衆院文部科学委員会 議事録第6号 2006年3月14日
文部科学大臣政務官 吉野 正芳君
参考人
(兵庫教育大学学長)
(中央教育審議会委員) 梶田 叡一君
参考人
(青森大学教授)
(エッセイスト) 見城美枝子君
参考人
(慶應義塾大学経済学部助教授) 土居 丈朗君
参考人
(元福島県原町市教育長)
(元日本教育新聞社取締役編集局長) 渡邉 光雄君
文部科学委員会専門員 井上 茂男君
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○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
義務教育の国庫負担制度の根幹を守るかどうか、また日本の義務教育の将来をどうするのかにかかわる重要な法案の審議に当たりまして、きょうは、参考人の皆様、本当に御多忙だと思いますけれども、こうしてお出ましいただきまして、また貴重な御意見もいただきました。本当にありがとうございます。
私は、初めに見城参考人と梶田参考人に、中教審とのかかわりでお伺いさせていただこうと思うんですね。
もう随分いろいろと出ておりますけれども、中教審の議論、相当突っ込んで、しかも、データに基づいてされたということですね。にもかかわらず、地方代表の意見と平行線をたどったというか、対立が埋まらなかったという報道になっていると思うんですね。
そのあたりのことにつきまして、特に見城参考人との議論を、私も中教審の議事録、その部分を読ませていただきまして、これはある委員の方が、苅谷委員だったと思いますけれども、見城委員と石井委員、同じ名前なんですが、これは石井岡山県知事さんですけれども、との議論は、今日の、あるいは今後の議論の一番の分水嶺だと思いますということで、大変興味ある論争をされたということをうかがい知ることができるんですね。にもかかわらず、地方代表はいわば納得されない。議論が、どうもその部分は残ってしまうということなんですね。
しかし、きょうもお話しのように、地方財政が大変厳しいし、今後もよくなるということは見られない中で、なぜ地方代表の、石井岡山県知事ら地方代表と言われる方々の主張が中教審の議論の中でも覆ることがなかったのか。この点について、なぜそういう議論であるか、その対立が埋まらなかったのかというあたりのことについて、率直な何か御感想というか、感じていらっしゃることをお聞かせいただければと思います。
○見城参考人 ありがとうございます。
確かに、議論が常に議論で終わってしまうという日々でした。それは、三位一体の改革というのが最初にございまして、教育論争にならなかった。日本の子供たちにどういう教育をしていくかという形にはならずに、常に知事を初め各地の代表の、市町村長会代表の方々は、三位一体の改革によって地方分権になる、その地方分権を推進するためには、国の補助金ということからの脱却が第一であるということまではおっしゃるんですが、では、どれだけ財源を確保できるのかという論争になりますと、単に、総務省からきちんとそれは一般財源で確保できる、そこで本当に終わってしまいます。
それで、財源が確保されない場合には、ナショナルミニマム、ナショナルスタンダードの教育ができないのではないかという質問をいたしましても、それに対するお答えは一度もいただけませんでした。ですから、そのまま最後の答申を出すに当たって、多数決という形にまで発展いたしました。
そこの最後のところでもおっしゃっていることは変わらなくて、結局、教育の内容、どういったことが地方でできるのか、自由裁量制の中でできるのではないかということに対するお答えもないまま終わりました。ですから、非常に残念であったのは、もっと実りのある、地方分権ということがどう生きていくのか、その点をもっと具体的なお答えをいただければ、審議はもっと違った形になったかもしれません。
それから、私は、今回審議委員をさせていただいて逆に最初に驚きましたのは、私のこれは不勉強でしたが、どうして文部科学省は二分の一まで譲歩してきたんだろう、子供たちを育てるということでは全額国庫負担でいくべきだということをなぜ最初に堅持できなかったのかということに、むしろ文部科学省に対しての憤りを覚えました。その気持ちは今も変わっておりません。(発言する者あり)そうです。そうです。もちろん、そうです。
ですから、そういうことに対して、議会が決めたことですけれども、文部科学省としてはただただそれ以降、後退していくしかなかったということが、やはり今後、これ以上後退されたら困るという私の基本になっております。
ありがとうございます。
○梶田参考人 私の理解するところでは、私は中教審ではいろいろな部会、分科会に出させていただいておりますけれども、唯一この義務教育特別部会だけは議論がかみ合わなかったというか、初めからかみ合わせる気持ちがなかったんじゃないかなということを感じております。
これは、結局、おととしの十一月でしょうか、政府・与党合意に基づいて、どうするかということを中教審に投げかけたという、この発端がありまして、その政府・与党合意の中に、地方案を尊重し、そういう言葉が入っているわけですね。ということで、初めから岡山県知事、高松市長それから九州の方の町長さんは、どんなに論議として打ち破られても、それはもう知らぬという。ですから、記録をごらんになってください。もう完全にあらゆる論点で三人の方がおっしゃったことは打ち破られていると思います。それも一度や二度でなくて、何度も何度も繰り返し。ただ、それはもう知らない、そういうことであった。
ですから、ああいう会議に出たのは、私からいうと初めてです。やはり普通は、お互いそれは初めは意見が違っていても、それぞれの考え方、特に教育ですからね、出し合って、すり合わせをしていって、どこかで着地点を見つけるというのが普通ですが、どうにもならなかった。
そして、最後は、今、地方側と言われる三人の方々から出てきたのは、これも記録を見てください、内閣の総理大臣がそういうふうに決めておられるんだから、中教審もそういう結論を出したらいいじゃないかという御発言までありまして、私どもは、審議会というのは一応、行政そのほかからも独立した形で、この義務教育特別部会の委員の名簿をごらんになりますと、それは知事さんも岡山県知事だけじゃなくて鳥取県知事も入っているし、高松市長だけじゃなくて武蔵野市長も入っているしとか、そういういろいろな方が入っている。組合の代表もいろいろな形で何人か入っておられる。教育長さんとか、あるいは首長さんも入っている。あるいは、校長先生も入っている。あるいはいろいろな分野の、学識経験者も入っている。いろいろな人たちが話をして、そこで妥当という着地点を見つけているんですが、地方側から出たのは、総理大臣がおっしゃっているからいいじゃないか、そういうことでありました。
これは、私ども審議会というものの機能をやはり失念しておられる御発言じゃないか。もしこれでいくとすれば、これは一つのファシズムである、そういう発言をさせていただいて、私の発言も某新聞にも引用されたりいたしておりますが、私は率直に言いまして、後味の悪い義務教育特別部会だった、こういうふうに思っております。
○石井(郁)委員 本当に率直にいろいろと、こういうところでしか聞けないようなお話をきょうは伺わせていただきまして、本当にありがとうございます。
鳥居会長も書いていらっしゃいましたけれども、一言で言えば、教育論がなかった、そういうことを大変残念に思うということがございました。本当に教育を論ずる中教審、そしてこの委員会もそうでなきゃいけないと私は思っておりますけれども、改めて感じているところでございます。
それで、今のお話も出てまいりましたけれども、結局、この義務教育費国庫負担の削減ということが形で出ているわけですから、この削減というのは国の三位一体改革の中で進んできたことなんですよね。この三位一体改革が内閣の方針だということで来ているわけで、それが先ほどの中教審での地方代表の話になっているかというふうに思うんです。
そこで、渡邉参考人に伺いたいと思います。
福島県の原町市の教育長として大変いろいろ御苦労されたお話を先ほど伺いましたけれども、「季刊教育法」に渡邉さんが書いていらっしゃるんですけれども、「国の財政改革がもたらしたもの」ということの中で三位一体改革に触れていらっしゃいまして、地方分権というのは聞こえはいいが、実態はそんなに単純ではない、事務事業などの移管、委任にかかわらず、人的、財政的な移管、移譲がなされなければ市町村が執行する業務は増大するばかりだ、業務の停滞か質的深化を図れないことになる、事態は最悪のケースで進行しようとしている、これに追い打ちをかけているのが三位一体改革だ。これは三位一体というけれども、実態は三位ばらばら改革だということもおっしゃっていらっしゃったと思うんです。
この三位一体改革、これは結局二〇〇四年から始まって今年度で政府として一応の終わりなんですよね。これの影響はこれから地方財政、地方自治体にさらに出てくるんだろうというふうに思うんですけれども、渡邉参考人のかかわった教育行政の面から、現場で感じられたこと、今後についてのいろいろ御懸念等々お話しいただければと思います。
○渡邉参考人 最初の御質問ですけれども、地方分権は単純にはいかないという趣旨は、確かに理念的には、地方、市町村の、あるいは都道府県の裁量が幅広くなっていくことで、独自の、また創意工夫のある施策展開ができる余地は出てきているわけですけれども、一方で、行政手続的なものが、例えば指定統計みたいな調査、報告に加えて、新たな調査統計の要請が国あるいは県からおりてきて、しかし、それに回答する職員は一方で減らされている。学校現場も同じように、なるべく県費の事務職員に加えていた市費の事務職員を、複数校で一人とかという形で変わっている中で、事務量はふえている、人は減っているという中で、分権は単純ではありませんよという趣旨の内容です。
それから、財政というか三位一体のもたらしたものという御質問かと思いますけれども、先ほど、今まで約百八十億から、一般会計の当初予算ですけれども、百八十億から年々減っているんですけれども、特に平成十六年度、いわゆる三位一体の影響をもろに受けました。財政課の分析になりますけれども、一兆円を目標とした国庫補助負担金の廃止、それから財源不足の圧縮を通じた地方交付税総額の抑制、国庫補助負担金の一般財源化に伴う所要財源について、税源移譲対象額として精査した額の所得譲与税による税源移譲などの影響で、原町市は前年比で百八十億から八億減の百七十二億に減少しました。そのために、補てん策として財政調整基金を取り崩しております。これが平成十六年度の予算編成です。
今年度の予算編成に際して、ちょっと今数字を持ち合わせていないんですけれども、さらに減少幅がふえています。財調からの取り崩しも大きいということで、当然その結果、市の財政全般のシーリングだけでは間に合いませんので、新規事業の抑制から多々影響を受けています。辛うじて教育費については、二四%程度の水準ですけれども、前年度よりアップする中で、これは首長との関係ですね。そういう中で、ある程度、教育委員会の意向を反映して、新しい新規施策に着手しているような、やりくりしながらやっている状況です。よろしいでしょうか。
○石井(郁)委員 ありがとうございました。
土居参考人に伺いたいと思いますけれども、先ほど、地方交付税が今どうなっていて、今後の見通し等々を数字も挙げていろいろ教えていただきました。
それで、義務教育費の国庫負担が一般財源化されたら四十道府県で財源不足というのは見城参考人の資料にもございましたけれども、今回、私ども、文科省の試算でも出していただいたんですけれども、三分の一国庫負担になった場合で、国庫負担額と所得譲与税による配分見込みによると、不足分が出る県は三十九道府県なんですね。そして、北海道などは五十七億円不足とか、鹿児島三十七億五千万円不足等々の不足がずっと出る。一方で、プラスになる県もあるわけですよ。こうして見ると、やはり地方自治体から見ると、本当に交付税に頼っていくと、今後大きな格差が出てくるんじゃないかという心配が一つあるわけですね。
その点で、一つは、不足分というのは本当に交付税で見ると言っているけれども、果たして保障されるのかどうかという問題と、こういう地方における格差の広がりということについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせください。
○土居参考人 今お示しになられた税源移譲と国庫補助負担金の削減に伴う影響ということは、まさにおっしゃるとおりで、税源がない自治体には、そもそも税源移譲をするよと言ったって、収入がふえるわけはないわけであります。そのかわり国庫補助負担金は削減される一方であるということですから、当然、そういった格差が出てくることになる。当然のことながら、そういう格差は、恐らく地方六団体も欲していたとは私は思えないんですけれども、どうも税源移譲三兆円という、目の前にぶら下がったえさにどうして食いついてしまったのかなというようなところがあって、とにかく税源移譲が、この後、このチャンスを逃すとまたの機会はないかもしれないということで、先走って、こういう形になったのではないか。
私が思うには、できるだけその格差をならすような方法というのは、地方交付税という配り方でなくても、ほかの方法でもあるだろう。例えば、ナショナルミニマムを保障するということで、国庫補助負担金として義務教育費国庫負担をもっときちんと配るということで収入の格差を埋めるということもできますでしょうし、ほかにも方法があるとは思いますけれども、できるだけそういう税源移譲で収入の多寡がはっきりした状況をならすような方法をまた別途考えていくべきではないかというふうに思っております。
○石井(郁)委員 私も、義務教育というのは、やはり憲法にもあるように、教育基本法にもあるように、機会均等、そして教育水準の維持という、全国あまねくすべての子供たちが同じ程度の水準の教育を受けることができるということがあると思いますし、無償制という原則でやらなければいけないというふうに思うんですね。
そういうふうに考えますと、今の子供たちの状況、また親の状況、そして日本の社会全体のことを考えますと、本当にそういう原則で教育をしなければいけないということが今ますます求められているときに、こういう国の予算削減というのは絶対逆行するというふうに思うんですね。
最後になりましたけれども、その点で、見城委員が、こういうときこそなぜ国が全額持つということを文科省は言わないのかということを言われまして、さすがに鋭い御指摘だなと思ったんですが、私は、やはり財政が厳しい、厳しい、だからだからといってどんどんどんどん削れ削れという話じゃなくて、このときに教育を大切にする国民的な合意、そして内容もみんなでつくり上げていくということが必要だと思うんですね。
最後に、そういう日本の教育の将来について、見城参考人から一言いただければと思います。
○見城参考人 ありがとうございます。
国民にとっては、税金を払います、その大事な税金がどう使われるかという、この一つですね。ですから、名前を変えて、結局は税金から予算は立てられていくものですから、そういうことでは間違いなく、子供たちを育てるという、その一番最初に受ける義務教育に資金として財源が確保されるということが重要だと思いますので、ここはぜひ皆様にその点を踏まえてお願いしたいと思います。ありがとうございます。
○石井(郁)委員 どうもいろいろと貴重な御意見、ありがとうございました。
終わります。