トップ>国会報告>168/衆/文部科学委員会/2007年10月24日

2007年10月25日(木)「しんぶん赤旗」

“靖国史観”教科書の人脈

検定に強い影響力

石井氏質問


写真

(写真)質問する石井議員

 沖縄戦の「集団自決」教科書検定問題で、文部科学省の検定に、“靖国史観”にもとづく「新しい歴史教科書」(扶桑社)監修者の伊藤隆東大名誉教授の門下生や共同研究者が教科書調査官、教科書検定調査審議会委員として深く関与していたことが二十四日、明らかになりました。日本共産党の石井郁子議員が衆院文部科学委員会で質問しました。

 「集団自決」への日本軍の強制・関与を削除する検定意見で合議した日本史担当の教科書調査官は四人。調査官の意見書を審議する検定審議会の「日本史小委員会」に属する近現代史の審議委員も四人います。

 石井氏によると、教科書調査官のうち、近現代史を担当する調査官二人はともに伊藤氏が一九七一年から東大文学部助教授をつとめていた時代の教え子であり、伊藤氏と共同の研究や著作があります。さらに、近現代史専門の審議委員四人のうち二人が、一九九七年度から二〇〇二年度まで伊藤氏が統括責任者をつとめる研究グループで共同研究をおこない、共同著作があります。(図)

 石井氏はこれらの事実を示し、「これで公正・中立な検定といえるのか」と政府の認識をただしました。渡海紀三朗文科相は「検定そのものは、適正な手続きにもとづいておこなわれた」としながらも、「(調査官、審議委員の選定には)疑義を持たれないようにしなければならない」と答弁。「そういう力が働いてはいけないので、配慮、指導したい」と述べ、審議会のあり方などについても、「透明性をあげるよう検討したい」と答えました。

 石井氏は、伊藤氏と関係の深い二人の調査官は、「新しい歴史教科書」の検定にもあたっていたこともあげ、「文科省の認識は甘い」と指摘。「学術的・専門的にたえられない今回の検定意見を撤回することなしに、問題は解決しない」と述べ、あらためて文科省の責任で教科書の記述を回復するよう求めました。

図

衆院文部科学委員会会議録 第2号 2007年10月24日

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。
 保坂委員に続きまして、私も教科書検定問題について質問をいたします。
 先日の大臣あいさつの中で渡海大臣は、「沖縄の集団自決に関する教科書検定の件については、沖縄県民の思いを重く受けとめるとともに、教科書検定の公正中立性の確保に十分意を用いつつ、」というふうにお述べになりました。大臣は、今回の教科書検定において、厳正かつ公正中立に行われたという御認識でいらっしゃいますでしょうか。

○渡海国務大臣 所定の手続に基づいて行われたというふうに報告を受けております。

○石井(郁)委員 私は、公正中立に行われていれば、今日のような、こういう沖縄の県民挙げての皆さんの御要望とか、あるいは大きな社会問題というふうになってないだろうと思うんですね。そういう点で、きょうは幾つか確かめもさせていただきたいと思うんですけれども。
 まず、先日、予算委員会で、我が党の赤嶺政賢議員が明らかにしたところでございますけれども、文科省職員の教科書調査官が、沖縄戦の実態について誤解されるおそれのある表現という検定意見をつけるという、これがその原議書ですよね、局長までの印鑑が押してありますけれども、これを作成すると。この案を検定審議会の小委員会にかけて、これが検定意見となって教科書会社に伝わるということになるわけですが、しかし、沖縄の集団自決に対する軍の関与について、その審議会の専門委員、臨時委員などから意見があったわけではない、教科書調査官四人の合議によって作成されたということがわかりました。審議会の小委員会でも総会でも、それについて意見も出なかったと。しかし、この検定意見によって、今問題の、「日本軍に集団自決を強制された人もいた。」という最初の記述が、「集団自決に追い込まれた人々もいた。」というふうに改められたり、要するに、誤解を招くということで改められたということになって、日本軍による強制とか関与ということは削除されたんですよね。これが今回の一連の経過だというふうに思います。
 ですから、このように見ていきますと、教科書検定審議会というのは隠れみのになっていたんじゃないのか。これは文科省による自作自演の押しつけではなかったのかということが明白になったというふうに私は思うんです。
 そこでお聞きしますけれども、では、教科書調査官の日本史担当の方のお名前、出身大学、学部、専攻学科を教えていただきたいと思います。

○金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 お尋ねの件につきましては、個人情報が含まれますため、本人の了解がとれた範囲でお答えすることをお許しいただきたいと存じます。
 現在、日本史を担当する教科書調査官は四名でございます。まず、照沼康孝主任調査官は東京大学大学院を修了しております。それから、村瀬信一調査官は東京大学大学院を修了しております。それから、高橋秀樹調査官は学習院大学大学院を修了しております。それから最後に、三谷芳幸調査官は東京大学大学院を修了してございます。以上が、現在、日本史を担当する教科書調査官四名でございます。

○石井(郁)委員 学部、専攻をおっしゃいませんでしたけれども、これは本人の了解が得られなかったということなんですか。

○金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 各調査官の出身の学部、学科や専攻につきましては、個人情報に該当するため、お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

○石井(郁)委員 ここで個人情報を盾にとられて。おかしいですよね。だって、文科省の職員なんですから。何で卒業学部、学科、専攻を言えないんですか。しかも、明らかにしてほしいと。
 これは大事なんですよ。何で個人情報、了解を得ないんですか。得て断ったのなら、それはそういうこともあるでしょうけれども、得もしない。これが文科省のやり方なんですか。私は大変問題だというふうに思います。
 大学院までしか言われませんでした。大事なのはやはり学部、専攻なんですよ。主任の照沼氏は東大の国史学科卒業です。村瀬信一氏も東大の日本史学科卒業です。このお二人が今当面問題にしたいことなので、私の方から申し上げておきたいと思うんですけれども。
 要するに、この近現代史専門は照沼氏と村瀬氏なんですよね。お二人です。このお二人は、後で問題にしますけれども、扶桑社発行の教科書監修者である伊藤隆氏が一九七一年から東大文学部助教授を務めていた時代の教え子であります。師弟関係なんですよ。そのことを一点お尋ねしたい。
 そして、照沼氏及び村瀬氏について、調査官になるに当たってはこの伊藤隆氏からの推薦というのがあったんじゃないんですか。あるいは、両調査官の採用の経緯を教えていただきたいと思います。

○金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 それぞれの教科書調査官の専門分野に関しまして、だれから指導を受けたかということにつきましては、個人情報に該当するため、お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
 ただ、教科書調査官の職務といたしましては、学問的、教育的見地から教科書が適切なものとなるよう、公正かつ中立的な立場から調査を行っているところでございます。
 次に、推薦があったのかというお尋ねでございますけれども、教科書調査官に関する選考の際、推薦書があったかどうか、また、だれから推薦があったかについての資料につきましては、人事管理に関する個人情報でございまして、お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

○石井(郁)委員 非常に何か、隠そう隠そうとするところが見えるわけですけれども、これ自身が非常に問題だというふうに思うんですが、伊藤隆氏と照沼氏、村瀬氏は、伊藤氏が東大文学部助教授だったときにこの二人との師弟関係があるわけですね。
 それだけじゃないんですね。もう一つの問題は、この伊藤隆氏と照沼氏は、一九八三年には「陸軍 畑俊六日誌」という共同著作も出しています。共同著作です。
 それから、村瀬氏も、文科省の科研費補助金が出ている、平成九年から十年、日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究及び平成十一年度、十二年度の日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究、そういう研究に参加していまして、これは伊藤氏が統括責任者なんですね。そのもとに共同研究を行っているわけであります。
 そして、二〇〇〇年の四月、「新しい歴史教科書」、これは文科省に申請本として出されましたけれども、このとき同時に村瀬氏が教科書調査官になっています。照沼氏とともにこの教科書の検定に当たっております。
 こうした事実、文科省はお認めになりますか。

○金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 伊藤隆氏が受けていた科研費の研究グループに共同研究者として村瀬教科書調査官が参加していたのは御指摘のとおりでございます。著書につきましては承知をいたしておりません。
 ただ、先ほども申しましたように、教科書調査官のそういった関係と現在の職務とは関係がないものでございまして、教科書調査官の採用に際しましては、学問的、教育的見地から教科書が適切なものとなるよう公正かつ慎重に調査を行うという教科書調査官の職務にかんがみ、慎重に選考を行っているところでございます。

○石井(郁)委員 次に、審議会について伺いますが、教科書検定審議会に日本史の小委員会がありますね。この日本史の委員の、近現代の専門家についてお名前を明らかにしてほしいと思います。

○金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会の委員につきましては、古代から現代の分野にわたってバランスよく構成をしているところでございます。
 審議会委員の氏名の公表の扱いにつきましては、正委員、臨時委員につきまして氏名や職名を公表しておりますけれども、静ひつな環境における委員の自由闊達な意見交換を確保するため、委員の分属については公表していないところでございます。

○石井(郁)委員 何でこの審議会委員の、専門委員の名前は出せないんですか。おかしいでしょう。公正中立な審議会だ、そこで学術的に審議を行っているというわけですから、どういうふうにそれが行われたのかという点で、どなたがその専門委員なのかということは最低必要な、明らかにすべきことだと思うんですが、おかしいんじゃないですか。
 この点は、大臣はいかがお考えですか。

○渡海国務大臣 この委員の先生方につきましては、実は名前が知れたことがありまして、非常に、家までマスコミが押し寄せるというふうなことが起こりまして、そして、そういう環境下では静かな議論をしていただけないというふうなこともありまして、今公表を控えさせているということを御理解いただきたいというふうに思います。
 名前を出さないから中立、公平、公正にならないということではないというふうにも考えます。その点は御理解をいただきたいというふうに思います。

○石井(郁)委員 しかし、今大問題の教科書問題、教科書検定のあり方をめぐっての議論をしているときですから、やはり調査官、そして審議会の委員、どういう方がいらっしゃるのかというのは、私、隠す必要はどこにもないと思うんですよ。それは、マスコミが来るというのは別の問題としてあると思うんですけれども、やはりこの委員会の審議のためにはぜひそれは公にしていただきたい。
 これは、委員長に、ぜひお取り計らいをお願いしたいと思いますが。

○佐藤委員長 ただいまの御要求につきましては、理事会において協議をいたします。
 では、質疑を続けてください。

○石井(郁)委員 私が調べてみたところ、日本史小委員会で近現代史の審議委員四人の方がいらっしゃるんですけれども、一人は駿河台大学教授の広瀬順晧氏、九州大学大学院教授の有馬学氏、国学院大学教授の上山和雄氏、筑波大学教授の波多野澄雄氏、これは間違いありませんか。

○金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 審議会の委員の氏名につきましては、正委員、臨時委員とも氏名及び職名を公表しておりますけれども、その分属、日本史小委員会にだれが属しているかということにつきましては、公表を差し控えさせていただいているところでございます。

○石井(郁)委員 非常にかたくななんですけれども、この四人でこれは間違いないと思うんですね。もし間違っていたら大変大問題になりますけれども、間違いないという前提でお話をさせていただきます。
 さきに挙げました伊藤隆氏、統括者の文科省の科研費の、共同研究でありましたけれども、日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究、それから日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究、ここには、今申し上げました有馬学氏、広瀬順晧氏、そして先ほどの調査官の村瀬信一氏が共同研究者として参画をしているわけであります。だから、まさに教科書調査官、審議会委員の中に伊藤門下生がきちんといらっしゃるということなんですよ。
 それから、村瀬信一と照沼康孝、有馬学氏らが共同で執筆した「近代日本の政治構造」という本があるんですけれども、この中で有馬氏はこのように述べていらっしゃいます。これは後書きなんですけれども、本書の執筆者は、いずれも先生が、先生は伊藤隆氏です、東京都立大学、東京大学に在任中学恩に浴し、学術事業に何らかの形で参画するという貴重な経験を与えられた、伊藤政治史学として結実したのであると絶賛をされているんですね。
 こうして見ますと、教科書調査官は四人ですよ。この四人のうち二人、また審議会委員の近現代史の専門家四人のうち二人が伊藤隆氏の門下生です。あるいは共同研究者、共同著作者です。どうでしょうか。これで検定が公正中立に行われたと言えるんでしょうか、大臣。

○金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 教科書調査官の採用に当たりましては、それぞれの分野に対応する専門の学識を有するかどうか、また、視野が広く、初等中等教育に関し理解と識見を有するかどうかなどの能力、適性を総合的に判断して、大学の教授等や中学、高校教諭等から担当の初等中等教育局におきまして慎重に選考を行い、採用いたしているところでございます。
 教科書調査官の他の人との関係が教科書検定の公正中立性に影響を与えるということはあり得ないと考えておりまして、今回の検定に当たってもそのようなことはなかったと考えております。

○石井(郁)委員 人選が公正中立とか慎重に行われているという話ですが、そういう形のことではなくて、選考の経過もおっしゃらないわけですから、そういうことではなくて、今挙げました事実そのもの、こういう関係の方じゃないですか、このことを私は申し上げているんですよ。これをしっかりと見ていただきたいと思うんですね。これは重大な問題をはらんでいるんです。
 これは先ほども申し上げましたけれども、扶桑社発行の新しい歴史教科書、これは検定を合格したときには国内外から非常に厳しい批判というか反響がありまして、大問題になりました。この歴史教科書というのは、自虐史観からの脱却を掲げました。さきの戦争は自存自衛の戦争、アジア解放の戦争という、靖国史観と私たちは言っていますけれども、に基づくものでして、これまでの村山談話、河野談話など日本政府見解からも到底認められない、逸脱したものでした。
 実は、この新しい歴史教科書の監修者が伊藤隆氏なんです。これはしっかりここに名前が出ています、監修者です。そして、この歴史教科書の検定に当たったのが照沼氏であり村瀬氏です。まさに伊藤門下生のお二人なんですよ。どうですか、これは。ちょっと余りにも何か、こういうことがあっていいのかと言わざるを得ません。
 伊藤隆氏について私はもう少し付言させていただきたいんですけれども、安倍内閣のときには、戦後レジームからの脱却、教育再生ということが掲げられましたけれども、それをバックアップする教育改革の、日本教育再生機構というのができましたよね。伊藤隆氏はその設立代表発起人です。そして、今日、教育再生機構の教科書改善の会というのがあるんですけれども、歴史教科書の編集座長になっていらっしゃる方です。
 「教科書改善に向けての私どもの思い」というのをこの会が発表しておりまして、日本教育再生機構の八木秀次理事長はこのように言っています。「捏造が明らかないわゆる従軍慰安婦の強制連行については記述しません。南京事件については事件そのものが虚構であるという有力な説があることにも言及します。その意味で、扶桑社版教科書はじめ、これまでの教科書改善運動の精神は正しく継承して参ります。」だから、こういう立場の教科書こそ発行していきたいということを表明している団体であります。
 だから、従軍慰安婦の強制連行はもう載せない、これはかなり教科書から削られていきましたけれども。南京虐殺についても虚構だというふうに言っている。それから、沖縄の集団自決については、この教科書には集団自決という言葉もないんですよ。沖縄戦で何人が亡くなったという数字はありますが、集団自決という言葉さえない、こういう教科書です。だから、こういう教科書の発行を続けようとしていることですよね。
 だから、私は、この団体、こういうグループというのは、本当に歴史の事実をゆがめようとして、そういう教科書を子供たちに押しつけようとしているのではないかと言わざるを得ないわけです。
 問題は、こういうことにこたえるような教科書調査官あるいは審議会委員、専門委員が配置されているということが私は重大ではないのか。こういう人たちが検定意見をつけているんだ、そして、沖縄の集団自決に対する軍の関与の削除につながっているんだと言わざるを得ないわけですが、これはまさに文科省による教育内容への政治介入そのものと言わざるを得ません。これはぜひ大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

○渡海国務大臣 先生が感じておられるような、そのものではありませんが、似たような、疑義を持たれないかということで、私も、調査官等がいつ採用されたのか、それから、どういうことで配置をされているのかということで、随分いろいろ聞きました。
 ちょっと今手元に資料がありませんが、要は、今回こういうことをやるためにそういう陣容が組まれたということがないのかという疑いの目を持って実はチェックをさせていただいたんですが、それはそうではなかったですね、少なくとも。例えば村瀬氏でいえば、今ちょっと、そっちから後で説明をさせますが、十年ぐらい前に採用されているわけでありますし、去年までの検定にも参加しているわけですから、その限りにおいてはそういうことではないというふうに考えております。
 ただ、なお、そういう力が働いてはいけないわけでありますから、私の立場からも、今後とも、公正、公平、中立に審議が行われるようにいろいろな配慮、また指導してまいりたい、そういうふうに考えております。

○金森政府参考人 補足をさせていただきます。
 日本史を担当する教科書調査官四名が採用された年でございますけれども、照沼康孝主任教科書調査官は昭和五十八年に採用になってございます。それから、村瀬信一調査官は平成十二年に採用になってございます。それから、高橋秀樹調査官は平成十二年の採用でございます。それから、三谷芳幸調査官は平成十四年の採用でございまして、いずれも今回の問題の以前に採用された調査官でございます。

○石井(郁)委員 私は、今の御説明というのは、本当に何というか、文科省は歴史を踏まえていらっしゃるのかなと改めて本当に思ったんですけれども。
 教科書調査官が教科書行政にどのようにこれまで介入してきたか、あなた方が一番御存じじゃないんですか。これは歴史がありますよ。
 一九九八年、約十年前ですけれども、福地惇という方は教科書調査官でしたけれども、この方も伊藤氏の教え子だったんですよね。そして、このときに、近隣諸国条項があるから、日本は侵略戦争をして悪かった、書いていないとまずい、こういう発言をして調査官を解任されているんですよ。舌禍事件というのを起こしているんですね。今その方は新しい歴史教科書をつくる会の副会長を務めています。
 等々いろいろあるんですけれども、系統的に、やはり教科書の内容を、ある特定の考え方といいますか、特定の事実を持ち込みたいという人たちが日本の教科書問題をずっと起こしてきたんじゃないんですか。それはもうざっと見ただけでも、教科書調査官制度そのものが一九五六年から始まりました。これ自身もちょっと始まり方がおかしいんですけれども。その前年に憂うべき教科書問題というのがあって、それに呼応するかのように、日本の教科書がちょっと平和と民主主義を強く出し過ぎている、もとに戻せというような形で出してきたんですけれども、例えば平泉学派、天皇中心主義を信奉するという皇国史観の東大朱光会というのがあるんですけれども、それに所属した村尾次郎氏、この方が主任調査官になっているんですよ、この当時。それ以降、朱光会の山口康助氏、時野谷滋氏など、ずっとこういう考えの人たちがやはり調査官に座ってきた。そして今、戦争で侵略したということを、侵略という言葉はやめよう、進出だと、書きかえの事件があったじゃないですか。これも国会で大問題になりました。国際的にも問題にもなりました。
 だから、一貫してこの侵略問題、そして戦争責任、あるいは日本軍の関与という問題については、先ほどの従軍慰安婦のことについても非常に激しいこのことがあって削除されまして、今は載らなくなりましたよ、教科書から。そして、今度は集団自決の問題だという流れで来ているんですね。ここはもう紛れもない歴史の事実です。
 私は、だから、今回の件についての、先ほどもお話ありましたけれども、今回の検定意見、こうした文部科学省の中にある、やはり偏った教科書調査官の人選というのがあります。歴史を逆行させる地下水脈のようなものがどうも一貫して流れているんじゃないかと言わざるを得ないんですね。それがやはり政治介入を起こして、政治問題化しているわけですよ。ここをしっかりと見ていただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。

○渡海国務大臣 よく政治介入というお話が出るんですが、実は、ある政党の代表が来られましたときにも、では具体的にどういう政治介入があるのか、どういう力が実はそこに働いてゆがめられたのかということを言っていただければ我が方で調査をいたします、こういうふうに申し上げました。それ以上お言葉はなかったわけでありますけれども。
 基本的に、先生、今調査官にお触れになりましたが、当然、これは審議会というのは審議の委員もいらっしゃるわけでございまして、調査官の仕事は、もちろん検定意見のたたき台、調査書というのを出すわけでありますが、それに基づく資料もこういうものをそろえましたというのが基本的な仕事でございます。あくまでその部会において審議委員の先生方がそれをそのままつけるかどうかという作業もされるわけでありまして、そういったことを通じて中立公平、一部の方が例えばそういう色合いが見えるということだけで物事がそういうふうに流れているというふうに断定されるのは、ちょっといかがかなというのが正直な感想でございます。

○石井(郁)委員 最後、時間がありますので。
 今問題になっていますのは、教科書検定の審議会がある、これがあるから公正中立が保たれているというのが伝わっているわけですけれども、本当にそれがきちんとした担保する機関になっているのかどうか。これは一教科書検定審議委員が発言をされていらっしゃいますけれども、独立機関ではない、やはり調査官の意見というのがかなり強く作用しているというようなこともおっしゃっていますから、そういう権限を本当に調査官がどこまで持ち得るかという問題としてもありますけれども、本当に教科書検定制度というのが公正中立だとは到底言えない中身になっているということが大事だということを申し上げているわけです。
 最後になりますけれども、これは今回の一連の問題について、教科書会社の申請があれば、それで一定、記述をもとに戻すようなことがあり得るような発言に聞いておりますけれども、私は、やはり今回の検定意見、今のこういう申し上げました中身で出てきている検定意見そのものが非常に問題を持っているわけですから、この撤回以外にないわけですね。そこは私は文科省が本当に蛮勇を振るってというか、誤りを正すというか、そのことでこそ、きちんと公正中立な教科書行政をやる省として、大臣がしかるべき責任を果たしていただきたいというふうに強く申し上げたいと思います。
 最後に、大臣のその点での御答弁をいただきたい。

○渡海国務大臣 検定そのものはやはりちゃんと手続に基づいて行われたと何度も申し上げております。そして、この検定制度、民間の教科書会社がとにかく教科書をつくって、それに間違いがないかどうかということをチェックする、こういうことを審議会というある意味の第三者的な立場の専門家、これが学術的な、専門的な見地から行っていただくという制度でございまして、我々がこれを撤回しろとかそういうことが言えないというところに実はこの制度の中立性、公平性が保たれている一つの理由もあるわけでございまして、その点を御理解いただきたい。
 ただ、先生も今いろいろなことをお話しになりました。その中で、やはり我々も考えなきゃいけないこともあるなというふうに思っておりますので、審議会のあり方等については少しいろいろと検討をしてみたい、透明性も少し上げるように工夫をしてみたいというふうに思っております。

○石井(郁)委員 これは先日の朝日新聞だったんですけれども、文科省の、いつごろでしょうか、教科書検定課長の方が登場されていましたよね。それでこうおっしゃっていましたよ。「当初の意見がなぜついたのか、説明が十分されているわけではない。この経過をどう社会に説明するのかは、文科省に課せられた宿題だ。」やはりそうおっしゃっているじゃないですか、中の方自身が。国民はやはり納得していませんよね。何でこういう検定意見がついたんだ、急に今ついたのかという問題ですよ。
 だから、きちっとやはり透明性そして公正な教科書行政を本当にするというところが文科省に今課せられているんだということを重ねて申し上げまして、きょう申し上げた幾つかはぜひ検討していただきますようにお願いをして、質問を終わります。


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