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衆院教育基本法に関する特別委員会 議事録第7号 2006年6月1日


   議員           高井 美穂君
   議員           達増 拓也君
   議員           鳩山由紀夫君
   議員           藤村  修君
   議員           笠  浩史君
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   文部科学大臣       小坂 憲次君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     安倍 晋三君
   国務大臣
   (少子化・男女共同参画担当)           猪口 邦子君
   文部科学副大臣      馳   浩君
   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君
   衆議院調査局教育基本法に関する特別調査室長    清野 裕三君
 
     ――――◇―――――

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 提出の教育基本法案に関しまして、私、きょうは具体的に御質問させていただこうと思っております。
 政府案の十七条、教育振興基本計画となっております。これは、教育振興基本計画は政府が定めると。国会の承認すら経ずに教育の具体的なあり方を全国の学校に、そういう意味じゃ押しつけることができる、こういう制度となるものでございます。
 では、この教育振興基本計画で政府は何を定めようとされているかということなんですが、中教審答申では例示がされておりまして、第一に、全国一斉学力テスト、これはしばしば問題になっております。二番目に、少人数指導や習熟度別指導の推進ということが挙げられております。私はきょう、この少人数指導や習熟度別指導の問題についてお尋ねをしたいと思うのでございます。
 総理はたびたび、習熟度別指導で結構じゃないかというお立場かと思いますが、今、学校現場は一体何を求めているでしょうか。これは、文部科学省が〇五年の四月、調査をしましたところ、少人数学級と少人数指導とではどちらが効果的であるのかというアンケートなんですね。学級編制人数を引き下げた方が効果的だというのが小学校で八一・八%あります。中学校では八六・〇%です。それに対して、少人数指導とかチームティーチングの方が効果的だという方は、小学校で三〇・六%なんですね。中学校でも四二・二%でございまして、圧倒的にやはり少人数学級がいい、効果的だと答えがあるわけでございます。
 そこで、文部科学省に伺いますけれども、これは文部大臣に伺います。昨年、文部科学省も「今後の学級編制及び教職員配置について」という協力者会議の最終報告を出されたと思いますが、小学校低学年ではせめて三十五人学級など少人数学級や副担任制という提案を行っていると思いますが、これに間違いありませんか。

○小坂国務大臣 そのとおりであります。

○石井(郁)委員 それで、きょう、私、資料を配付させていただいておりますけれども、パネルも用意してまいりました。
 諸外国の学級編制基準です。これは初等中等学校ですけれども、イギリスでは三十人が上限です。フィンランド、二十四人が上限。ドイツ、イタリア、カナダ、ロシア、まとめて見ていただきましても、大抵二十人台ですよね。カナダでは、中等教育は二十二人ということになっています。それに比べて、日本は、言うまでもありません、四十人ということでございます。
 私、ちょっとフィンランドの例を申し上げたいんですが、このところ、日本でも学力問題ということが大変いろいろ各界から論評されております。国際調査がありまして、日本の学力が下がったということを問題にされる方もあるわけですが、その学力の国際調査で、フィンランドは過去二回世界一なんですね。読解力、数学ともに二回とも世界一です。そのフィンランドが、今申し上げたように、二十四人を上限ですから、二十一、二人というクラスだってあるわけです。ですから、二十人程度の少人数学級になっているんですよ。
 そして、それは単なる学級の、クラスの数だけじゃないんですね。ここでは、授業についてこういうやり方をしているということを伺いました。つまり、どうしても子供には理解の差がありますから、わかる子とわからない子がやはり出てきます、その年齢で。しかし、わかる子がわからない子を教える、わかる子は教えることでもっとわかっていく、理解が深まるということなんですね。そういう子供同士の助け合いを大事にしながら授業を進めている。実は、この話は、私はフィンランドに行っておりませんけれども、昨年、我が国会の文部科学委員会にフィンランドの国会議員の方がいらっしゃいました。文部科学委員の方でございます。懇談をいたしました。そのときにその方々からお聞きしたことなんですね。
 つまり、フィンランドでは、七〇年代の一時期にはいわば能力主義の、能力別の学級編制がいいと取り入れたこともあったけれども、それでは効果が上がらなかった。それで、今はそれをやめて、そして、能力にはいろいろ差があるけれども、その子供たち同士で助け合いをする、これを基本にして公教育を進めてきている。ある方がはっきりおっしゃっていました。やはり教育というのは平等の原則が大事だ。実は、その平等の原則というのは日本の教育基本法から学んだということまでおっしゃっているんですね。私たちは、改めて、日本の教育基本法が世界的にも読まれているのかというそのことも感動もしたんですけれども、やはりここにはそういう実際に進んでいるということにつきまして、まず総理大臣、この経験あるいはこういう実態をどのように思われますか。

○小泉内閣総理大臣 私も少人数の方がいいと思っています。
 私の世代は生徒が多過ぎて、学級数も十以上あったんですよ、小学校、中学校ともに。それで、教室も足りないし、先生も足りないから、早番、遅番と分けられて、一週間交代で、きょうは早番、午前中、次の週は遅番、午後。同じ年なんだけれども、それだけ生徒が多かった。
 今、四十人学級以下が望ましいということで、だんだん子供が少なくなって、いずれ三十人学級になってくると思います。生徒にとっても、教える先生にとっても、多いよりも少人数の方が教えやすいと思っています。
 そういう中でも、算数とかあるいは国語とか英語とか、基本的な学力については、やはり一定の水準を理解しないと、次の高度の水準に臨んでもわからない、理解できない教科があります。そういう点については、わかっている人を基準にしないで、わかっていない人にわかるまで教える、これが私は必要だと思います。
 そういう点において、全部習熟度別授業にする必要はないけれども、基本的な学力、将来、社会に出て困らないような教科については、私は、わからない子についてはわかるように教える、理解の進んでいる子は、さらに進みたいならば、そういうクラス編制にするというのがあってもいいのじゃないか。また、わからない子が学校に出て、これほどおもしろくないことはない。先生が何を教えているのかわからなくなったら、学校に行く気なくなりますよ。わかればおもしろくなる。そして、わかっている子がもう当たり前のことを教えられたら、それこそほかのことをしたくなっちゃう。先生の話なんか聞きたくなくなっちゃう。これもおもしろくない。だから、わからない子についてはわかるように教える、さらに、能力のある子については、もっと上の水準に行きたいんだったらば、そういう道を提供するというような習熟度別クラスというのも必要ではないかな。
 生徒も少人数の方が、生徒にとっても、教師にとっても、教えやすい、そういうことについては私は否定いたしません。

○石井(郁)委員 私も、わからない子供をわからないままにしておく、これは本当にやってはいけないと思います。わからない子供の発達に応じてきちんとした指導をしていく、これはもう教育者はみんな心を配っていることだというふうに思います。
 ただ、問題は、その習熟度別、これは結局能力別になるんですよ。能力別に一つの学年あるいは一つのクラスを編制するということでいいのかなという問題でございます。
 実際今、日本のあちこちで私ども聞くところでは、これは、ウサギさんクラスといったりカメさんクラスといったり、名前はつけますけれども、結局、あなたはおくれていますよという子供を一まとめにする。そうすると、今まさに総理が言われたように、自分はだめな子だと、そこでもうレッテルを張られてしまう、そのことでもう学校に行きづらくなってしまう、こういう話は本当にあるんです。それは最近本当に出てきています。
 私は、そういう意味で、本当に基本はやはり少人数の学級にする、そして、そこですべての子供たちに発達してもらうということだと思うんですが、能力別という指導がなぜいけないか。これは学力との関係で、先ほどフィンランドの例を申しましたけれども、日本でカリキュラム論を専攻されている佐藤学さんという東京大学の教授がいらっしゃいますけれども、日本の各地の学校、それから世界の学校、アジア、ヨーロッパ、ともに実証的に研究されているんですね。その中で、このようにおっしゃっています。学力水準が高く学力格差が少ない国は、いずれも能力別指導によるグループ分けをしていない、逆に、学力水準が低く学力格差が大きな国は、早期から能力別指導によるグループ分けをしているというんです。これはもう実証研究でのいわば研究成果ですから、私は真摯に受けとめなきゃいけないかなというふうに思います。
 総理大臣は、将来的には少人数がいい、少人数学級がいいという御答弁をいただきました。しかし、これはやはり早くに、一刻も早くすべき課題だというふうに思いますので、総理、本当に日本の子供たち、学力のことを考えるならば、この本当に世界的にも大いにおくれている四十人というクラス編制、早くやはり少人数にするということでの決断をお聞きしたいと思いますが、再度、いかがでございますか。

○小泉内閣総理大臣 それは、少人数の方が私は子供にとっても教師の側にとってもいいと思います。
 私が習熟度別と言っているのは、全部習熟度別にしろと言っているわけじゃないんですよ。私の学生時代も、クラスは同じでも、たしか英語と数学のときには分けられましたね、学年。だから、ふだんは同じクラスでも、ある教科になると習熟度別にしないと困るだろうという教科はあると思うんです。そういうことをやった方が、わからない人はぽかんと聞いたって、これはますますつまらなくなっちゃいますから、わかるように教えて、別に、ああ、おれは低度のクラスに編制された、できるようになろうと。だれだって人間、劣等感と優越感ありますから、ある部分においては劣等感持ったっていいんです。ある部分においては優越感持ってもいいんです。できない子とできる子が一緒にやってもいいんです。しかし、ある部分においては、一緒にやったらできない子が困る場合もあるわけです。足の速い子と一緒にさせらせて、おまえあそこまで行けと言われたら、足の遅い人、足をけがした人は困っちゃう。
 だから、今、全部が全部習熟度別にしろということじゃありませんけれども、習熟度別編制の方がいいのではないかというクラスもある、教科もある。そこは柔軟に対応すべきだと私は思っております。

○石井(郁)委員 総理は高等学校の例をちょっとお出しになったかなと思いますけれども、私も、いろいろな方法があるということは決して否定しないし、それは、本当に現場はいろいろな方法を、まさに教師の創意工夫でされていると思うんですね。
 ただ、ここで何が問題かと申しますと、日本のクラス編制が四十人ということでしている。多過ぎるわけですよ。そのことを手をつけないで、そして、少人数指導とか習熟度別指導とか、そこで小分けはできますよというやり方をしている。ここに問題があるんですということを申し上げているんです。もっと本当にクラス単位の人数が少なくなれば、異常なというか、早くからいろいろと競争させなくても済むような、そんなことができるじゃないですかということを申し上げているんです。
 それで、少し先に進みますけれども、教育基本法ではこの問題をどのように明記していたかと申しますと、たびたび引用されることですけれども、現行は第十条で「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」ということがうたわれています。これは、今もいろいろ議論になりますけれども、教育行政というのは、教育の外にあって、教育を守り育てるための諸条件を整えることにその目標を置くべきだと。だから、教育の諸条件の確立ということがきちんと法律に明記されていた、これは大変大きな意味を持っていたと思うんです。
 それで、私たちは、今のこの四十人はおくれていると言いますけれども、いろいろな諸条件を見て、やはり政府は整備されてきたと思います。しかし、今度は、提出の教育基本法案には、この規定が削除されているんです。そうなりますと、今でもこの条件整備というのが不十分な中でこの規定が削除されたら、どんどん後退するのではないかという疑念は当然出てくると思いますが、それはいかがでございますか。

○小坂国務大臣 教育の現場において、私どもも定数改善を進め、総人件費改革を進める中にあっても、少人数教育、そしてまた習熟度別教育が十分に機能するような定数改善を目指していることに違いはないわけでございまして、規定があるなしということではなくて、私ども文部科学省としては、本年十八年度においては第八次の定数改善計画は見送りましたけれども、今後とも定数改善に向けて努力することに変わりはないということを申し上げて、答弁とさせていただきます。

○石井(郁)委員 この点に関しては、ちょっと総理にぜひ答弁をいただかなくちゃいけません。
 文科省としては、小学校一年生で三十五人学級を可能にする第八次定数改善ということを出しましたが、今の御答弁のように、見送られているんですよ。これは、総理、いかがですか。やはり、教職員の純減を求めるということが先で、この改善計画そのものを認めなかった、それが今回の小泉内閣のされたことじゃないんでしょうか。総理、いかがですか。

○小泉内閣総理大臣 教育環境の整備振興に国として努めていく、そういう中で、できるだけ少人数のクラスの方が教えやすいし、生徒にとってもいいだろうということで、これは進めていきたいと思っておりますし、また、今さまざまな方策がとられておりますけれども、地域によっては、教員の資格がなくても、経験のある地域の教育熱心な方に、一緒にクラスの中に入って見ているだけで生徒の態度が違ってくる。
 先生の中には、知識を教えるのに適した先生はいるけれども、一人どうしても言うことを聞かないような生徒がいると、ほかの子が気が散っちゃう。ところが、一人だけ他人が教室の後ろで黙って見ているだけで態度が違って、教えやすい環境が出てくる。暴れちゃまずいな、先生よりもおっかない人が後ろにいるな、あるいはおっかないおばちゃんがいるなというだけで、もう態度が変わっちゃって、教えやすい環境になる。こういうのも自由に地方でやったらいい。
 一律に削減するというんじゃない。そういう多様な、柔軟な対応をもって、日本の教育というのはよくなってきたな、生徒も学校へ行くのが楽しいな、先生も自分の足らざる点は地域のベテランなり教育熱心な地域の協力を得られるなという、多様な対策を提供できるような環境をつくっていくのが大事だと私は思っております。

○石井(郁)委員 本当にこういう国際比較が厳然とあるわけでございますから、この状態をやはり早く改善しなきゃいけないというのは、国民が最も望んでいる、願っていることです。
 一昨日、当委員会でも参考人質疑をいたしまして、そのときに、これは国立大学の財務・経営センターの名誉教授、市川昭午さん、参考人としておっしゃっていました。
 昔は、政府も国民も、貧しい中で教育には熱心で、他国に例を見ないほどの割合で教育投資をしていました。それが、六〇年代から目立たなくなり、七〇年代には国際比較で下位グループになり、最近では大きくおくれをとるようになりました。皮肉にも、我が国が豊かになるにつれて米百俵の精神が失われてしまったのですと。
 私は、本当にこれが大方の教育関係また国民の率直なお気持ちだろう、そしてまた教育改革にやはり一番願っていることではないのかというふうに思います。
 今、日本の中で、本当に地方自治体、苦しい財政の中でも少人数学級に踏み出しています。長野を先頭に踏み出しています。今踏み出していないのは東京都と我が政府だけなんですね、国だけなんですよ。ですから、やはり予算をふやさないで、四十人学級のままで、今教育の格差、子供たちのいろいろな問題が出ている中で、勝ち組、負け組の教育を進める、競争と選別の教育を進めていこう、こういうことを一層促進するのが今回提出の教育基本法案だというふうに思うんですね。
 私は、やはりそういう教育改革に子供たち、そしてまた日本の将来をゆだねるわけにいかないということで、撤回以外にないということを申し上げて、きょうの質問を終わります。


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