衆院青少年問題に関する特別委員会 議事録第2号 2006年2月14日
参考人
(江戸川区長) 多田 正見君
参考人
(立正大学文学部社会学科助教授) 小宮 信夫君
参考人
(特定非営利活動法人子どもの危険回避研究所理事長)
(港区教育委員会委員) 横矢 真理君
参考人
(エンパワメント・センター代表) 森田 ゆり君
衆議院調査局第一特別調査室長 田中 啓史君
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○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
あと、もう一人いらっしゃいますけれども、大変長時間にわたりましてきょうの参考人質疑が続いておりますが、参考人の皆様、それぞれの角度で、実践を積みながら、子供の安全のためにいろいろな研究、また蓄積をしていらっしゃるということで、きょうは大変興味深くお話を伺わせていただきました。
それで、まず小宮参考人、横矢参考人、ともに、地域安全マップづくりということが強調され、既にいろいろな各地の取り組みが始まっているということでございましたけれども、私はこの話を伺いまして、そういえば学校で、私たちの小学校時代も、こういうことではなかったけれども、似たような形でフィールドワークというのをやりましたよね。今だんだん少なくなっているんですね、学校では。随分、やはり地域をそういう意味で先生や大人と一緒に歩いたなということを何か思い出しているんですけれども、そういうこととも関連して、この実践というのは、子供たちみずからが歩く、そして地図をつくる、発表する、お互いに議論もし合うということで、一定かなり時間のかかる作業だと思うんですね。
小宮参考人に伺いますけれども、このような取り組みをしている学校、今どのぐらい、どのように広がっているのかということと、それを進めるに当たって、学校では、文科省のサイドで私言いますと、授業時間が少ないんだ、足りない足りないという話が聞こえてくるわけですから、これは相当学校内で教職員の皆さんとの合議が必要になるだろうと思うんですね。その辺の何か御苦労とかありましたら、ちょっとお聞かせください。
○小宮参考人 私たちが進めています地域安全マップづくりを実際にしている小学校というのは、全部調べたわけではないんですけれども、感覚的に申し上げるのであれば、せいぜい二割ぐらいじゃないでしょうかね。あとは、つくっていると言っているところも、間違ったつくり方、間違ったというのは二つ意味がありまして、一つは防犯効果がないもの、もう一つは逆に別の問題ですね、大人の不信感を増長したり、あるいはトラウマを悪化させたり、あるいは先ほど委員から御指摘ありましたように、全部危ないんじゃないかという形で、ですから、私たちは、あえて、地域を安全にするためのマップと言っています。
一部のところでは犯罪危険マップなんて呼んでいるところもありますけれども、そうじゃなくて、実は地域って安全なんだ、自分を守ってくれる地域の方たち、おじさん、おばさんもたくさんいるんだよということを子供に気がつかせるというのが目的ですから、そういう意味でやっているところということで言うのであれば、せいぜい二割ぐらいじゃないかと思います。
これは、学校によると、確かにかなりの時間を費やしまして、先ほどのCAPと同じように、いや、もうカリキュラムが決まっていて押し込められない、いろいろなやはりそういうふうな反発もあります。
ただ、これはもう恐らく学校全体の役割、これからの現代の学校の役割と関連してくると思うんですけれども、そういう知識を上から大人が伝えるとか教えるとか、もうそういう時代じゃないと思うんですよね。情報化社会ですから、子供の周りのメディアというのは物すごい発達していて、恐らく先生方も把握していないぐらいのメディアの種類。もちろんインターネットはそうですし、雑誌もそうですしね。
ですから、学校がかつてのように、知識を伝達する、あるいは情報を発信する、そういう場という役割はもうどんどん失われつつあって、むしろ、そういう実体験をさせるとか経験を積ませるとか、あるいは、ちょっと社会に行く前にいろいろな失敗をさせて勉強させて、社会に行って自立できるような、そういう人間を養成する、そういう場として役割を変えていかなきゃならないと思うんですね。
そういう意味で、これもいろいろな欧米の取り組みでは、今プロジェクト・ベースト・エデュケーションと呼ばれていますけれども、プロジェクトを基盤にした教育ですね。プロジェクトがいろいろなこういうものを盛り込んできますから、何か楽しくて夢中になってやりながら、最後はいろいろな知識ももちろん身につきますし、いわゆる生きる力も育ってくる。そういうようなプログラムの一環としてプロジェクトも位置づけていますので、これだけではなくて、そういうプロジェクトを主体にした教育というのはこれから必要になってくると思います。
○石井(郁)委員 なかなか、教育の実践の一つとして、それは大変興味深い点なんですよね。私も、子供がみずからやはり動いて、みずからやはり発見をして、そして考えながら学んでいく、こういうことが必要だという点では共感をいたします。
もう一点、小宮参考人に、これは自治体での防犯モデルづくりも考えなきゃいけないという御主張をあるところで見たんですが、例えば、自治体が公園をつくるときも、見通しがよくて犯罪者が近寄りにくい構造とすることが求められる、そういうことですね。だから、子供の安全という問題は、やはり単なる通学路だけの問題ではない。まさに町づくり、子供にとって安全な町、安全な地域というような観点からも大きくとらえなきゃいけないと思うんですね。
そういう点でいいますと、自治体が防犯対策も含めた町づくりとして何か取り組み出している、そういうようなところというのは、日本ではどのようなケースがございますでしょうか。
○小宮参考人 委員御指摘のとおり、全くそのとおりでありまして、実際、安全・安心まちづくり条例をつくっているところもかなりふえましたけれども、やっていることは、住民がパトロールをいっぱいしなさいという、結局、住民に全部押しつけているようなところがほとんどなんですね。文言的には、犯罪の起こりにくい公園をつくるとか犯罪の起こりにくい道路をつくると書いてありますけれども、それはあくまでも言葉だけで、実際にそういうふうに動いているかというと、ほとんど動いていないというのが実態です。
○石井(郁)委員 ありがとうございました。
森田参考人に一点伺わせていただきますが、子供への性犯罪ということで、過剰な反応をしちゃいけないんじゃないかという、特異な例と普遍的な例といろいろ区別しなきゃいけないとレジュメにございました。
性犯罪のことで、話せば本当はたくさん背景等々があるかもしれませんが、やはり、近年、日本社会で起きている一連の問題というのは、どういう傾向として見たらいいのか。これは、社会的な背景だとかあるいは子供の生育過程だとか、いろいろなことが絡まっているかもしれませんけれども、何かその辺での御示唆がありましたら伺いたいということ。
それから、性犯罪では、やはり被害者の実態がつかめないということも出されたと思うんですよね。だから、なかなか子供が言わない、こういうことがあったということを言わないことがわかりにくくさせているということがあるので、よく子供から聞ける関係、子供が言える関係をつくるべきだというお話は、私は大変大事だというふうに思いましたけれども、ちょっとその性犯罪の日本の最近の何か傾向というか問題点というか、そういうことで教えていただければと思います。
○森田参考人 子供に対する性的な被害、本当にいろいろなタイプがあります。でも、統計的にも圧倒的に多いのは、加害者は子供のよく知っている人です。知らない人ではなくて、子供が知っている人です。例えば、クラブの先生であるとか、それは時には学校の先生であることもあるし、スポーツクラブのコーチであることもあるし、近所のおじさんであることもあるし、圧倒的に子供が知っている人です。知っているといっても、非常によく知っているかどうかは、それはまたさまざまです。時にはそれは兄弟であったり、親戚の人であったり、それが一番多いです。ただ、そういうケースのほとんどは、殺傷事件にはなっていないです。
では、殺傷事件にならないから、その子たちは大したことないのかといったら、そんなことはないです。一生、なぜ殺してくれなかったのかと思って、大変な障害を抱えて生きていく人たち、私は、そんな人たち、たくさんの人たちに出会ってきていますので、決して殺傷があったから重大だということはないと思います。
昨今の傾向ということですけれども、私は、こういうことは今に始まったことではないと思います。十年前も二十年前も五十年前も百年前も、子供に対する性的な被害は起きていたと思います。では、今特に多いのか、それを数値的に示すものはないです。
なぜなら、子供に対する性的な被害が問題であるというふうに日本で認識されるようになったのは、本当に平成元年からです。それ以前は、問題というふうにはみなされていなかったです。ドメスティック・バイオレンスが女性たちに対しての暴力であるという認識がつい最近までなかったのと全く同じです。ですから、数値がないので、ほら、見てください、こうでしょうということが言えないのがとても残念です。
加えて、日本では、性被害に関しての疫学的な研究が非常におくれています。もうこの問題に関して日本で十五年ぐらい取り組んできているにもかかわらず、すぐれた疫学研究がないんです。そういう中でも、例えば、実態調査として、日本では女性の一五・六%が小学生までに性的な暴行を受けたと答えている、そういう調査はあります。ただ、調査というのは、それに対しての批判的な論文が闘わされた上で引用したいものなので、それにはちょっとたえ得ない調査かなと思っています。
国際的には、国際的な学会レベルでは、大体三人から四人に一人の女子、そして六人に一人の男子が性的な被害を受けている。その被害はさまざまですけれども、身体的な性的な被害です。わいせつな言葉をかけられた、そういうものだけではないです。そういうことはわかっています。
私は、恐らく百年前も、もしその当時そういう意識があって統計がとられたら、同じ数値が出たかどうかはしれませんけれども、そんなに大きな変化はなかったと思います。それは、なぜそう思うのかといったら、なぜこういう問題が起きるかというその本質的なところを見ると、別に今そういう社会状況があるわけではないからです。
また同時に、子供時代にこういう性的な被害を受けて苦しんでいる人たち、そういう方たちのカウンセリング、セラピーを私は日本でずっとこの十五年間やってきています。そういう方たちに、八十歳の方もおられます。そういう関係の本をたくさん出しているために、多分四千通ぐらいの読者からの手紙を私はもらっています。この十五年間です。
その手紙の多くが、同じ言葉で始まっています。今までだれにも言えなかったんだけれどというまくら言葉で始まります。その方たちの年齢は、九十歳の方もおられました。今初めてこのことを紙に書いてだれか特定の人に送ったことで、私の中で何かが流れていきました、これで安心して死んでいけますと言われた方もおられます。そして今、十六歳の子供も手紙をくれます。
九十歳の方がそういう性被害を受けた。それは、子供時代ですから、今から何十年も前です。決して今に始まったことではないと思います。過去、例えば一九六〇年代ぐらいからの子供に対する性犯罪の殺人未遂、殺人が伴ったものなど、それは見ていくことができます。それを見ても、特に今ふえていません。
ちなみに、子供に対する殺人事件及び殺人未遂、特に今ふえていません。これは、統計自体が平成元年からしかとっていません。平成元年からそんなに今急増しているわけでは決してない。そういうことで、性被害に関して、何か今社会的な背景があってというふうに私は考えていません。
○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。森田参考人は、本当にこういう問題での長年の取り組みがありまして、いろいろお話、もっともっと伺いたいところでございますけれども、参考にしたいと思います。
もう時間ですが、最後に一点、多田参考人に伺いたいと思います、短くで結構でございますけれども。
大変、江戸川区では、住民が参加をして、いろいろな団体、商店街、そしてもういろいろな方々が本当にかかわって、子供の防犯、安全ということで取り組みをしていらっしゃるということですけれども、教職員の話がちょっとなかったものですから、教職員はこの中でどういう役割を果たして、どういう位置づけになっているのかなということを、一点伺わせていただこうと思います。
○多田参考人 当然ですけれども、教職員も大変関心を持っておりまして、非常に地域の諸団体、PTA、あるいは子供会やその他青少年の健全育成団体ありますが、今いろいろ地域との連携の組織が学校自体にできておりますので、そういうところを起点といたしまして、その運動を広げるということで大変努力をしてくださっております。
○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。終わります。