トップ>国会報告>165/衆/文部科学委員会/2006年12月1日

衆院 文部科学委員会 会議録第6号 2006年12月1日

   委員長 桝屋 敬悟君
   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君
   理事 西村 明宏君 理事 平田 耕一君
   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君
   理事 笠  浩史君 理事 遠藤 乙彦君
      阿部 俊子君    赤池 誠章君
      秋葉 賢也君    井脇ノブ子君
      飯島 夕雁君    江崎 鐵磨君
      小川 友一君    小渕 優子君
      加藤 紘一君    小島 敏男君
      佐藤  錬君    柴山 昌彦君
      鈴木 俊一君    馳   浩君
      平口  洋君    福田 峰之君
      藤田 幹雄君    二田 孝治君
      馬渡 龍治君   山本ともひろ君
      奥村 展三君    川内 博史君
      田名部匡代君    高井 美穂君
      野田 佳彦君    牧  義夫君
      松本 大輔君    松本 剛明君
      横山 北斗君    西  博義君
      石井 郁子君    保坂 展人君
    …………………………………
   文部科学大臣       伊吹 文明君
   総務副大臣        田村 憲久君
   文部科学大臣政務官    小渕 優子君
   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君
   政府参考人
   (内閣府規制改革・民間開放推進室長)       田中 孝文君
   政府参考人
   (総務省大臣官房審議官) 中田  睦君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私学部長)         磯田 文雄君
   政府参考人
   (文化庁次長)      加茂川幸夫君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君
   文部科学委員会専門員   井上 茂男君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)
     ――――◇―――――

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。
 著作権は、今もお話にございましたけれども、著作権法に「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」とあるように、文化の発展のための大事な制度でございます。とりわけ、内容のよしあしには国は関与しない、権利を守るという特徴を持っていると思います。我が党は、これまで著作権法改正に当たって、権利者の権利を充実させ保護するとともに、公正な利用を図るための措置には積極的に対応してきたところでございます。
 その上で、本法案について質問をいたします。
 まず、著作権等の侵害についての罰則強化の問題なんですね。罰則の強化でいえば、二〇〇四年の改正で、個人罰則における懲役刑が既に三年以下から五年以下に改正されまして、昨年の一月から施行されています。なぜ再び、今罰則の強化をするのか。この点では、著作権侵害の特殊性については考慮したのでしょうか。お答えいただきたい。

○加茂川政府参考人 このたびの罰則強化についての改正案についてお尋ねでございます。
 このたびの罰則強化の背景としましては、いわゆるデジタル化、ネットワーク化といった急速な技術革新が進展する中で、大量かつ高品質の著作物のコピーが容易に作成され得る、または流通できるような状態が生じてきておりまして、その権利に対する侵害の機会または規模が大変高まってきているという状況を私どもはまず考えたわけでございます。
 また同時に、著作権は知的財産の一種類になるわけでございますが、知的財産の保護を強化していく、知的財産立国を実現するというのが政府全体で取り組んでおる課題でもございます。このことを踏まえまして、既に本年の通常国会における法改正によりまして、特許法等の産業財産権法における罰則が強化されたわけでございます。
 著作権も、先ほど申し上げましたように、知的財産権の重要な構成要素でございますし、我が国にとりまして、国民の文化的、経済的活動を支える重要な権利でございますので、著作権侵害に係る罰則につきましても、先ほど申し上げました、本年通常国会において成立しました特許法等の改正と同程度の引き上げを行う必要があると考えたものでございます。

○石井(郁)委員 今お話しのように、特許法、意匠法等の改正とのいわば横並び的な発想でということだと思いますけれども、このときにもいろいろ意見があったと思うんですね。我が党は、やはり刑事罰の強化による弊害の懸念があるということで反対をしてきたところです。
 それはそれとして、とりわけ著作権という問題なんですね。思想または感情を創作的に表現した著作物の創作によって成立するという特殊性があると思うんです。この点、日弁連も、保護の外延があいまいな著作権の侵害に対して、かような重い法定刑が科されるおそれがあるとすれば、後発創作行為者に対して心理的な萎縮効果を及ぼし、かえって自由な創作活動を阻害することにもなりかねないという指摘がございます。だから、産業財産権と同一に扱うべきではない、扱えないというふうに思うんですね。
 刑事罰という、国が直接かかわるわけですから、まさに憲法上、内心にかかわる問題としても慎重であるべきだというふうに思います。やはり著作権侵害の特殊性という問題、先ほど御答弁はなかったんですけれども、大臣、いかがでございますか。

○伊吹国務大臣 これは、先生、ずっと詰めていきますと、著作権の対象になっているものは、思想的なもの、文化的なものから、ずっと動いていって、先ほど牧先生がおっしゃったような経済活動に直接関与してくる論文その他まで広範にかかわってまいりますね、著作権の対象というのは。ですから、確かに、これは行政庁への登録ではない権利ですから、先生がおっしゃっている文化的な側面についてはなるほどと私は思う部分があります。
 しかし同時に、先ほどのような、明らかに企業が自分たちの営利行為に使うということになると、これはもう、言うならば、登録商標あるいは特許の対象と極めて近いものも含まれていますから、その間をどういうふうに分けるかということになってくると、政府がそこへ入っていくのはどうかなという気もしますし、先生のお気持ちはよく理解を私はできますが、一般論としてはやはり同じに扱う、そして、むしろどちらかというと権利の所有者が、先ほど川内先生もおっしゃったように、権利の行使についてできるだけ抑制的にやっていくということで処理していかないとなかなか難しいんじゃないかと思います。

○石井(郁)委員 知的分野は本当に急激な変化をしている分野でもありますし、今お話しのように、経済活動に直接する部分での問題をどう考えるかということは確かにあると思いますが、しかし、これは国際的に他の国も同様に抱えている問題でもあるというふうに思うんですね。
 そこで、では、こういう罰則強化を国際的な動向と比べてみますとどうかということなんですが、文化審議会著作権法分科会の報告書の中にございましたけれども、アメリカでは最高五年以下の禁錮です。イギリス、フランスで最高二年以下の禁錮、イタリアでは六カ月以上三年以下の禁錮なんですね。期間も短いし、懲役ではなく禁錮だとなっているということに私はちょっと注目したいと思うんです。
 それと日本の五年以下の懲役、これ自身、他国と比べて非常に重い。その上で倍にするわけですから、十年以下の懲役に引き上げるというのは他国と比較して余りにも突出しているのではないか。なぜこれを今行う必要があるのかという問題についてでございますが、大臣、いかがでしょうか。

○加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 いわゆる罰則の規定状況、委員御指摘のように、国によってさまざまであるわけでございます。懲役刑のみならず、禁錮刑の差にとどまらず、期間についてもさまざまでございますが、日本以外にも懲役刑を科しておるのは、例えばお隣、韓国の例もございますし、期間も国情によってさまざま、これはそれぞれの国が構えております刑事法とのバランスが背景にあるからだと思っておるわけでございます。
 一方で、委員先ほど御指摘ございました著作権の特殊性といいますか、産業財産権である特許権等とは違うではないかという御指摘があることも私どもは十分承知をしておりまして、今回、もちろんバランスということも一方で考えましたが、権利保護の要請にこたえつつも、今回の改正では、著作権の特殊性でありますとか刑事処罰の謙抑性といった観点から、今回の法改正につきましては著作人格権侵害に対する罰則を据え置くということも行っておりまして、引き上げについて言うと最小限にとどめておりますということも御理解をいただければ大変ありがたいと思っております。

○石井(郁)委員 余りこの件だけでもあれなんですけれども、私どもは、罰則そのものは決して否定するものではありませんけれども、やはり創作活動という非常に文化的な活動という問題に対しての心理的な萎縮効果ということを考えなきゃいけないと思いますし、また、倍ですから、これを今以上に強化するということは文化の発展に寄与すべき著作権法にはなじまないのではないかということで、私は罰則の強化には強く反対をしたいと思っているところです。
 次に、今回の法改正のもう一つの柱なんですが、言われているIPマルチキャスト放送における著作権法の扱いのことでございますが、今回の改正で、IPマルチキャスト放送において地上波放送を同時再送信する場合のことですが、実演家らの許諾権がございますけれども、報酬請求権へと変わってしまうわけですね。これはいわば権利の引き下げだというふうに理解していいのでしょうかということなんです。
 こういう形での著作権法改正というのは、これまでどのように行われてきたのか、あったのかどうかを含めて御答弁いただきたいと思います。

○加茂川政府参考人 御指摘のように、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信については、これまでの許諾権を報酬請求権化することでございまして、委員御指摘のように、権利の切り下げといいますか権利制限を課することになるわけでございます。
 こういった著作権の権利制限につきましては、先ほど別の委員の方の御質問にもございましたが、それぞれの社会的な変化、ニーズに応じてこれまでもその都度行ってきておるわけでございます。一般的に権利制限につきましては必要に応じて判断をしてきておる、今回もその一環であるという御理解をいただければよろしいかと思います。

○石井(郁)委員 今回、こういう問題についての関係者からの意見聴取といいますか、その辺での理解というのはどのように得てきたところですか。

○加茂川政府参考人 今回の法改正に至ります手続といたしましては、文化審議会の著作権分科会で、関係者、専門家のみならず関係団体との十分な意見交換、議論を踏まえて成案を得たものでございまして、IPマルチキャスト放送に関係する事業者または、実はこれは有線放送も全く同機能を持つものでございますから関係団体として意見を聴取いたしましたけれども、関係団体から特に異論なく、今回の法改正については御理解をいただいておるところでございます。

○石井(郁)委員 一応、そこのところはその辺で伺っておきたいと思います。
 関係団体のところの動きとしてちょっと私ども聞いたところでいいますと、ことし十月から、日本芸能実演家団体協議会、芸団協ですね、あるいは実演家著作隣接権センターなどが、放送番組のインターネットなどでの二次利用に関する一任型管理、集中型というんでしょうか、そういう事業を始めたと伺っています。また日本レコード協会も、レコードを録音した番組をインターネットで利用する際の送信可能化権の一任型管理を始めたということがありますね。
 既にこうして民間団体では、インターネット上での利用についての許諾のルールをつくって合理的な運用を始めていると思うんですが、こういう動きを文化庁としてはどのように把握をされて、どのように見ていらっしゃるのか、伺っておきたいと思います。

○加茂川政府参考人 放送番組などのいわゆる映像コンテンツの場合でございますが、多数の著作権者等が関係しておる状況にございますから、いわゆる二次使用に関する契約の円滑化を図るためには、これらの分野における委員御指摘の集中管理、こういったものを進める必要があるわけでございます。
 現在のことを申し上げますと、これまでも、商業用レコードの放送利用に関しましては、これも御指摘にございました、実演家の団体である社団法人日本芸能実演家団体協議会、それとレコード制作者の団体でございます社団法人日本レコード協会が集中管理を行っておるところでございまして、私どもとしましてはこういった取り組みを大変高く評価しておるところでございます。これに加えて、両団体におきまして、現在、放送番組のインターネット配信など、さらなる放送番組の二次利用に向けた集中管理の体制の整備が進められつつあるところでございます。
 民間における自主的な取り組みによって著作物等の流通促進が進むことは、繰り返しになりますが、大変意義のあることだと考えておりますので、実演、レコードの両分野におきます集中管理の取り組みが今後ともさらに充実することを私どもは期待しておるわけでございます。

○石井(郁)委員 私は、こういう動きが始まっているもとですから、やはり現行著作権のもとでもこうした事業が円滑に進むようにする、そういうことを支援していくということが、文化庁として、政府として大いにやるべきではないかというふうに思っております。
 権利の引き下げという問題はやはり慎重に行うべきだというふうに思いますので、こういう問題できょうは質問をさせていただきまして、やはり拙速に行うべきではないということを申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。

○桝屋委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。石井郁子君。

○石井(郁)委員 日本共産党を代表して、著作権法の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行います。
 本法律案では、著作権侵害に対する個人罰則を強化しています。しかし、著作権侵害に対しては、侵害者に対する差しどめ請求など民事上の請求権を行使することで、その侵害行為の停止、予防と被害回復を図ることができるものです。著作権侵害に重罰を科すことは、創作行為者に心理的な萎縮効果を及ぼし、自由な創作活動を阻害することにもなりかねません。
 政府は、産業財産権との調和を図るとしていますが、そもそも著作権は、登録を必要とする特許権などの産業財産権とは異なり、著作物の創作によって著作権が成立(無方式主義)するものであり、著作権の対象も「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と内容も表現方法もさまざまなものが含まれることから、産業財産権と同一に扱うべきでなく、罰則のあり方もより慎重であるべき性質のものです。
 さらに、実態として著作権侵害の検挙例は、レコード、CD等の海賊版の輸入などデッドコピー事案が大部分であり、それ以外の著作権侵害罪の適用は極めて少数であり、現行法が定める懲役刑の上限、それに近い刑が適用された事例も少なく、二〇〇四年に行われた法改正で上限を三年以下から五年以下に引き上げたばかりで、その効果が十分に検証されていないことからも、直ちに懲役刑を引き上げる必要性も乏しいものです。
 その他の点については賛同できる面もありますが、罰則の強化による懸念を払拭することはできず、本法案に反対します。
 終わります。


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