147-衆-青少年問題に関する特別委員会-4号
2000年03月23日
石井郁子議員 質問部分 会議録


平成十二年三月二十三日(木曜日)
    午前九時開議   
 出席委員   
   委員長 富田 茂之君
   理事 石崎  岳君 理事 太田 誠一君
   理事 阪上 善秀君 理事 戸井田 徹君
   理事 田中  甲君 理事 肥田美代子君
   理事 池坊 保子君 理事 三沢  淳君
      岩下 栄一君    岩永 峯一君
      江渡 聡徳君    大野 松茂君
      奥山 茂彦君    佐田玄一郎君
      佐藤  勉君    坂本 剛二君
      実川 幸夫君    中野 正志君
      能勢 和子君    原田 義昭君
      水野 賢一君    目片  信君
      北橋 健治君    城島 正光君
      中川 正春君    中山 義活君
      山本 孝史君    石田 勝之君
      一川 保夫君    松浪健四郎君
      石井 郁子君    大森  猛君
      中川 智子君    保坂 展人君
    …………………………………
   参考人(全国児童相談所長会会長・東京都児童相談センター所長)      大久保 隆君
   参考人(東京都児童相談センター相談処遇課児童福祉第二係長・児童福祉司)  飯島 成昭君
   参考人(社会福祉法人子どもの虐待防止センター理事)   広岡 智子君
   衆議院調査局青少年問題に関する特別調査室長    澤崎 義紀君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 青少年問題に関する件(児童虐待問題等)

    午前九時開議
     ――――◇―――――

○富田委員長 これより会議を開きます。
 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題等について調査を進めます。
 本日は、参考人として全国児童相談所長会会長・東京都児童相談センター所長大久保隆君、東京都児童相談センター相談処遇課児童福祉第二係長・児童福祉司飯島成昭君、社会福祉法人子どもの虐待防止センター理事広岡智子君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、児童虐待問題等につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず大久保参考人、飯島参考人、広岡参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
 念のため申し上げますが、発言はその都度委員長の許可を得てお願いいたします。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、まず大久保参考人にお願いいたします。

○大久保参考人 私は、全国児童相談所長会会長を務めさせていただいております東京都児童相談センター所長の大久保隆でございます。
 本日は、このような発言の場を与えられましたことについて厚くお礼申し上げます。
 私は、去年六月に教育庁の方から異動で現ポストに就任した者でして、これまで児童相談所の当面する緊急の課題である児童虐待に取り組んできたところでございます。
 本日は、ことし一月、全国百七十四カ所すべての児童相談所を対象とする児童虐待に関するアンケート調査の結果について報告させていただきます。
 その調査結果を取りまとめたものを本日委員の皆様方にお配りさせていただきました。以下、この資料をもとに、調査結果の概要を御説明させていただきます。
 恐れ入りますが、表紙の次の目次をお開き願います。
 この資料は、一、児童虐待に係る制度改正についての集計、二、要望項目の趣旨・理由、三、要望項目に関する事例、四、要望項目に関する意見の四つの章で構成されております。
 次のページ、一ページ目をお開き願います。児童虐待に係る制度改正についての集計でございます。
 A欄は、法、制度の整備に関する要望でございます。「(1)児童虐待の定義の明確化」から、下段の表になりますが、民法第八百二十二条に規定されております「(8)懲戒権の廃止」まで、八項目にわたり調査いたしました。
 この中で最も賛成の多かった項目は、下段の表の最初の項目になりますが、「(6)法第三十三条の七による後見人選任請求を行う後見人は、機関及び団体後見に変更」についての要望でございまして、百四十二カ所、率にして八一・六%に上りました。次に多い項目は、今の項目の右にございます「(7)親権の一部(身上監護権)の一時停止」についての要望でございまして、百四十一カ所、八一・〇%でございました。三番目に多い項目は、上段の表の最初の項目、「(1)児童虐待の定義の明確化」についての要望でございまして、百三十七カ所、七八・八%でございました。
 以上、要望の多い順に三項目ほど御紹介させていただきました。
 次のページに移らせていただきます。二ページをお開き願います。二、要望項目の趣旨・理由を一覧にいたしたものでございます。概略を御説明させていただきます。
 「(1)児童虐待の定義の明確化」についてでございます。
 現行児童福祉法には、児童虐待の定義が規定されておりません。このため、法第二十五条の規定により、虐待されている児童など要保護児童を発見したときの通告義務を国民に課しておりましても、虐待かどうかの判断に迷い、通告をちゅうちょするような状況がございます。通告の一層の促進を図るためには、児童虐待の定義を明確に規定し、国民に周知する必要があるという趣旨でございます。
 「(2)児童虐待の禁止及び罰則」についてでございます。
 法第三十四条は、児童の福祉を著しく阻害する行為を列挙し、これを法律上禁止する規定、法第六十条は、法第三十四条に違反した場合の罰則規定であります。この両方の規定に児童虐待を加えることによりまして、虐待を抑制し、児童が心身ともに健全に成長する環境を確保できるよう関係規定を整備すべきであるという趣旨でございます。
 「(3)関係機関の通告義務及び誤認通告の免責規定の法整備」についてでございます。
 児童虐待を発見し、児童相談所などに通告した場合、通告者と保護者との間にトラブルが生じる可能性を否定できません。一方、先ほど御説明させていただきました通告義務につきましては、義務違反に対する罰則規定がございません。これらのことから、保護者とのトラブルを恐れ、通告に消極的になりがちな面があろうかと思われます。
 児童虐待を発見しやすい立場にあります医療機関や保育所、幼稚園、学校などの関係機関等への通告義務と、通告を怠った場合の罰則を科するとともに、その通告が間違いであっても責任は問わないとすることにより、これら関係機関等の通告の促進が図れるよう関係規定を整備すべきであるという趣旨でございます。
 「(4)介入機能(立入調査、一時保護)と相談・支援機能の役割分担」についてでございます。
 児童相談所は、立入調査権や一時保護権が与えられ、虐待家庭への強制的な介入が可能ですが、この権限を行使した場合は、保護者はその後の児童相談所の対応に拒否的になる傾向がかなり強うございます。
 児童相談所といたしましては、家庭環境の改善を図るため、立入調査や一時保護後も引き続き保護者への指導援助を実施したいと考えましても、児童相談所との接触を拒むなど、拒否的な対応をなされる保護者が多く、なかなか改善が進まないという状況がございます。したがいまして、介入は警察等他の機関が行い、児童相談所は介入後の家庭環境改善を担うというような役割分担が望ましいという趣旨でございます。
 「(5)立入調査の具体的権限の付与」についてでございます。
 先ほど、児童相談所には立入調査権が与えられていると申し上げましたが、これにも限界がございます。例えば保護者が部屋の中から施錠し、立ち入りを拒否されるような場合は、かぎを壊して立ち入ることはかなりの困難が伴います。このような場合、児童相談所の要請に基づき警察署も合同で立ち入るなど、実効性のある立入調査ができるよう関係法令を整備すべきであるという趣旨でございます。
 「(6)法第三十三条の七による後見人選任請求を行う後見人は、機関及び団体後見に変更」についてでございます。
 法第三十三条の七は、親権を行う者または後見人のない児童について、家庭裁判所に対して後見人の選任請求を行う義務を児童相談所長に課することによりまして、児童の福祉を保障しようとする規定でございます。後見人は親族及び利害関係人の中から選任されますが、児童相談所長も一個人として選任されることとなります。このため、異動や退職などで所長職を離れた後もその義務と責任を負わざるを得ず、個人に過大な負担を強いる実態となっております。
 このような実態の改善を図るため、後見人を個人ではなく児童相談所という機関の長、いわゆる充て職の長などが行うよう関係法令を整備すべきであるという趣旨でございます。
 「(7)親権の一部の一時停止」についてでございます。
 児童を児童福祉施設に入所させるときは、家庭裁判所の承認を得て入所させる場合以外は保護者の承諾が必要とされているところでございます。しかしながら、一たん承諾した後これを取り消し、親権を振りかざして引き取りを強要する保護者が少なからずありまして、その対応に苦慮しているところでございます。
 児童相談所といたしましては、施設入所措置から保護者の承諾を必要としない施設への一時保護委託に変更するなどの応急策により対処しているところでございます。しかしながら、この処置はあくまで施設に一時保護を委託するという応急的な方法でありまして、施設の財政的な面からも、長期間続けることは困難であります。また、保護者が児童の登下校時に自宅に連れ帰ったり、施設に押しかけ大声で職員との押し問答となることもありまして、当該児童のみならず他の児童への影響が大変懸念されるところです。抜本的な対策の必要性を痛感しているところでございます。
 このため、民法に規定されている親権のうち、監護権や居所指定権など、いわゆる身上監護権と言われる権利につきまして一時的に停止する措置がとれるよう関係規定を整備すべきであるという趣旨でございます。
 「(8)懲戒権の廃止」についてでございます。
 平成九年度に実施いたしました児童虐待に関する全国児童相談所実態調査によりますと、虐待を行った保護者の半数以上は虐待を認めないという調査結果がございます。これらの保護者の大方は、児童に対し殴る、けるなどの行為を行っても、これはしつけであり、それが少し行き過ぎただけで虐待ではないなどと主張し、児童相談所の介入を拒む傾向が強うございます。
 私どもといたしましても、虐待であるという認識を持ちつつも、児童の心身に重大な影響が認められない限りは、なかなか強制的な介入には踏み切れないというジレンマに悩まされております。
 このような実情にかんがみ、児童虐待の容認につながりかねない懲戒権は廃止すべきであるという趣旨でございます。
 次に移らせていただきます。
 三ページをお開き願います。要望項目に関する事例につきまして、三ページから十ページにかけまして記載してございます。
 全国の児童相談所からお寄せいただいた事例は二百五十七件に上りましたが、その中から、要望項目ごとに代表例を一、二例掲載させていただきました。それぞれ一例ずつ御紹介させていただきます。
 まず、三ページの「(1)児童虐待の定義の明確化」に関する事例でございます。
 上段の表、事例その一でございますが、十一歳の児童が実母から心理的、身体的な虐待を受けた事例でございます。自分の行為をしつけの一環として正当化する母親に対し、法律上虐待の定義が明確にされていないために児童相談所の関与が円滑に行えない例でございます。
 四ページをお開き願います。「(2)児童虐待の禁止及び罰則」に関する事例でございます。
 上段の表、事例その一でございますが、十六歳の児童が実父から性的な虐待を受けた事例でございます。虐待行為そのものに対する処罰規定がないため、心身ともに傷を負った娘に対し父親から性的虐待が繰り返し行われた例でございます。
 五ページをお開き願います。「(3)関係機関の通告義務及び誤認通告の免責規定の法整備」に関する事例でございます。
 上段の表、事例その一でございますが、二歳の幼児が実母から身体的虐待を受けた事例でございます。幼児を診察した医師が虐待を疑ったものの、誤認通告の免責規定がない中では、虐待でないとされた場合の責任を負えないということから通告をためらったため、児童相談所の対応がおくれ、幼児の心身に重大な影響を及ぼした例でございます。
 六ページをお開き願います。「(4)介入機能と相談・支援機能の役割分担」に関する事例でございます。
 上段の表、事例その一でございますが、七歳の児童が実母から身体的虐待等を受けた事例でございます。母親の同意が得られないため、家庭裁判所の承認を得て児童福祉施設に入所させた結果、母親は児童相談所が子供を取り上げてしまったという思いが強く、児童相談所との接触を半年以上も拒否し、親子関係の改善に支障を来している例でございます。
 七ページをお開き願います。「(5)立入調査の具体的権限の付与」に関する事例でございます。
 上段の表、事例その一でございますが、八歳の児童が実母から登校を禁止された事例でございます。立入調査を実施した際、母親が刃物を持って暴れ回るなど、児童相談所単独での実施は危険な場合があり、警察署に対して強制立ち入りを要請できる規定整備が必要な例でございます。
 八ページをお開き願います。「(6)法第三十三条の七による後見人選任請求を行う後見人は、機関及び団体後見に変更」に関する事例でございます。
 父子家庭の児童が児童養護施設に入所後、その父親が死亡したことに伴い児童相談所長が後見人となりましたが、退職後も後見人としての義務と責任を負い、多大な負担となっている例でございます。
 九ページをお開き願います。「(7)親権の一部の一時停止」に関する事例でございます。
 上段の表、事例その一でございますが、一歳の乳児が実父母から養育を放棄された事例でございます。親権の一時停止規定がないため、親による強制的な引き取りに十分対応できない例でございます。
 十ページをお開き願います。「(8)懲戒権の廃止」に関する事例でございます。
 五歳の幼児が実父から身体的虐待を受けた事例でございます。体罰もしつけの範疇であるとする強硬な主張に対し、懲戒権を廃止することにより、しつけに名をかりた虐待を抑止する必要があるという例でございます。
 次に移らせていただきます。
 十一ページをお開き願います。四、要望事項に関する意見についてでございます。十一ページから十八ページにかけまして、要望項目別に賛成意見、反対意見の主なものを記載いたしてございます。
 「(1)児童虐待の定義の明確化」につきましては、虐待としつけの定義の違いを明確化するなど十項目にわたる賛成意見がございました。
 「(2)児童虐待の禁止及び罰則」につきましては、児童虐待は犯罪行為であることを明確化するなど九項目の賛成意見と、罰則項目を入れることは疑義があるなど五項目の反対意見がございました。
 十二ページをお開き願います。
 「(3)関係機関の通告義務と誤認通告の免責規定」につきましては、通告を受ける児童相談所の体制整備が前提であるなど九項目の賛成意見と、通告義務は必要であるが罰則規定は除くなど二件の反対意見がございました。
 「(4)介入機能と相談・支援機能の役割分担」につきましては、警察に生命身体の保護を目的とした介入機能を付加するなど八項目の賛成意見と、介入と支援は一貫性があった方がよいなど三項目の反対意見がございました。
 十三ページをお開き願います。
 「(5)立入調査の具体的権限の付与」につきましては、児童相談所が協力要請し、警察署が主体的に実施できるようにするなどの法的整備が必要であるなど三項目の賛成意見と、時期尚早である、児童相談所の体制整備ができていないなどの反対意見が二項目ございました。
 「(6)後見人を機関・団体後見に変更」につきましては、公職指定として法整備が必要であるなど五項目の賛成意見がございました。
 十四ページをお開き願います。
 「(7)親権の一部の一時停止」につきましては、親権剥奪は保護者の拒絶反応が大きいが、一時停止であれば受け入れられるなど七項目の賛成意見がございました。
 「(8)懲戒権の廃止」につきましては、監護教育権で十分であり、懲戒権は必要ないなど五項目の賛成意見と、民法八百三十四条で親権乱用の抑止をかけているのでしつけと虐待は整理されているなど四項目の反対意見がございました。
 十五ページをお開き願います。このページ以降最後の十八ページまでは、その他の要望項目とその趣旨等につきまして整理したものでございます。ごらんになっていただきたいと存じます。
 アンケート調査結果の説明は以上でございます。
 なお、本日御説明申し上げました調査結果については、六月に予定しております全国児童相談所長会総会において要望として取りまとめ、体制整備、法改正が必要なものについては改善をお願いしていく予定にしております。
 最後になりますが、去年七月二十二日のこの委員会で、児童虐待の指導中に転居、行方不明になったケースについて、ネットワークをつくるべきではないかという質問がございました。このことにつきまして、全児相として、去年の十月からCAネットワークの名称を設置しまして、現在までに十五件使われているということを報告させていただきたいと思います。
 以上で説明を終わらせていただきます。(拍手)

○富田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、飯島参考人にお願いいたします。

○飯島参考人 おはようございます。東京都児童相談センターで児童福祉第二係長をしております飯島でございます。
 私は、きょう、児童相談の現場で児童福祉司として日々子供の処遇に携わっておりますので、その立場から、相談援助の流れに沿いまして、私自身が困難に感じたり悩んでおりますことを御報告させていただきたいと思います。
 まず初めに、現状でございますが、東京都の児童相談所における児童虐待の相談受理件数の状況について御報告させていただきたいと思います。
 児童虐待の相談受理件数は、平成五年度に百九十五件でしたが、昨年度、平成十年度は七百十四件と三倍強に増加しました。そして、今年度に入りさらに急増し、十二年度は千二百件を超え、昨年同月に比較して約一・八倍にも上ることが確実な状況となっております。
 この増加の要因についてでありますが、まだ正確な分析が児童相談所としてはできておりませんが、一つは、都市部、私どもの東京都におきましては、核家族化や子育て家庭の孤立化などが一層進行していることに伴いまして、気軽に育児相談ができない、悩みや不満が蓄積されまして、これが自分の子供に向けて発散されてしまう傾向があるというようなことも考えております。
 またもう一つは、厚生省を初め各都道府県、政令指定都市などの行政による広報活動やマスコミ報道などによりまして、児童虐待に対する関係機関や国民の意識啓発が進みまして、これまで潜在化していたものが児童相談所に通告や相談という形で上がるようになったのだというように考えております。
 それでは、相談援助の流れに沿いまして御報告させていただきます。
 私たちの活動は、通告、相談を受けてから始まるわけでございます。特に虐待の場合は、第一報は電話で相談を受けることが多いのですが、虐待相談の通告受付票というようなものを私どもつくっておりまして、電話を受けながらその相談項目に記入をして、プロフィールをできるだけ詳しく把握するように努めております。
 児童虐待の相談経路は、従来は家族からの相談が第一位でしたが、啓発等の進んだ影響もあろうかと思いますが、今年度は近隣からの通告が最も多くなっております。ほかに、相談件数の多い順番に、家庭、学校、児童館も含めまして保育所等の施設、それから福祉事務所、警察、児童委員、医療機関、保健所からの順番になっております。
 私たちは、通告を受けますと、虐待の事実の調査、確認に入ってまいります。学校、保育所、保健所等の地域の関係機関がかかわっている場合につきましては、直ちに連絡をとり、状況を調査、確認しまして、より詳しく状況を確認するようにいたしております。
 今年度、最も多い近隣からの通報の場合でございますが、匿名による通報もございます。その場合は、まず調査対象の特定に苦労いたします。また、虐待を受けている子供の性別、年齢、住所など、また家族の状況がはっきりせず、状況の把握に手間取ります。なかなか通告者自身がお住まいの場所などを明確にお話ししてくださらない場合もございます。
 通告を受けた場合、おおむね一両日中には児童委員等の協力も受けながら現地調査を実施します。匿名による通告の場合で地域の関係機関がかかわっていない場合につきましては、状況の把握に大変手間がかかります。また、他人のことにはかかわることを嫌うという孤立化した家庭も多く、大都市特有の問題でもありますけれども、対応に苦慮することもございます。特にマンションについてはオートロックの場合もありまして、家庭に近づくことさえできない場合もあります。
 児童虐待の相談は、しかし即時に対応しなくては、子供の命にかかわることでございます。予定されていた虐待以外の相談や既に子供が入所している施設への訪問を後回しにしても、早急に対応しなくてはなりません。そういう考えで飛び回っているような状況でございます。
 また、虐待以外の相談の場合は、保護者自身が相談自体を肯定している場合が多いのでございますが、またその場合には保護者からお話を聞くことが可能になるのですけれども、虐待の相談の場合については、保護者自身は虐待を否定していることが多いのです。その場合、保護者等は強い拒否的態度で私たちに迫ってまいりまして、近づくこと自身も難しいこともございます。
 一方、児童相談所の相談件数は、それ全体が増加しておりまして、その中での虐待の相談件数の増加は、勢い、私たちは一人一人の子供にかかわる相談に丁寧に対応することが基本と考えておりますけれども、それを困難にいたしかねません。この辺が悩むところです。
 なお、私たちは、虐待の対応は、相談を受けた初期の段階から、一人の児童福祉司が単独で当たるのではなくて、必ず複数の児童福祉司で対応するようにしております。また、係制、チーム制をとっており、チーム協議を行い、また、直近の処遇会議で報告し、共通認識を得て行動もしております。
 これらの一定の調査の積み重ね、それからその後の相談活動の結果、強制的に親子分離をする必要性が疑われるにもかかわらず、親が調査拒否をする場合があります。私たちの面接を拒否したり、子供を外に出さない。学校にも行かせない。虐待などが疑われるが生活実態がわからない。子供は確かにいるはずなんですけれども、閉じこもってしまってその生活実態が全くわからない。医療的な手当てが必要で命の危険があるにもかかわらず、病院から連れ帰ってしまって家にこもってしまう。子供の体の傷や栄養不良が保育所とか学校、近所の方のお話で確認されているのですが、そういうことにつきましても接近することができないというようなことがございます。
 このような場合、関係の機関、保健所さんとか保育所さんとか学校とか福祉事務所等と十分な連携をとり、立入調査を行うということになります。また、立入調査に伴いまして、直ちに一時保護が必要な場合に備えて、車等も配備しておくようにしております。
 立入調査は、一方で家庭のプライバシーという問題がありまして、家庭のプライバシーを侵しても子供の命と安全を守るために行うものです。子供の命と安全を守るために行うのだ、私たちはそういう気概を持って事に当たっているのでございますけれども、虐待の証拠が入手できるだろうか、強制的に家庭に立ち入った後、その後の保護者に対する指導援助や、子供と分離した後の保護者に対する処遇をどうやって進めていくのか、また、暴力を振るう親や前後の見境もなく襲ってくる親に対する、自分自身や関係者あるいは子供本人の身の危険をどうやって守るかなど、悩むことは多いのでございます。
 また、立入調査の際、親がドアに施錠したりチェーンをかけて屋内へ立てこもり、物理的に立ち入りできない場合もあります。もちろん、緊急避難の状況にあるときには、壊して立ち入るのにちゅうちょするものではありません。実際にそのような行為を、私自身ではありませんが、私たちのところで対応したことがございます。しかし、やはり何らかの法的裏づけがあればもっときちんとした形での対応ができるのではないかと思っております。
 立入調査によって子供の命と安全を守るために保護が必要というふうに判断した場合、児童福祉法の三十三条に基づきすぐに一時保護をいたします。また、立入調査に至らず、関係機関と連携をとって、あるいは親の同意をもって一時保護をすることもあります。
 一時保護は、まずとにかく虐待されている環境から子供を引き離し、命と安全を守ることを目的に行います。保護した後でございますけれども、医者や心理職員、また一時保護所の職員等もかかわりまして、個別の診断や行動観察を行い、虐待の状況や子供の状況を確認していきます。そして処遇方針を決めるのです。
 虐待の場合だけではありませんが、子供の命と安全を守るために一時保護の必要性が生じたときには、待ったなしの対応が当然迫られるわけでございます。したがって、一時保護には、すぐ受け入れられる物理的な余裕が必要なわけです。この点で東京都の場合はかなり厳しい状況にあることもあります。
 また、一時保護所は、虐待を受けた子供だけではなく、いろいろな子供、非行を行ってしまった子、親が病気で入院したためにその間養育する者がいない子供さん、施設に入所したけれども、施設との間が不調になってしまっていられなくなってしまったお子さん、里親との生活が不調になってしまったお子さんなど、いろいろなお子さんが一緒に生活をしております。
 最近は、特に処遇の難しいお子さんがふえています。そして、虐待を受けた子供は、多動だったり、拒否的であったり、生活習慣が身についていなかったり、時にはリストカットを試みる子など、多様な問題を抱えて、処遇の容易ではない、個別的なかかわりが特に必要なことが多く、一時保護所の職員は日夜奮闘している状況にあります。
 一方また、一時保護中に、虐待した親からの面会の強要や引き取りの強要もあり、時にはどなられたり、暴力的な威圧を受けたり、しつこく朝から晩まで電話を切っても切ってもかけられたりすることがあります。
 一時保護ということの結果から、親の同意を得られなくても施設措置が必要であると判断した場合、児童福祉法二十八条審判の申し立てを家庭裁判所にすることになります。二十八条の審判は、長期にわたることが予測されます。六カ月から一年ぐらいかかるものもございます。したがって、児童相談所の一時保護所に長期に在所することは、その一時保護所の限られた空間の問題とか、そういう環境の面とか、学校生活の保障のこととか、子供本人の精神的な安定のために、長期に一時保護所に在所することは好ましくないと考えております。したがいまして、児童養護施設に生活の場を変えて、一時保護の委託をします。
 一時保護委託先の施設では、一時保護所にいたときと同じように、親の面会の強要、引き取りの強要や、電話による嫌がらせ等を受けることがあります。また、学校への登下校の際に強制的に親が引き取ってしまうおそれもないこともありません。その懸念もありますので、親には一時保護委託先の施設の施設名とか所在地を教えないなど、苦衷の選択を余儀なくされる場合もあります。この場合につきましては、親への対応を児相は一手に引き受けまして、先ほど申し上げましたさまざまな威圧も受けながら対応している次第でございます。
 また、一時保護委託先の施設にはさまざまな負担をかけることになります。一時保護委託は、措置ではありませんので、措置費が払われません。委託費用として、東京の場合一日、一般生活費ということなんですが、千八百四円が支払われるだけでございます。この千八百四円の内訳は、国が千五百七十円、都の負担で二百三十四円ということでございます。施設に対して一時保護を委託するときに、そういう面での心苦しさを感じるわけでございます。
 さて、六カ月以上の審判期間を経まして決定が出ることになるわけですけれども、虐待を受けた子供の安定した施設での生活をできる限り早く保障するためにも、もっと早く審判が欲しいのです。これは本当に切実な思いでございます。
 二十八条審判の承認決定がおりますと、親の意思に反しての施設措置ができるようになります。子供を虐待されている環境から離し、施設での安定した生活を保障することができるようになるのです。
 しかしながら、虐待をした親に対してこの審判結果をしみ通らせるためのもう一押しの法的対応があればとの思いは残ります。親に対して、居所指定権等の親権が制限されたことを明確に認識させ、親に一定の指導に従わせることを条件としての親権制限期間の定め等の対応があれば、いずれは親と住みたいという子供の願いをかなえさせてあげる努力の、また、親の強引な引き取り要求に対しても一つの手だてになるのではないかと思っているところです。
 また、二十八条審判の場合、親から虐待を受けたという証拠を集めることの困難さの問題もあります。特に、虐待でもネグレクトの場合、身体的虐待のように、いつ、どのような状況で、どのような虐待を親から受けたという証拠を集めることは非常に困難です。
 この子のこの状態像、拒否的なかかわり、否定的なかかわり、多動、さまざまな状態像がございますけれども、その状態像から見れば、明らかに虐待を受けていて、その虐待環境が長期にわたっているために、この子は心にひどい傷を負わされており、またその虐待環境から早く離さなければならないということが状態像や関係機関の訴えから明らかであっても、その具体的な因果関係を立証することは大変難しいことでございます。そのような資料を要求されますと、もどかしさもあり、怒りを覚えることもございます。
 虐待を受けましたお子さんが、また、虐待をしてしまった親が、こういう審判措置の後、施設に入所することになりますけれども、その後のケア、キュアというものが非常に不足しているのではないかと思っております。子供にとって、まず身の安全を図ると同時に、その後この子が社会で自立して生きていくための援助は大変必要なことだというふうに私は考えております。
 虐待を受けた子供は、極端な大人不信や対人関係の形成がうまくできないなど、多くの課題を抱えていたり、情緒的にも困難な問題を抱えていることが多く、施設入所後も特別なケアが必要となります。そういう意味では、施設職員のかなりの手がかかるわけでございます。また、専門的な治療機関にかかる必要があることもまれではありません。
 現在の施設の人的、物的条件では容易でないことは事実だと思っております。虐待を受けた子供が虐待の傷から立ち直り、安定した生活が得られるようにするためには、さまざまな条件整備を一層充実させる必要があると考えております。それがなされないと、悲しいことですけれども、虐待の世代間連鎖を生じさせることになります。虐待を受けた子供が成人して子供を持ったときにまた虐待をしてしまうという、そのような状況はぜひ避けたいと思っております。
 また、虐待した親が、その虐待する養育態度を改め、環境を是正しない限り、子供を家庭に帰すことはできません。今は、虐待の被害者である子供は、虐待から分離し、保護という形でケアをいたしますけれども、加害者である保護者に対しては有効な手だてが乏しいという現実がございます。虐待した保護者は、虐待を否認する態度ばかりでなく、薬物の使用やアルコール依存、また心身に難しい課題を抱えていたり、また経済的な破綻や家庭崩壊など、それ自体が非常に解決困難な問題を抱えていることが多いわけです。心身に抱えた課題や生活上の課題を解決する方策も重要であり、早急な対策が望まれます。
 しかし、最も大きな課題と私が思いますのは、本人が課題に取り組む意欲を持てるかどうかということにあります。多くの場合、保護者自身の自助努力に頼らざるを得ない状況にあります。このことは、言いたいことは、対応する人も場も機関も設備も全く不十分であるということでございます。

○富田委員長 飯島参考人、ちょっと時間をオーバーしていますので、簡潔にお願いします。

○飯島参考人 済みません。すぐ終わります。
 一口で家族調整、再建と言いますけれども、越えるべきハードルは高く、多く、非常に困難を感じております。
 また、つけ加えますけれども、虐待の定義でございますけれども、第一線の機関である保育所、学校、保健所等での親指導の困難の訴えが、虐待ということが明確になれば、しつけとの対置の関係で、きちんと対応できるという声が現場ではいつも聞かされます。
 本日は、日ごろ思っていますことを御報告させていただきました。また、このような機会を与えていただき、感謝いたします。ありがとうございました。(拍手)

○富田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、広岡参考人にお願いいたします。

○広岡参考人 子どもの虐待防止センターで一九九一年、開始当初から相談員をしております広岡と申します。よろしくお願いします。
 今、お二人の参考人の児童相談所関係者の方々のお話を聞きながら、その話だけに終息いたしますと、恐らく皆さん方は、虐待というものは自分たちの話ではないんだ、何かとんでもない、貧困であったり無知であったり、そういった人たちのところで起きていることだから、何か我々とは関係ないんだというようなお顔をして聞いていらっしゃるような気がしたのですけれども、私は、決してそうではないということをまず一つは訴えたいと思います。
 御存じのように、子供の虐待というのは英語で、何で英語なのかというのはいつも思うのですけれども、マルトリートメントという言葉があって、クリントンさんで有名になりましたが、不適切な関係である、親の子供への不適切な関係、つまり不当処遇が子供の虐待であるということなんですね。
 そうしますと、確かに我々は、子供が血がだらだらと流れるほどの暴力は子供には振るっていないかもわかりません。身体的な虐待というのは、確かに今目の前で見えるんですよね。でも、実は虐待には、心理的な虐待というものがあります。これは目に見えません。私の体験では、恐らく児童相談所に心理的な虐待で通報があるということは大変少ないだろうと思います。
 同じ心理的な虐待でも、心理的虐待には、ネグレクトとそれから心理的アビューズというふうに二つに分かれるのですけれども、心理的なネグレクト、学校に行かせないとか、病気になっているのに病院に連れていかないとか、そういったものは通報として上がってくると思うのですが、恐らく、心理的なアビューズ、これは非現実的な期待ですとかそれから差別ですとか、愛情を与えないとか、言葉でのおどしもそうですね、こういったものは、今私たちの前で、子供は決して傷ついた姿であらわれないんですね。
 私の体験では、まさにこういった心理的な虐待を受けた子供たちが大人になって親になったときに、自分はやはり認めてもらえなかった、愛されていなかったから、どうしても子供が抱けないんだということを訴えてきたような気がするのです。
 ちょっと前置きが長くなってしまいましたけれども、私がまず訴えたいことは、虐待というのが、何度も繰り返しますが、血がだらだらと流れるものだけではないんだ、実は目に見えない虐待こそが深刻で、これこそ我々の社会の暮らしの内側にあるものなんだということをまず頭の中に入れておいて、そして法案もつくっていただきたいなというふうに思います。
 虐待防止センターは、私がかかわった仕事というのは、まず一、電話相談です。これは電話相談が大きく二つに分かれまして、一つは通報ケース。虐待を目撃している人たちから、どのように対応していいかわからないという相談がたくさん寄せられた。それに対して、私たちはアドバイザーという形で危機介入するわけですけれども、子どもの虐待防止センターには措置権がありませんので、ネットワークを開催してその中に出ていくという仕事をしたわけです。
 それからもう一つは、これは八割が母親自身からの電話相談であったということで、当然お母さんの電話カウンセリングがありました。実は、この電話の最大のメリットは、虐待している親たちが、なぜ自分が子供を虐待しないといけなかったかということを電話で私たちに伝えてくれたのです。つまり、虐待している意識があるわけですから、これを放置しておく手はないわけです。彼女らが虐待をやめるために治療することができたわけです。
 そしてもう一つの仕事として、私たちは、MCG、これは精神科医の斉藤学先生が初めに提唱なさったのですけれども、マザー・アンド・チャイルド・グループ、つまり、連鎖であるということは皆さんよく聞かれていると思うのですけれども、もちろん虐待は一〇〇%連鎖で起こっているわけではないです。いろいろな条件が重なり合ってできているわけですけれども、つまり、虐待をやめるための治療は何かといったら、子供時代に自分がどのように親に扱われたかということをもう一回立ちどまって考える、そして初めて今自分が子供に虐待していることがわかるということなんですね。
 懲戒権という言葉がありますけれども、虐待している親に、自覚のない人に、どんなにこれがしつけじゃないなどということを言っても、それは通らないと思います。彼らに、それがしつけじゃない、これは虐待であるということがわかるためには、やはり自分が何をされたかということがわからなければ、彼らはどんなに説明されても同じことをやると思います。
 もしかしたら皆さんだって、親だと思うのですけれども、自分は全然虐待と関係ないと思っていても、もし、ティーンエージャーになった子供たちが、または青年期を迎えた子供たちが、おやじ、あんたのは虐待だったというふうに言われたら、確かに殴ってはいないかもわからないけれども、もう一回立ちどまって、自分が子供に何をしたかということは考えないといけないのじゃないでしょうか。
 ちょっと話がわからなくなりましたけれども、それは以上にしておいて、そういったMCGという治療グループも始めた、この三本柱で私たちは仕事をしてまいりました。
 まず、この中で見えてきたことを伝えたいのですけれども、児童相談所に対する批判は非常に声が大きくなっていますので、私があえて言うことでもないと思うのですけれども、むしろ児童相談所を批判するのではなくて、実は我々が問われないといけない話じゃないかなというふうに非常にいつも怒りに思っています。
 なぜならば、通報ケースで、医者から、赤ちゃんが入院してきた、どうも虐待らしい、しかし医者は児童相談所に連絡するということを知らなかったですよね。それは保健婦さんであろうが教師であろうが、もしかしたら弁護士さんだって、虐待問題に児童相談所が第一線の機関であるということを一体どれほどの人が知っていたかといったら、ほんの十年前までだれも知らなかったんじゃないかと言いたいぐらい、実は、これは児童相談所の問題ではなくて、我々の問題であったというふうに私はとらえ直したいなと思います。
 そして、通報ケースの中で一つ見えたことをお伝えしておきますと、一つは、法律や何かで皆さんはハードの側面で話されているわけですが、私は、そういったことは余り詳しくありません。それで、私が見えたものというのは、児童相談所の職員の専門性の問題です。これは恐らく、児相のワーカー個人の問題ではないと思います。これこそ政策や制度の問題なのかなというふうに思いますけれども、ちょっと具体例を話しますと、例えばこれは通報ケースだったと思うのです。
 保健婦さんが、乳幼児健診の中で、あるお母さんが、子供って案外死なないものですねというふうに言ったんですね。この言葉をとらえて、これは虐待なんだろうかという電話が入りました。私たちは、恐らくこれはやっています、もし実の母親が自分の子供をほうり投げるとか、命の危険にかかわるような暴力を振るうという認識がなければ、恐らくこの保健婦さんは動かなかったと思うのですけれども、これは虐待です、すぐ行ってみてください、行ってみました。子供はほうり投げられていて、次の日、すぐその場で病院に入院しました。
 保健婦さんは全くどういうふうにしていいかわからなかったので、ぜひ病院に入院させて、安全な場所が確保、獲得できるまで、子供を決して帰しちゃいけないと。これは児童相談所を病院に呼んでください、だけれども児童相談所だけの仕事ではないんですよ、病院も、社会的入院といって、実は子供の安全な場所が確保できるまで入院させておかないといけないんですよと。早速児童相談所の方も出向いて、病院でミーティングをして、そして子供は数週間後に乳児院に保護されました。
 その後なんですけれども、お母さんから防止センターに電話が入ってきまして、実は週に一回、土、日に、乳児院に私は呼ばれていると。これは、病院の先生や児童相談所の職員が、母親と子供を長期に離しておくとますます母子関係は危なくなるから離してはいけないんだ、なるべく早くに統合しないといけないということで、分離しながらも一週間に一回会わせる努力をするのです。
 恐らく皆さんもそういう頭があるんじゃないでしょうか。うまくいかないのだったら、離したらますますうまくいかないのじゃないか、一週間に一回、母親なんだから乳児院に面接に行くのは当然だと。だけれども、これはお母さんとしては苦しいのです。そんなことができるのであれば、子供をほうり投げたりはしないわけです。ここはやはり児相のワーカーの専門性が問われるところだったと思います。
 例えば、よくあることなんです。双子がいたら、一人が虐待されるということはしばしばあります。そのときに、児相のワーカーの対応を見ていると、かわいい子を乳児院に預けましょう、かわいくない子供と一緒にいなさいという指導をするんですね。これは虐待というものに対しての認識がない結果だと思います。
 虐待というのは、その人の道徳観ですとか人格に問題があって、そして子供を虐待するわけではないわけです。日本には家族イデオロギーという言葉があって、どんな親子関係でもやはり家族が一番だという考え方がありますね。こういう考え方が実は、虐待をしながら、分離されているのに一週間に一回会いに行きなさいという言動になったり、かわいい子供を預けてかわいくない子供とうまくやりなさい、こういった言動になるのは、やはり私たちの社会が、虐待の問題に対して、ソフトの部分で、なぜ親が虐待するのかというところに対して、余りにも無知で無関心であるからこういったことが起きるんだと思います。
 児童相談所の職員は専門家ですから、やはりここのところについては学んでほしいというふうに思います。
 それから、医療関係者も同じでした。親が虐待をしますと、まず精神鑑定する。虐待した親に精神鑑定をしても、何も出てこない場合が多いのです。精神科医の方に聞きますと、あえて病名をつければ、人格障害だとか境界例だというふうに私たちは病名をもらっています。それが通報ケースの中で私たちが見たことです。
 実は、私は、この後、お母さんからの電話相談について皆さんに訴えたいと思います。
 今、電話相談全体では、九年間、一九九一年から今日まで、約一万九千件の電話相談が入っていると思うのですけれども、このうちの八割が母親本人からの電話相談です。
 このお母さんの電話相談を、実は四つの段階に分けることができたと思います。
 まず一つは、育児不安のお母さんたちです。育児不安だからといって殴っていないかといったら、とんでもないです、殴っています。なぜ殴っているかといったら、一つは、御存じのように、密室で、孤立で、都市化している中で、昼間だれも見てくれている人がいないんです。人間には限界があって、皆さんもそうだと思うのですが、だれも見ていなかったらうちの中で何でもできちゃうんです。親のストレスは当然弱い方に行きます。子供に行きます。
 これは不思議なことに、私は、お母さんたちの声を聞いていますと、いろいろな日本社会の病んでいる部分、例えば教育の問題も含めて、競争社会の問題も含めて、すべてお母さんたちの声の裏に見えてきます。きょうは、それを話すともう時間がないので話しませんけれども、この人たちも無視できないです。
 一つ言えば、私が最近出会うお母さんの中に、子供が泣くと自分は窓をあけると言ったお母さんがいました。普通、自分がたたいて子供が泣けば、昔のお母さんは窓を閉めたり雨戸を閉めたりして子供を殴っていたと思うのですけれども、今のお母さんがあけるというのはどういうことかわかりますでしょうか。やはりだれかに気づいてほしいんだ、まるで置いてきぼりにされているんです。だれかにこの窮状をわかってもらいたい、こういうお母さんたちがたくさん電話相談してきたのです。
 このお母さんたちが虐待じゃないかといったら、聞いていますとやはり虐待です。虐待の分類でいけば危惧です。児童相談所がこのケースまでやるということになったら、これは児童相談所はパンクしているのにもっとパンクしてしまいます。
 ですから、ついでに言わせてもらいますと、厚生省は、民間と児童相談所は車の両輪だというふうに発言しているそうです。両輪という割には、私たちのところには補助金は全くゼロなんですよ。
 今言っていいかどうかわかりませんけれども、私たちのところは家賃で年間二百七十万出ているのですが、たしか地域社会福祉振興財団から出ているお金が五百万円弱です。一千万円は自分たちで、自助努力で集めております。きょうはこれだけは絶対言ってもらいたいと言われていますので、せめて場所代だけ出していただいたら、どんなに育児不安のお母さんたちが救われるでしょうか。それが一です。
 それから、二番目のお母さんたちなんですけれども、この人たちが私たちの先生でした。なぜ自分が虐待をしたかということを言ってくれたのです。これは明らかに世代間連鎖の話なんです。
 ちょっと皆さんの身近なところで話をしますと、あるお母さんは非常にしつけが厳しいのです。余りのしつけの厳しさに、子供の心身に問題が起きていました、例えば多動であるとか言葉が出ないとか。これはもう児童精神科医にかからないといけないほどの状況がありました。物すごく乱暴なんです。ですから、公園などに連れていかないんです。
 このお母さんをケアしてきて、このお母さんから出てきた言葉にはっとしました。彼女も気づいていなかったんですけれども、子供時代、ずっと父親に言われていた言葉が、おまえはばかだ、おまえみたいなばかな子には友達なんかできるはずがない、ばかだ、ばかだ。つまり、自分がいい子じゃなかったから、優秀じゃなかったから親は私を愛さなかったんだと。彼女の中では、やはり子供をいい子にしないといけないという気持ちが大変強くて、そして非常に厳格な子育てをしていたんです。
 このような形で親の声が頭の中に残っていて、親の呪縛にかかったように子育てをしているという親がたくさんいたということをまず一つ報告しておきます。
 子供がジュースをこぼします。ジュースをこぼしたらぶん殴るお母さんがいました。彼女は、ジュースをこぼすと自分の父親が殴る、自分は殴られた、お父さんに殴られないために子供を殴った、こんな妙なことが世代間連鎖の中で起きているんです。
 もっと深刻なことでいいますと、今、心的外傷とかトラウマという言葉が使われていますけれども、子供を抱いていた。赤ちゃんというのは動き出します。当然、顔をたたいたり髪の毛を引っ張ったりします。そのときに、乳児に殺されるなんてだれが思うでしょうか。そのときに、この子に殺されると思ったお母さんがいた。
 それから、男のお父さんでもそうです。例えば、四歳児の子供がお漏らしをしたときに、切れて、お漏らしをしたといって怒ったんです。これは私の前で起きたことなんですけれども、そのときに子供がよけたんです、やめてパパと。そうしたらその手がパパに当たったときに、この父親が何と言ったかといいましたら、おまえはおれを殺す気かと言ったんですよ。四歳の子供が果たしてあんたを殺すはずがないわけですね。
 もちろん、これは一つの視点です。科学ではかれるものでも数量ではかれるものでもないので、厳密な科学者によれば、そんなものは信用ならないという人もいると思います。それはそれで認めます。ただ、一つの視点として、私たちは、彼らの言う言葉をそのまま真に受けて、信じてケアするという方法をとっています。そういった立場です。
 この中で見えてくるのは、彼らのかつての心の傷、心的外傷。よく、親になって知る親の恩、何かそういったものがあると思うのですけれども、私たちがこういった電話相談を聞いていますと、まるで、親になって知った親の憎しみというんですか、これは助産婦さんなどからも報告されています。例えば、分娩台の上で狂乱分娩をしたお母さんがいたとか、分娩した途端におかしくなった。夫からも報告されています。自分の妻が、全く普通だったのに、子供を産んでからおかしくなった、私は危ないから精神科医に通わせてほしいなんて言う人も出てきたそうです。
 これは、虐待問題というものが広がってきて、社会に根づいてきて、こういったお母さんが前もって自分の危うさに気づいて、相談機関や医療機関につながるようになったという意味では大変よかったと思います。これは二番目です。
 三番目が、これはまたやはり、本当にここ二年ぐらいで変わってきました。今虐待をしているというお母さんたちが実際に登場してくることができました。
 これは私が体験した事例なんですけれども、よくあることなのでお話しして大丈夫だと思いますけれども、私は子供を殺しそうなんだという電話が防止センターに入ってきました。殺しそうだと言われても、私たちは、ややもすると大げさだとかそんなはずがないというふうに対応していたんですね。でも、今私たちは違います。
 このお母さんの声を聞いていたら、警察も役に立つものだと思うのですが、お母さんは、夜になると警察に電話をしていたそうです。夜は警察が声を聞いてくれる。警察に、私は殺しそうだと。相談員は、このお母さんは本当に苦しんでいるということで、児童相談所に電話をします。児童相談所は保健所に電話をしました。このようにネットワークは動くんですね。保健所に電話をして、保健婦さんに、訪問に行ってと言いました。保健婦さんが訪問に行きましたら、実は、お母さんも子供もそんなに悪い関係ではない。子供にあざなどないんですね。
 でも、保健婦さんも最近はなかなかソーシャルワーカーでして、精神科のドクターにこのお母さんと子供を連れていきます。子供を連れていきまして、ドクターの診断で、やはりひとまずの分離が必要だろうということで、分離になるわけです。次の日に児童相談所、児相が出てきて、書類をつくって、正式に分離ということが決まるわけです。
 ここで私が何を言いたいかといいましたら、やはり虐待というのは発見が難しいのです。言葉だけで分離ができる、できたということは、ここに関係した児相のワーカーと保健婦さんと精神科医の見識が高いということなんです。ですから、虐待の問題についてはかなり専門性の高い人の配置が必要だということを言わせてください。それが三番目です。
 最後、これは四番目。最後にします。
 四番目というのは、まさに親。危機介入があって、自分が子供を虐待した、児童相談所が介入してきた、そして分離された人たちが、実は子どもの虐待防止センターの電話相談に最近ふえています。なぜかといったら、なぜ自分が分離されたかわからない、もっと説明をきちんとしてもらいたかった、子供は保護されたのに自分を保護してくれる者がだれもいない、実は自分もケアを受けたいんだということを言ってきた人がいるのです。
 皆さんの中には、虐待親の治療なんか必要ないというふうに思っている方がいらっしゃるかもわかりませんが、虐待親というのは間違いなく、だれも救出してくれなかったかつての子供たちなんです。ですから、そういったことを考えれば、子供の治療も虐待親の治療もコインの裏表ということで必要なんだということを伝えさせていただきます。
 これでおしまいです。(拍手)

○富田委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――

○富田委員長 次に、石井郁子君。

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。
 現代の虐待というふうに言われましたけれども、まさに、その背景、要因、そしてまた治療も大変複雑な問題を抱えているこの虐待について、いわば最前線で本当に子供たちの命を守るために取り組んでおられる皆様方に改めて敬意を表したいと思いますし、きょうのお話で私もいろいろと教えられるところがございました。
 それで、幾つかに絞ってお尋ねをしたいのですけれども、既に出ておりますが、懲戒権の廃止の問題、私からも一点、大久保参考人に伺いたいと思います。
 このアンケート結果を見まして、要望項目の八項め、「懲戒権(民法第八百二十二条)の廃止」ということで、結構と言ったら失礼かもしれませんけれども、私としては、合計で百十七人、比率で六七%の賛成ということ、これに改めて、ああやはり現場はこういう意見なのかという思いを強くしたのですが、お伺いしたいのは、この懲戒権の廃止ということについて、児童相談所の関係者の皆さんは以前からこういう意見表明をされていたのかどうかということと、この賛成の意見、ここには五点の項目が挙がっておりますけれども、主な意見、こういう点でこういう内容でぜひこれは廃止なんだということをもう少しお聞かせいただければというふうに思います。

○大久保参考人 懲戒権の廃止につきましては、アンケート結果を見ますと、確かに一番反対が多かったというものになっています。また、どちらとも言えないというのが二四%ということで、これはやはり児相長が全部集まってきちっと議論すべき問題かな、そういうふうに思います。
 ただ、懲戒権が廃止ということでなくても、他方、児童虐待の定義が明確化されればそちらの方で虐待の対応ができるのではないか、こういうような意見も結構あるわけです。ですから、懲戒権の廃止に象徴される議論というのは、現在の家の家族制度というのをどう考えるのか、そこら辺の問題が大きくかかわっているのかなというふうに思っております。

○石井(郁)委員 やはり虐待としつけが区別されないというか、それが混同されるというか、言いわけにされるというか、この問題が虐待を深刻にしているんじゃないかというふうにずっと言われているわけですから、私も、大体、先ほど池坊委員からも御指摘がございましたけれども、本当に世界的に見ても懲戒権として残している国というのはまずないと言われているわけですから、この辺は何とか整理がされていかなきゃいけないなというふうに思っているところでございます。
 それで、二つ目なんですけれども、児童相談所のアンケート結果は本当にいろいろ参考になりました。それで、ここでは、まさに法整備、そして制度の整備、改正ですね、この点で整理をされているわけです。ここまで言われた以上、法改正に取り組まなくちゃいけないということにもなるのですが、多少アバウトな言い方をして申しわけないのですけれども、それぞれ、法改正ですから、条項についてずっと検討があるし、幾つか論点も整理されている部分があるかというふうに思いますが、この虐待問題は、保護者との関係、親子の関係で今議論されていますけれども、もう一点は、施設での虐待も先ほどちょっと出てまいりましたし、第三者による虐待ということだってあるわけですね。
 だから、そういう点でいうと、児童福祉法の改正の部分で対応できる問題なのか、それとも、虐待防止法という新法的な、特別法的なというか、そういうことがどうしても必要になってくるのかというあたりでアバウトという言い方をしたのですけれども、三人の皆様方に、今の大体描いていらっしゃることを率直にお聞かせいただければというふうに思いましたが、いかがでしょうか。

○大久保参考人 単独立法でいくべきか、現在の児童福祉法の改正でいくべきかというお尋ねかと思います。
 私ども、児童虐待の現在の状況を考えますと、単独立法できちっと前面に出してやっていただければ正直言ってありがたいというふうに思っておりますけれども、現在のいろいろな状況があって、例えば民法改正をひっくるめて難しいということであれば、少なくとも改正していただいて、よりやりやすい体制をつくっていただければありがたい。
 また、その先の段階で、多分、この虐待の問題は今回で終わるというふうに私ども思っておりません。まだ長く続くと思っております。そういった状況の中で、また次の段階で考えてもいいのかなと思っております。

○飯島参考人 基本的には大久保所長と同じで、やはり単独立法ということが明確にするために望ましいとは思いますが、少なくとも、国民にわかりやすい形にするためには、法改正ということをしていただきたいと思っております。

○広岡参考人 同様に思っております。

○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。これは今後各党とこの委員会で議論していくことでございまして、皆様方の御意向をいただきまして慎重に検討していきたいというふうに思います。
 それで、私はあと、先ほども親へのフォローという話がありましたように、これは虐待する側と、それから子供、された側と、それぞれが実は深い心の傷を負っているという話はよくわかったところですね。ですから、これは罰則だけでは済まなくて、やはり治療的な部分がどうしても必要になる問題だということなんですが、私は、親へのカウンセリングという問題と、それから子供へのケアの問題も、それぞれ専門的なプログラムが要ると思うのです。
 既にアメリカなんかはそういうものがある。イギリスでもあるというふうに言われているのですけれども、では、日本ではそういうプログラムというのはどこが、開発と言ったらおかしいけれども、研究するのか。そういう場はないと思うのです。それから、そういう専門的なセラピスト、カウンセラーも大変不足しているということも言われているわけですね。
 その点で、現場の皆さんが非常に困っていらっしゃること、法整備してできることと、やはり法整備に伴ってそういうものが充実されるというものなのか、それとも、法整備と別個に、本当にまさに現行のもとでも直ちにそれらは取り組まなければならない問題としてあると私は思うのですね。そういう点を、どういう体制が望ましいか、必要かというあたりのことをぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。三人、それぞれよろしくお願いします。

○大久保参考人 子供のケア、親のケア、そういう問題かと思います。
 子供のケアについては、今施設の方である程度というか、細々とやられているという状況でございます。ここら辺についても、やはりケアの体制というのをきちっとつくっていかなければならないというふうに思っております。
 親のケアについては、さらに正直言って体制は全然ございません。そういった意味で、これから親のケアという問題については相当程度取り組んで、先生おっしゃるプログラムの開発をひっくるめてやっていかなければ、法律でつくったからといってその体制ができるというふうには考えておりません。

○飯島参考人 まず、子供のケアのことですけれども、昨年度から国の通知に基づきまして、虐待を受けているお子さんを養護されている児童養護施設の方からの申請に基づきまして、心理指導の職員を派遣するような手だても一つはできておりますけれども、やはり基本的には、生活する場が本当に、深い傷を負ったお子さんをいやしていくためには、人的にも物的にも、もっと個別的な対応が絶対必要だというふうに思っております。
 親のケアについてですけれども、現行医療機関とか福祉事務所とか、さまざまなものが地域にはあるわけですけれども、そこに具体的につなげるということが非常に困難です。それが私自身が非常に常日ごろ思っているところでございます。

○広岡参考人 子供のケアも親のケアも本質的には同じだと思っています。傷ついた心のケアをするわけですね。同じなんですね。
 今の現状でいうと、子供の心理的な治療も親の治療も、とても充実しているという状況ではありません。しかし、全く何もやり始めていないかといったら、恐らくそうではなくて、システムの中や制度の中で行われていることではないのですけれども、部分的に、熱意のある人たちがやり始めている。たしか、児童養護施設では、十人被虐待児が措置されれば一人の心理職というふうな規定が設けられて、心理職員がついて活動し始めていると思うのですけれども、これは私は、やはりないよりはずっと有効に機能し始めているというふうに思っております。
 これからのことだと思いますが、施設で子供を養育するワーカーたちが、児童精神科医ですとか心理職の職員と実は連携しながら子供を育てるんだというふうにかなり認識を変えていく必要があると思います。単なる衣食住、暮らしを提供する場ではなくて、治療的な場であるというまず意識改革も必要であろうと思います。
 それから、親の治療のことでお話ししますと、今子どもの虐待防止センターで、最初にお話ししました母と子の関係を考える会で、十年間で約百六十人近いお母さんたちが登場しています。去年だけ見ますと、四十人弱のお母さんがいらしていまして、その半数近くは、児童相談所が危機介入をして分離された親が実は登場してきているのです。この中には、二十八条、二十九条で介入されて、とても治療につながると思わなかった人も出てきております。つまり、私たちに受け皿が用意できれば、虐待親たちが決して治療につながらないわけではないという認識もしてもらいたいと思います。
 ただし、性的な虐待の加害者などは、恐らくケア受講命令のようなものがなければ治療につながらない。それから、あえて命令をしてほしいんだという親たちもいることも忘れることはできません。非常に自尊感情に欠けていて自信がない親たちは、自分が治療を受ける価値があると思っていない人たちもいたということはありました。

○石井(郁)委員 どうもありがとうございます。
 あと最後に一点、専門性の問題で、これは大久保参考人に伺いたいと思いますが、私もいろいろな方にお聞きしますと、この虐待問題で改めて児童相談所が脚光を浴びるというか、日の目を見るというか、大変今忙しい状況にあるかなというふうに思うのです。しかし、職員の専門性の問題というのは、今のままでいいのかということも聞かれるところなんですけれども、児相の職員の資格要件を厳密にすべきだという御意見がありますけれども、その意見についてだけあと伺っておきたいと思います。

○大久保参考人 児童福祉司について、これについて専門性を身につけるということは当然必要だというふうに思っております。
 ただ、入り方について、こういう大学を出た者でなければだめだということについては、私は多少疑問を持っております。そこまで限定されますと、多分専門職採用という形でやっていくことになるかと思います。そうすると、入ったときから児相とかあるいは養護施設、そういう狭い世界だけで生きていくという形になるわけですね。そういう意味では、そういう組織内専門職というのは雰囲気的に余りよくない、風通しがよくないんじゃないかというふうに私は思っております。
 ちなみに、教師も専門職でありますけれども、教師の専門性が、逆に言えば民間のそういった発想、見方がないんじゃないかというふうに言われております。そのほか、最近、いろいろなところで専門職と言われているものについて、一家意識というのか、そういうものがあって、おかしいではないかというのがやはり言われているわけですね。そういった意味で、専門職という形で固めてしまうのがいいのかどうかという疑問も私は持っております。

○石井(郁)委員 時間が参りました。
 福祉司というふうになっているわけですから、福祉の専門という部分というのはやはりあるんだろうと思うのですが、それを厳密化、固定化したらいいのか、それとも広げておく方がいいのかとか、いろいろあるかと思いますけれども、その点も私どもの研究課題にさせていただきます。
 きょうは、どうもありがとうございました。以上で終わります。


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