日本学生支援機構法案が可決された六日の衆院文部科学委員会で、日本共産党の児玉健次議員が質問しました。
法案では、「連帯保証人を確保しにくい場合を考慮する」との理由から、学生に月二−三千円の保証料を支払わせる「機関保証システム」を導入するとしています。児玉氏は、一昨年に貸与が終了した人の98・6%は父母が連帯保証人になっていると指摘。厚労省が、連帯保証人による人的保証と法案で導入される機関保証システムが半々になると試算していることをあげ、「試算通りの数を確保するために枠を設けたり、機関保証システムへの申請を誘導するようなことはないと明言するか」とただしました。河村建夫副大臣は「枠を設定したり、誘導する考えはない」と答えました。
法案では、「在学中特に優れた業績を挙げたと認められた者」が対象となる返還免除が導入されます。児玉氏は「各大学への免除枠は、入学定員をもとに大学評価を勘案して配分」とする検討会議の資料を示し、「大学評価はだれがどこで行うのか」と質問。遠山敦子文部科学相は「現在は考えている段階。基準をこれからつくる」と答え、明らかにできませんでした。
児玉氏は、世界一の学費負担と奨学金の劣悪さを指摘し、「法案の示す奨学金の将来像は、日本にとって後退をもたらす」と批判しました。
衆院文部科学委員会で六日、日本育英会を廃止し独立行政法人化する日本学生支援機構法案が、与党三党と民主党の賛成多数で可決されました。日本共産党、自由党、社民党が反対しました。
日本共産党の児玉健次議員が反対討論に立ち、同法案は、現在審議中で学費の値上げを招きかねない大学法人法案とあわせ、「効率化、経費削減を優先する独立行政法人化に奨学金事業をゆだねることは極めて問題だ」と指摘しました。
また、貸与を受ける学生に保証料を課す「機関保証制度」は、「新たな負担を学生に強い、民間信用情報機関への個人情報提供などの問題を生み出す」と批判。教育・研究職に就く大学院生の返還免除制度を廃止し、「優れた業績」をあげた大学院生を対象に導入する返還免除について、「『優れた業績』の基準も明らかにされず、大学院での自由闊達(かったつ)な研究を阻害することが危ぐされる」と強調しました。
衆院 文部科学委員会会議録 17号
平成十五年六月六日(金曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長 古屋 圭司君
理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
理事 馳 浩君 理事 森田 健作君
理事 鎌田さゆり君 理事 山元 勉君
理事 斉藤 鉄夫君
青山 丘君 伊藤信太郎君
岩倉 博文君 小渕 優子君
大野 松茂君 岡下 信子君
岸田 文雄君 左藤 章君
佐藤 勉君 谷田 武彦君
西川 京子君 林田 彪君
福井 照君 増原 義剛君
森岡 正宏君 山本 明彦君
大石 尚子君 大谷 信盛君
鳩山由紀夫君 平野 博文君
藤村 修君 牧野 聖修君
松原 仁君 山口 壯君
白保 台一君 東 順治君
黄川田 徹君 樋高 剛君
石井 郁子君 児玉 健次君
中西 績介君 山内 惠子君
松浪健四郎君
…………………………………
文部科学大臣 遠山 敦子君
文部科学副大臣 河村 建夫君
文部科学副大臣 渡海紀三朗君
文部科学大臣政務官 大野 松茂君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育
局長) 矢野 重典君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長
) 遠藤純一郎君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長
) 白川 哲久君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議
官) 広田 博士君
政府参考人
(経済産業省製造産業局次
長) 福水 健文君
政府参考人
(環境省環境管理局水環境
部長) 吉田 徳久君
文部科学委員会専門員 柴田 寛治君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
独立行政法人日本学生支援機構法案(内閣提出第九三号)(参議院送付)
独立行政法人海洋研究開発機構法案(内閣提出第九四号)(参議院送付)
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一八号)(参議院送付)
――――◇―――――
○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
私も、私の兄弟も、そして妻も、日本育英会の奨学金によって一定の教育を受けさせていただいた、そのことについて今でも強い感謝の気持ちを持っています、社会全体の力によって教育を受けさせていただいたと。それだけに、この奨学金制度がさらにこの後充実発展していくことを私は強く願っています。そういう立場から、きょうは、大きく二つの問題で質問をしたい。
一つは、新しく導入されようとしている機関保証システムの問題です。これは、河村副大臣に主としてお聞きしたいし、その後、奨学金のあり方をめぐって私の意見も述べながら答えをいただこう、こう思っております。
新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議「新たな学生支援機関の在り方について」、これは最終のまとめですが、この中で、先ほども文科省の方が言われていたけれども、連帯保証人、保証人を確保しにくい場合を考慮して、機関保証システムを導入する、こう取りまとめで言っていますね。私は、連帯保証人と保証人を同列的に述べるというのは、仕組みからいってちょっとおかしいと思うんですね。最初に奨学金を申請するときには連帯保証人が必要ですね。そして、返還を開始するときに保証人が登場するわけですから、そこのところははっきりさせておきましょう。
それで、皆さんのところにお配りしている資料をちょっと手にとってください。
これは、平成十三年度、二〇〇一年度に貸与が終了した学生諸君の連帯保証人はどんな本人との関連か。ごらんのとおり、父と母、両方合わせると二十三万一千三百五十五人で、連帯保証全体の九八・六%を占めていますね。これは、平成十三年度貸与終了者です。一番下の(注)にある「平成十三年度新規採用者」に関していえば、まだ連帯保証人と本人の続柄は整理されていません。
そこで、副大臣にお聞きしたいんだけれども、ごらんのとおり、一昨年貸与が終了した方々の中では、お父さんとお母さんがもう圧倒的な部分を占めていますね、九八・六%ですから。それで、先ほども局長が言っていた連帯保証人が確保できなくなる場合、そういう場合があったのか、連帯保証人が確保できなくて申請を断念したケースがどのくらいあるのか、まずお答えいただきたいと思います。
○河村副大臣 御指摘の点でございますが、連帯保証人がないがために奨学金が受けられなかったというケースは、具体的に把握しておりません。ということは、もしそういうことがあればその時点で断念するものですから、こっちに数字が上がってきていないという点がございます。
ただ、考えられるのは、この機関保証制度を前提としてこういう問題が議論されるわけでございますが、私は、これを見ても、大変努力して、おじさんやおばさんにも、後見人にも頼んだ方もいらっしゃる。これは数でいえば少ないですけれども、やはりそういう大変苦労された方があるんだという現実があることは間違いありません。
そういう観点から新しい考え方も生まれたものだ、こう思っておりまして、そういう点から今回の新しい制度の導入ということが考えられておる、こういうふうに思うわけであります。
○児玉委員 確かに、父、母が存在しない、存在しないというか失った、ないしは、社会的な事情でその関係がなくなった方というのはいらっしゃるでしょう。そういう方々にとっていろいろな不自由があるというのは、私も理解できます。しかし、少なくとも二十数万というオーダーの、高校から高専、大学、大学院に至る奨学金の申請者の中で、連帯保証人、後の保証人は別ですよ、連帯保証人が得られないからということで奨学金を受ける機会を断念せざるを得なかったケースというのは多くはないだろうと思います。そういう方たちに対して一定の何らかの手だてを講じなければならない、これを私は強く感じます。
そこで、参議院から始まった論議を見てみると、文部科学省の方は、連帯保証人を確保しにくい場合を考慮して機関保証システムを導入すると言っているけれども、仮置きではあっても、その比率が半々だというふうに見ていますね。これは明らかに実態から反している、こう思いますね。もし皆さんの仮置きのシミュレーションを有効ならしめるためには、例えばAという大学で、人的保証の数は五百人、そして、新しい機関保証のシステムによって申請する人間は五百人、こういうふうに枠をつくらなければ、そうはならないですね。
そして、保証料というのは、今、奨学金の利子の年率は、第二種学資金で〇・二ですから、第一種学資金はもちろんゼロですから、それに対して、保証料の〇・五ないし〇・六というのは非常に負担が重いですね。
だから、私は、この機会にはっきり河村副大臣に明言していただきたいんですけれども、人的保証と機関保証を、例えば、皆さんのシミュレーションのとおりにするために、枠を設定したり、それから機関保証への申請を何らかの形で誘導するようなことはしないと明言していただきたいと思います。
○河村副大臣 委員御指摘の点でございますが、この制度をつくることによってそちらへ誘導するという考え方は全くございません。枠の問題もそうであります。
○児玉委員 枠についても設定しませんね。どうぞ。
○河村副大臣 枠を設定する予定はございません。
○児玉委員 では、次の問題に入ります。奨学金制度のあり方の問題です。
遠山大臣に私伺いたいんですが、青年がなぜ学ぶのか、そして、自分が大学、大学院で学び取ったことをどのようにして社会に役立てるのか、このように、常にみずからに対して問いかけることの重要性、その点について大臣はどのようにお考えでしょうか。
○遠山国務大臣 私は、人として生まれた以上は、常にみずからを高め、また、みずからを高めてみずからの自己実現を図っていくばかりではなくて、そこで蓄えた知識、技術、あるいは精神的なものを用いて社会のために尽くしていく、それが非常に大事なことだと私自身は考えております。
したがいまして、人として生まれた以上は、常に学び、かつまた学ぶことを楽しみ、それを通じて他者に貢献するという角度でいえば、私は、自立して人が生きていく際に、その学びの成果を職業の場でも十分に発揮していくということは極めて大事なことだと思っております。
○児玉委員 私もやはり、青年諸君と接するときにいつも思うんですが、学ぶことと、そして学びを通して知ることによって、ある種の責任が生じますね。その責任に対して、生涯を通して誠実に対応していく、そういう人物を育てることと、奨学金制度の意味というのは非常に重なり合うと思うんです。
今度の法案を拝見してみて、法案の第三条を読んで、私は、ある意味ではこれは重要な指摘だと思いましたね。こう言っています。「学生等に対する適切な修学の環境を整備し、もって次代の社会を担う」人間性を備えた人材の育成に資する。賛成です、これは。そして、この「修学の環境」という言い方は、日本育英会法第一条で「学資の貸与等を行うことにより、」というよりは広いですね。「貸与等」と「等」がありますけれども、「貸与等」というよりも、この「適切な修学の環境を整備し、」ということの方が、私は可能性が広いと思う。
そして、この考え方というのは、今の高等教育における欧米の考え方に非常に近いと思う、この三条に限定して言えば。欧米の考え方、私、去年もウプサラの大学に行って少し町を歩いて、町の中に大学があるのか、大学の中に町があるのかわかりませんけれども、そこで、高等教育の学費が基本的には無償という問題、そして奨学金の貸与と給付というのを、給付が中心になっていたり、国によっては、先日副大臣が言われたように、貸与と組み合わさったり、そういう中で、結局、高等教育を受けたすぐれた人材を生み出すことによって受益するのは社会だという哲学がありますね。それにこの法案の第三条は非常に近いと思う。この目的をどうやって実際に育てていくか、そこが問題だと思います。
そこで、具体的な内容に入りたいと思います。
検討会議は、閣議で定めた特殊法人等合理化計画に従って、大学院生返還免除職制度の廃止を打ち出しました。そして、その際に、別途の政策手段として、すぐれた業績を上げた大学院生を対象とした卒業時の返還免除、そのほか幾つかの選択肢がありますけれども、それと同時に、給費制奨学金を対象にしていたことがこの中間取りまとめを見るとよくわかりますね。
中間取りまとめのところでは、別途の政策的手段として幾つかを列挙しているけれども、ここに至るという結論を出していません。そして、去年の十二月十二日のところで、法案の十六条に盛り込まれた「特に優れた」云々というのが結論的なところとして指摘されています。
私は、ここの経過を一昨日読んでおりまして、あることを思い出しました。中教審が、一九五九年三月の答申、その中でどんなことを言っていたか。こう言っていますね。一九五九年三月の答申で、日本の奨学制度の目標として幾つかを掲げる中に、育英給付金を給付するとはっきり示しています。そして、一九八七年四月、これは遠山大臣御自身がもしかしたらその準備その他の衝に当たられたと思うけれども、臨教審の一九八七年四月の答申で、大学院生を対象にした給付制度の採用を検討課題として提起しています。日本において、この間一貫して、特に大学院生に対する給付・給費制度の採用が課題になってきている。
なぜこの際給費制奨学金に道を開かなかったのか、大臣の答弁をいただきたいと思います。
○遠山国務大臣 今回の、特殊法人から独立行政法人への移行に関する閣議決定におきまして、委員御指摘のようなことが決定の中身に書かれているわけでございます。それは、若手研究者の確保が大事だという政策目標の効果的達成の手法として、現在の免除制度というのはやめて、そして「若手研究者を対象とした競争的資金の拡充等別途の政策的手段により対応する。」ということが書かれているわけでございまして、そのことをベースに、この新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議においても、どういう方途があるかということで御議論をいただいたものと思っております。
その中におきまして、いろいろな角度から議論をされて、そして最終報告を得たのだと思いますけれども、「別途の政策的手段」は、若手研究者を対象とした競争的資金の拡充のほかに幾つかありますということが書かれているわけでございまして、その中には、特別研究員制度の充実あるいは卒業時の返還免除、大学院生を対象とした給費制奨学金などが考えられるというふうに書いてあるわけでございます。
その後に、すぐれた人材の確保という政策目的の実現のためにどの手段が最も効率的、効果的かという観点から検討を行ったということでございます。そして、さまざまな御議論を得て、どのような人を対象に考えるかということも議論をされた上で、「「優れた業績をあげた大学院生を対象とした卒業時の返還免除の制度」を導入することが適当である」というふうに結論されたわけでございます。
私は、給費制というものがとれればまことにいいと思うわけでございますが、しかし、日本の育英制度といいますのは、発足の当初から、貸与をして、そして貸与をされたものについてはしっかりと返還をして、そして自立心を持って社会に責任を果たしていく、それによってまた次代の人がその貸与を受けることができるという循環、それを考えてきた、自立型の日本の貸与制度というものでずっと成り立ってきているわけでございます。その意味で、政府としてこれまでとってきたのは貸与制度ということであったわけでございます。
給費制度があれば、学生たちにとってまことに学びやすい、経済的な悩みもなくできるわけでございますけれども、この日本のとってきた流れ及び現実のさまざまな社会状況の中で、どうやったらいいか。しかも、若手研究者をどのようにすぐれた人を育成していくかという角度から、私は、検討会議においてしっかりと御議論いただいたと思っております。
それで、これはちょっと余談になるかもしれませんけれども、日本の中で、国がやるものとそれから民間がやるものとあるわけでございまして、民間の中には約三千四百の育英財団がございます。ここにおきましては、給費それから貸与をもちろんまぜたものでございますけれども、多くが給費という形で、すぐれた学生たちに機会を与えております。それが、およそ六百四十億近くのお金が毎年民間の善意によって出ているということでございます。
一方で、国としては、そういうものをしっかりと支えて、税制上の優遇措置でありますとか、あるいはさまざまな情報交換をしていただくとか、いろいろな援助をしながら、そういう国としてやるべきことと、そして民間として大いに育英資金をおつくりいただいた精神に基づいてやっていただく、そういったことを総合的にやっていって、日本の学生たちの学びへの援助というのをやっていくというのが現在の状況であり、かつまた、日本のあり方にとりましても、現時点における適切な方途であるというふうに考えているところでございます。
○児玉委員 大臣も、給費制が実現すれば、そのことの持っている積極性については、今の答弁の中でもにじんでいます。
そして、中間まとめとこの最終まとめの別途の政策的な検討のあれを比較してみると、検討会議の皆さんの、私はいろいろな面で彼らの議論については賛成できない点が多いんだけれども、「別途の政策的手段」の中で給費制奨学金を常に選択の対象にしていたというのがこれでもよくわかるし、大臣に私は強く要望したいんだけれども、この後、この給費制の実現について文部科学省やその他の重要な検討課題としていただくことを強く望みたい、こう思います。
そこで、給費制であったら出てこない問題として、法案の十六条の問題が出てくるんです。「在学中に特に優れた業績を挙げたと認められる者」。私は言葉にこだわるような感じなんだけれども、「挙げた」と。しかも、「挙げた」というのを、文科省にいただいたペーパーには平仮名で「あ」になっているんだけれども、この法律ではわざわざ「挙」になっているんですね。結局、わずか数年のスパンで「特に優れた業績を挙げた」と。
この制度の本旨からしても、将来への発展可能性が主眼となるべきで、過去の実績というのは、どうも私はよくわからない。そして、先ほどの副大臣のお話を聞いていますと、機構が基準を示す、そして大学院に選考委員会等を設けて選考するということを皆さんはお考えのようですね。
それで、去年の十二月十二日の検討会議の「別途の政策的手段」「優れた業績をあげた学生に対する返還免除」、そこのところで「概要(イメージ)」というところがあります。「対象者の選抜は、卒業時に各大学院で判断」、結局基準をつくるのは機構ですからね。ページ数を言いましょう。最初の分の四十四ページ。「対象者の選抜は、卒業時に各大学院で判断」「各大学への免除枠は、入学定員を基に大学評価を勘案して配分」とある。
この大学評価というのはだれがどのようにして行うのですか。評価が高い大学では、例えば申請した第一種学資金の院生二十人に対して、ある大学は五割を設定し、別の大学院では二割を設定する、そう読めるんです。この評価はだれがどのようにしてやるんですか。
○遠山国務大臣 この問題は、私は、制度のねらいというものをしっかりシステムの中に反映していくということが大変大事だと思います。
今、この検討会議の方向、提案をベースにしていろいろと考えている段階でございまして、先ほど副大臣の方からお答えいたしましたものは現段階で内部で検討しているものでございますけれども、これをさらに、機構が基準として定めていきます前には、もっと広く、いろいろな専門家、これまですぐれた人材育成に当たってきた人たちの幅広い意見も聞いた上で、どうあったら最もいいのかということを決めていった方がいいと思っています。その意味では、一つ先ほど申し上げたのは今の検討段階のものでございます。
これからどうやっていくかということの精神としては、検討会議の報告の中で、国際的に活躍し得るすぐれた高度専門職業人及び研究者を養成していく上で大学院の重要性がますます高まっている、そんな中で大学院進学をちゅうちょするような人にインセンティブを与えていく、そういう精神であること。それから、大学院在学中の学修の成果等を適切に評価することによって、大学院生の質的向上のみならず、ひいては日本のあらゆる分野で中核的に活躍している人材を育成するんだ。私は、この精神をしっかりと反映した基準をこれからつくっていったらいいと思います。
ただ、あらゆるところで完全に平等で公平でなければいけないから、したがってその制度はよくないというあり方は、これはちょっとどうかなと思いまして、いい制度をどのようにつくっていくかということにおいて努力をしていく必要がある、そういう分野だと思っております。
○児玉委員 指摘しておきますが、もしこの法案が成立して、そして皆さんがある仕事をなさるとすれば、簡単に大学評価などという言葉は入れるべきでないですね。それは国立大学法人法のときに私たちはこの場所でとことん議論した問題ですから、その点は厳しく指摘しておきましょう。
その上で、短いスパン、せいぜい大学院で言えばドクターコースで五年でしょう。研究の有用性そして過去の実績、そういう形でもし評価がなされ、しかも、その評価が奨学金の返還免除という現実的な利益に結びつく、そのやり方で大学院での基礎科学がどうなっていくかというのは、これまで繰り返し議論をされました。私は、同様のことが社会科学にもあると思うんです。
ちょっと私は懐かしい本を持ってきましたが、これは石母田正という方の書いた「中世的世界の形成」という書物です。これが書かれたのは昭和十九年の十月です。太平洋戦争末期ですね。そして、場所は東京大学文学部国史学研究室、国史と言っても若い方はおわかりにならないかもしれないけれども、日本史ですね。そこの教授は平泉澄氏、皇国史観の鼓吹者だと私は今でも理解しています。そういう大学の中で、石母田氏が、伊賀国の黒田荘、東大寺領です、そこの荘園の歴史的過程を実に克明に描き出した。戦争中のあの時代ですよ。
そして、昭和十九年十月の初版の序で彼は何と書いたか。「荘園の歴史を一箇の人間的世界の歴史として組立てるためには、遺された歯の一片から死滅した過去の動物の全体を復元して見せる古生物学者の大胆さが必要である。」日本の歴史学者の中でこういう言い方をした人は、私の狭い範囲で言えばこの方が最初ですね。そして、そう述べた上で、「この大胆さは歴史学に必須の精神である。」こう述べている。皇国史観が君臨する研究室の中で、「年少の友人達が本書によってわれわれの祖国の古い歴史がけっしてそれほど貧困なものでないことを学んでくれることを希望している。」と。万邦無比の神国日本という言い方がされているときに、堂々と、我々の祖国の古い歴史が決してそれほど貧困なものでないことを学んでほしい、こういう研究が育ちましたね。
私は、これは戦前の大学の持っている可能性の一つだったと思うんです。これを今の時代に置きかえてみて、そして機構がこの基準をつくる、大学院に選考委員会ができて、この平泉氏がキャップになって選考するとすれば、日本のあの中世史の画期となったすぐれた業績が選ばれるかどうか、私はそこのところは大きな問題だと思うんです。
大臣、御感想でいいですから、どうですか。
○遠山国務大臣 私は、今回の制度というのは、学問的業績、将来どのように実り輝くかというようなことまで見通すことはなかなか難しい。例えば、将来ノーベル賞をおもらいになる方が、大学院の段階で本当に光り輝いているかどうかはおよそわからないわけでございます。
しかし、やはりインセンティブを持って、大学院生時代というのは、最も勉強してもらって、最も伸びる、特に理数系の方々はそうなんですね。むしろ人文社会系は、その後の蓄積というものが実ってそのようなすばらしいものをお書きになるとかというのが出てまいるわけでございますが、その大学院生時代という大変大事なときに、よし、一生懸命やって、そしてできるだけ多くの成果を上げて、そして自分は給費生といいますか免除をしてもらおう、そういうインセンティブを与えるだけでも、日本の若手研究者の育成にとって大変重要な施策であると思っております。
したがいまして、今委員が大変うんちくを傾けてお話しになりましたそれ自体、大変大事だと思っておりますが、政策判断においてどうやっていくか。私は、未来に対してすぐれた若手研究者を育成していくのに、よきインセンティブになるようなものはしっかりと導入していく、そのことは大変大事だというふうに思います。
○児玉委員 時間ですから、最後に一言述べたいんですが、石母田さんがこれを書いたのは若かったときなんです。決して中年で書いたんじゃありません。序文の中で書いているけれども、学窓を巣立って七年と書いています。
それで、最後に一言述べたいんだけれども、今、日本の高等教育というのは、現状にあっても学費負担の重さは世界一ですね。そして、奨学金制度の劣悪さという点でいっても、これはもう極めて残念な状態です。しかも、この法案の審議と並行して、今、国立大学、公立大学、高専の法人化の法案が審議されています。そこでは、学費のさらなる値上げも考えられ、さっき私、ちょっと厳しく言ったけれども、大学の評価というのは簡単にできるものじゃない。
○古屋委員長 質疑時間が終了しておりますので、簡潔にお願いします。
○児玉委員 そういう中ですから、私は、皆さんが提起されている法案の示す奨学金の将来像というのは、日本にとって後退はもたらすけれども、それ以外ではないという点を指摘して、終わりたいと思います。


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