2002年6月7日「しんぶん赤旗」より

「内心の自由守られなくてはならない」

「日の丸・君が代」強制で文科相

児玉議員が質問


 日本共産党の児玉健次議員は5日の衆院文部科学委員会で、1999年に成立した「日の丸・君が代」法をめぐる学校現場での「内心の自由」について遠藤敦子文部科学相の見解をただしました。

 児玉氏は、同法法制化に当たって小渕恵三首相(当時)が衆院本会議で“国旗・国歌”を義務付けないから「国民の生活に何ら影響や変化を生ずることにはならない」と答弁していることを示し、ここでいう「国民」に児童、生徒、父母、教職員が含まれるかと質問。遠山文科相は「教員、児童、生徒も含まれる」と答弁しました。

 その上で児玉氏は、北海道の札幌南高校の例をとりあげました。同校では新任の校長が、今年3月の卒業式から新たに「君が代」斉唱実施の意向を示したことから、高校3年生が意見をまとめました。

 それは、「卒業式の場で『君が代』を流すと、『歌う』か『歌わない』か、『立つ』か『座る』かの意思表示を大勢の前でしなければならなくなり、個人の意思について表現したくない人まで表現を強制される」というもの。

 児玉氏は、生徒のこの意見は憲法によって絶対的な保障を受ける「内心の自由」の本質に深くふれたものだと指摘し、同相の見解をただしました。

 遠山文科相は「良心あるいは思想の自由は、憲法上の個人の『内心の自由』として絶対に守られなくてはならない」と答えました。

 児玉氏は、根本問題として、法律が強制しないものを学習指導要領で強制できるのかとただしました。遠山文科相は「学校における国旗・国歌の指導は、学習指導要領に基づき、強制ではない」と答えました。


154-衆-文部科学委員会-13号
2002年06月05日
児玉健次議員 質問部分 会議録


平成十四年六月五日(水曜日)
    午前十一時四分開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君
   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 増田 敏男君
   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 武山百合子君
      伊藤信太郎君    小渕 優子君
      岡下 信子君    近藤 基彦君
      杉山 憲夫君    高市 早苗君
      谷田 武彦君    中野  清君
      馳   浩君    林田  彪君
      松野 博一君    松宮  勲君
      森岡 正宏君    森田 健作君
      森田  一君    大石 尚子君
      中津川博郷君    中野 寛成君
      中村 哲治君    藤村  修君
      牧  義夫君    牧野 聖修君
      山口  壯君    山元  勉君
      池坊 保子君    西  博義君
      佐藤 公治君    石井 郁子君
      児玉 健次君    北川れん子君
      中西 績介君    山内 惠子君

    …………………………………

   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    加納 時男君
   政府参考人(内閣府政策統括官)   大熊 健司君
   政府参考人(総務省大臣官房総括審議官)    板倉 敏和君
   政府参考人(文部科学省生涯学習政策局長)   近藤 信司君
   政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)   矢野 重典君
   政府参考人(文部科学省高等教育局長)     工藤 智規君
   政府参考人(文部科学省科学技術・学術政策局長)山元 孝二君
   政府参考人(文部科学省研究振興局長)     遠藤 昭雄君
   政府参考人(文部科学省スポーツ・青少年局長) 遠藤純一郎君
   政府参考人(文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人(厚生労働省大臣官房技術総括審議官)今田 寛睦君
   政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官)    鶴田 康則君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
    ―――――――――――――
六月四日

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件
 文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律案(内閣提出第九〇号)
 文化財保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)
 文部科学行政の基本施策に関する件
     ――――◇―――――

○河村委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

○河村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。

    ―――――――――――――

○河村委員長 児玉健次君。

○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 先ほど武山議員も取り上げられたようですが、昨年四月に始まった情報公開法に基づく情報公開について、この業務には全く関係のない、必要のない請求者の個人情報を盛り込んだリストが防衛庁内で作成されて、憲法が保障する国民の人権が不当不法に侵害された、こういう事実が明らかに出ています。
 文部科学省にあっては、情報公開の権限は遠山大臣がお持ちです。そして、大臣の委任を受けて情報公開の業務が行われている。文部科学省に対する情報公開の請求は、五月三十日現在で二千百四十二件だと承知をしております。
 昨日の新聞に出ていますが、内閣官房及び内閣府は既に調査をして、防衛庁のようなリストは作成していないということを明らかにしております。文部省ではどうか。
 まず、遠山大臣にお聞きしたいのは、防衛庁で明らかになっているあのような事態をあなたはどのように認識しているか、これが第一です。二つ目は、文部省での情報公開請求者のリストはどのように扱われているか、二点についてお答えを求めます。

○遠山国務大臣 第一の点でございますけれども、私は、行政機関におきましては個人情報の慎重な取り扱いに配慮すべきだと考えております。それは、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律、これの四条、九条、十二条にわたりましても書いてございますように、まず第一に、個人情報の保有は所掌事務の遂行に必要な場合に限られること、第二に、保有目的以外の目的のために利用、提供してはならないこと、第三に、職員は業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせてはならないことということが法律上明記されておりまして、私どもとしてはそういうことをしっかり守って行政を行っているところでございます。
 このたびの防衛庁の問題につきましては、防衛庁におきまして事実関係を調査中と伺っております。今申しました私の考え方からしますと、職務遂行上必要のない請求者の個人情報を把握することによって国民の間に不安や混乱を招いているとすれば、それは遺憾なことであると思っております。
 それから、第二の点でございますけれども、私の方で承知いたしております我が省関係の開示請求の件数は、昨年四月の情報公開法施行から本年五月末までの間に二千三十五件と押さえております。
 文部科学省といたしましては、情報公開法に基づきまして、開示請求者から氏名、住所、連絡先、請求する行政文書の名称などを記載した開示請求書の提出を受けまして、担当課において期限までに開示、不開示の決定を行う、そして開示請求者に対し通知をしているところでございます。開示請求書に記載されている以外の開示請求者の個人情報を収集したり保有したりしていることはございません。
 なお、文部科学省では、開示請求がありました場合に、開示請求の進行管理、きちんと請求があったものに対してこたえているかどうかなども含めまして、その進行管理のために、情報公開室、これは我が省のこの問題に関する窓口でございますが、そこで、開示請求書に記載しております開示請求者の、先ほど申しました条件、氏名とか住所、連絡先、請求のあった行政文書名のほか、開示決定期限などを一覧にした情報公開事案管理簿を作成しておりますけれども、これはまさに請求のあったことについてのきちんとした記録でございまして、この管理簿は担当者限りで使用いたしておりまして、他の部局が閲覧できるシステムとはなっておりません。その情報公開室で取り扱っているものにつきましては、さきの御質問にもお答えいたしましたけれども、私どもといたしましては、その件について何ら問題はないというふうに把握をいたしております。
 他方で、片山総務大臣の方から、各省庁において請求者に関するリスト作成調査を依頼してこられました。そのことから、目下、我が省のみならず、関係の機関においてどうなっているかということについての調査を行っているところでございます。
 調査の内容につきましては、リストの名称あるいは作成部署、利用目的、請求書記載事項以外の情報記載の有無、作成部署以外の部署への提供の有無などでございまして、そのことについて目下調査を行っているところでございます。

○児玉委員 今問われているのは、憲法が保障する一人一人の国民の権利に対してその省庁がどれだけ厳格な態度をとっているか、その問題です。
 今大臣のお話は、現時点でのこととして承っておきましょう。この後は、この後の推移を見たい、こう思います。
 そこで、国旗・国歌に関する法律が成立してもうすぐ三年が経過いたします。私は、石井郁子議員とともに、当時内閣委員会で中心になって審議されたその論議に参加した者として、国会審議の内容を振り返りながら、最近学校で起きている事態について遠山大臣に質問します。
 まず最初に伺いたいのは、これは九九年の六月二十九日の衆議院本会議、小渕首相、もちろん当時です。小渕首相が、今回の法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務づけを行うことは考えておらず、したがって、国民の生活に何らの影響や変化を生ずることにはならないと考えている、こう述べました。
 小渕首相が言う国民には、当然、児童生徒、父母、教職員も含まれていると思うが、どうですか。

○遠山国務大臣 国旗・国歌の法律の関係は、審議の様子を、私は、在トルコの特命全権大使としてトルコに駐在しておりましたときにそのニュースが流れるのを聞いて、感慨深く思った記憶がございます。
 したがいまして、そのときは日本におりませんでしたけれども、今御指摘の点について、当時の記録を今出してみましたところ、小渕内閣総理大臣は、日本の国民として、学校教育におきまして、国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てることは極めて重要であることから、学習指導要領に基づいて、校長、教員は、児童生徒に対し国旗・国歌の指導をするものであります、このことは、児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものではなく、あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことを意味するものでございます、この考え方は、平成六年に政府の統一見解として示しておるところでございまして、国旗・国歌が法制された後も、この考え方は変わるところはないと考えますというふうに記録をされているところでございます。
 その趣旨は、あくまでも教育指導上の課題としてこのことについて指導を進めていくということを意味する、そのことについては法制化の後も変わらないという趣旨と私は読んでおります。

○児玉委員 あなたがトルコにいらっしゃろうとどうしようと、現大臣として当時の審議に対しては責任を負わなきゃいけない。
 率直に言いますけれども、質問に答えてほしいんです。私が聞いたのは、国民の生活に何らの影響や変化が生ずることにはならない、この国民に児童生徒や教職員、父母が入るか入らないか、そのことを聞いているんです。どうですか。

○遠山国務大臣 当時の内閣総理大臣談話の記録がございますけれども、その中で、今回の法制化、これはそのときの法制化でございますが、これは、国歌と国旗に関し、国民の皆様方に新たに義務を課すものではありませんが、本法律の成立を契機として、国民の皆様方が、日章旗の歴史や君が代の由来、歌詞などについて、より理解を深めていただくことを願っておりますということを中心にしながら、前後幾つかのことを述べておられます。
 私としては、この記録は、そういうことで今読ませていただいております。

○児玉委員 国会の会議録というのはいいかげんなものじゃありません。別の文書を持ってきてそれを紹介するというやり方はフェアでない。
 私が言っているのは、さっき日付も言ったとおり、本会議のこの文章で言っている国民の生活、その範囲に子供や教職員や父母が入るか入らないか、らち外なのかどうか、その点です。端的に答えてください。

○遠山国務大臣 私どもの記録を収録した文章の中にはそのことは述べられておりませんが、今委員がおっしゃいますから、小渕総理がそのように答えられたと思います。
 それで、その中であれば、それは国民が含まれているということであると考えます。

○児玉委員 あなた、今言い間違えました。国民がではなくて、訂正してください。

○遠山国務大臣 国民に教員それから児童生徒も含まれるという趣旨であろうかと思います。

○児玉委員 そこで、ことしの三月の卒業式ですが、北海道の札幌南高校で、新たに赴任された校長さんが、この三月の卒業式から君が代を実施したい、こういう意向を表明した。それに対して、受験直前期にあった高校三年生の諸君が、随分時間を割いて議論をして、次のような意見を取りまとめました。さまざまな意見の持ち主ですから、ある生徒は、サッカー場で見る日の丸には心を動かされる、こうも述べ、そして別の子供は、しかし卒業式でそれが出てくるのはどうかとか、さまざまな議論があった。そして、それらは次のような言葉で集約されました。
 私たちは、君が代に反対なのではなく、君が代を卒業式の場で強制することに反対なのです。卒業式は、三年間をともに過ごしてきた友達と喜びを分かち合い、それぞれの一歩となる大切な場です。この場で評価の分かれる君が代を実施強制することが、教育なのでしょうか。卒業式の場で君が代を流すと、歌うか歌わないか、立つか座るかの意思表示を大勢の前でしなければならなくなり、個人の思想について表現したくない人まで表現を強制させられることになります。これは隠れキリシタンを見つけるために行われた踏み絵と同じです。
 こういうふうに彼らは意見をまとめました。
 私は、これを拝見して、憲法によって絶対的な保障を受けている内心の自由の本質に深く触れたものだ、こういうふうに思いますが、大臣はどのように理解されますか。

○遠山国務大臣 学校での子供たちの意見でございますので、学校ではどのようにこの問題について対処すべきかをまず述べたいと思いますが、学校は児童生徒の発達段階に即して教育を施すことを目的とするものでありまして、校長、教員は、関係の法令や上司の職務上の命令に従って教育指導を行わなければならない職務上の責務を負うものでございます。
 そういうことから、学習指導要領につきまして、それぞれの学校の教育課程の基準として、これを法規としての性質を有するものとして、それぞれの学校において、式典において、そこで必要とされている国旗・国歌についてこれを実施していくという状況下にあるわけでございます。
 一方で、良心あるいは思想の自由というものは、それは憲法上の個人の内心の自由として、これは絶対的に認められたといいますか、あるいは守られなくてはならない、そういうものであるわけでございます。他方で、学校がその指導上のあり方として国旗・国歌をきちんと式典において用いるということについて、強制することは許されませんけれども、それが内心の自由にとどまる限り、私は、それぞれの生徒がどのように考えてもそれは許されると思うわけでございますけれども、学校における指導のあり方として、国旗・国歌についてきちんとこれを対応するということは、それは学校としてのあり方として、そうあるべきであるというふうに考えている立場でございます。

○児玉委員 今あなたがおっしゃった、内心の自由は保障されるけれども、それなりに学校で君が代・日の丸に子供も対応しなければならないという趣旨の政府発言は、あの間の衆参を通じてただの一回もされていません。
 子供たちは、内心の自由を保障する。内心の自由とは何か。今、多くの憲法学者の共通の考えは、第一に、国家が特定の思想、信条、倫理的価値観を個人に強制すること、それをしないことです。第二に、国家が個人の内心における思想、倫理観の告白を強制したり、あるいは内心を推知させる何らかの行為を強制すること、これが内心の自由に対する侵害ですね。
 ですから、子供たちは、この札幌南高校でも校長がその点は明言しましたけれども、あなたたちの内心の自由は完全に保障する、歌う歌わない、立つ立たない、それはあなたたちの自由だと。
 あなたは今それに踏み込みましたよ。対応するというのは、どのように対応するというんですか。

○遠山国務大臣 私は、強制力をもってその内心の自由を侵すということは絶対にしてはいけないということを申し上げたわけでございます。
 それぞれの学校におきまして、児童生徒の思想、良心を制約するということではなくて、しかし、それは、教育の目的を達成するために指導を、教育指導として、それぞれの学校において判断した学習指導要領に基づく指導を行っていくということについては、私は、それは学校のあるべき姿だということを申し上げたわけでございます。

○児玉委員 もう一回はっきりさせますけれども、そのような指導に対して、子供がごく平穏に、冷静に、それぞれの内心の自由に即して行動することは完全に保障されています。どうですか。

○遠山国務大臣 それぞれの児童生徒が、内心の自由といいますか、それぞれの考え方を持っているということはもちろん許されるわけでございます。

○児玉委員 多少私は言葉に、こういう性質の議論のときは厳格でありたいと思うんですが、許されるという性質のものだろうか。それは尊重されるべきものではないですか。

○遠山国務大臣 思想、良心の自由は、それが内心にとどまる限りにおいては保障されなければならないわけでございます。その意味では、それは尊重されるというふうに言うことができると思います。

○児玉委員 三年前の議論は、そんな程度のものじゃありません。内心の自由は、その人の、その子供の胸に手を突っ込んで探るわけにはいかないんですから、どういうことを考えているかということは見えません。
 先ほどの憲法学者の言葉のように、内心を推知させる何らかの行為を強制しない、それが当時の国会での論議の一つの到達点でした。だから、例えば有馬文部大臣などは、口をこじあけて歌わせるようなことは絶対してはならない、これはもう言うまでもないことであって、子供がその場をもし立ち去る、そのときも、式が終わった後、静かに戻っていただいて、名を挙げてそれを非難するようなことは決してしてはならない、こう述べているんですよ。どうですか。

○遠山国務大臣 何度も答弁いたしました、強制的にその内心の自由を束縛するようなことをしてはならないというのはまさにそういう意味でございまして、殊に物理的に、強制的に席を立たせる、ないし口をこじあけてなんというのはとんでもないことでございまして、そのようなことをもちろん許されるものではないと思います。

○児玉委員 そこで、札幌南高校の状況ですが、昨年の十二月五日に、三年生が中心になって百五十人集まって、校長その他と三時間議論をした。十二月十日に、百三十人の生徒と四時間の意見交換をした。その席で校長さんは、このような会議は今後実施の予定はないと言って、生徒との話し合いを打ち切りました。
 私は、個々の細かな事態について今触れようと思っていません。それは非常に詳細な、それこそこの前、瀋陽事件で私が川口さんとやった時系列のあの表が出ていますから、それは双方争いがない。
 そこで、問題は、十二月十九日に、生徒有志の申し立てによって、札幌弁護士会が、申立人たる生徒と、そして相手側たる校長、教頭から事情を聴取し、そして学校が配った幾つかの資料を受け取り、そして北海道大学法学部の中川明教授から法律的意見を聴取した上で、ことしの二月十四日に、札幌弁護士会田中宏会長が校長あてに勧告を行いました。(発言する者あり)
 委員長、済まないけれども、議論の最中に私語をしないようにちょっと注意してください。

○河村委員長 ちょっと、静粛に拝聴してください。

○児玉委員 その勧告とは何か。非常に簡明なものです。
 「卒業式の運営にあたり、申立人ら生徒を、その決定過程の重要な参加メンバーとして、生徒らの意見を真摯に受け止め、今後も生徒らに対し、さらに十分な説明と協議を行い、納得を得られるよう最大限の努力を続けることを勧告する。」これまでの国会論議で一部あったような子どもの権利条約の十二条、十四条について云々だとか、そういったものは立論の経過の中では含まれているけれども、勧告の中身は今述べたとおりです。
 申立人ら生徒を、その決定過程の重要な参加メンバーとして、生徒らの意見を真摯に受けとめ、今後も生徒らに対し、さらに十分な説明と協議を行い、納得を得られるようにすべきだ。私は、この勧告は学校にとっても至当なものであって、受け入れがたいものとは考えられないと思うんですが、いかがですか。

○遠山国務大臣 私は、個別の、それぞれの地域におきますさまざまな文書をすべて目を通すいとまはございませんで、今お話でございました勧告そのものは、私の手元にありますものでいいますと、その札幌弁護士会の勧告は、校長が児童の権利条約第十二条等を侵害しているとの内容であるというふうに聞いておりますが、今委員がお話しになりましたのは、恐らく、それを読みますと、そのことであるよりは、むしろ簡明なものであるというお話でございます。
 やはり国旗・国歌の指導を含みます教育課程の編成といいますものは、学校の判断と責任において決定されるものでございます。その意味で、私は、その校長先生は二回にわたって生徒の意見も聞いたというふうなことも聞いているわけでございます。生徒の意見も聞いた上で、そして学校として判断をしていくというのが、これは学習指導要領に基づいた行き方であろうかと考えているところでございます。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

○児玉委員 事実というのは二つありませんね。勧告書というのは全部で三十二ページにわたるもので、勧告の本文の結論のところはさっき私が読んだところです。後ほどしっかり読んでおいてください。
 そこで、もう一つの問題について提起をしたいと思います。
 先ほどの勧告の特徴は何かといえば、憲法十九条や子どもの権利条約十二条、十四条などを立論の過程ではいろいろ触れているけれども、勧告の勧告たる部分については、生徒と十分話し合って行うべきではないかという勧告なんです。そこのところをあなたは読み違えるはずがないので、ぜひ正確に見てほしいと思うんです。
 私はここに、今度の情報公開に関連して出されてきた、神奈川県の、一昨年三月の卒業式の実施状況について県教委に提出した文書を持っております。ごらんのとおり、一カ所が墨で黒くつぶされている。これは、卒業式の実施状況について一昨年校長が県教委に出した文書で、その末尾のところに、その他、何かあったらお書きください、その部分の記入欄が塗りつぶされているんですが、情報公開によってこれが公開されました。つぶされていないものが公開された。
 当時二年生であった男性がそれを見て、この黒くつぶされた記入欄のところに、過激な発言をする生徒がおり説得に時間を要したなどと書かれていて、そして、前後の事情から、過激な発言をする生徒が自分自身のことである、そのように特定できる、そう考えてその部分の削除を県教委に求めたら、県教委が削除を拒否したために、神奈川県個人情報保護審査会に対してその箇所の削除を申し立て、この五月十七日、神奈川県個人情報保護審査会は神奈川県教委にその部分の情報を削除すべきであるとの答申を行いました。既に質問の準備で予告していますから、あなたは御存じだと思うんです。
 そこで、三年前に私は、当時の官房長官である野中広務氏とこういう議論をしました。当時、与党の幹部から、君が代・日の丸について賛成しないという主張は特殊な思想だ、過激な人たちだという言葉が続いたことがあります。それで私はそのことについて野中氏の感想を求めた。彼はこう答えた。会議録ですから厳格です。
 我が国は残念ながら誤った道を一九四五年まで歩むことになったわけでございますから、そういう経験と反省の上に立って、これはやりとりの中で、ある人間は非国民と名指しし、こちらの人間は過激な思想だと言う、そうやって排除するような、そういったことに対する経験と反省の上に立ってさまざまな御意見があることを私どもとしても謙虚に承知をいたしております、こう答えた。この瞬間、私は多少野中氏と心が通ったように思いました。戦前に対する痛切な反省を一部に込めた真情の吐露だと私は当時感じました。
 そこで言いたいんです。
 学校長が卒業式の前日に国旗掲揚、国歌斉唱に反対した生徒を特定して、過激な発言をする生徒、こういうふうに報告書に記載するような行為が教育者としてあっていいことかどうか、これが事柄の大きな本質です。そして、非国民だと言えばある人物を社会的に抹殺することができる、ああいう暗い時代を繰り返させてはならない、言ってみれば、これが今私たちの共通の土台ですから、そういう立場に立てば、神奈川県の個人情報保護審査会のその箇所を削除すべきであるとの答申は適切、公正な判断だと私は考えます。遠山大臣はどのように受けとめますか。

○遠山国務大臣 御指摘の事案につきましては、平成十一年度、卒業式の実施状況の調査票に個人情報が含まれるとして、昨年一月、不服申し立てがあり、本年五月に、県個人情報保護審査会が当該個人に係る情報の削除を求める旨の答申を出したものと聞いているところでございます。
 神奈川県教育委員会は、このような記載については個人情報に当たらないと考えていたようでありますが、県個人情報保護審査会が当該内容の削除を答申したということを踏まえて現在対応を検討中であると聞いております。
 私自身はその具体的な事情を十分とらえておりませんので、これはコメントは差し控えるべきと思いますが、我が省としましては、県の教育委員会の対応を見守っていきたいと考えています。

○児玉委員 それは見守っていただきたいですね。
 ちなみに言えば、この種の答申を神奈川県で拒否された前例はありません。
 それで、私が言いたいのは、子供たちに対する内心の自由、内心の自由を尊重するといいながら、教師を通してある種の学校行事に対して大きく流し込んでいくような態度、それは結局父母に対しても及んでいくことになる。
 ことしの四月の大阪府立高校の入学式、この入学式には府教委の職員が派遣されて、そして状況をつぶさに観察し、入学式状況票なるものを府教委に提出する、こういうものです、なかなか詳細ですね。
 ある高校について言えば、起立した者、起立したか起立しなかったかがこうやって問われるわけだけれども、新入生十割、教職員十割、4の項にPTA役員という項目があって、会長のみ立たず、こう書いてあります。PTA会長というのは一人しかいませんから、どなたかということはすぐわかる。そして、この入学式状況票なるものも情報公開により開示されて、そしてそのPTA会長さんであるということが明らかになる。
 府教委はどういう態度を述べているか。入学式でPTA会長の行動という個人が特定できる中で、PTA会長がとられた行為は、他人に知られたくないと望むことに当たらないと府教委は一方的に判断していますね。そして同時に、府教委は、不必要な個人情報を提供したということはあるが、思想、良心の自由を侵害したとは思わない。
 私は、この経過を見て、非常に腹立たしいというよりは寂しい思いがしました。個人の内心の自由を侵害しておきながら、それを侵害したと感じ取ることができない人物が教育行政の中にいるのかという思いです。閉鎖された社会の中でしか通用しないいびつな意識が、もしかしたら一部の教育行政を支配しているのではないか。この状態を速やかに改めなければならない。
 このケースのように、PTA会長の名前がわかる、私はあえてそれが何という高校かというのはここでは申しませんが、そういう事態が今現実に進んでいることについて、文部大臣はどうお考えですか。

○遠山国務大臣 御指摘の点は、大阪府教育委員会が、ことしの入学式の実施状況につきまして、管下の学校について調査をした際のことと承知しております。ある高等学校の調査票に、国歌斉唱時に起立しない来賓がいた旨の記載があったようでございます。
 この調査票につきましては、情報公開によって全校、調査票を開示した際に、個人が特定できるとの指摘を受けて、府教育委員会は、検討の上、不必要な記載であることから、その記載部分を削除したという報告を受けております。
 一般的に言いまして、教育委員会が管下の学校に対して教育課程が適切に実施されているかを調査することは必要なことでございまして、その中で書かれたことについての今回は対応がなされたというふうに考えているところでございます。
 その調査につきましては、あくまで、児童生徒、教職員はもとより、保護者の内心にまで立ち入ろうとする趣旨のものではないと承知はいたしております。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

○児玉委員 遠山大臣、今のお話は、さっき私が言った特殊な社会の中でしか通用しないいびつな意識だと私はあえて指摘せざるを得ません。普通の民主主義の感覚がある者であれば、大体こういう記入はしません。そして、この記入されたものがそのまますうっとある省庁の中を通り抜けていって、だれも事柄の特異性に気がつくことなくここまで事態が推移する、そこに今日の日本の教育状況の深刻さがあります。
 今私が挙げた事例は、本当に氷山の一角でしかありません。私はあなたに言いたい。このような状況は日本の学校教育にどんな状況を生み出しているか。多数の子供や教職員、父母に対しては精神的な苦痛を、教育行政の担当者や校長さんの中には極端な精神的退廃を生み出している。
 そこで、私は最後にあなたに二つの根源的な問題を提起して、答えを求めたいんです。
 その第一は、法律で強要できないものがどうして学習指導要領によって強要することができるのかという根源的な問題です。もう一つの問題は、最高法規である憲法十九条があらゆる留保なしで絶対的に保障している内心の自由を学習指導要領で制限し、侵害することが許されるのか。この二つの根源的な問いかけに対してあなたはどう答えますか。

○遠山国務大臣 学校におきます国旗・国歌の指導は、学習指導要領に基づきまして、これは強制ではなく、児童生徒に我が国の国旗及び国歌の意義を理解させてこれを尊重する態度を育てる、同時に、諸外国の国旗及び国歌に対して尊重する態度を育てるというために行うこととしていることでございます。
 国旗・国歌の指導は、憲法、教育基本法に基づいて、人格の完成を目指し、民主的、平和的な国家及び社会の形成者としての国民の育成を目的として行われるものでございまして、憲法十九条に定めている思想、良心の自由を制約しようとするものではなく、同条には違反しないと考えるものでございます。
 きのうワールドカップがございまして、日本・ベルギー戦がございました。私も担当大臣でございますので会場に行きまして、日本の国歌が流れましたときに、みんなほうはいとして立ち上がって、六万人近い人たちが君が代を歌い、日の丸の旗を揺らがせて、そして日本国民であるということに誇りを持ってあのスポーツ大会を楽しんでいた。そういうのが私は多くの国民の心情であろうかと思っております。
 そういうことは本当に大事なことでございまして、学校教育の場を通じてもいろいろな機会にそういうことへの関心を持たせていくということはしっかりとやっていかなくてはいけないなと思ったところでございます。

○児玉委員 時間ですから、最後に一言。
 あなたが今おっしゃったことについて言えば、私もこの原稿を書きながらあれを見ていまして、鈴木選手が見事に飛び込んで一点を入れたときはとてもうれしかったですよ。そして、さっき言った札幌南高校の生徒の言葉をもってあなたに、お答えにしましょう。サッカー場で見る日の丸はすばらしいけれども、卒業式の場にそれを持ち込まれることは私は反対だ。そこが一つなんです。
 もう一つ、私のあなたに向けた二つの問いかけにあなたは一つも答えていない。学習指導要領は大綱的基準だと言っていたものを、あなたたちは今、最低基準だと言い出しているじゃありませんか。その最低基準で、法律で強制できないものがどうして強制できるのか、そのうち答えていただきたいと思います。
 終わります。 


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