長官の、あるいは森総理も、その基本的なところというのは、例えば子供の権利でございますとか、憲法の今の精神でございますとか、そういうことを変えようということではなくて、そういうことは私は今でも継続することだと思うのです。
しかし、さはさりながら、いろいろな条項の中で、今必要とする部分で抜けている部分がありとすれば、それは何なのか、そういうものを大いに議論していただきたいという思いで、私は、そこには継続性、一貫性がそごを来しておるということはない、このように理解しております。
○石井(郁)委員 小渕前首相は、この教育改革国民会議について、第一回のあいさつの中で、これは幅広く議論を積み重ねる場だとおっしゃっていますよね。ここのところを強調されている。教育基本法については一言も触れておられません。これは三月二十七日です。
ところが、今回は、教育改革国民会議では教育基本法を見直しをしてほしいと。全然違うじゃありませんか。だから、教育改革国民会議を教育基本法見直しの場にするということになったわけでしょう。これは、国民会議の性格を根本から変えたことになりませんか。これがまず第一点ですね。
その上に立って、今国会で森首相が、所信表明演説では、教育基本法の抜本的な見直しと、今度は見直しの上に抜本的がついたわけですよ。必要だというふうに述べられました。これは、これまで政府が言及したことのないことなんですよね。歴代の政府でやったことありません。突然の表明だったわけであります。
そして、これとちょうど合うかのように、所信表明は二十八日でしょう、その直前の二十六日の教育改革国民会議が分科会報告を出されまして、これは私も読みましたし、新聞にも報道されましたけれども、第一分科会としては、教育基本法の改正が必要だという意見が大勢を占めましたというふうになっているんですよね。それから、教育基本法については、第一分科会のみならず、今後全体会においても議論していくことが必要だというふうにまでまとめをされているわけです。
これは一体どういうことなんでしょうか。まさに教育改革国民会議の発足の時点、その国会答弁、その性格、全く違ったことになっているということではありませんか。ですから私は、こういうやり方というのは本当に国民に対するだまし討ちだ、こう言ってもいいと思うんですね。どうですか。文部大臣としてこれは黙っていていいんでしょうか。
○大島国務大臣 先生にいま一度国民会議の性格というものを御理解いただいた上で、お答えをまた申し上げたいと思いますが、石井先生、あれは私的諮問会議なんですね。だまし討ちとかなんとかというのは、例えば国会が、こういう会議をつくってそこでこういう方向について議論しなさい、そのことを変えたというのならば、国会としてこれはだまし討ちだとかなんとかということを言う対象とはなると思うんですが、ちょっとそこはまず大きな前提として違うんじゃないか。
それで、小渕前総理が、あの会議をつくったときに、本当に基本に立ち返っていろいろなことを議論してくださいと言っているわけですね。それは、逆に言うと、教育基本法を議論しちゃいけないということを一度も言っていないわけです。教育基本法を議論しちゃこの会議はいけませんよということは言っていない。いろいろな、さまざまな角度から基本的なことを議論しようという中に、私は当然に、青木長官の前の御答弁もありますが、教育基本法を議論してくださいということ、議論することにはやぶさかではないという御答弁もまたあるわけです。
さらに加えて、そういう中で、森総理になってから、その諮問会議、私的国民会議に教育基本法だけを議論してくださいとは、私は森総理は何にも言っていないと思うんですね。やはり、あそこのメンバーの先生方の結果として、教育基本法も議論し、この間の中間報告というのですか、ああいう中に教育基本法の改正問題というものを明確にのせてきた。それは総理の指導があったからということではなくて、むしろそういう先生方の多様な、基本的な、抜本的な議論をしようという結果としてああいうものが出てきたものと私は理解をいたしております。
○石井(郁)委員 しかし、経過としては、明らかに五月十一日、総理の方から教育基本法の見直しを要請しているわけですよ。それはやはりそういう議論の方向に進められていく、これは私的懇談会ですから、一定の諮問を受けてということになるでしょうから、ならざるを得ないんじゃないでしょうか。
ですから、最初は、教育基本法の根本的、基本的考えは変えない、それからこの会議は教育基本法を変える場ではないんだ、この教育改革国民会議が教育基本法を変えるための会議だというふうに思ってもらったら間違いだと、そこまで官房長官はおっしゃったわけでしょう。ところが、今や変えるための会議にもうなってきているじゃありませんか。こういうことがあり得るのが問題なんですよ。これは重大なことですよね。
そして、大臣がおっしゃったように、私的懇談会と審議会、これは明確に違うものですよ。これはもう言うまでもないと思うんですね。しかも、その私的懇談会で一定の報告を出し、諮問を受けて報告を出し、それがあたかもこういう方向が決まったかのように今動きつつある、やはり国民はそんなふうに見ざるを得ないですよ、いろいろ新聞報道を見ても。だから、私はそのことを大変危惧しているわけですよね。
私的懇談会と審議会との差異についてはもう言うまでもないんですが、あくまでも個々の意見の表明の場だ、決して懇談会としては何かをまとめる場所ではないということがあるわけでしょう、行政管理庁の文書の中でも。ところが、今はまとめる方向で来ているという問題ですよ。だから、懇談会の報告があたかも審議会の報告のように取り扱われていないか、こういう方向で今報告をいただきましたというふうに国民にそれが押しつけられていくとしたら、私は、重大な問題だし、こういうやり方は絶対にやはり許すことはできないという意味で厳しく申し上げているわけでありまして、これは国会の権威、また政府の権威にかかわる問題だというふうにも思います。
確かに、国会でそれは決めていないというふうにおっしゃったんですけれども、本当にそうなんですよ。私的懇談会の委員は全く国会が関知していません。そうでしょう。そういうところで、いわば教育の憲法と言われる教育基本法がこういうふうに議論されて、しかもこれは総理からいわば要請を受けて議論されてということで、どんどん事態が進んでいく。これはやはりゆゆしき事態だというふうに思うんですね。
私は、文部大臣としてやはりそういう御認識があるのかどうかということを再度求めたいと思いますし、こういう形での基本法の見直しということはもうやめるべきだということを強く申し上げたいわけでございます。
○大島国務大臣 多分石井先生おっしゃりたいことは、そういう方向に私的懇談会が世論をつくり上げていって、そしてそういうことがけしからぬのだ、事実的にも改正しなきゃいかぬのだという世論をつくっていくような形というのはおかしいじゃないかということを一生懸命言っておられるのかなと思いますが、結論から申し上げますと、法律の改正とか成立は、この国会でしかできません。いずれにしても、基本法の改正を必要だという判断をした場合には、国会に御提出して、ここで御議論いただくわけでございます。
ですから、諮問機関がどんなことを言おうが、法律という問題は国会議員の先生方が責任を持って議論して一つの判断をしていく。ですから、今やっていることがけしからぬことだ、また、どうも国会をばかにしたことだというのはちょっと、私は、文部大臣としても、総理のあそこの私的諮問会議はけしからぬことだということを言うつもりは全くありません。
ですから、いざとなったときに文部大臣としてどう考えるんだといえば、今、中間的な報告をこの間出されましたので、ただ、まだ正式に何にも来ていないときにコメントするわけにはいきませんが、どうも見ていると、現実的責任ある文部省として、今なるほどこういう問題提起は確かに考えていかなければならないな、したがってここは今こう変えていけるかな、これはもう少し中期的に皆さんと議論して考えなきゃならぬかな、まだ長期的にもっともっと国民の皆さんの議論をこの点は聞かなきゃならぬのかな、この三つのラインに分けて整理をしていかないといけないのかなという感想は持っていますということは、いつも申し上げているんです。
○石井(郁)委員 あえて伺いますけれども、文部大臣としてというか、あるいは文部行政としては、憲法と教育基本法にのっとって行う、憲法と教育基本法の法律にのっとって、その上で具体的な文部行政を進めていく、このことははっきりしていますね。
○大島国務大臣 私どもは、憲法を遵守する義務がございます。このことは心してやってまいりたいと思っております。
○石井(郁)委員 大変時間がないんですけれども、総理大臣の方から見直し、そういう見直しということが大変言われてきていますから、これは本当は総理と論争しなきゃいけない話にはなるわけですが、しかし、何かあたかも見直しが必要かのような話がどんどん進められていくということに対して、私は本当に落ちついて議論しなきゃいけないなというふうに思っているわけで、ここで一つ二つ、本当に見直しの理由というのは一体本当に理由になるのかという問題をまさに議論しなきゃいけないと思うんですね。
それで……(発言する者あり)私は議論しちゃいけないと言っていませんよ。だから、何を見直しするのかという問題なんですよね。先ほど申し上げましたように、今出ているのは三点ばかりでしょう。文化や伝統を尊重するということがないだとか、重視だとか、あるいは生涯学習という問題だとか、家庭や地域の役割ということをもっと強調すべきだという話なんですが、実はこの点も、私はさきの予算委員会でも議論したんです。
これは森首相自身が文部大臣のとき、先ほども臨教審という話がございましたけれども、一九八四年ですけれども、答弁していらっしゃるんですよね。「教育基本法は、第一条において「教育の目的」として、人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者として国民が身につけるべき基本的な徳目を示しているものであり、」徳目を示している。「その精神から見て、国を愛する心、家族の敬愛というような、人間として生きていくについての普遍的かつ基本的な事柄を教え、身につけさせていくことは、当然その趣旨に含まれているものと考えているわけでございます。」だから、こうおっしゃっているわけでしょう。この当時の「教育改革に当たりましては、憲法、教育基本法の精神を基本としつつ、これに取り組むことが肝要」と。
私は、やはりこのとおりだというふうに思うんですよ。だから、これがなぜひっくり返されるのかということもあるわけです。我が国の文化や伝統を尊重する気持ちなど第一条の趣旨に含まれているというのであれば、変える必要なんかないんじゃありませんか。それが第一点。
それから、生涯学習についてもそうなんですね。確かに生涯学習という言葉自身、そういう概念自身が、やはり時代の中でつくられてきた新しい概念ですよね。だから教育基本法にないのは、それは当然ですよ。そういう種類のものが、時代の変化の中で含まれていないというのはあり得るわけですよね。
しかし、この生涯学習についても、生涯学習振興法を文部省がつくりました。この制定の当時には、そのつくられたことについても、これは前中曽根文部大臣が、これは教育基本法の大枠で制定されたものだと。だから、やはり教育基本法があって、あの当時は社会教育という言葉ですけれども、そういう枠の中で生涯学習振興法がつくられていっているわけですよ。だから、教育基本法があることは少しも邪魔にはなっていないし、そのもとで具体的な個別法ができ上がっていくわけですから、これは変える理由にもならないじゃないですか。どうでしょうか。
私はそういう点で、青木官房長官が御答弁されたように、やはり教育基本法を変えることが先にありきみたいな議論をする会議じゃないんだといったことをきちんと本当に踏まえるべきだというふうに考えるところでございますが、この変える理由について、今、いかがでしょうか。
○大島国務大臣 石井委員にお答えを申し上げます。
変える理由についておまえは答えろと言っても、今ここに改正案を持ってきて、こう変えますといって出したときは変える理由を申し上げたいと思います。
ただ、今委員がいろいろお話しされました、生涯教育という言葉は時代の変化に基づいてできてきた言葉だ、まさにそういう時代の変化というものが一方において激しくあるわけでございます。昭和二十二年につくったときに、そのときが必要とする教育の目標というものと今と全く何も変わらなくていいんだということには、私はいささかくみしない考え方を持っております。
というのは、確かに教育の世界には、教育政策の目標には、普遍的な人格のあり方論とか、そういう問題も理想とする人格論というのがあるのでしょう。
もう一つは、石井先生の政党も時代とともにいろいろな変化があるように、やはり新しい流れに合わせて、その流れに対応できるような子供たちに育ってほしいというようなことも大きな役割とするならば、昭和二十二年のときの社会情勢と今の社会情勢を比べてみて、やはりいろいろな変化がある。人口もそうだし、国際社会の中の日本もそうだし、あるいは少子化の問題もそうだし、ITあるいは技術革新の問題もそうだ。そこに、現代的に考えなければならない教育の基本というのもあるのではなかろうか。
ですから、タブー視することなく、もちろん憲法の枠の中で大いに議論してくださいということは文部大臣としても申し上げたいことだと思っております。
○石井(郁)委員 問題は、今新しく生起している、いろいろ起きている問題が、事柄が、教育基本法があるために実現ができないのか、あるいは、法律が具体的にできないのかとか文部行政が進まないのか、そういうことじゃないわけでしょう。そういうことがまず第一点。
それから、今文部行政としてやらなきゃいけないことは、本当に深刻な子供の現状ですね。教育の荒廃と言われているようなさまざまな事柄。これに対して、本当にどういう行政をしていくのかということになるわけで、そのときにこそ、私は教育基本法に立ち返って考えるべきだと。教育基本法に盛られている理念、この精神をやはり生かすという立場に立ったら、本当にやらなくちゃいけないことはいっぱいあるわけですよ。むしろ、やってこなかったのが文部行政なんですよね。
ちょっと一つの例で言いますと、先ほど、ボランティアということを盛んに言われていますけれども、教育基本法の第二条には、自主的精神ということを非常に大事にしていますよ。自発的精神ということも非常に大事にしています。そういうことがやはり日本の教育の中では十分されていないという問題。
それから、きのうは子ども国会がございまして、子供たちの正直なというか、本当に自分の言葉で話す発言に私も胸打たれているのですけれども、子供たちは言っていましたよね。いじめをなくすのは、お互いの違いを認め合う、そして尊重することだ。もっと個人を尊重してほしいというのが今の子供たちの強い思いですよ。まさに教育基本法のとおりじゃないですか。個人の尊厳、個人の価値をたっとぶということがあるわけでしょう。だから、そのとおりにされていないというのが、やはり日本の教育の一つの問題、一つのというか、大きな問題なんですよ。
だから、そちらの方にこそ目を向けるべきであって、今これに、あれもない、これもないという話じゃなくて、本当にやれることはいっぱいあるんだ、やらなければいけないことはいっぱいあるんだという立場でやはり議論をきちんと据えてほしいということを私は強く求めまして、時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。



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