2003年5月9日(金)「しんぶん赤旗」

返還義務ない奨学金を

参院委で林議員

国連人権規約の留保を批判


 日本共産党の林紀子議員は八日の参院文教科学委員会で、日本育英会を廃止し、独立行政法人とする日本学生支援機構法案について質問しました。

 林氏は、失業中の女性からの手紙を紹介しつつ、奨学金制度拡充の必要を訴え、高等教育無償をうたった国連人権A規約第十三条二項bおよびcを、日本政府が留保していることを批判。「締結国は百四十六カ国におよび、二〇〇一年には、留保の撤回の検討を要求する勧告が出されている。留保を解除していくべきではないか」とただしました。

 遠山敦子文科相は、「高等教育無償は一つの考え方で、すぐれた制度かもしれない」としながらも、「膨大な国費を必要とする。実現する裏打ちがない」と、学生とその家族の願いに背を向けました。

 つづけて林氏は、奨学金を利用する保証料として月二千―三千円を支払わせる制度(機関保証制度)を導入しようとしていることについて、「学生に新たな負担を押し付け、しかも信用保証会社には学生の個人情報まで売り渡される」と指摘。返還義務のない給付制の奨学金を検討し、当面、無利子の奨学金の拡充を求めました。遠山文科相は、「返還を通じて、学生の自立心、自己責任を涵養(かんよう)する教育的効果がある」とのべ、あくまで有利子奨学金を中心にした現行貸与制度を続ける考えを示しました。

参院 文教科学委員会会議録 10号

平成15年05月08日

○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 私も、今日は独立行政法人日本学生支援機構法案、質問をいたします。
 最初ですので、まず奨学金というのは日本でどのようにして実施されるようになったのか、その成り立ち、簡単で結構ですけれども、御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(遠藤純一郎君) お答えになるかちょっとあれですけれども、育英会、日本育英会について申し上げますと、昭和十八年という戦時下にあるわけでございますが、そこで優秀な学生で経済的理由により進学を断念する者が増加したということが憂慮されまして、国民教育の振興を図る議員連盟が中心となりまして財団法人大日本育英会が創設され、奨学金事業が開始されたということから始まったというふうに理解しております。そして、翌年の昭和十九年に特別法の制定によりまして特殊法人大日本育英会となりまして、そして二十八年には現在の日本育英会に名前を改めまして現在に至っているということでございます。
 それで、奨学金の事業の内容でございますが、創設当初は無利子の奨学金のみで事業を実施しておりましたけれども、高等教育の著しい拡大に対応した奨学金事業の拡充を厳しい財政状況の下で図るということから、昭和五十九年に財政投融資を活用し大学・学部、短大生を対象とした有利子奨学金制度が創設をされまして、以後、有利子奨学金につきましては、平成六年度には大学院修士課程を対象にするといったようなこと、それから平成十一年度には学生のニーズに適切にこたえられるようにということで抜本的な拡充が図られて今日に至っているということでございます。

○林紀子君 今お話にありました当初の議員連盟ですね、その会長さんの永井柳太郎さんという方が六十一年前の昭和十七年、国会でこういう演説をしたというのを私も拝見いたしました。「優秀ナル資質ヲ有スルニ拘ラズ、学資ノ乏シキ故ヲ以テ、其ノ資質ヲ錬成スル機会ヲ与ヘズ、空シク墳墓ニ下ラシムルガ如キハ、国家ノ損失是ヨリ大ナルハナシト言フベク、」、「国家ガ其ノ学資ヲ貸与シテ、教育ヲ継続セシムルノ途ヲ開クコソ、独リ人材ノ養成ニ対スル国家ノ要求ニ応フルモノデアルノミナラズ、又国家ノ政治ヲ正義ノ上ニ確立スル所以デアルト信ズルノデアリマス」。至って文語調で演説をなさったということですけれども、私はこの演説を読みまして、奨学金の制度というのが正義に立って政治を行うことなのだと、そういうことにはなるほどというふうに思ったわけです。
 私はここに二人の子供さんを持つ母子家庭のお母さんから寄せられた手紙というのを見ているんですけれども、受験勉強に励む我が子に進学をあきらめてとは言えません、私が失業中ではどこからも資金を借りることはできません、貧しい家庭の子は学ぶ資格がないと言われているような気がします、貧しい家庭では子どもに残してやれる財産は学問しかないと思っています、こういう内容で、奨学金制度の拡充を求める署名用紙に同封されてきたものです。
 六十一年前の、先ほど御紹介しましたこの永井演説の学資の乏しきゆえをもって教育の機会を奪われてはならない、こういう趣旨というのはそのまま今に引き継がれるべきものだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(遠山敦子君) お話しのように、現在の奨学金制度といいますものは、当初は、本当に優れた能力を持って、しかしながら経済的に十分でないというような人たちが学問を断念することがないようにということで創設されたわけでございますが、今日では学ぶ意欲のある者ができるだけ多くこの奨学金の制度の下に、経済、家計の経済状況にかかわらず勉学が継続できるようにということで、今鋭意この制度の拡充に当たっているところでございまして、私は、日本の育英制度というものは、当初から次第次第に拡充をされ、理念においても更に充実をし、内容においても発展の経過をたどりつつあるというふうに考えているわけでございますが、いずれにいたしましても、現在の奨学金事業というものをしっかりと引き継ぎ、そしてできるだけこれは更に充実をしていきたいというのが今回の独立行政法人化に際しての私どもの考え方でございます。

○林紀子君 リストラや倒産などといった状態でなくても、今、家計に占める教育費の割合というのはどんどん大きくなっていると思うんですね。
 もう一つ引用したいものがありますけれども、これは、「正論」という雑誌の三月号に、「日本人が消滅する日」という「衝撃リポート」の一節としてジャーナリストが、岩上安身さんという方が書いていらっしゃるんですけれども、あらゆる物価が下がり続けているのに、このデフレ時代にあって教育費のみが着実に値上がりし続けている。二〇〇四年度の国立大学、当初の費用は、初年度の納付金は、前年度よりも値上がりして八十二万二千八百円にもなる。三十年前の一九七〇年ごろと比較すると、約四十倍もの値上がりである。三十年間でこれほど価格が上昇した物財やサービスはほかにない。私大の学費も三十年間に十倍に値上がりしている。現在子供を大学に通わせている家庭の四分の一は、学費の捻出のために借金を背負っている状況であると。これはどこでも言われていることですけれども、こういう形で取り上げられております。
 そこでお聞きしたいと思うのですけれども、国際人権A規約の第十三条の二項(b)及び(c)、これは高等教育などを漸進的に無償にしていくこと、これをうたっているわけですけれども、この十三条二項(b)及び(c)を日本は留保をしておりますよね。日本のほかにどこの国がこれを留保していますでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 御指摘のように、国際人権規約のA規約の、高等教育の機会の確保に関します第十三条第二項(c)の規定の適用に当たりまして、この規定に言う、「特に、無償教育の漸進的な導入により、」といったような部分について、拘束されない権利を日本は留保をしておるわけでございます。
 ほかにどの国かというお尋ねでございますけれども、アメリカにつきましては、A規約自体を締結をしていないという状況でございます。それから、A規約のうち第十三条全体を留保している国としましてはルワンダ共和国がございます。それから、第二項全体を留保している国としましてはマダガスカル共和国があると、こう承知しております。

○林紀子君 アメリカが締結さえしていないということは確かなわけで、アメリカは、例えば京都の議定書などについても大変反するようなやり方をしているので、まあちょっとこれは除外をして考えますと、留保しているのは、ルワンダとマダガスカル、この二つプラス日本、三か国だけなんですね。そして、締約国というのは百四十六か国に及んでいるわけです。
 二〇〇一年八月にジュネーブでは、国際人権A規約についての日本政府第二回報告の審査が行われ、その結果、日本に勧告をいたしましたが、その勧告の内容というものはどういうことでしたでしょうか。

○政府参考人(永野博君) お答え申し上げます。
 一昨年の八月に公表されました「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解」におきまして、その中に「提言及び勧告」という項がございますけれども、その中で、第十三条第二項(b)及び(c)、これは無償教育の漸進的な導入のところでございますが、への留保の撤回を検討することを要求するという勧告が行われたというふうに承知しております。

○林紀子君 そもそもこの第十三条二項(b)及び(c)の留保の問題についてですけれども、これは先ほどこの奨学金、育英会の歴史の中でもお話がありましたけれども、昭和五十九年、改正をされたときにこの委員会で、国際人権A規約第十三条二項(b)及び(c)については、「諸般の動向をみて留保の解除を検討すること。」、こういう附帯決議がされております。
 このときから考えますとおよそ二十年近くたっているわけですけれども、この二十年の間にどういう検討をしてきたのでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 御指摘のように、昭和五十九年七月の附帯決議におきまして、この国際人権規約第十三条第二項(c)につきまして、「諸般の動向をみて留保の解除を検討すること。」とされているわけでございます。
 我が国におきましては、高等教育に係る経費につきましては、非進学者との負担の公平の見地から、当該教育を受ける学生等に対しまして適正な負担を求めるという方針を取っておりまして、昭和五十四年当時、従来の方針を変更して漸進的にせよ無償化の方針を取ることは適当ではないと、そういう判断から留保をしたものでございまして、この点につきましては、現時点におきましてもその状況は変わっていないと考えておる次第でございます。
 同規約の趣旨といたします高等教育の機会の確保という点につきましては、経済的理由により修学が困難となる者がないよう、奨学金事業あるいは私学助成の充実に努めているところでございまして、これらによりまして、大学、短大のほか、高等専門学校や専修学校専門課程を含めた高等教育機関への進学率は、昭和五十九年の五〇・三%から、平成十四年には七二・五%と着実に伸びているということでございます。

○林紀子君 そうしますと、具体的には、この二十年間、どうしたらこの留保を解除できるかどうかということについてはほとんど何にもしていないということなんですね。でも、本当に先ほどお答えいただきましたけれども、この条項、高等教育などを漸進的に無償にしていく。漸進的というのは、すぐ今日あしたやれというんじゃなくて、その方向に向かって進むということを考えろということで、そのことを留保しているのは先進国というところじゃないわけですよね、日本以外はマダガスカルとルワンダなんですから。本当に世界的に見ても恥ずかしいというふうにお考えにならないでしょうか。
 諸外国を見ましても、イギリスやフランス、ドイツなどでは大学の入学料や授業料は要らない、そしてアメリカ、フランス、ドイツなどでは奨学金の大勢は給付制ですね、返済の必要はないと、こういう状況になっているわけです。
 今お答えに、奨学金制度があるからいいんだというふうにお話しになりましたけれども、しかし日本はこの奨学金は給付制でもないわけですよね。先ほど永井柳太郎さんの演説を引用いたしましたけれども、そもそも奨学金を始めるときにも、奨学金制度を創設を検討するに当たりまず問題としたのは、給費、貸費のいずれかを取るか。このときからもう給費制度というのが必要だという、そういう認識にも立っていたわけなんですね。ですから、そういうことでは、もういい加減に留保を解除して、高等教育の漸進的無償の方向に踏み出していく、そういうことをすべきときではないかと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(遠山敦子君) 国際条約といいますか、規約というものにどういうふうに対処するかというのはその国の在り方でございますけれども、高等教育無償というのは一つの考え方だと思いますし、そのようにできれば、極めてそれは優れた制度であるかもしれません。
 しかし、日本の今の状況をお考えになりますときに、あの規約について留保をした状況とどのように変わっているでしょうか。二十年前といいますと、ちょうど経済状況も良くなった時期でございますし。しかし、今日の日本の状況の中で、もし無償というふうなことを実現しようといたしますと、膨大な国費というものが要ると考えざるを得ないわけでございます。国際的な規約の留保を解除しても、それを実現するというような裏打ちがないときにその留保を解除せよというお話というのは一体どうなのかというふうにも考えます。
 それから、諸外国のいろんな例を挙げられましたけれども、今、ドイツにおいても無償としていることのいろんな問題が噴出してまいっておりまして、これについては改定の動きもあるわけですし、その他の国々におきましても、例えば奨学金の在り方についても給付制ばかりではないわけでございまして、両方を、大体の国において給費制とそれから貸与制というものをやっている。
 私といたしましては、その規約の問題ということについて申し上げるというのもあれでございますけれども、いかにして今の状況の中でできるだけ多くの若者たちが、本当に学びたい意欲を持つ学生たちが学び続けることができるか、そこに着目をして育英制度、奨学金制度というものを充実していくということは非常に大事だと考えているわけでございます。
 そのような角度でいきますと、私どものいろんなこれまでの努力、それから先生方の御尽力もございまして、今日、日本の状況では、高校生については希望する者はほとんどすべて貸与できているわけでございますし、そして大学の学生あるいは大学院につきましても、こういう非常に厳しい状況でありながら、しかも進学率がこれだけ大きくなっている、膨大な学生の中で、また貸与を期待する者が多い中でも、ある程度の対応ができている状況でございまして、こういった状況をしっかりと守り、なおかつ更に努力をしてその充実を図っていくというのが私どものスタンスであるわけでございます。

○林紀子君 今、たくさんお話しいただきましたけれども、マダガスカルとルワンダ以外はこれを留保していない。つまり、何とか無償の方向に向かって努力をしようという、そういう立場なんだと思うんです。ですから、確かに大臣がおっしゃったように、留保だけ解除すればいいんだよということではないんです。その中身をどうするかということが大事なわけですけれどもね。少なくとも、そっちに向かって努力をする、そういう姿勢がないということなんだというふうに思わざるを得ません。
 次に、今回の法案は、日本育英会を廃止して国のほかの学生支援業務と統合して、新たに学生支援業務を総合的に実施する独立行政法人を設置すると、こういうことになっていると思います。しかし、なぜ日本育英会を廃止するのかということは明らかにされていないわけですよね。廃止する具体的な理由は何か、お聞かせください。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 今回の特殊法人改革でございますけれども、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしい簡素、効率的、透明な政府を実現する行政の構造改革の一環でございまして、改革に当たりましては、廃止、民営化を含めた見直しを行うということとされたわけでございます。
 この中で、日本育英会につきましては、一つにはその奨学金の充実を図るという政府の方針を前提とする一方で、実施体制全般についてより効率的、合理的なスキームへの見直しを行うということが一つございますし、もう一つには、奨学金事業と国や国立大学等で実施をしております学生の支援業務、これを統合をいたしまして、より広い視点に立って学生支援業務を総合的に行うことのできる体制を整備することが適当であるということで、平成十三年の十二月の特殊法人等整理合理化計画、これ閣議決定でございますけれども、ここにおきまして、特殊法人としての日本育英会は廃止した上で、新たな独立行政法人を設立するということとされたところでございます。

○林紀子君 しかし、独立行政法人という形が奨学金制度を充実していくのに本当にふさわしいものなんでしょうか。今回の法改正は、新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議、ここが出した報告が基になっていると思いますけれども、ここで強調されていることは、今、遠藤局長のお話にもありましたが、合理的、効率的、効果的な事業の実施、こういうことですね。
 独立行政法人というのは、中期目標を立てることになっております。特殊法人が独立行政法人になるに当たって、特殊法人等改革推進本部事務局というのが設けられておりまして、ここでは、財務内容の改善では、「定量的な目標設定を行うこと」、こういうふうに言っているわけですけれども、奨学金事業では、じゃ、中期目標というのは何かということを先ほど午前中の質問でもありましたが、はっきり分からなかったんですが、例えばこの奨学金事業では返還の回収率、こういうものも定量的な目標ということになるんですか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 独立行政法人の中期目標につきましては、ここで設定される法人の達成すべき目標がその法人が業務を実施する際の指針となるものであると、こう理解しておるわけでございまして、中期目標としてどういうことを定めるかということにつきましては、これからの検討課題なわけでございますが、その内容としまして、奨学金事業の事務実施につきましても、業務の内容、性格に応じた適切な目標を設定することが必要であるということでございます。
 今、返還率のお話が出ましたけれども、奨学生からの返還金が次の世代を育成する資金として循環運用されるということを踏まえますと、やはり返還率をできるだけ高くするということが大事でございまして、やはり中期目標の設定に際しましてはこういった観点からの検討も必要であるというふうに考えておりますし、また、先ほど申し上げましたように定量的な目標だけではなくて、例えば申請手続の簡素化の状況など、奨学金事業の性格に即した定性的な目標設定の在り方ということも検討していくことが必要であるというふうに考えておる次第でございます。

○林紀子君 奨学金の返還状況についてそれでは確認しておきたいのですが、一部の雑誌では、「「日本育英会」で奨学金一千五百億円焦げ付き」、こんなショッキングな見出しで、いかにも滞納が多過ぎるような報道がされております。
 先ほども、この日本育英会の回収状況どうなっているか具体的な数字上げられましたが、もう一度確認のためにお知らせください。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 平成十三年度末までの回収状況でございますが、これまでの累計ということで、要返還総額が一兆七千六百三十一億円に対しまして、既に九八%に当たります一兆七千二百七十五億円を回収をしているところでございまして、いわゆる未回収金は三百五十六億円ということでございます。
 ただ、これは返還期日を一日でも過ぎた額の合計でございまして、これがすべてもう回収不能ということではございませんで、これから返還を求めていくということでございます。

○林紀子君 ですから、九八%の回収、滞納は二%、そういうことでは大変この回収というのはすごい割合だなというふうに私などは思うわけですね。ところが、こういう事実を意図的にねじ曲げて千五百億円もの滞納があるというようなことを宣伝するというのは、一生懸命返還をしている人たちに対しましても、また回収のために努力をしている育英会の職員などに対しましても、冒涜だというようなことじゃないかと思いますが、どういう感想をお持ちでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 私どもは三百五十六億円が未回収額というふうに理解しておるわけでございますけれども、数字の取り方、これから返してもらうやつをどの範囲でくくるかということで数字が大きくなったり小さくなったりということがございますが、私どもは、先ほど副大臣からも答弁いたしましたように、三百五十六億という数字が未回収金実態と、こういうふうに理解をしております。

○林紀子君 それが実態ということでいいんですけれども、じゃ、どうして一千五百億円みたいな数字が出てくるのか。
 そのからくりというのは、例えば銀行などでは、三百万円を借りて、借り手が年間十万ずつ三十年間で元利返済すると、そういう契約である場合に、もし借り手が返済の一年目に十万円を滞納すると、銀行の方は貸した総額の三百万円全部を不良債権としてカウントする。だから、本来なら三百五十六億円であるはずなのに一千五百億円というような数字になってくる、そういうことなんだというふうに思うわけですね。
 そして、この独立行政法人といいますのは、企業会計原則で行うということについても書いてあるわけですけれども、そうしますと今、文部科学省の方はこの未回収額三百五十六億円だというふうに言っておりまして、それが正確だと思うんですけれども、企業会計原則でというようなことになると、銀行方式、今申し上げた銀行方式みたいな形になると、それは一千五百億円というふうにカウントされてしまうんでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 確かに、いわゆる銀行方式だと一千五百六十二億に、そういうカウントの仕方になる。要するに、一日でも、返還期日を一日でも過ぎたものについては全部、将来これから返還が来るようなやつまで全部ひっくるめて延滞債権額というカウントになるということのようでございまして、そういう意味での延滞債権額が一千五百億になっておるということでございます。

○林紀子君 ですから、独立行政法人という形になって企業会計原則で運営をしていくということになったら、この回収率というのも銀行方式になるんですか。そこを心配しているんですけれども。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 私もよく分かりませんけれども、こういう場面の数字はこうであるという、やっぱりそれぞれの数字というのはあると思いますけれども、私どもはとにかく頭の中にしっかり置いて、この未回収額幾らか、三百五十六億と、こういうふうに頭には入っております。

○林紀子君 それを心配してしつこくお聞きしているのは、例えば、先ほど御紹介した特殊法人等改革推進本部事務局の指針というのがありまして、それには具体的に「○○に関する未収金の回収を適切に進め、中期計画終了時に未収金残高を○億円とする。」と、こういうことを中期目標では具体例で書けというふうに示しているわけですよね。この「○○に関する」というのを、今度のこの学生支援機構に関する未収金の回収を適切に進めて、この一千五百億あるようなものを何億円にするんでしょうか、そういうものにしろ、そういうような形でぎりぎり回収率を上げろというようになったら大変だと思うんですね。
 そして、私が更に心配するのは、この独立行政法人になったからということで回収率を更に高めなければならないと、そういう発想から持ち出されてきたのが機関保証制度という、こういう制度ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) この機関保証制度といいますのは、本人の選択によりまして、奨学金貸与に当たって従来求めている連帯保証人等の人的な保証に代えまして、一定の保証料を保証機関に支払うことによりまして、返還について当該保証機関の保証を受けることが可能となる制度でございます。
 この意義でございますが、保証人の確保が困難な人につきましても、自分の責任におきまして一定の保証料を支払うことによって最長二十年間の保証を受けることができるようになる点にありまして、これによりまして学生本人の意思と責任による奨学金の貸与申請が可能となりまして、学生の自立の観点からも有意義ではないかと、こう考える次第でございます。
 また、これは従来のその連帯保証人等の人的な保証と学生の選択ということになっております。

○林紀子君 その保証料というのは幾らぐらいになるんですか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) 保証料につきましては、これは先ほどから御答弁申し上げておりますように、これからの検討課題でございまして、収支のバランスが取れるようにということで、そういう形で決めていくということになろうかと思います。

○林紀子君 はっきりしたお答えが先ほどからありませんけれども、事前に伺ったところでは月額二千円から三千円ぐらいになるんじゃないかというお話も聞きました。今、学生が連帯保証人をそろえられない場合だとか多重債務を防ぐんだなどというお話もありましたけれども、これはしかし、奨学金を利用する学生の立場に立った発想ではないと思うんですね。今までより、まだこれから幾らか分からないけれども、少なくとも二、三千円は毎月新たな負担が押し付けられるようになる。
 しかも、先ほどこれはお話ありました個人情報信用機関に審査というので学生の個人情報まで全部渡されてしまう。こんな制度を奨学金に、奨学金の制度に持ち込んでいいものなんでしょうか。

○政府参考人(遠藤純一郎君) この機関保証制度でございますけれども、連帯保証人等の人的保証が得られない、そのために借りられなくなる可能性もあるというような場合に、その本人の選択で連帯保証人ということに代わってこの機関保証制度を利用するということになるわけでございまして、これはあくまでどっちを選択するかというのは本人次第ということでございます。

○林紀子君 私はこの保証機関の問題も含めて考えるんですけれども、そもそも奨学金には保証人や連帯保証人というのは必要なんでしょうか。今、営業している中小企業にも無担保、無保証人の融資制度というのもある時代なんですよね。学生に対しましては教育的に返済の意義を訴えること、これがまず重要だと思うんです。
 私も高校時代からずっと奨学金をいただいておりました。就職をしましてから、給料をもらいましたら真っ先に奨学金の返済に郵便局に持っていっておりました。といいますのは、それまで、これは後の、後の世代の学生たちがこれを原資としてまた奨学金になるんですよというのをとことん言われていたわけですからね。私が返さないことによって後の人が迷惑したらそれはかわいそうだと、そういう気持ちがあったから、本当に一回も滞納なしでやったと思うんですね。だから、そういうことをきちんと教育的に言うことこそ必要であって、連帯保証人だ、この機関だというのを設けるというのはやっぱり違うんじゃないかなということを非常に思うわけです。
 しかし、滞納という意味では、今非常に経済状態も厳しくなっておりますし、学生も就職難ですから、確かになかなか返せないというような状況も生まれると思うんですけれども、しかし、これは学生の責任かといったら、そうじゃないわけですよね。こういう経済情勢の中にあると、もっと全体の大きな政府の責任、政治の責任ということだと思うんです。
 ですから、こういうときだからこそ、諸外国では当たり前になっている給付制の奨学金検討する、そして当面、無利子の奨学金を大勢にする、こういうことを考えていってほしいということを最後に大臣にお願いしたいと思いますが、どうですか。

○国務大臣(遠山敦子君) 是非、奨学金を受けている人が林先生をモデルとして、きっちりと返還をしてもらいたいものだと思います。
 育英会の奨学金は、制度の発足のときから貸与制で事業を実施しておりますが、私は、それは貸与制を用いることによりまして、返還金を循環させ、それによって、限られた財源の中で一人でも多く希望する学生に対してこれを使ってもらうことができるようにするということ。それから、おっしゃいましたように、返還というものを通じながら学生の自立心なりあるいは自己責任というものを涵養していく、そういう教育効果が期待できるということから、私、これは大変意義のある制度だと思っております。
 今お話しの、給付制を導入しろというお話でございますが、今の非常に厳しい状況の中で給付制ということになりますと、これはもう私は、対象がどうしても減っていくようなことに連動しかねないわけでございまして、継続的に適切な事業規模を確保する必要があるわけでございまして、これは慎重に対応すべきものと考えております。
 それから、無利子奨学金も大勢にすべしということでございますが、これも奨学金の受ける対象の規模というものを考えますと、私としては、その無償、無利子奨学金についても拡充を努力をしながら、しかし全体として奨学金を利用できる人を増やしていく、そのことの方が当面の主な課題だというふうに考えております。

○林紀子君 まだまだお聞きしたいことがありますが、時間になりましたので、引き続きお聞きするということで、終わらせていただきます。
 ありがとうございます。

 
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