トップ>国会報告>164 /衆/内閣委員会/2006年4月21日

衆院内閣委員会 議事録第4号 2006年4月21日


   議員           枝野 幸男君
   議員           小宮山洋子君
   国務大臣
   (少子化・男女共同参画担当)           猪口 邦子君
   内閣府副大臣       山口 泰明君
   内閣府大臣政務官     後藤田正純君
   内閣府大臣政務官     平井たくや君
   内閣府大臣政務官     山谷えり子君
   法務大臣政務官      三ッ林隆志君
   政府参考人
   (内閣府国民生活局長)  田口 義明君
   内閣委員会専門員     堤  貞雄君
 
     ――――◇―――――

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 法案の団体訴権について質問をさせていただきます。
 今回、消費者団体訴訟制度が導入される。消費者団体が長年にわたってその実現を要求してきた制度でございまして、我が党も消費者基本法大綱などでその実現を要求したところでございます。私は、法案の問題点をただしつつ、この制度を発展させていく、そういうスタンスできょうは質問させていただきたいと思っております。
 初めに、大臣に伺います。
 この消費者団体訴訟制度の目的は消費者被害を防止することにあります。消費者団体が積極的にこの制度を活用していく、そういうことが消費者の被害を防止することになるわけですから、そういう立場に立つということが大事だ、そうしないと制度をつくった意味がないということがあると思うんですね。
 そこで、消費者団体に積極的に有効に活用してもらうというために、やはりこの法律の実効性というものを確保する必要があると思うんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。

○猪口国務大臣 石井先生にお答え申し上げます。
 先生おっしゃいますとおり、この制度が円滑に実施されるためには環境整備を図っていくことが必要であると考えます。したがいまして、まず、この制度の意義や適格団体の活動について国民の理解が深まるよう、制度全般の周知、広報に努めてまいりたいと思っています。
 また、適格団体が社会から広く認知されますように、また、されるようになれば、寄附金や会費の収入などを確保しやすい環境、消費者から被害情報が円滑に集まるような環境につながっていくものと考えておりますので、そのような自主的な取り組みを基本と考えております。
 また、適格団体が請求権を行使するに当たりましては、広く消費者から被害情報を収集したり、訴訟結果の周知を図ることが重要であると考えております。このため、行政といたしましては、先ほどから答弁しておりますとおり、国民生活センター等の有する消費者生活の相談情報の提供や、差しとめ訴訟の結果得られた判決内容の公表そして周知などを通じ、適格団体の情報面での負担軽減を図ってまいりたいと考えております。

○石井(郁)委員 いろいろ御丁寧に御答弁いただきました。やはり新しい制度ですから、そのスタートに当たって、本当に国民にこれが使われるようにというか、有効に活用されるようにという、そこが非常に大事だというふうに思うんですね。その点を申し上げたいと思います。
 次は、この制度が消費者行政全体の中でどういう位置にあるのか、どういうふうに位置づけられるのかということをちょっと確認したいと思うんですね。
 消費者基本法の第八条が消費者団体の役割ということを規定しております。その中では「消費者の被害の防止及び救済のための活動」ということが規定されております。また、消費者基本法に基づいて策定された消費者基本計画では、本法案を今国会に提出するということが決められていたわけですね。
 つまり、この団体訴権制度というのは、消費者基本法に基づいて、消費者団体の活動を強化するという位置づけの中で出てきている制度だ、このように理解してよろしいでしょうか。

○田口政府参考人 一昨年、議員立法により制定されました消費者基本法でございますが、消費者の権利の尊重と自立支援、これを基本理念として、これからの消費者政策の方向性を示しているわけでございます。
 その中で、そういう基本理念を踏まえて、消費者基本法には、ただいま委員御指摘のございました八条で、新たに消費者団体に関する規定が設けられまして、消費者団体の活動の一つとして、「消費者の被害の防止及び救済のための活動」、こういう規定が盛り込まれたわけでございます。いわばこれを一つの具体化するものというような位置づけもできようかと思いますが、消費者団体に期待されるこういう役割を踏まえて、このたび、この法案で消費者団体訴訟制度の制度化を図る、そういう位置づけができるのではないかというふうに思っております。

○石井(郁)委員 それでは次に、損害賠償請求問題でございまして、若干論点が重なりますけれども、今回の制度で、差しとめ請求に限定されました。少額で多数の消費者の権利を消費者団体が行使する損害賠償制度というのが見送られたわけですね。私は大変残念に思うわけでございますが、この損害賠償制度を見送った理由を改めてお聞かせください。

○田口政府参考人 最近、消費者被害が非常に多く発生しております。現在、この被害の発生あるいはその拡大を防ぐというのが消費者の置かれた状況からしてまず何よりも重要であって、そのための差しとめ請求権を適格団体に付与するという必要性が大変高いというふうに考えております。
 これに対しまして、損害賠償というのは事後救済のための手段ということで、被害を受けた個々の消費者にまず請求権がございます。被害当事者ではない第三者である団体にその権利を付与するということについては、より広く、少額多数被害救済のための司法アクセス改善、この脈絡との関係も踏まえて考える必要があると考えております。こういうことから、損害賠償請求については、今回の制度化の対象にはしないこととしたところでございます。

○石井(郁)委員 確かに、国民生活審議会報告では、損害賠償請求について、司法アクセスの一つの方法として選定当事者制度ということも取り上げられているわけです。つまり、集団の利益のために、原告として数人を選定するやり方ですね。
 消費者問題に詳しい弁護士の方にお聞きしますと、この選定当事者制度というのは、委任状をもらってやる通常の訴訟と余り変わらないために、ほとんど使われていないということでした。
 いずれにせよ、差しとめ請求だけでは、不当行為を行った事業者の手元には不当な利益、利得が残ってしまう、つまり、事業者はやり得だということになるわけです。この不当な利得を吐き出させない限り、不当行為はなくならないんではないでしょうか。この点はいかがでしょう。

○田口政府参考人 お答え申し上げます。
 事業者が不当な利益を得た場合に、その不当な利得を剥奪するシステムを制度化できないかという議論は、承知しております。
 例えば、ドイツの不正競争防止法などですと、利益剥奪請求というようなことで、被害を受けた個々の消費者の損害を回復するためではなくて、いわば事業者の得た不当な利得を剥奪するために一定の消費者団体に請求権を付与する、こういう考え方があることは承知しております。
 しかしながら、こうした考え方につきましては、ヨーロッパの国々におきましても一般的なものとはなかなか言いがたいところがございまして、我が国の法制度になじむものかどうか、そこは十分慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。

○石井(郁)委員 いろいろな角度からの検討は要るかとは思うんですけれども、やり得を根絶する、不当利益を吐き出させるということと、それから、消費者の少額多数の被害を真に救済していく、これは先ほどからの議論もありますけれども、やはり検討すべき大きな課題だというふうに思うんですね。
 この点では、大臣として、今回見送っているわけですけれども、今後検討の課題にしていくということについての御見解を伺っておきたいと思います。

○猪口国務大臣 既に局長からも答弁しておりますけれども、今回は、被害の拡大、これを防ぐことを何よりも優先して、差しとめ請求権を直接の被害者ではない第三者である適格消費者団体に付与する、こういう画期的な制度を導入しており、まずこの定着をしっかりと確実なものにしていきたいと考えております。
 損害賠償の制度は、これは、まず事後救済であります。そして、被害を受けた個々人にその請求権がございます。その司法アクセス改善などとの関係も踏まえながら、少額多数被害の救済のための手法についてはまた考える必要があると思いますが、今回はこの制度の対象とはしていない。そしてまた、国民生活審議会で、その必要性も含めて慎重に検討するとされていますので、今回の制度の対象とはしていませんけれども、その必要性も含めて慎重に検討するというその御指摘は踏まえながら、取り進めてまいりたいと思っております。

○石井(郁)委員 それでは、次の論点でございますけれども、消費者団体の後訴の原則禁止問題、このことでお伺いしたいと思います。
 確定判決等があった場合には、原則、後訴が禁止される、こういう問題でございまして、法案の十二条五項、六項の関係なんですね。法案は、他の適格消費者団体による確定判決等がある場合は、適格消費者団体は同一事件の請求が原則としてできないということとされております。
 この問題は、制度を議論してきた国民生活審議会の最終報告では、消費者団体に対して民事実体法上の請求権を認めるものとされていました。つまり、民事訴訟法の原則どおりとすることが基本とされていたんじゃないでしょうか。いかがでしょう。

○田口政府参考人 お答え申し上げます。
 国民生活審議会の検討委員会でございますが、昨年の六月に最終報告書をおまとめいただいたわけでございます。この検討委員会の報告書におきましては、消費者団体訴訟制度における訴訟手続のあり方の点で、既判力の範囲については、当該事件の当事者限りとして、いわゆる同時複数提訴の可否についても特段制限されないとするのが民事訴訟法の基本原則に整合的であるということをまず言った上で、その上で、このような民事訴訟法の基本原則によった場合には、紛争の蒸し返しや事業者に過重な負担が生じ得る懸念があるというようなことから、結論といたしましては、一定の不適切な訴えの提起自体を認めない仕組みを導入するなど、所要の措置について検討する必要があるという結論になっているわけでございます。
 今回の法案におきましては、この同一事件の取り扱いでございますが、これは検討委員会報告書の指摘を踏まえまして、複数の適格消費者団体が同一事件について差しとめ請求をする場合に生じ得る弊害、こういったようなものを除去する観点、あるいは紛争の蒸し返しを防ぐというような観点から差しとめ請求権に制限を設けたもので、既判力を他に及ぼすというものではございません。検討委員会の報告書を踏まえて、こういう形で具体化をさせていただいたということでございます。

○石井(郁)委員 検討委員会の報告書というふうにおっしゃいますけれども、今述べられたように、「消費者団体訴訟制度における訴訟手続については、本制度が民事訴訟の枠組みを利用するものであることから、原則として民事訴訟法の規定に従うべきである。」ここは大前提ですよね。そこは認めつつ、しかしということで今のような御答弁なんですが、私は、この審議会報告の基本というのを今回は逸脱していると言わざるを得ないわけですね。
 つまり、後訴が原則禁止されるということになりますと、やはり消費者利益を阻害することになるわけであります。裁判の判決というのは、言うまでもなく、訴訟活動や提出する証拠によって判決内容というのは大きく変わる。また、時代によって価値観も変わる、そういう問題もあるでしょう。またさらに、当初は被害が軽微で、差しとめの必要が認められなくても、その後被害が多発して、差しとめの必要性が満たされるということもある。にもかかわらず、今回、一度確定判決が出されれば後訴ができないということでは、消費者の利益は守られないと言わなければなりません。
 だから、制度の実効性と私最初に申し上げましたけれども、やはり制度の実効性というのはこれでは確保されないことになりませんか。その点はどのように御答弁されるでしょうか。

○田口政府参考人 この消費者団体訴訟制度は、通常の個別訴訟と異なりまして、消費者全体の利益を擁護するといういわば公益的な目的のために、直接被害を受けていない第三者である適格団体に政策的に権利を付与する、そういうものでございます。
 そういう公益的観点から、できる限り紛争の一回的解決を図る必要があるということがございまして、そういう要請を踏まえて、同一事件の取り扱いについては、確定判決等が既にある場合には請求できないという取り扱いとさせていただいたものでございます。

○石井(郁)委員 私は、訴訟の例として実際に起こり得る、そんな問題として考えているわけでございまして、ぜひ、今のようにまた公益性という一般的な制度の枠組みというか考え方ということに戻らずに、訴訟の実際として起こり得ることとしてお考えいただければというふうに思うんですね。
 例えば、ある消費者団体が訴訟を起こした、そこでは結果的に有利な証拠が入手できないために不十分な和解しかできなかったということがありますよね。他の団体が訴訟中でも、これは棄却されることになる、こういうふうな事例というのは起こってくるんじゃないでしょうか。棄却されるなら、通常の民事訴訟による損害賠償にした方がよいというようなことにもなりかねない。だから、ちょっとその事例として、訴訟の実際としてこういうことになるんじゃないかということなんですが、この点はいかがでございますか。

○田口政府参考人 お答え申し上げます。
 同一事件について確定判決等があった場合には、後の訴訟が制限されるということでございますが、例外事由を必要に応じて入れておりまして、まず一つは、前訴が、前の訴訟が却下されて、いわば門前払いということで実質審理に入っていない、あるいは、不正な目的で前の訴訟が行われて、それを理由に棄却されたというようなことがございますと、後の訴訟も制限されない。あるいは、前の訴訟がなれ合い訴訟等で行われて適格団体の適格性が取り消される、そういうような場合にも後の訴訟は可能になるというようなことで、必要な例外事項については規定をさせていただいております。
 さらに、新しい事情が生じてくるというものもございますので、確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結後に生じた事由、これに基づく請求である場合は後の訴訟も妨げられない、そういうような形で、現実の不都合は手当てをされているのではないかというふうに私どもは考えております。

○石井(郁)委員 いろいろな場合を考えなきゃいけないんですけれども、一見明白な紛争の蒸し返しというような不適切な提訴がなされたという場合には、それは民事訴訟の一般的な原則で棄却がなされれば足るわけですけれども、後訴を原則禁止というようなことになりますと、やはり消費者の利益にとってはいろいろ弊害が大きいということを考えざるを得ません。
 それから、次の問題、濫訴の防止というようなことも言われるわけですけれども、濫訴防止の観点から、提訴できる適格消費者団体の要件を厳しくしたということも、これは実は本会議の答弁で伺いました。
 だから、そういう適格消費者団体の要件を厳しくしている、その上に後訴の原則禁止というような措置もかかるということになりますと、二重三重の濫訴防止という枠がかかっているんじゃないか。だから、こういう措置というのは、消費者団体訴訟制度を既に採用している諸外国でもここまではとられていないという点でも大変問題だというふうに私は思うんですね。
 もうそろそろ時間なんですが、十二条六項の問題で伺います。
 訴訟の口頭弁論終結後に確定判決と同じ効力が成立した後に生じた事由ということに基づいて後訴ができるという規定がございますよね。この成立後に生じた事由ですが、これは、不当勧誘マニュアルなど新たな事実が見つかった場合はその事由に該当するのかどうか、いかがでしょう。

○田口政府参考人 口頭弁論終結後に生じた事由に該当するかどうかは個々の事案に即して個別具体的に判断する必要がございますが、一般的な例として申し上げれば、前の訴訟においては、ある勧誘行為が不特定多数の消費者に対して被害を与えている、または与えるおそれがあるとは認められなかったような場合に、その後同じ勧誘行為を他の地域で行うようになった場合、こういうものが典型的な事例かと考えます。
 それから、その後、マニュアルのようなものが発見された、いわば新しい証拠資料が得られたような場合にそれがどう扱われるのかという御質問かと思いますが、基本的には、適格団体の差しとめ請求権というのは政策的に特別に付与された権利でございますので、そういうことを考えますと、差しとめ請求権を行使する際にも、やはり十分な証拠資料を収集した上で行うべきものでございます。
 中途半端な証拠資料しかないにもかかわらず、チャレンジ的に訴えを提起するというようなことがあってはいけないのかなというふうに考えておりますが、同時に、新しい証拠が出てきた場合にそれをどう評価するかという問題になってくるかと思います。その証拠が、前の訴訟の口頭弁論終結後の事由に関する証拠として位置づけられるかどうか。そういう口頭弁論終結後の新しい事由に基づく証拠だということで位置づけられる限りにおいて、後の訴訟が制限されることはないというふうに考えております。

○石井(郁)委員 いずれにしても、法文の解釈に当たるわけですから、少し丁寧にお聞かせいただきたいと思ったわけでございまして、ここで言う確定判決と同じ効力が成立した後に生じた事由、この生じた事由とはどういうケースがあるのか。今、少し抽象的にはお話しになりましたけれども、何か具体的なケースで二、三お示しいただけないでしょうか。

○田口政府参考人 個別具体の例を申し上げるのは少し控えさせていただきたいと思いますが、典型的な事例は、先ほど申し上げましたように、営業区域といいますか販売地域が、前の訴訟の確定した後に他の地域に拡大された、そういうものが一つ新しい事由に該当するかと思います。
 また、そのほかでは、前の訴訟におきましては、ある契約条項、勧誘ではなくて契約条項の問題について考えますと、当該条項が消費者の利益を一方的に害するものとは認められなかった、消費者契約法に違反するものとは前の訴訟では認められなかったけれども、その後、例えば当該契約条項に関する業界の慣行等が変化するなどの社会的な事情の変化によりまして新たな事実が発生したということで、消費者利益を一方的に害すると認められるに至るような場合、こういうものは口頭弁論終了後の新しい事由というふうに位置づけることはできるかと思います。

○石井(郁)委員 この新しい制度は、理解するのもなかなかいろいろな問題もありますし、また不十分な仕組みもいろいろと散見するわけでございまして、やはり消費者の被害を防止する上でマイナスに働くような仕組みというのはきちんと正していかなきゃいけないというふうに思うんですが、この背景にある問題がこの制度の濫用、悪用論だというふうに思うんですね。
 団体訴権制度をつくる上でいろいろな団体からの抵抗があったという。私は、はやりの抵抗勢力という言葉をかりれば、やはりこの制度の抵抗勢力は経団連など企業サイドではないのかというふうに思うわけでございます。
 それで、最後に大臣に伺いたいと思いますが、ここでは、企業サイドの主張というのは、健全な事業活動を阻害するからだというものかと思いますが、しかし、健全な事業活動は消費者の被害はもたらしません。ですから、訴訟の対象にもならない、何ら事業を阻害することにならない。だから、過度に濫用、悪用のおそれを振りまくというやり方は、団体訴権制度の活用を阻害するものと言わざるを得ないと思うんですね。
 そういう点で、政府は、やはり消費者被害の防止を徹底するんだ、消費者被害のための法律だということであるならば、そういう立場で法の運用に当たるべきだというふうに思いますが、最後にこの点での大臣の御見解を伺いたいと思います。

○猪口国務大臣 制度の実効性を考え、そして濫用などを防ぐ、そのバランスの中で制度を設計したと考えております。

○石井(郁)委員 この点では、もう少し大臣から突っ込んだ御答弁もいただきたかったんですけれども、きょうのところは以上で終わりたいと思います。


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