2007年5月16日(水)「しんぶん赤旗」
![]() (写真)答弁する中嶋哲彦名古屋大学教授=15日、衆院教育再生特別委 |
衆院教育再生特別委員会は十五日、参考人質疑を行い、四人の参考人のうち二人が教育委員会活性化のため教育委員を住民の直接選挙で選ぶ公選制の復活を求めました。
市川昭午・国立大学財務・経営センター名誉教授は「なぜ教育委員会は事務局に対して影響力が乏しいか。権限はあるが、権威がないからだ」として「権威を持たせるためには公選制にする必要がある」と述べました。
中嶋哲彦名古屋大学教授も「住民の意思を直接教育行政に反映させるため、教育委員会公選制が必要だ。今回、それが提案されていないのはたいへん残念だ」と述べました。
日本共産党の石井郁子議員は「戦後つくられた教育委員会は公選制で独立した財政権限も持っていたが、一九五六年に任命制に変えられた。今の地方分権の流れを考えれば当初の方向性を取るべきではないか」と述べ、市川氏、中嶋氏の意見に賛意を示しました。
中嶋氏は教育委員会の広域設置や教育長への権限委任について、教育の地方自治に反すると反対しました。
与党推薦の門川大作・京都市教育長は小学一・二年での三十五人学級に加え、今年から中学三年で三十人学級を実施した京都市の取り組みを紹介し、教職員定数と処遇の改善について「国会での英断をお願いしたい」と、少人数学級のための予算措置を要望しました。
衆院 教育再生に関する特別委員会会議録第11号 2007年5月15日
議員 田島 一成君
議員 高井 美穂君
議員 藤村 修君
議員 牧 義夫君
議員 松本 大輔君
議員 笠 浩史君
文部科学大臣政務官 小渕 優子君
参考人
(京都市教育委員会教育長) 門川 大作君
参考人
(比治山大学非常勤講師)
(前東広島市教育委員会教育長) 荒谷 信子君
参考人
(国立大学財務・経営センター名誉教授) 市川 昭午君
参考人
(名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授) 中嶋 哲彦君
衆議院調査局教育再生に関する特別調査室長 清野 裕三君
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本日の会議に付した案件
学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九〇号)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)
教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第九二号)
日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出、衆法第三号)
教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出、衆法第一六号)
地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出、衆法第一七号)
学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出、衆法第一八号)
派遣委員からの報告聴取
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○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
本日は、地教行法の一部改正案を中心として、参考人としておいでいただきまして、また貴重な御意見、それぞれ伺うことができました。本当にありがとうございます。
まず、市川参考人と中嶋参考人にお聞きをしたいと思いますが、戦後、日本国憲法、教育基本法が制定されて、教育委員会制度ができました。ところが、一九五六年に今の地教行法の形に変えられたわけですね。当初発足した教育委員会制度は、教育委員の公選制と財政権限の独立があったと思うんですね。今日、教育の地方自治の原則、また、地方分権という流れが強まっているわけですけれども、そう考えますと、やはり当初の制度の方向性をとるべきではないのかというふうに私は思いますが、この点での御意見を伺いたいと思います。
○市川参考人 旧教育委員会法におきましては、おっしゃるとおり、教育委員は公選で地域住民から選出されております。それから、財政は、完全に独立しているわけではございませんが、三権分立の規定もございますので、完全独立というのは無理で、ただ、現在よりも強い権限を、例えば独自に予算を編成して協議するとかいったような、それから、協議が調わない場合には教育委員会と首長さんと二つの予算を議会に提出するとか、そういった、完全に独立ではございませんが、現在よりも相当強い権限、最高裁判所に準じたような権限を持っていたわけでございます。
私が先ほど申しましたように、もし、行政委員会としての教育委員会の制度を維持し、しかも、それが形骸化したものでなくて、実質的なものとして活性化させるという御意向がおありであるならば、それはやはり、ほかにもいろいろな、権限強化とかいったこともございますけれども、一番基本的には、やはり権威を持たせることである。
それで、権威というものはどこから来ているかといえば、この民主主義の世の中におきまして権威を与えてくれるのは選挙民、戦前は天皇陛下、戦後は選挙民でございまして、ですから、その選挙民からの支持を得てできたということにおいて、首長さんに対して対等の発言力が出てくるわけですし、それから事務局に対しても、事務局の職員とは違うという立場がそこで確立されるわけでございます。
そういう点で、本当に期待されるのであれば、もし形式的なものであっていいというのであれば任命制でも結構ですが、いろいろな、注文だけはされるわけですから、注文されるのであるならば、その注文にこたえるためには公選制が必要条件ではなかろうか、こう考えております。
○石井(郁)委員 中嶋参考人にも同様の趣旨の質問でよろしくお願いします。
○中嶋参考人 私も、まず公選制に関して申し上げますと、住民の公選によって教育委員を選ぶということによって、今、権威を与えるということがございましたが、住民意思に基づいて選ばれた教育委員によって教育行政が行われるというのは、その権威を与えるとともに、民主主義をより確かなものにしていくという点でとても大事なものだと思っています。
首長が選挙で交代した場合、教育委員は辞職すべきであるという議論がしばしばあります。私どもの町も、昨年首長が交代しましたので、それに伴って辞表は出さないのかということを首長からも問われました。これは教育行政の独立性という点から見て、今の任命制は極めて問題があると思います。私どもはそれを受け入れませんでしたけれども、それが当然であるかのような考え方というものを導き出してしまっているというのが、この任命制の大変問題のあるところだと思っています。
それから、財政権の独立性というのも、今の御意見にあったように、大変制約を受けたものではありましたけれども、予算提出権を持つという点で、これは、市民に対して、市民の代表である議会に対して直接に教育委員会が作成した予算を出し、そこで審議を受けるという点で、大変重要なことだと思います。私どもも今、教育委員会の中で、施策を講じて、それに対して必要な予算を首長に対して要求するということになるわけですけれども、大変重要な予算が削減されてしまう、議会で審議する以前にそこでカットされてしまうという点で大変悔しい思いをしているわけです。これは、財政権の独立というのは、重要な点だと思っています。
○石井(郁)委員 中嶋参考人は愛知県犬山市で教育委員も務めていらっしゃるということでございますので、ちょっとその点に関して伺うんですけれども、犬山市が、先ごろ行われました全国一斉学力テストに不参加を決められたわけですが、それで、不参加を決めるに至った法的根拠についてちょっと改めて伺いたいということと、教育委員会ではどのような議論が行われたんでしょうか。また、やはり保護者がいろいろと御意見を持っていらっしゃるわけで、保護者との間ではどのような議論が交わされたのか、伺いたいと思います。
○中嶋参考人 お答えします。
まず、法的根拠ですけれども、これは文科省の実施要領の中にも書かれているんですが、全国学力テストそのものは文科省が実施するけれども、それに参加するか否かは市町村教育委員会が決定することであるということは、実施要領にも書かれています。
それは、教育委員会には学校管理権がありまして、設置者管理主義のもとでの学校管理権が保障されている、そのもとで学校の運営に関する事柄について教育委員会が決定する権限を有している、それに基づいて犬山市としては全国学力テストは参加しないということを決めたわけです。
それに至った教育委員会内部での議論ですけれども、犬山市は二〇〇一年ごろから改革を進めてまいりました。その方針は、ともに学ぶ学校をつくっていこうというものです。点数だけを争うような学力を高めるのではなくて、子供たちが一緒に学び合うということを通じて学力を豊かに形成していきたいんだということを考えたわけです。ただ点数を上げればいいということではなくて、学力を獲得するプロセスであるとか、あるいは自分が獲得した学力を友達と一緒に学ぶ中でより高めていく、共有し合っていく、そういう人格の完成を目指していきたいんだということで改革を進めてきたわけです。
ところが、今回行われる全国学力テストには、そのような観点が大変大きく欠落していると考えます。むしろ、これを実施することによって、競争的な意識を子供たちあるいは保護者、教師たちの中に埋め込んでいくことになって、犬山市として進めていきたい学校づくり、学校運営を大きく阻害するものであると考えるわけです。先ほど申しました設置者管理主義の立場からすると、そのような国の施策がそうであれ、これは地方の観点、現場主義の観点からすると、それは受け入れられないのだというのが教育委員会としての考え方です。
これについては、保護者の方々とさまざまな議論をしてまいりました。昨年の二月に、文科省が実施するということの報道があったときに、既に私どもは、これは疑問があるということを提起しましたし、その後、昨年の四月には、毎年つくっている教育施策の文書の中でそれについて指摘をし、実施しない方向で考えるんだということを市民に伝えています。また、秋には、シンポジウムを開いて、その中でこれについての議論を交わしました。保護者の方からもさまざまな御意見をいただきました。そしてまた、ことしに入って、学校説明会を開いて、実施しないということについての理由を説明しました。
保護者からは、どうして競争させてくれないのかというような御意見も出ました。でも、競争するということが子供たちにとって決していいことではないのだということについて、教育委員会として事務局の力もかりながら御説明をし、おおむねの納得はいただきながら進めることができたと思っています。これについては、恐らく全国のどの町の教育委員会や保護者よりも多くの議論をこの全国学力テストについてはしただろうと思っています。
以上です。
○石井(郁)委員 どうもいろいろありがとうございます。
全国学力テストをめぐっては、本当にさまざまな議論があるかと思いますし、また、これからも真剣に尽くしていかなければならないというふうに思うんですが、やはり、学力とは何かという定義もありますし、中身もありますし、また、私は今お話を伺って、みんなで高め合っていく、その話し合いを尽くしているという点では、本当に地域に根差した教育ということはそういうことなんだろうというようなことも、いろいろと学ぶところが多いわけでございます。
それで、中嶋参考人にもう一点伺いたいと思うんですが、今、そういう教育委員会の活性化とか教育委員会の機能をどう強めるかという議論の中で、また、大学の教員という立場から、地域のそういう教育委員を務めていらっしゃるということで、実践もされていると思うんですね。
そういう点でいうと、強調されましたように、本当に、地域にまさに根差す、地域の住民の要望をきちっと組み入れる、そして聞きながらそこの地域に責任を負う教育行政を進めていくというようなことだと思うんですけれども、住民と結びついて教育行政を行うだとか教育委員会を活性化させていくということがなぜ大事かということと、そのために本当にどういうことが必要になっていくんだろうかというようなことについて、もう少し経験を踏まえて何かお聞かせいただければと思います。
○中嶋参考人 住民と結びついていくことの必要性ということなんですが、教育委員会も、教育及び教育行政についての専門的な立場から真剣に考えながら、そこに住民の意見を盛り込んだ形で運営していくということが必要なわけですけれども、しばしば起きてしまうのは、文科省から出される施策というものはそれなりの体系性を持って提起されてきて、また、国の予算配分などもそれによって行われますので、それに従っていくことが、差し当たり、余り問題なくというかフリクションを感じることなく進めていくという点では、比較的円滑に進めることになるんだろうと思うんですね。しかしながら、それが果たして本当にいいかどうかということについて考えなければならないんだろうと思うんです。
先ほど、学力の定義ということもありましたが、文科省は、この間、一時はゆとり教育と言い、一時は確かな学力と言いというように、ここ十年の間にかなり大きなぶれをしてきていると思うんですね。これは、国が学力とはこういうものであるというように号令をかけて、そのもとで全国が動いてきた、それで振り回されたというのが実態だと思うんです。果たして現場の教師たちあるいは保護者たちが、本当に考えながら、自分の子供にどういう力をつけてほしいのかということを考えながらこの十年間が来たのかといえば、恐らくそうではなかったんだろうと思います。
住民の考え、あるいは保護者の考えを教育行政に取り込んでいくということ、その中で、自分たちなりに、学力とは一体どういうことなのか、自分たちの子供をどういうふうに育てたいのかということを現場で一生懸命考えるということがまず必要なんだと思うんですね。その意味で、まずもって、住民あるいは保護者との関係を教育委員会が築いていくということが必要だと思います。
もう一つ重要なのは、教育委員会にとってさまざまな情報が外から来るわけですけれども、その多くが国発信の情報なんですね。国の施策として提起されるものが情報としてやってくるということがあります。ただ、それは国の視点なんですね。国の視点で教育を考えるというのは、それはそれとして大事なことだと思います。経済政策とか財政政策の中で教育を考えることも大事ですが、その一方で、地域の子育てという視点を持って教育を考えるという別の視点も必要で、それがより合わされたところに現実の教育が多分生まれるんだろうと思います。
その意味では、地方視点の教育の観点をより高めていくためには、教育委員会同士の連合をもっと強めていく必要があると思っています。単独で教育委員会が仕事をするのではなくて、他の教育委員会との連合を高めることによって、地域の視点をその中で醸成していくということが大事ではないかと思っています。
以上です。
〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
○石井(郁)委員 どうもありがとうございます。
私も、先ほど来の、本当に、学び合うとか助け合う教育ということが、今、これから日本の社会、子供たちに求められていると思いますし、地域には本当にいろいろな、今教育再生と言われていますけれども、再生の芽というか力というのがあるんだと思うんですね。その力を、そしてまた住民と子供たちが望んでいる力を引き出すならば、私は本当に日本の教育はよくなっていく方向はあるだろうというふうに思うんですけれども、今言われましたように、やはり、上を見て、国の号令や国の指示を仰いで教育をしたら果たしてどうなるのかということが今問われているんだろうというふうに思いますので、ちょっとそういう御意見を伺わせていただきました。
最後に、門川参考人に伺いたいと思いますが、先ほど冒頭の陳述でも、教職員の勤務実態のことも触れられましたし、定数改善、京都なりに努力していらっしゃるというお話も、中学校で三十人に踏み切るというお話も伺いましたけれども、やはり定数改善の必要性ということを大変強調されたというふうに思うんですね。
今、職場の実態からして、本当に、どういう教員がどういうところでどのように必要なのかというようなことについて、もう少しお聞かせいただければと思います。
○門川参考人 それぞれの学校、地域に課題があります。その課題に的確に対応できる教育体制が必要であります。
そういう意味で、例えば特別支援、障害のある子供の教育、あるいは生徒指導、あるいは、先ほども申し上げましたけれども、中学校三年で三十人学級にしていこう、そういうこともあります。同時に、学校のマネジメントが大事である。教師が授業に専念できるように、私は、このたびの法律でも出ておりますが、校長とともに、副校長とか主幹教諭とか、そういうものも必要であると思います。
そうしたトータルとしての学校力を高めるための教職員の増員をぜひともお願いしたい、そしてめり張りのきいた教職員の処遇の改善もお願いしたい、そのように感じています。
○石井(郁)委員 今回の法案で提出されております副校長とか主幹とか、そういう人たちが本当に教師の多忙化を解消する一助になるのかどうかというのは私は大変懸念があるところでございまして、本当に教師が今多忙で、また健康破壊と直面しながら勤務している実態からすると、定数改善が今見送られているわけですけれども、それをもとに戻すということなども本当に大事だというふうに思うんですが、そういう御意見を伺いました。
それで、少し時間が残りましたので、もう一点、荒谷参考人に伺いたいと思います。
今回の地教行法の改正で、文化、スポーツに関する事務では、条例で首長に担当を移管するということになっていますよね。そのことも先ほど触れられましたけれども、文化、スポーツ、生涯学習の分野というのは、学校教育、社会教育の分野と密接にかかわる分野でもあるということですね。その分野が首長さんのところに行って、そして教育委員会から切り離すということについては、やはり何らかの問題があるんじゃないか、あるいは、どういう問題があるとお考えになっていらっしゃるか。もう残りの時間が少しですので、短く御答弁いただければと思います。
○荒谷参考人 東広島市におきましては、社会、文化、スポーツ行政はすべて教育委員会にございます。私個人の意見といたしましては、これは教育委員会で安定的に所管していた方がいいと思います。
といいますのは、生涯学習の分野におきましても、首長部局に移管して、首長さんが熱心に生涯学習に取り組んでおられた、全国にもそういう例がたくさんございましたけれども、その首長さんがやめられると同時にちょっとダウンしてしまったというような事例が、そしてまた、教育委員会に戻された、所管が移された、そういうふうな事例もございます。
しかし今回は、社会教育は残って、文化、スポーツは選択していいということになっておりますけれども、私個人としては、教育委員会が持っていた方がいいと思います。そして、学校教育も、学校教育と生涯学習がお互いに相互乗り入れして非常に充実した教育内容が構築できる、このように考えております。
○石井(郁)委員 時間が参りました。
以上で終わります。どうもありがとうございました。