文化庁は文化財保護の立場で臨め

埋蔵文化財を破壊する平城京跡地下トンネル計画に

石井議員


 日本共産党の石井郁子衆院議員は六月五日の文部科学委員会で、奈良平城京跡地下に高速道路トンネルを建設する問題を取り上げ、文化庁が文化財保護の立場で問題に関わるよう求めました。国土交通省が調査を進めてトンネル建設への既成事実を積み上げている中で、木簡や遺構など埋蔵文化財の宝庫で世界遺産にも登録されている平城宮・平城京跡は、文化財を守っている地下水がトンネル建設によって影響を受け、破壊が危惧されています。

 石井議員は平城宮・平城京跡の文化財としての価値が埋蔵文化財にもあることを確認し、「ユネスコがトンネル建設による埋蔵文化財の破壊を危惧している。文化庁はトンネル計画が埋蔵文化財を破壊する危険があると認識しているか」と質問。銭谷文化庁次官は「平城宮跡の地下遺物はきちっと保存しなければならない。トンネル計画は確定された段階ではないが、影響は十分検討したい」と答えました。

 石井議員は、国交省の地下水検討委員会が五人そろって出席したこともないのに「文化財への影響は少ない」と結論していることを指摘、文化庁の主体的な対応や保護団体の意見を尊重するよう求めると、銭谷次官は「トンネル建設は調査段階で、是非を言うのは時期尚早」としながらも「文化庁は国交省に対して問題点を説明し、世界遺産を損傷しないように慎重に検討を行なうよう要請している」と答弁しました。


154-衆-文部科学委員会-13号
2002年06月05日
石井郁子議員 質問部分
採決部分 会議録


平成十四年六月五日(水曜日)
    午前十一時四分開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君
   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 増田 敏男君
   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 武山百合子君
      伊藤信太郎君    小渕 優子君
      岡下 信子君    近藤 基彦君
      杉山 憲夫君    高市 早苗君
      谷田 武彦君    中野  清君
      馳   浩君    林田  彪君
      松野 博一君    松宮  勲君
      森岡 正宏君    森田 健作君
      森田  一君    大石 尚子君
      中津川博郷君    中野 寛成君
      中村 哲治君    藤村  修君
      牧  義夫君    牧野 聖修君
      山口  壯君    山元  勉君
      池坊 保子君    西  博義君
      佐藤 公治君    石井 郁子君
      児玉 健次君    北川れん子君
      中西 績介君    山内 惠子君

    …………………………………

   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    加納 時男君
   政府参考人(内閣府政策統括官)   大熊 健司君
   政府参考人(総務省大臣官房総括審議官)    板倉 敏和君
   政府参考人(文部科学省生涯学習政策局長)   近藤 信司君
   政府参考人(文部科学省初等中等教育局長)   矢野 重典君
   政府参考人(文部科学省高等教育局長)     工藤 智規君
   政府参考人(文部科学省科学技術・学術政策局長)山元 孝二君
   政府参考人(文部科学省研究振興局長)     遠藤 昭雄君
   政府参考人(文部科学省スポーツ・青少年局長) 遠藤純一郎君
   政府参考人(文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人(厚生労働省大臣官房技術総括審議官)今田 寛睦君
   政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官)    鶴田 康則君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
    ―――――――――――――
六月四日

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件
 文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律案(内閣提出第九〇号)
 文化財保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)
 文部科学行政の基本施策に関する件
     ――――◇―――――

○河村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律案及び文化財保護法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として文化庁次長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――
○河村委員長 石井郁子君。

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 今回の法改正に対しましては、不法輸入された文化財を原産国へ返還する措置が一定前進したものとして賛成できるわけでございます。
 私、国際条約について、今後の問題として、文化財保護のために一点お尋ねをしておきたいと思います。
 盗難文化財保護を目的とするユネスコ条約以外の条約として、武力紛争時の文化財略取を阻止するためのハーグ条約、また文化財の定義を国に登録された物件以外にも拡張して盗難文化財の返還義務を明確に規定したUNIDROIT条約というのがございますけれども、その批准は国際的に進んでいますが、日本は両条約とも批准していません。UNIDROIT条約については署名もしていないわけであります。
 これらについて、今後どういう姿勢で取り組んでいくのか、締結の方向で努力するのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

○銭谷政府参考人 二つの条約につきましてお尋ねがございました。
 まず最初の、武力紛争の際の文化財の保護のための条約、いわゆるハーグ条約についてでございますけれども、この条約は、文化財の集中する地域が重要な軍事目標である飛行場とか放送局とか交通幹線などから妥当な距離にあるなどの条件を満たす場合に、こういう地域を特別保護ということにいたしまして、いかなる敵対行為も行えないようにすることが盛り込まれております。
 我が国において、この重要文化財等が集中する代表的な地区として京都や奈良があるわけでございますが、これが重要な軍事目標から妥当な距離にあるという条件を満たして特別保護を得ることについて困難が予想されることや、各方面との調整を図る必要があるなどの課題があると考えられてきたために、これまでこのハーグ条約は締結をしていないところでございます。今後、ハーグ条約の締結につきましては、関係省庁と十分協議をしてまいりたいと考えております。
 次に、盗取されまたは不法に輸出された文化財に関するUNIDROIT条約、私法統一国際協会条約、いわゆるUNIDROIT条約でございますが、この条約に関しましては、この条約の対象となる文化財の範囲があいまいであって、単にその締約国から持ち去られたものと規定されておりまして、各国で指定するという規定がないということがございます。
 それからもう一つ、原保有国の返還請求権の行使権利の期間が極めて長期間でございまして、例えば盗難のときから五十年とかという規定がございまして、善意取得者の立場を長期的に不安定にさせることといったような課題がございまして、条約の締結に向けては、国内の関係法令との間で慎重な検討を行う必要があると考えております。

○石井(郁)委員 今回の法改正も随分おくれたわけでございますが、そのように国際条約について日本の政府というか、文化庁、文科省自身も極めて消極的だということがあちこちで言われておりますので、私はぜひ前向きな姿勢で取り組んでいただきたいということをこの機会に申し上げておきます。
 具体的な問題として、私、きょうは、国内文化財保護の問題として、奈良の平城京跡の地下トンネル問題、これは大変緊急を要しておりまして、対応が必要なのではないかということがありますので、質問をさせていただきます。
 奈良の平城宮、平城京跡の地下にトンネルをつくって京奈和自動車道を通す計画というのがございまして、考古学研究者や文化財の保護団体が地下の埋蔵文化財が破壊されると危惧を表明しています。文化財保護法にもあるとおり、埋蔵文化財も当然保護対象になるわけであります。
 平城宮跡は一九五二年に特別史跡になりましたし、一九九八年にはユネスコ世界遺産に登録されているわけですよね。このことは、古都奈良の文化財としての価値、また景観の歴史的価値が認められていることでありますし、大量の木簡、遺構など、地下に埋もれた埋蔵文化財がある、良好に保存されているからだというふうに考えますけれども、この認識をまず伺っておきたいと思います。

○銭谷政府参考人 平城宮跡についてのお尋ねがあったわけでございますが、特別史跡、平城宮跡につきましては、地下の遺構、遺物が良好な状態で広範囲に保存されており、これらは奈良時代の政治、経済、社会の動向を知る上で歴史的、学術的に極めて重要な価値を有する文化財であるというふうに認識をいたしております。

○石井(郁)委員 昨年の九月に、ユネスコから日本政府にあてて、古都奈良の文化財の保存状態に関する問い合わせというのが来ているわけです。地下高速道路の建設が、地下の遺存物、とりわけ木簡に回復不能な損傷を与えるかもしれないという危惧が表明されていると思うんですね。
 文化庁は、この平城宮跡及び平城京の跡、地下にトンネルをつくれば埋蔵文化財は破壊される危険がある、そういう御認識はお持ちでございますね。一応確認をさせてください。

○銭谷政府参考人 私どもといたしましては、世界遺産でもあり、かつ特別史跡でもある平城宮跡、その地下に埋蔵されております木簡などの遺物等につきましては、これはきちんと保存をしていかなければならない、こう考えておりますが、いわゆるお尋ねの道路の状況につきましては、まだ計画が確定をしたわけでもございませんので、どういう影響があるかということを十分検討しなければいけないというふうに思っております。

○石井(郁)委員 先ほど、ユネスコの問い合わせに対して文化庁は、大体、今御答弁のような趣旨を回答しているかと思うんですね。古都奈良の文化財、関連する景色と景観の歴史的価値を保護するために、可能な最大限の努力を継続しますという回答かと思います。問題となる部分についての計画はまだ予備的調査の段階だ、この過程の中で平城宮跡や歴史的建築を含むその他の文化遺産の保護に関してしかるべき考慮が払われてきていますと、何かうまいぐあいに進んでいるかのような回答をしているように私は聞こえるんですけれども、しかし、今日の事態というのはそう楽観できない。
 国土交通省ですけれども、既成事実化を着々と進めているのではありませんか。トンネル建設による地下水の水位変化が埋蔵文化財に影響を与えかねないということから、国土交通省が、昨年からことしにかけて地下水検討委員会をつくっております。そして、結論も出しているんですね、道路建設が地下水に与える影響は少ない、トンネルが第一帯水層の地下水位に与える影響は少ない、埋蔵文化財への影響は少ないと推測されると。
 これはどうなんでしょう。結論です。驚いたことに、その地下水検討委員会の委員五人がそろって出席した委員会というのは一度もないと言われているんです。報告書提出直前の委員会に至っては二人だけで、こんな委員会で、しかるべき考慮が払われているという結論が出るというのはどういうことかなと言わざるを得ないわけです。
 文化庁として、こんなふうに進んでいる事態に対して、文化財保護の立場から私は対応が求められているというふうに考えますけれども、どう対応されるおつもりですか。

○銭谷政府参考人 京奈和自動車道につきましては、いまだ奈良市にかかる部分のルート、構造が決定をしておらないで、現在、国土交通省において三つのエリアについて比較検討をしている段階だと承知をしております。
 このうち、中央、東側、西側という三つのエリアのうち、中央エリアにつきましては、世界遺産、古都奈良の文化財の構成資産でもある特別史跡、平城宮跡を初めとした文化財の保護の観点に留意する必要がございまして、特に、先ほど来お話が出ております平城宮跡の地下に存在する埋蔵文化財への影響が懸念をされているわけでございます。
 昨年の七月に国土交通省において、中央エリアにおける道路建設と地下水挙動との関係等について検討をし、本年三月に出た検討結果を踏まえまして、道路建設における埋蔵文化財の保護の観点からの配慮事項を検討する文化財検討委員会を設置して、現在検討を進めていると承知しております。
 文化庁といたしましては、この道路につきましては、いまだルートや構造が決定をされていない段階ではございますが、これまでも国土交通省に対しまして、文化財保護の観点から、問題点等について説明を行うとともに、文化財の専門家からの意見聴取等により、慎重な検討を行うように要請を行ってきたところでございます。文化庁といたしましては、この文化財検討委員会の検討状況にも留意しつつ、国土交通省と調整を行ってまいりたいと考えております。

○石井(郁)委員 確定していないということですけれども、確定してからではやはり遅いわけで、本当に文化庁としてのきちんとした対応が要るというふうに私は思うんですね。
 それで、平城宮跡の直下であろうと、その周辺ルートであろうと、三つ言われましたけれども、何かバッファーゾーンとかハーモニーゾーンとか言われているんですが、平城京跡全体で、やはりトンネル建設というのは地下水に影響を与えるというふうに思います。埋蔵文化財の破壊というのがやはり強く危惧されるわけですよね。
 先ほど、最初に、この埋蔵文化財というのは非常に広範囲にわたるという認識もお示しになったとおりでありまして、ですから、文化財保護団体の一つ、奈良世界遺産市民ネットワークなどは、その結論を独自に改めて検討しているんですね。不確定な予測で地下トンネル建設を決定してはならないと異議を表明しています。
 いろいろ、今この地下水の調査というのは、全国的に、関西空港もそうですけれども、全然最初の予測と違ったことがどんどん生じているわけでしょう。だから、研究自身とか調査自身の信憑性というのが大変今は問われているところであるわけですね。
 そういうことで、私は、これは国会で、一九七五年の文化財保護法改正のときも、参議院の附帯決議がありまして、「法の運用にあたつては、関係学会、文化財保護団体、地方公共団体等の意見を十分尊重すること。」というのがございますよね。
 だから、文化庁、今この問題で、本当に埋蔵文化財が破壊されるかどうかという重大な問題でありますので、やはり文化財保護団体の意見を早急にちゃんと聞き取る、その意見をきちんと踏まえて文化庁としても対応するというふうに私は強く申し上げたいと思いますけれども、いかがでございますか。

○銭谷政府参考人 私どもが承知をいたしておりますのは、国土交通省において、今後、先ほど申し上げました三つのエリアについて、複数の代替案から成る基本計画原案というものを策定して、市民の方々や専門家の方々の御意見を聞いた上で最終的な決定をするというふうに承知をいたしております。
 そこで、私どもとしては基本的に、繰り返しになりますけれども、将来の道路建設が世界遺産の価値に影響を及ぼすことのないように、国土交通省とよく必要に応じて協議をしてまいりたい、かように考えております。

○石井(郁)委員 ユネスコは、イランの歴史都市イスファハンの地下高速道路計画に対して撤回勧告を出したことがあるんですね。だから、今ユネスコは、奈良の世界遺産の保護、保存に大きな懸念、危惧を抱いているわけでありまして、私は、この世界遺産の保護というのは、日本、一国内の問題ではなくて、まさに国際信義にもかかわる大変重大な問題だというふうに考えています。
 今一つ御紹介しましたけれども、いろいろな団体からの御意見ですけれども、国としてもよく知っている奈良の文化財研究所、この人たちは平城宮跡の発掘、調査研究に携わっていますけれども、そこの職員組合の方から、木簡を初めとして、地下に埋まっている遺物が極めて傷みやすくデリケートなものであるということは、遺跡を発掘し、遺物を管理している私たちが肌身にしみてよく知っている、かけがえのない平城宮跡という文化遺産を破壊する可能性の少しでもある地下道路計画には断固反対せざるを得ませんということがあります。
 それから、もう時間がありませんが、ことし五月に日本考古学協会第六十八回総会で、平城宮跡地下の高速道路通過計画の撤回を求める決議というのが上げられています。もう中身を読む時間はありませんけれども、そういうふうに各方面、多数の方々が、今こういう形で地下道路建設を決めるべきでないという声があります。
 だから、私は、はっきりとこうした声にこたえるべきだ、この平城京跡の地下トンネル計画は認められない、文化庁としてはやはりそういう立場できちんと表明すべきだというふうに思いますが、最後に御答弁を伺って、質問を終わります。

○銭谷政府参考人 現在、国土交通省によりルート等の検討の前提となる調査が行われている途上でございまして、その建設の是非そのものについてコメントするのは時期尚早と考えております。
 ただ、私どもの基本的な考え方を、ユネスコからの照会に対して政府として回答したその内容を紹介することでお答えをさせていただきたいと思いますけれども、京奈和自動車道のルート、構造の選定に当たっては、世界遺産の構成資産である平城宮跡とその関連文化財の保存に配慮するとともに、専門家や市民の意見を取り入れることにより、計画策定の手続の透明性、客観性、公平性の確保に努める必要があります。
 今後とも、建設当局と文化財当局が十分に連携をし、道路建設によって世界遺産の価値に影響が及ぶことがないように取り組んでいきたいというふうに思っております。

○石井(郁)委員 終わります。どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

○河村委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、内閣提出、文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○河村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、文化財保護法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○河村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。


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