2002年4月27日(土)「しんぶん赤旗」より
小泉内閣発足から丸一年の二十六日、衆院本会議で「戦争国家法案」(武力攻撃事態法案など有事三法案)が審議入りしました。戦争放棄の九条をはじめ、国民の人権や自由、地方自治など、憲法の民主的諸原則をふみにじり、戦争を最優先させる国家体制をつくろうとする重大法案。国会周辺は朝から宗教者や市民団体、労働組合が集会や請願デモ、国会傍聴を行い、怒りの声に包まれました。日本共産党の石井郁子副委員長が質問に立ち、法案の危険を明らかにし、小泉純一郎首相の認識をただしました。
| 「送らじな この身裂くとも 教え子を 理(ことわり)もなき いくさの庭に」 |
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| 質問する石井郁子議員 =26日、衆院本会議 |
石井副委員長は、高知県の教員・竹本源治氏が痛恨の思いで詠んだ歌を紹介し、「子どもの命を守り、育てる女性として絶対に歴史の過ちを繰り返すことは許せません」と述べると、議場は水をうったように静まり返りました。
戦争国家法案のねらいについて石井氏は、アメリカが行うアジア太平洋地域での介入戦争に、自衛隊を参戦させ、国民を強制的に総動員するためだと指摘。アーミテージ米国務副長官らが、日本が集団的自衛権を認めることや、有事法制策定を公然と要求しているとして、アメリカの戦争にいっそう加担・協力する日本政府の動きを批判しました。
石井氏は、国民を総動員するために、戦争協力の努力義務を課し、医療・輸送・土木工事の従事者への業務従事命令などでは罰則付きで協力を強制していることをあげ、戦争非協力の立場を国家が犯罪とみなすものだと批判。戦争協力の「責務」を負わされる日本銀行、日本赤十字、NHK、輸送・通信、電力、ガスの事業者など「指定公共機関」は無限定になると指摘しました。
さらに法案が国民の自由と権利に「制限が加えられる」とし、その歯止めが何もないことをあげ、「包括的かつ無限定に国民の自由と権利を侵害するものだ」と批判しました。
石井氏はさらに、戦争のために首相が全権限を行使し、国会が無視される問題を指摘。首相には地方自治体などへの「指示権」や「直接執行権」まで与え、「まさに有無をいわさずの強行になる」と批判しました。
小泉首相は国民の権利制限について、「公共の福祉に反しない限り、憲法の趣旨にそったもの」などと、まともに答えられませんでした。
小泉首相は、法案の国民動員が発動される「武力攻撃事態」が、アメリカの介入戦争による「周辺事態」にもあたると認めました。
アメリカの戦争に国民を強制動員する「戦争国家法案」が審議入りした二十六日午後の衆院本会議。自民党は途中退席する議員が目立ち、二百四十の同党議員のうち、一時は百人前後が空席のまま議事が進みました。
自党の質問が終わったころから途中退席する議員がボロボロ。五人がけ、六人がけの一列分が全部が空席になった座席までありました。
「何が重大事態だ。全然いないじゃないか!」「与党席、ガラガラだぞ!」と、野党席から激しいヤジが飛ぶなか、鳩山邦夫衆院議院運営委員長が「ここ、ズラッといないよ」と空席が並ぶ列を指さし、議員集めを指示するような場面も見られました。
審議を傍聴していた東京・国分寺市の小池好子さん(57)は「憲法に違反し、日本の平和と民主主義にかかわる大変な法案なのに、審議にも参加しないなんて国会議員の資格がない。いいかげんな審議で、数の力で押し通そうとしているのが、ありありですね」と憤激します。三浦サエ子さん(67)=同市=も「きょう見たガラガラの自民党席のことも街頭から訴え、反対運動を広げたい」と語っていました。

戦争国家法案審議中の衆院本会議場の自民党席=26日

戦争国家法案の審議を見守る傍聴者=26日、衆院本会議
「憲法の平和原則や基本的人権などの民主的な諸原則を真っ向から踏みにじって、アメリカが引き起こす戦争に国民を総動員する」――。二十六日の衆院本会議で日本共産党の石井郁子副委員長がおこなった代表質問は、「戦争国家法案」の重大性と危険な本質を浮き彫りにしました。
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石井 有事法制が発動される事態(武力攻撃事態)は「周辺事態法」が発動される事態と重なり合っている。このことは認めるか。 首相 状況によっては「武力攻撃事態」が周辺事態にもあたる場合もあり得る。 |
法案は「武力攻撃事態」の定義を、「武力攻撃が発生した事態」だけでなく、「武力攻撃のおそれのある場合」「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」もあげています。
アメリカの介入戦争を「周辺事態」だとして自衛隊が参戦する事態と、法案の国民動員条項が発動される「武力攻撃が予測される事態」とは重なり合っている――。小泉首相は石井氏の指摘を認めました。
これは、日本が直接攻撃されなくても、アメリカがアジア太平洋地域で介入戦争を起こした「周辺事態」のときにも、同法を発動して日本国民が強制的に総動員されるということです。
石井氏は、ブッシュ米政権の対日政策責任者であるアーミテージ国務副長官らが、日本に集団的自衛権を認めることと、ガイドライン(日米軍事協力の指針)実施のための有事法制策定を公然と要求していることを指摘。「アメリカの要求に全面的にこたえようというのが法案提出の最大理由ではないか」と追及しました。
小泉首相は「危機管理体制は国家存立の基本として整備されているべきものだ」と答弁。
しかし、現に日本政府はインド洋に自衛隊艦船を出動させ、アメリカの戦争を支援しています。この路線をいっそう加速させようとするのが戦争国家法案だと、石井氏は批判しました。
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石井 罰則までつけて(戦争)協力を強制することは、憲法が明示的に否定した戦争遂行に非協力の立場をとることを国家が犯罪とみなすもの。どうして憲法から説明できるのか。 首相 (処罰は)悪質な違反対応に限定するなど、必要最小限の罰則だ。 石井 法案は「国民は、…必要な協力をするよう努める」と明記している。国民に戦争協力を義務付けるものではないか。 首相 国民にも協力いただきたいと考えているが、法案は戦争への協力を義務づけるといった指摘はあたらない。 |
石井氏は、法案が、国民を戦争動員する仕組みについて三点にわたってただしました。
一つは、法案に国民全体が戦争遂行に「必要な協力をするよう努める」と明記し、協力の努力義務を課していることです。
二つ目は、自衛隊法にもとづいて医療・輸送・土木工事の従事者に業務従事命令が出せること。自衛隊が必要とするあらゆる物資に保管命令を出すこともできます。さらに、これを拒む国民に六月以下の懲役、三十万円以下の罰金を科すことまで盛りこまれました。
三つ目は、日本銀行や日本赤十字社、NHKや輸送、通信、電力、ガスの事業者などを「指定公共機関」に指定し、戦争協力の「責務」を課し、首相の統制下におくことです。
石井氏の追及に、小泉首相は、罰則付きで戦争協力を強いることに対し、「(処罰対象は)悪質な違反に限定」とのべ、戦争への非協力行為を「悪質」呼ばわりし、公然と“非国民”扱いしました。
さらに、石井氏が「指定公共機関」について、「民放や新聞社、医師会、看護婦会、医療機関も指定の対象になるのか」「輸送では陸・海・空のすべてに緊急輸送手段の確保が義務づけられるのか」と追及したのにたいし、首相は「具体的な指定は、総合的に判断する」と否定しませんでした。
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石井 国民の自由と権利を包括的に制限するなどということが、憲法のいかなる条項を根拠にしてできるのか。 首相 権利の制限は、「公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」との憲法一三条等の趣旨にそったものだ。 |
法案は、憲法の保障する国民の自由と権利について、「これに制限が加えられる」と明記しています。
小泉首相は、その根拠として憲法一三条の「公共の福祉」規定を読み上げましたが、この規定は基本的人権の「最大の尊重」をうたったもので、それを包括的に制約できることを定めたものではありません。憲法が「公共の福祉」との関係で制約の対象として明示しているのは財産権だけです(二九条)。
そもそも憲法は、前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」し、九条で戦争放棄をうたっています。国民の自由と権利を抑圧し、人の命を奪う戦争は、憲法のいう「公共の福祉」と根本的に反します。
石井氏は、法案が定める人権の制限について何の歯止めもないと指摘し、集会・結社及び言論、出版、表現の自由、学問の自由、思想信条の自由をも制限するものではないかと追及。小泉首相は「その制限は必要最小限で、公正かつ適正な手続きのもとにおこなう」というだけで否定しませんでした。
法案は、今後二年以内で整備する「事態対処法制」として、「社会秩序の維持に関する措置」や「国民の生活の安定の措置」を明記しています。
石井氏が、「『治安維持』や『野外外出禁止令』なども入るのか」「物資統制や価格統制を想定しているとしか考えられない」と批判したのに対し、小泉首相は「社会秩序の維持や国民生活の安定に関して必要な措置を講じることは必要」と答弁。戒厳令を思わすような措置や、経済統制など国民生活のすべてを統制下に置く措置を否定しませんでした。
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石井 (「対処基本方針」について)国会は事後に承認を求められるだけだ。国権の最高機関である国会をも脇に置いて政府が独断専行するのではないか。 首相 現行法制に比べ国会の関与を強化している面もある。 |
「武力攻撃事態」にあると状況を認定し、自衛隊の軍事行動や国民動員を決める「対処基本方針」は閣議決定と同時に実施され、決定にあたって国会の関与はありません。
法案は「対処基本方針」の国会承認を「直ちに」求めるとしていますが、すでに方針は実行された後なので事後承認にならざるを得ません。首相は、現行の自衛隊法が防衛待機命令などを国会承認の対象にしていないのと比べて「国会の関与を強化した」といいますが、事後承認となることは否定しませんでした。
また法案は、「首相に全権を集中する体制」(石井氏)になっています。法の発動や「対処基本方針」の決定も首相なら、同方針を諮る安全保障会議の議長も首相。同方針に基づき国民を動員する「対策本部」本部長も首相。地方自治体などへの「指示権」「直接執行権」を持つのも首相です。
地方自治体などが政府の決定と違う判断ができるのかという問いに、小泉首相は「自治体の判断のもとに対処措置を実施できる」と答えましたが、国の決定が地方自治体などの判断に優先するのは明白です。
これは、後日発行される正規の会議録の未定稿版です。
○副議長(渡部恒三君) 石井郁子君。
〔石井郁子君登壇〕
○石井郁子君 私は、日本共産党を代表して、有事法制三法案に対して質問いたします。(拍手)
私たち日本国民は、日本を二度と戦争を起こす国にしてはならないとかたく誓ってきました。二千数百万のアジアの人々と三百万の日本国民のとうとい命を奪った戦前の痛苦の教訓に立ち、平和で、国民一人一人の人権、自由が大切にされる社会をつくることを共通の理念として、この半世紀を歩んできました。この国民の努力を励まし、支えてきたのが、戦争の放棄を高らかにうたい、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と宣言した日本国憲法であることは言うまでもありません。(拍手)
ところが、今回の有事法制三法案は、この憲法の平和原則や基本的人権などの民主的な諸原則を真っ向から踏みにじって、アメリカが引き起こす戦争に国民を総動員するという、まさに戦争国家法案というべきものであり、断じて認められません。(拍手)
第一に、何のための有事法制かということです。
小泉総理は、もしかしたらどこかの国が日本を攻めてくるかもしれない、だから有事法制が必要だと言います。しかし、一体どこの国が日本に攻めてくるというのですか。これまで防衛庁長官自身が、当面は日本が本格的な武力攻撃を受けることは想定できないと明言してきたのではありませんか。
では、何のためでしょうか。重大なことは、法案が発動される武力攻撃事態とは、日本への武力攻撃が起きた場合だけではないということです。武力攻撃のおそれのある場合でも、武力攻撃が予測されるだけの場合であっても、国民動員条項が発動されることになっています。この武力攻撃事態について、中谷防衛庁長官は、周辺事態のケースもその一つと答弁しました。
つまり、有事法制が発動される事態は、周辺事態法が発動される事態と重なり合っているということであります。総理もこのことはお認めになりますね。
アメリカがアジア太平洋地域で介入戦争を起こし、周辺事態法が発動され、自衛隊が米軍の戦争に参戦するとき、有事法制を発動して国民を強制的に総動員する、これが有事法制をつくる真のねらいではありませんか。(拍手)
三年前に周辺事態法がつくられて以来、米軍のアジア介入戦争を日本が支援し、日米共同作戦を行う態勢づくりが進められていますが、日米政府間では、次の課題として、日米共同作戦への国民の動員が重要な課題となってきたのではありませんか。現に、ブッシュ政権の対日政策責任者であるアーミテージ現国務副長官らが、日本が集団的自衛権を認めること、新ガイドライン実施のための有事法制をつくることを公然と要求しています。このアメリカの要求に全面的にこたえようというのが本法案提出の最大の理由ではありませんか。総理の答弁を求めます。(拍手)
アメリカのブッシュ政権は、イラクや北朝鮮などを悪の枢軸国と名指しし、そこへの軍事攻撃を公言し、無法な戦争と軍事介入の政策攻策を進めています。そして日本は、インド洋に自衛隊艦船を出動させ、アメリカの戦争を支援しているのであります。こうしたもとで有事法制をつくり、アメリカの戦争に一層加担、協力しようとしていることを厳しく指摘しなければなりません。(拍手)
第二に、国民の総動員、権利と自由の制限の問題です。
政府が、武力攻撃が予測される事態と認定すれば、自衛隊は準備のための軍事行動を開始し、武力行使を行う米軍と自衛隊の軍事作戦行動にとって必要となる土地、人、物の提供、すなわち国民の総動員体制づくりがこの法案の核心をなしています。
法案は、国民は、「対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努める」と明記していますが、これは、国民に戦争への協力を義務づけるものではありませんか。
また、法案は、武力攻撃事態の予測段階から国民の自由と権利に制限が加えられることも明記しています。総理、どのような国民の権利を制限するというのですか。国民の自由と権利を包括的に制限するなどということが憲法のいかなる条項を根拠にしてできるというのですか。憲法上の根拠がどこにあるのか、条文を示して明確にお答えいただきたい。(拍手)
次に、国民の動員について具体的にお聞きします。
自衛隊法百三条では、自衛隊が必要とすれば、国民の土地や家屋等の使用が強制されます。自衛隊は、予測段階から、陣地施設の構築として、指揮所、大砲やミサイルの発射台、野戦病院、航空機の発着施設をつくることができます。そのために必要な私有地を、政府が必要だと言えば、予定展開地域に指定され、土地の所有者が反対しても地方自治体を使って強制使用することができるのです。極めて重大な国民の権利制限ではありませんか。
自衛隊が必要とするあらゆる物資には、保管命令が下されます。しかも、自衛隊が必要とする物資の保管命令に民間人が従わない場合、さらに自衛隊による立入検査を民間人が拒んだ場合には、罰金とともに懲役刑まで定めています。また、自衛隊が必要とする医療、輸送、土木工事などの従事者は、業務従事命令で強制されます。
罰則までつけて協力を強制していることは極めて重大です。憲法が明示的に否定した戦争遂行に対して非協力の立場をとることを、国家が犯罪だとみなすということではありませんか。これがどうして戦争を放棄した憲法から説明できますか。答弁を求めます。(拍手)
さらに法案は、指定公共機関に対し、戦争協力の責務を定めています。指定公共機関として、日本銀行、日本赤十字社、NHKその他の公共的機関、電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人を挙げていますが、これはあらゆる分野の公的機関、民間企業が指定対象になり、その範囲に限定はないのではありませんか。
NHK以外の民間放送会社や新聞社なども指定の対象になりますか。それらのマスコミには緊急警報や情報の提供が義務づけられるのですか。輸送では、陸海空のすべてに緊急輸送手段の確保などが義務づけられるのですか。医師会や看護婦会、医療機関も対象になりますか。これら指定公共機関の従業員には、業務命令で協力が強制されるのですか。明確にお答えいただきたい。(抽手)
政府は、権利の制限は必要最小限だと言いますが、この基本的人権の制限については何の歯どめもないのであります。日本国憲法が保障する集会、結社及び言論、出版、表現の自由、学問の自由、思想信条の自由をも制限するものではありませんか。それは、まさに包括的かつ無限定に国民の自由と権利を侵害するものではありませんか。憲法が侵すことのできない永久の権利として保障した基本的人権を一片の法律で制限することがどうしてできるのか。事は重大であります。明確な答弁を求めます。(拍手)
それだけではありません。本法案に続いて、事態対処法制を二年以内を目標として整備するとしています。その中に、社会秩序の維持に関する措置がありますが、これは、治安維持や野外外出禁止令なども入るのですか。言論、表現の自由や移動の自由をも制限するもので、憲法を真っ向から踏みにじるものと言わなければなりません。
国民の生活の安定の措置も挙げていますが、これは、物資統制や価格統制を想定しているとしか考えられません。それは、国民生活のすべてを国家の統制下に置く、まさに、文字どおりの戦時体制づくりではありませんか。
また、事態対処法制としてどういう米軍に対する措置を検討するというのですか。法案二条六号には、武力攻撃事態を終結させるため、自衛隊や米軍へ物品、施設、役務の提供その他の措置をとることが明記されています。これは、米軍に対しても自衛隊と同様に土地等の使用や物資の収用を行い、物資の保管命令や輸送などの業務従事命令が出せるということですか。答弁を求めます。(拍手)
第三に、戦争のためには首相が全権限を行使し、国会が無視される問題です。
法案の発動要件となる武力攻撃事態の認定や自衛隊の軍事行動、国民動員にかかわる対処基本方針が、国権の最高機関である国会にも諮らず、内閣だけの決定で実施できるという問題です。
対処基本方針は、閣議決定後直ちに国会にかけ、承認が得られない場合には速やかに解除するとしていますが、閣議決定された対処基本方針は決定と同時に実施に移されているのであり、国会は事後に承認を求められるだけなのであります。国権の最高機関である国会をもわきに置いて、政府が独断専行するものではありませんか。
しかも、有事法制の発動を決定するのが首相ならば、対処基本方針を決定するのも甘相です。これらは安全保障会議に諮られますが、その議長も首相です。対処基本方針に基づき国民動員を行う対策本部の本部長も首相です。首相には地方自治体などへの指示権や直接執行権まで与えられており、文字どおり首相に全権を集中する体制です。このもとで、地方自治体などが政府の決定と異なる独自の判断をすることができるのですか。まさに、有無を言わさずの強行になるのではありませんか。答弁を求めます。(拍手)
最後に、私は、この議論に当たって、国家総動員法が成立させられ、本格的な戦時体制、そして太平洋戦争へと突き進んだ戦前の歴史を想起せざるを得ません。「送らじなこの身裂くとも教え子を理(ことわり)もなきいくさの庭に」と詠んだ教育者の痛恨の思いを胸に、私は、子供の命を守り育てる女性として、絶対に歴史の過ちを繰り返すことは許せません。(拍手)
日本共産党は、侵略戦争に反対して闘った唯一の政党として、戦争国家法案を断じて許さず、憲法の平和的、民主的な原則を守り抜くために、広範な国民の皆さんと共同して闘う決意を表明し、質問を終わります。(拍手)
(内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 石井議員にお答えいたします。
武力攻撃事態対処法制の整備において、特定の国からの攻撃を想定しているのかとのお尋ねであります。
本法案は、武力攻撃事態という、国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態が生じた場合における対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図るものです。これは、平素から国の備えとして当然に整備すべきものであり、特定の国からの武力攻撃をあらかじめ想定しているものではありません。
周辺事態との関係についてです。この法案に言う武力攻撃事態と周辺事態安全確保法に言う周辺事態とは、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものであります。しかし、状況によっては、我が国に対する武力攻撃事態が周辺事態にも当たる場合もあり得ると考えられます。
法案は、米国の要求に応じた新ガイドライン実施のためのものではないかというお尋ねです。
本法案は、我が国の平和と独立、並びに国及び国民の安全の確保のため、武力攻撃事態への対処を中心に、国全体としての基本的な危機管理体制の整備を図ろうとするものであります。このような法制は、日本国憲法の枠内において、いわば国家存立の基本として整備されているべきものであり、米国の要求にこたえるために整備するものではありません。
国民の協力についてです。
武力攻撃事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければなりません。国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、国民にも御協力をいただきたいと考えておりますが、この法案は、国民に戦争への協力を義務づけるといった指摘は当たらないと思います。
武力攻撃事態における国民の権利についてであります。
法案は、武力攻撃事態への対処に当たって、国民の自由と権利が尊重されなければならない旨を明記しております。事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態においても、住民の避難等の措置に着手する必要があり得ますが、やむを得ず国民の権利を制限する場合も、あくまでも本法案の基本理念にのっとり、十分な合理性を有する手続と手段を個別の法律によって定めるべきものと考えております。
こうした権利の制限は、国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため合理的な範囲と判断される限りにおいては、「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」との憲法十三条等の趣旨に沿ったものと理解されます。
罰則についてです。
自衛隊法の改正法案においては、取扱物資の保管命令に対する違反等について、悪質な違反態様に限定するなど、必要最小限の罰則を設けることとしています。このような罰則は、事態対応に対する一般的な非協力の立場を対象とするものではなく、国民の生命や財産を守るために行動する自衛隊の任務遂行を確保するという公共の福祉のための必要最小限の制限であり、憲法上許されるものと考えます。
指定公共機関についてです。
具体的にいかなる公共機関を指定公共機関に指定するかについては、当該機関の業務の公益性の度合いや、その業務の武力攻撃事態への対処との関連性などを踏まえ、当該機関の意見も聞きつつ、総合的に判断することとなります。
なお、この法案において、指定公共機関の従業員に対し、国から直接命令を発することは想定しておりません。
基本的人権の制限についてです。
法案では、基本理念として、「武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」と明記しております。
武力攻撃事態への対処は、かかる基本理念にのっとって行われるとともに、個別の法制整備も、かかる理念のもとで行うものであります。基本的人権の制限には何の歯どめもないとの御指摘は当たりません。
事態対処法制に関し、社会秩序の維持に関する措置と国民の生活の安定の措置についてです。
武力攻撃事態においては、社会秩序の維持や国民生活の安定に関して必要な措置を講ずることは重要であります。今後、関係機関の意見を十分に聞くとともに、国民的議論の動向にも配慮しつつ、具体的な法整備に全力を挙げてまいりたいと思います。
いずれにせよ、具体的な法制整備が、憲法の保障する国民の自由と権利を尊重するという本法案の基本理念にのっとって行われることは当然であります。
対処基本方針の国会承認についてです。
武力攻撃事態への対処は、国民の理解と協力を得て、時期を失することなく適時適切に行われる必要があります。このため、対処基本方針を定めたときは、直ちに国会の承認を求め、不承認の議決があったときは、速やかに対処措置を終了することとしております。
現行自衛隊法で国会承認の対象とされていない防衛出動待機命令等について対処基本方針に記載し、国会の承認を得ることとすることなど、法案は、現行法制に比べて、武力攻撃事態対処に関する国会の関与を強化している面もあり、政府の独断専行との御指摘は当たりません。
地方公共団体の置かれる立場についてです。
武力攻撃事態への対処については、その性格にかんがみ、国が主要な役割を担うことを基本とするものですが、地方公共団体等においても、その判断のもとに、対処措置を実施できることは当然であります。
武力攻撃事態においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければなりません。地方公共団体等においても、連携協力して対処していただけるものと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
(国務大臣中谷元君登壇)
○国務大臣(中谷元君) 我が国に対する武力攻撃発生の可能性につきまして、私の発言に関してのお尋ねがございました。
私は、例えば、昨年五月、国会におきまして、基盤的防衛力整備の議論の中で、我が国を侵略する能力を持った国があらわれることは、三年、五年のタームでは想像できないかもしれないが、不透明、不確実な要素が残されていることにかんがみれば、全く読めない世界でありまして、やはり将来に備えておくことは必要でもありますし、一番大切なのは、みずからが力の空白とならないように、常に国際情勢に照らし合って力の均衡が保たれるように、我が国としても均衡のとれた体制を保つということが必要ではないかと述べているところでございます。
いずれの国家にも基盤的防衛力が必要であって、武力攻撃事態への対処に関する法制の整備は、こうした取り組みの一環として、国全体としての武力攻撃の事態に対処するための基本的な体制の整備を図るものであります。
何事も基本が大事であります。書道にしても、剣道にしても、柔道にしても、基本の構えや楷書があってこそしっかりしたものができるわけであります。このような国家基本の安全保障の体制は、我が国の長年の課題であったものであり、また、いわば国家存立の基本として、平素から当然に整備するものでありまして、特定の国からの武力攻撃を具体的に想定して整備するものではございません。
日米共同作戦への国民の動員を次の課題としているのではないかというお尋ねがございました。
この法律案は、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全確保のため、武力攻撃事態への対処について、国全体としての基本的な体制の整備を図ろうとするものでございます。このような法制は、いわば国家存立の基本として整備されているべき我が国自身の課題でありまして、そのような御指摘は当たらないと考えております。
自衛隊法の百三条の規定による土地等の使用が重大な国民の権利制限ではないかというお尋ねがございました。
自衛隊法百三条は、防衛出動時において、国民の生命財産を守るために行動する自衛隊の任務遂行に必要な土地などを確保するため、公用令書の交付などの適正手続のもと、損失補償を行うことにより土地の使用等を行うことを認めるものでありまして、極めて重大な国民の権利制限であるとの御指摘は当たらないものと考えます。
なお、同様の仕組みは、災害対策基本法等でも設けられているところでございます。
保管命令及び立入検査に対する罰則、業務従事命令についてのお尋ねがございました。
今般の改正案における罰則は、国民の人権保障に配慮しつつ、武力攻撃事態における自衛隊の任務遂行を確保するため、必要最小限のものに限定をいたしております。
例えば、取り扱い物資の保管命令は、自衛隊の任務遂行上必要とされる物資を確保するために必要なものでありますが、これに対する罰則は、保管命令に違反して保管物資を隠匿、毀棄または搬出するという悪質な行為を行う場合に限り罰則を科すというふうにいたしております。
また、業務従事命令は、防衛出動を命ぜられた自衛隊の行動に係る地域以外の地域において、医療、土木建築工事または輸送を業とする者に対して、適切な実費弁償や損害の補償を前提として同種の業務に従事することを命ずるものでございます。自衛隊の行動に係る地域以外の地域においてこの規定があるわけでございます。
このような罰則や業務従事命令は、国及び国民の安全確保といった公共の福祉を確保するための必要最小限の制限として、憲法上許されるものだと考えております。
また、米軍の行動の円滑化に関するお尋ねがございました。
米軍の行動は、自衛隊とともに我が国に対する武力攻撃を排除し、我が国及び国民の安全を守るものであることから、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるように、今後、これに対する支援を検討する必要があると考えております。
米軍の行動の円滑化のための法制としては、例えば、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動を実施する米軍に対し、物品、役務、施設の提供その他の措置を実施するために必要な法的整備を行うことが対象となるわけでございます。(拍手)



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