衆院青少年問題に関する特別委員会 議事録第4号 2006年3月30日
国務大臣
(少子化・男女共同参画担当) 猪口 邦子君
内閣府副大臣 山口 泰明君
内閣府大臣政務官 山谷えり子君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 林 幹雄君
政府参考人
(内閣府犯罪被害者等施策推進室長) 荒木 二郎君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 竹花 豊君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 布村 幸彦君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 草野 隆彦君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 白石 順一君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局次長) 高橋 満君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 鳥生 隆君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 中谷比呂樹君
衆議院調査局第一特別調査室長 田中 啓史君
――――◇―――――
○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
政府の子ども・子育て応援プラン、青少年育成施策大綱などを見ましても、乳幼児期の子供を含む施策として出されていると思います。言うまでもなく、乳幼児期をどういう環境のもとで過ごすかというのは、人間発達のスタートですから、大変重要だというふうに私も常々思っているところです。その際、そういう子供の施策を遂行するときに、日本も批准しております国際条約の子どもの権利条約、これを抜きに考えることはできないと思うわけでございます。
そこで、きょうは一般質疑でございますので、子どもの権利条約、特に乳幼児期の問題ということで質問をいたします。
それは、昨年の十一月、国連子どもの権利委員会から、一般的注釈第七号、乳幼児期における子どもの権利の実施というものが出されております。その経緯を見ますと、権利条約というのは締約国に報告義務を課しているわけですね。各国から報告文書が出されるけれども、それを見ると、多くの場合、乳幼児期に関する情報が余り提供されていない、主に死亡率とか出生登録とか健康ケアということに限定されているということで、この子どもの権利委員会、本委員会はこう言っているんです。
子どもの権利条約の乳幼児期にとってのより広範な意味に関する討議が必要だということで、討議を経た上で、この一般的注釈第七号というものが出されたということなんですね。そこでは、乳幼児が子どもの権利条約に規定されたすべての権利の保持者だ、乳幼児期がこれらの権利の実現のために決定的に重要な時期である、そういう認識を助長したいというのが「はじめに」というところで述べられています。
こうした見解についての大臣の基本的な御認識をまず伺いたいと思います。
〔小宮山(洋)委員長代理退席、委員長着席〕
○猪口国務大臣 石井先生にお答え申し上げます。
児童権利条約並びに今御指摘いただきましたその補充的解釈をしました一般的注釈、読んでまいりましたが、それをまつまでもなく、乳幼児につきましては、憲法でも定められました基本的人権の享有主体であるという認識を私は持っております。
しかしながら、乳児について、本人自身がその権利を主張したり権利を行使することはできないわけですから、子供を守り、親権者等による権利の主張を行うという形になっていると理解しております。
○石井(郁)委員 大臣は、国連の場でも活躍されてまいりまして国際的な感覚をお持ちですから、大変期待をしたいと思うわけですが、先ほど申し上げました、この間の政府の施策、子ども・子育て応援プラン、あるいは青少年育成施策大綱など、こういうものの中に、では、子どもの権利条約、この乳幼児期の一般的注釈は新しいものでございますけれども、子どもの権利条約の精神は引き継いでいるものですから、こういうものが生かされているかどうかという点での御認識はいかがでしょうか。
○猪口国務大臣 我が国はこの条約を批准しております。それがまず政府の根本的な立場であり、その条約を遵守するということが責務でございます。
先生よく御存じなんですけれども、この児童の権利に関する条約につきまして、一九八九年に国連総会において採択されて、我が国は一九九四年に批准したものであります。これは、国際人権規約に既に権利が定められていますけれども、その権利を広範に規定して、児童の人権の尊重及び確保の観点から必要となる具体的な事項を規定しているということでございます。
そして、この児童の権利に関する条約等に示されています青少年の人権の尊重につきまして、これは、もう午前中の議論で多々出てきました青少年施策大綱において、その目的規定のところに明記してございます。児童の権利に関する条約等に示されている青少年の人権の尊重及び擁護の観点も踏まえ、適切に推進される必要がある、このように定めてございますので、青少年育成の大綱に係る諸施策を午前中ずっと議論してきているわけですけれども、各省において、そのような観点を引き続き重視するという立場でございます。
○石井(郁)委員 きょう私は、今日本の特に保育所をめぐって起きている問題について、少し具体的にお尋ねさせていただこうと思うのです。その前提としまして、今、政府が公立保育所の民間委託とか民営化を進めているんですね。
そこで、これは厚労省になると思いますけれども、公立保育所、全国どのくらいあってという数字はわかるわけですが、この間、民間委託がどのように進んでいるのか、あるいは民営化というのがどのように進んでいるのかということで、ちょっと推移を含めて数字をお示しください。
○白石政府参考人 お答えいたします。
公有施設を活用した保育所の設置にはいろいろ種類があります。業務委託、公有施設の貸与あるいは公有施設の譲渡といった方法がございます。
直近の状況につきまして申し上げますと、平成十三年度四十二件、十四年度八十四件、十五年度八十九件、十六年度九十六件、十七年度百八十六件、総計四百九十七件でございます。
○石井(郁)委員 今の数字でわかりますように、この間、急速にというか民間委託という方向が進んでいるということです。私は、決して民間委託がけしからぬとかそういう形で言っているわけじゃありませんので、問題はその質、中身の問題なので、これはこれから伺いたいというふうに思います。
練馬区で起きていること、これはいろいろ本にもなっておりましたので紹介をしたいと思うんですね。区立の光が丘第八保育園というところですが、昨年十二月に、年度途中なのに民間委託が強行されてしまった。もちろん保護者、保育士の皆さんも反対をしたけれども、強行される。ことし四月から、引き継ぎなどを終えて委託された事業者、企業が運営するという事態になっているわけですね。
ところが、この一月になって一名の方、二月に二名、三月末までに五名の方が、これは事業者が雇った保育士の方が次々とやめておられるということで、この事業者は何度も募集広告を出して募っている状況だというふうに聞いています。こういう状況になると、被害がもろに子供たちに来るわけですよ。だって、保育士さんがいなくなる、足りなくなるというわけですから、まさに子供たちにかぶってくるという問題なんですね。
しかも、私が取り上げたいのは、障害を抱える子供を持つある保護者の方が通っていらっしゃったということで、民間委託ということになって他の保育園に移らざるを得なくなってしまったということなんです。この保護者の方はどう言っておられるかというと、娘が受けてきた保育が、効率を優先する新しい形の保育園で実現されるとは思わなかった、障害者保育というのは、個々の先生の技術というより保育園全体の文化なんですという訴えをされているんですね。
私は、やはりこういう問題がいろいろな形で生じているんじゃないか、急激に民間委託をするという中ではこういう弊害が生じているのではないか、実際に生じているということなんですね。
多少一般論になるかと思いますけれども、少子化対策の大臣として、こういう状況はやはり子供の権利の侵害と言わざるを得ないんじゃないかというべきだと思いますが、この点での大臣の御見解も伺いたいと思います。
○猪口国務大臣 我が国におきましては、公立の保育園それから民間の保育園、さまざま、まあ両方とも認可を受けている場合にはその基準を満たしているという形でここまで来ているわけですね。
それにつきましては、設置基準もあり、それから保育士さんの配置基準などがあって、設置形態については公立も民間もあるということでございますので、それは、先生のおっしゃるような子供の権利を侵害するというような保育がなされていることはないと私はお伝えしたいと思います。
保育の量的な拡大を図っていくこともまた重要であり、また、今まで民間の認可された保育園の果たしてきている役割ということも重視しながら、しかし、先生の御指摘のとおり、保育の質は高くなければならないという点は非常に重視しながら、少子化対策といたしましても総合的な体制づくりを考えていかなければならず、また、さらに強化していかなければならないと思っております。
先生の出された御事例などが示唆するところでまた当然ながら認識されなければならないことは、子供の育成において継続性、そして保育士さんあるいは学校の先生たちが継続してその子供を大事に思ってくれていると子供が感じられる状況を実現していくことが大切であろうと思います。
その意味で、保育士の配置につきまして、もう既に配置基準がございますが、働きを継続しやすい環境の整備について、私としてもさらに考えていきたいと思います。
障害児を受け入れる観点からの保育のことにつきましては、先生もう御存じであると思いますけれども、保育所に保育士を加配する事業が実施されておりまして、これはその後一般財源化されましたけれども、そのような申請があれば実施されるという体制を維持しております。
民間委託される中で、あるいは民営化されていくという中で良質の保育が確保されますよう、そのことについて、私は少子化対策担当、また子供の観点からさまざまな施策を見守っていく、推進していくという立場の閣僚といたしまして、十分に考え、配慮し、またそのような観点を推進していくという立場でございます。
○石井(郁)委員 御丁寧に御答弁いただきましたけれども、国連の子どもの権利委員会の委員の方々というのは、やはり権利条約が各国で遵守されているのかどうか、またその精神を広報するために、ずっと世界を回っていらっしゃることがありますよね。昨年の十月に日本のNGOの団体の方々が招聘されて、日本でも随分講演、懇談等々されました。私も権利委員長ともお会いしたんです。
その権利委員会の委員のお一人のドイツ自由大学教授のロタール・クラップマンさんと、その夫人がいらっしゃるんですけれども、同じ練馬区の保育園を訪問されているんですよね。同じというのは、同じ保育園ではありません、別の保育園ですけれども。
この保育園は、ことし四月から民間委託される園だということで、そこでいろいろ実態をごらんになった、子供たちと保護者とも懇談をしたということで、その後でどうおっしゃっているかといいますと、公立保育所の民営化というのが乳幼児期における子供の権利の実施に反しているということを知った、子供の権利の実施という観点からすると反しているんじゃないかという感想を持ったとおっしゃるんです。
そしてさらに、こういうふうに述べられていました。施設の設置主体が政府、自治体、私的組織、非営利組織、営利組織であっても、つまり民営化、いろいろな形態であっても、すべての者にそれが利用可能だ、かつ高い質のものであることを保障することを、これは政府に義務づけているんですということを述べていらっしゃるんですね。私は、さすが、やはり子どもの権利委員会の見識が示されているというふうに思ったのです。だから、ぜひ、日本の政府は保育園の民営化についてどういうふうに考えているのかということを聞きたいと思っているということがありましたので、これは今、子供の権利という点から少子化担当の大臣としてこういうクラップマンさんにもしお答えになるとすれば、どういうふうにお答えされるでしょうか、お聞かせください。
○猪口国務大臣 児童権利条約と我が国政府の関係につきましては冒頭に申し上げたとおりで、これは我が国として批准しており、その遵守は政府として非常に責任を持って考えている、推進しているということでございます。
世界にさまざまな国がありまして、我が国は批准した条約については非常に真剣に受けとめ、推進体制を、国内法制及びさまざまな行政的な措置において推進していく、できる限りのことをやっていくという精神を持って誠実に履行していく、そういうアプローチを従来もとってきておりますし、これからもそうであることは言うまでもないことであります。
乳幼児期のことで先生きょう御指摘になりましたので、この権利条約の精神が十分に遵守されていることを確保しますことは、保育の質の高いものをこの少子化対策の文脈においても重視していくということの観点からも重要でございます。
日本として、我が国の環境の中で、またそれぞれの地域、自治体のいろいろな取り組みあるいは状況がございますので、私としても、まず、午前中の早い段階で、自治体の役割、責任が重要であるので自治体に働きかけているということは申し述べたとおりでございますけれども、さらにきめ細かく、すべての子供たちがこの国の中においてその大事な時期において適切な保育環境を享受できますよう最大の努力をしていきたいと思います。
○石井(郁)委員 時間が過ぎましたけれども、このパラグラフの三十二は、保育所を民営化した場合の政府の責任ということについてはっきりと述べております。お読みいただいていると思いますけれども、その立場に立ってお願いをしたいと思うんですが、やはり子供の最善の利益の実現を確保するためにはサービスの質を確保する、それから、それを規制する義務を締約国は有しているんですというふうにきちんと述べられています。ぜひその立場で、少子化担当大臣として乳幼児期の子供たちのいい環境の実現のために努力していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。