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衆院教育基本法に関する特別委員会 議事録第5号 2006年5月30日


   議員           高井 美穂君
   議員           藤村  修君
   議員           笠  浩史君
   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君
   参考人
   (中央教育審議会会長)  鳥居 泰彦君
   参考人
   (京都市教育委員会教育長)            門川 大作君
   参考人
   (ジャーナリスト)    櫻井よしこ君
   参考人
   (国立大学財務・経営センター名誉教授)      市川 昭午君
   衆議院調査局教育基本法に関する特別調査室長    清野 裕三君

     ――――◇―――――

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 本日は、参考人として御出席いただきました先生方、御多忙の折、本当にありがとうございます。また、貴重な御意見を承ることができまして、本当に感謝しているところでございます。
 教育基本法につきまして、提出された政府の法案と特に中教審の答申との関係でやはりいろいろと問題が出てきておりますので、きょう私は、その辺に限りまして質問をさせていただきます。
 そこで、鳥居会長にお聞きをするわけでございますけれども、中教審答申では、教育の目的を達成する上での心構え、配慮事項を教育の方針として規定していたと思うんですね。これは現行法に定められた教育の基本理念、それは教育の目的及び教育の方針ということでありますけれども、憲法の精神にのっとった普遍的なものであり、引き続き規定することが適当であるということからそのようになっていたと思いますけれども、今回の政府の法案にはその教育の方針というのが削除されています。それにつきましては、いかがお考えでしょうか。

○鳥居参考人 中教審の答申では、前文及び教育の基本理念という項がありまして、その中で現行法の前文と教育理念について議論をしておりまして、方針ということに余り言葉に意を用いてはおりません。

○石井(郁)委員 では、次の問題なんですけれども、やはり中教審では義務教育の九年間の規定は引き続き規定することが適当だとしていたと思いますけれども、別の法律で定めるところによりとして義務教育年限の変更も今度は可能になっております。それから、幼児教育についても、中教審では審議をした様子がうかがえません。そして、答申でも触れられておりません。
 ですから、義務教育の年限、幼児教育につきまして、中教審とは違った法案になっている、変わっているということについては、鳥居会長はどのようにお考えでしょうか。

○鳥居参考人 大ざっぱに申しますと、現行法と中教審答申それから改正案、この三つを比べたとき、先生がおっしゃる意味のそごが一番大きくあるのは、この九年ということが載っているか載っていないかでございます。
 中教審答申では、義務教育年限を九年とするという現行法の精神を受け継いで答申をしておりますが、改正法案では、九年というのを他の法律にゆだねる形になっています。中教審の答申とは明らかに違いますので、そこが問題といえば問題かもしれませんけれども、実は、その後のこの三年間の経過を見ますと、この三年間の間に、一貫教育という形でもってもう既にその九年の意味が大分変わってきております。
 例えば、都立九段高校が区立の中学校と一体化して一貫教育になるというような形で、随所に、全国いろいろなところで九年の枠を超えた、九年プラス高校三年ですね、そこのところを一貫化していく形があらわれ始めておりますので、これを他の法律にゆだねる方が柔軟性があると私は今では判断をしております。

○石井(郁)委員 私、なぜこのように質問をしたかと申しますと、私どもの理解では、やはり文科省はこれまで、諮問をされたわけですから、その答申を受けて法案化されるというのが常であったというふうに思うんですね。それが、今回はその答申から大きく変わった部分がある。その変わった事情は、会長からは三年間の変化だと言われますと、だとしたら、今のお言葉ですけれども、では、中教審にもう一度戻して審議をし直すということになるんじゃないでしょうか。その辺が一つひっかかりを持つわけでございます。
 きょう、ここでその議論をするわけにいきませんけれども、このようにして、答申になかったことが、これは鳥居会長は三年間の変化というふうに言われましたけれども、実際は、自民、公明党の密室協議が続けられて、そして加えられたり、また削除されたりというところが実態なんじゃないでしょうか。
 それで、そのことについて、この三年間、実は今回の法案になった自民と公明との間の協議につきまして、率直なところ、会長としてはどのような御感想をお持ちか。そしてまた、どういう議論と経過を経て答申と違った法律になったのかということにつきまして、何か説明をお受けになったんでしょうか。

○鳥居参考人 説明は全く受けておりません。
 それで、今御質問の中にありましたように、どのように考えるかということでありますけれども、本当に与党のその協議会におかれて、大変な御苦労をされていたんだなということを今になって思うわけでございます。

○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。
 やはり法案と中教審との関係につきまして、市川参考人にお聞きをしたいと思います。
 先ほどの陳述にもありましたように、中教審にずっとかかわってこられましたし、いろいろ発言もされていらっしゃいますので、率直なところをお聞きしたいというふうに思うんですが、市川参考人は、かつて中教審の審議について、夏までは委員が意見を言い合う放談会、諮問されたときからもう見直しは決まっていた、つまり結論ありきだったというふうに述べたということを聞いておりますけれども、中教審の審議というのは一体どういうものだったのかということをお聞かせください。

○市川参考人 三年以上前のことで、正確に記憶しているかどうか必ずしも自信ございませんけれども、普通、中央教育審議会は審議会令という政令がございまして、そこでどういう手続で審議を進めるかということが書いてございます。そこで出席者の過半数で決めるとか、いろいろなことを書いてございますが、そういった政令に沿って審議がされていなかったことは確かでございます。そしてまた、その政令がすべての委員に徹底していたとは思えないのでございます。そこで、よく言えば自由、悪く言えば放談、それで自由放談と申し上げたわけでございますが、さまざまな意見が自由闊達に述べられたということです。
 ただ、それをどういう方向に持っていくかというようなことは前半部分でなくて、それで夏ごろから、事務局の方から原案のまた原案と申しますか、たたき台のようなものが出てきまして、今度はそれについて意見を言うというようなことが繰り返されて決まっていくということでございます。
 それで、意見を申し上げて、それに対する反論があって議論をするということではございませんで、意見は意見で言いっ放しでだんだん進んでいくというような傾向でございましたのが私としては大変残念で、私は別に自分の意見が通らなくても構わないわけでございますけれども、議論をしてから決めていただきたかった、こう思うわけでございます。

○石井(郁)委員 今回の法案には、教育の目標ということが掲げられましたね。これは現行教育法と全く違う部分でありまして、そこには五項目があって、そして数えますと、国を愛する態度、いろいろ問題になっておりますけれども、二十に及ぶ徳目というのが書かれている。
 先ほど市川参考人から、教育の目標というのは、学校教育、特に小中高校段階では、使われる学習指導要領などではもう既に書かれているということでしたが、今回の教育基本法は、家庭教育も社会教育も大学にも及ぶものとしてこの教育の目標というのが書かれているということなんですよね。
 そこで、私どもは、徳目ですから、徳目ということを法律に書き込むということがそもそもなじむのかというか、あり得るのかということが大きな問題だというふうに考えておりますが、その点での市川参考人の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

○市川参考人 お答え申し上げます。
 今回の法案、先ほど池坊先生も、それから鳥居中教審会長も、社会教育、家庭教育すべてに係るように御発言になりましたけれども、また、石井先生からもそういう御質問ございましたが、私はそういうふうに解していないんです。私は、今回の政府案を読みまして、この教育目標というのは、学校教育、なかんずく義務教育について係っているんじゃないか、こういうふうに解釈しているわけでございます。
 と申しますのも、普通教育及び義務教育の項及び学校教育の項に、国家社会の形成者たる資質を養うということが重ねて書いてございますので、そこに限られるんじゃなかろうか。また、現実的に申しましても、社会教育や家庭教育につきまして教育の目的や目標が係るということを言いましても、これを担保する手段がございません。ですから、これは学校教育、なかんずく義務教育について係ってくるのではなかろうか、こういうふうに解釈するわけでございます。これは、最終的には最高裁判所の判断を待たないとわからないことでございますが、私はそういうふうに解しているわけでございます。
 この点で、教育目標というようなことは、家庭教育とか社会教育とか、学校教育以外の教育につきましては、法文を読みましても係らないと読めますし、また、たとえ係るとしましても、これは有名無実な規定になるのではなかろうかというふうに考えております。

○石井(郁)委員 もう一点お尋ねしたかったんですけれども、学校に係るとしましても、これは全体として徳目が並べられているんですよね、態度を養うという。その徳目ということを基本法にこういうふうに細かに書くということについて、これはどうなんでしょうか。
 徳目については、戦前来、細かく規定するのはいかがかという論争もあったやに聞いておりますし、先生もいろいろ御研究かと思いますので、徳目と法律の関係、あるいは広く教育と法律の関係と言ってもいいと思います、教育で教えるべき事項というのを内容に関係して法律でどういうふうに、どこまで規定できるのかという問題についてお聞かせいただければ、少し詳しくお話しいただければと思います。

○市川参考人 これは大変難しい問題でございまして、結局、自由民主的な国家におきましては、個々人の思想信条の自由というのは保障されなければならない。同時に、近代の国民国家におきましては、国民の統合ということも考えなきゃならない。そこで、そういった個人の人権と国家の主権をどうやって折り合わせるか、これは極めて難しい問題であろうと思います。
 ただ、学校教育以外の家庭あるいは一般の社会人につきまして特定の徳目を強要することは、これは先ほど申しましたように不可能でもありますし、それからまた、なすべきことではございません。
 それから、学校教育につきましても、例えば私立学校などというものは建学の精神、特定の主義の教育ということも許されているわけでございますから、これに及ぶことは極めて困難であろうかと思います。
 それからまた、国公立学校でございましても、大学のように学問の自由、教育の自由が保障されているところにおきましては困難であります。
 そこで、一番可能性がありますのは義務教育でございまして、義務教育についてすべてこれを否定することはなかなか難しかろうと思いますけれども、法律でうたいますよりは、現場の先生方のガイドラインとなります学習指導要領などにおいて規定する方がましではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
 それで、やはり法律をもって国民一般に特定の徳目を強いることは、これは極めて思想信条の自由から問題でもございますし、同時にこれは不可能なことではなかろうかと。よっぽどの全体主義的な国家にならない限り不可能なことで、不可能なことを法律に定めるのは余り賢明じゃないんじゃないか、こういうふうに考えております。

○石井(郁)委員 教育基本法制定に大きく貢献された田中耕太郎文相がいらっしゃいますけれども、これはジュリストの創刊号だったと思いますが、もう五〇年代に入ったんじゃないでしょうか、このようなことをおっしゃっているんですね。
 国家は本来学問や宗教や文化の内容自体には積極的に干渉し得ないのであり、このことは教育についても同様ではないかという疑念が起こるのであるとおっしゃっていまして、教育基本法が教育の目的に立ち入って規定するという異例を早急に取り除くことはできないにしても、これを拡張または強化してはならないと。
 だから、教育の目的ということをうたったとしても、それを拡張したり強化したりしてはならないという言葉かと思うんです。これはやはり、あくまでも教育については、国家、国というのは抑制的でなければいけないということを示していると思うんですけれども、もう少し時間がありますので、この点についての市川参考人の御意見を伺いたいと思います。

○市川参考人 田中耕太郎先生の御本、私も拝読しておりまして、田中先生は、今、石井先生がおっしゃったようなことのほかに、法律で教育の目的を定めることは不可能だ、こういうふうにおっしゃっているわけであります。
 おっしゃっていることと文部大臣としてなさったことと少し矛盾しているところもございますが、これは後で反省をなさったのか、あるいは文部大臣のときには職務上やむを得なかったのか、その点は定かではございませんけれども、望ましくないだけでなくて、およそ法律でそういった目的を定めることは不可能であると。
 これは教育だけではございませんで、ほかの、例えば正義とは何ぞや、幸福とは何ぞやというようなこと、法文に正義とか幸福という言葉はございますけれども、その定義はございません。これは定義することが不可能だからで、これは学者の数だけさまざまな意見がございます。
 教育につきましても、先ほど鳥居先生から、教育についてのさまざまな御解釈がございましたけれども、全く同じでございまして、論者により説がさまざまあるということで、それを法律で規定するということは、その定義をするということは、言葉は使ってもいいでしょうけれども、定義するということは、これは好ましくないし、また不可能なことであろうかと考えております。

○石井(郁)委員 時間が参りましたけれども、教育基本法の全面改定という、これは戦後初めてで、そういう国会審議が始まったばかりでございます。
 私は、きょうの参考人の皆さんからの御意見もそうですけれども、この点では、広く国民各界各層からの意見をお聞きしながら、やはり国会としての責務を果たさなければいけないというふうに考えているところでございます。
 きょうは、どうもありがとうございました。


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