2002年4月12日「しんぶん赤旗」より

「陵墓は文化財」と答弁

衆院決算委の分科会

石井議員、公開の拡大求める


 日本共産党の石井郁子衆院議員は8日の決算委員会第一分科会で、陵墓(りょうぼ=注)を文化財保護法に基づく「文化財」として保護するとともに、考古学者など民間関係者への公開・調査をいっそう拡大するよう求めました。

 佐紀盾列(さきたてなみ)古墳群や大和(おおやまと)古墳群、大山古墳(仁徳陵)を世界遺産に登録せよとの学者・市民の声にこたえるには、文化財保護法にもとづいて重要文化財などに指定される必要があります。

 石井議員は「陵墓は、わが国が世界に誇る重要文化財、文化遺産の一つ」という93年の予算委での政府答弁の立場を確認できるかと質問。宮内庁の山口書陵部長は「陵墓の中で学術上価値が高いものは文化財保護法にいう『文化財』に該当する」と明確に答弁する一方、「皇室の墓としてて宮内庁が管理している。原則としては史跡に指定する必要はない」とかたくなな態度を見せました。

 石井議員は、陵墓が文化財保護法の対象外であるために世界遺産登録の障害になっていることや、古墳が史跡に指定されていないために道路建設で遺跡や景観の破壊が危ぐされている奈良県天理市の大和古墳群の例などを例示。「奈良を世界遺産に登録する時に宮内庁所管の正倉院を重要文化財・国宝に指定した。陵墓も文化財保護法の対象にすべきだ」と追及。山口書陵部長は「正倉院は東大寺と一体で東大寺が管理していたもの。特別な例」と言いました。

 また石井議員は、これまで宮内庁が陵墓や参考地を不十分ながら公開している姿勢について、「外形の実測や墳丘の外見を確認できるよう、公開の内容を拡大すべきだ」と要求。山口書陵部長は「基本は陵墓としての管理だが、学術文化的な面にも配慮したい」と答えました。

(注)「陵」は天皇・皇后の墓。「墓」は、その他の皇族の墓で、「参考地」は陵墓かもしれないとされる古墳の5力所・652ヘクタール、参考地は46力所・55ヘクタール。うち古墳は前方後円墳20数基をふくめ約80基。法的には国有地であり皇室財産で、宮内庁書陵部陵墓課が管理しています。


154-衆-決算行政監視委員会第1分科会-1号
2002年04月08日
石井郁子議員 質問部分 会議録


平成十四年四月八日(月曜日)
    午前九時三十分開議
 出席分科員
   主査 持永 和見君
      橘 康太郎君    渡海紀三朗君
      中村正三郎君    馳   浩君
      松島みどり君    井上 和雄君
      石井 紘基君    石毛えい子君
      金田 誠一君    木下  厚君
      平岡 秀夫君    牧  義夫君
      三井 辨雄君    石井 郁子君
      大森  猛君    鈴木 宗男君
   兼務 大谷 信盛君 兼務 今野  東君
   兼務 中村 哲治君 兼務 西村 眞悟君
   兼務 植田 至紀君 兼務 北川れん子君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣(内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣(沖縄及び北方対策担当大臣)           尾身 幸次君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   総務副大臣        若松 謙維君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   衆議院事務総長      谷  福丸君
   裁判官弾劾裁判所事務局長 天野英太郎君
   裁判官訴追委員会事務局長 片岡  博君
   国立国会図書館長     戸張 正雄君
   会計検査院長       金子  晃君
   会計検査院事務総局次長  関本 匡邦君
   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       千坂 正志君
   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       諸澤 治郎君
   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       岡部 茂一君
   会計検査院事務総局第一局長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第五局長            円谷 智彦君
   最高裁判所事務総長    堀籠 幸男君
   政府参考人(内閣官房内閣審議官兼内閣府大臣官房審議官)  岩谷 滋雄君
   政府参考人(内閣府政策統括官)   江崎 芳雄君
   政府参考人(内閣府国民生活局長)  永谷 安賢君
   政府参考人(宮内庁次長)      羽毛田信吾君
   政府参考人(宮内庁書陵部長)    山口  均君
   政府参考人(総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人(総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   政府参考人(総務省自治行政局公務員部長)          荒木 慶司君
   政府参考人(総務省自治財政局長)  林  省吾君
   政府参考人(総務省政策統括官)   大野 慎一君
   政府参考人(公正取引委員会経済取引局取引部長)       楢崎 憲安君
   政府参考人(法務省大臣官房訟務総括審議官)         都築  弘君
   政府参考人(外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人(外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人(財務省主税局長)    大武健一郎君
   政府参考人(文部科学省大臣官房審議官)           玉井日出夫君
   政府参考人(文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人(農林水産省生産局畜産部長)           梅津 準士君
   政府参考人(国土交通省総合政策局次長)           伊藤 鎭樹君
   政府参考人(国民生活金融公庫総裁) 尾崎  護君
   政府参考人(公営企業金融公庫総裁) 持永 堯民君
   政府参考人(沖縄振興開発金融公庫理事長)          八木橋惇夫君
   政府参考人(国際協力銀行副総裁)  田波 耕治君
   政府参考人(日本政策投資銀行総裁) 小村  武君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十年度一般会計歳入歳出決算
 平成十年度特別会計歳入歳出決算
 平成十年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十年度政府関係機関決算書
 平成十年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成十一年度一般会計歳入歳出決算
 平成十一年度特別会計歳入歳出決算
 平成十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十一年度政府関係機関決算書
 平成十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(本府、総務庁、沖縄開発庁)所管、沖縄振興開発金融公庫、大蔵省所管、国民金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、自治省所管及び公営企業金融公庫〕

     ――――◇―――――

○木下主査代理 次に、石井郁子君。

○石井(郁)分科員 日本共産党の石井郁子でございます。
 きょう、私は、陵墓及び陵墓参考地について質問させていただきます。
 四年前の一九九八年、奈良県を直撃した台風で、日本最古の巨大前方後円墳、箸中山古墳が、通称箸墓ですが、前方部など甚大な被害を受けました。根こそぎの倒木もあって、無数の埴輪などが露出した。その後、初期の壷形埴輪とか特殊器台形埴輪など、宮内庁書陵部によって展示されて、大勢の方が熱心に見学したということが報じられているわけでございます。一方、近年、全国各地で、遺跡から歴史的、文化的に貴重な埋蔵物等が発掘、発見されまして、国民的な関心が大変高まっています。そういう中で、きょうは、陵墓の保存と公開の問題で尋ねたいのでございます。
 まず、陵墓は全国に四百五十五カ所、六百五十二ヘクタール、参考地は四十六カ所、五十五ヘクタール、関連施設合計で約九百カ所が宮内庁の所管となっています。また、陵墓には古墳が約八十基あります。そのうち、世界に例を見ない貴重な歴史的文化財である前方後円墳は二十数基あります。近畿地方には、巨大古墳、全長二百メートルを超える大規模な前方後円墳が約五十基ありますので、そのうちの二十数基を陵墓が占めているというふうに言えるかと思います。
 このように陵墓は学術的、文化的な価値が非常に高いということは言うまでもないわけですが、そこで、この陵墓の保存と公開について、宮内庁も、かつて次のような答弁を国会でされているわけですね。
 これは九三年の参議院予算委員会でございますけれども、「陵墓は、我が国が世界に誇る重要文化財、文化遺産の一つでもあります」ちょっと省略しますけれども、陵墓の管理に当たりましても、地域住民から大切にされてきた経緯も踏まえて、地元住民の意向とか要望については十分配慮する、地域住民に親しまれるような、あるいは活性化に役立つようなやり方があれば、意見を聞きながら努めてまいりたいという御答弁でございます。
 この立場は現在も変わらないと確認してよろしいでしょうか。

○山口政府参考人 陵墓は、先ほども植田議員に御答弁申し上げましたとおり、皇室の御先祖をお祭りしておるお墓でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、静安と尊厳の保持ということが何よりも大事であろうと思っておりますが、同時に、陵墓は、地域におきまして、これまでも大変大切にされてきたものでもございますし、多くの国民から追慕尊崇の対象ということで、参拝客も多数見えておられるということでもございますので、そのような管理に当たりまして、お墓として静安と尊厳の保持が第一義でございますけれども、文化的な側面につきましても、しっかりとした形での管理をしていきたい、このように考えている次第でございます。

○石井(郁)分科員 私、このことは本当は長官に御答弁をいただきたいなと思っていましたけれども、きょうは出ていらっしゃいません。しかし、今、微妙な言い方をされましたけれども、私が先ほど御紹介しましたように、これは世界に誇る重要文化財です、文化遺産の一つですということを参議院でしっかり答弁されていらっしゃるわけで、そのことはきちんと言っていただかなくてはいけません。もう一度、お願いします。

○山口政府参考人 陵墓の中でも、我が国にとりまして歴史上または学術上価値が高いと評価し得るものは、文化財保護法第二条第一項に言う「文化財」に該当するものでございます。

○石井(郁)分科員 それでは、陵墓の中で文化財保護法に基づいて保護されているもの、あるいは史跡などに指定されているものはどのくらいありますか。また、その地域なども教えていただきたいと思います。

○山口政府参考人 陵墓で文化財保護法の史跡指定を受けているものというお尋ねかと存じますが、陵墓参考地あるいは陪塚で史跡の指定を受けているものが、それぞれ二つございます。
 具体的に申し上げますと、大阪の藤井寺にございます藤井寺陵墓参考地、奈良県橿原にございます畝傍陵墓参考地、陪塚につきましては、大阪府堺市の仁徳天皇陵のへ号陪塚、羽曳野市の応神天皇陵ほ号陪塚、おのおの二カ所ずつでございます。このほか、史跡等に指定された地域内に陵墓があるケースもございます。
 ただ、先ほど申し上げましたように、歴史上または学術上価値が高いと評価し得る陵墓につきましては文化財に該当するということでございますけれども、陵墓につきましては、現に皇室において祭祀が継続して行われております。そういう生きているお墓でございまして、皇室用財産といたしまして、宮内庁におきまして、十分な保存、管理が行われているところでございますので、基本的には、原則としましては、史跡に指定する必要はないものと考えている次第でございます。

○石井(郁)分科員 結局、陵墓の中で文化財保護法によって保護されているものはないということでございますね、参考地と陪塚の例が挙げられましたけれども。
 それで、今度は文化庁にお尋ねしたいと思うのです。
 全国の古墳、とりわけ前方後円墳などについて、その文化財的な評価というのはどのようにされているのかということが一点。それから、先ほども挙げましたけれども、巨大な前方後円墳で、陵墓以外はどのような保護政策をとっていらっしゃるか。お聞かせください。

○銭谷政府参考人 前方後円墳を含む古墳は、古墳時代における各地の政治権力の象徴を端的に示す記念物として、我が国における統一国家の成立を考える上で欠くことのできない遺跡だと思っております。その意味で、歴史上、学術上、非常に価値の高い重要な文化財であると認識いたしております。
 現在の指定の状況でございますけれども、古墳については、各地を代表するものについて、その時代やその特質などを考慮いたしまして指定を行っておりまして、現在、平成十四年三月十九日現在でございますが、三百六十七件が史跡に、八件が特別史跡に指定されております。
 こういった指定されました史跡につきましては、その保存、活用のために一定の規制をかけるとともに、文化庁といたしまして、史跡等の保存整備、保存修理等を行う事業について助成措置を講じているところでございます。

○石井(郁)分科員 確認させていただきますけれども、巨大な前方後円墳、陵墓以外の前方後円墳は重要な史跡ということでの指定はされているということですね。もう一度。

○銭谷政府参考人 前方後円墳は、我が国において発達した特徴的な墳墓でございまして、各地に多数築造されたことから、指定例は大変多うございます。

○石井(郁)分科員 今お答えいただきましたように、前方後円墳というのは陵墓以外は大変多く文化財保護法に基づいて保護されているということを確認させていただきました。まさに、前方後円墳というのは世界に誇る土のモニュメント、本当に日本の貴重な、文化的な、学術的な遺産というふうに言えるわけですね。
 ところが、宮内庁は、陵墓は重要文化財だと、私は冒頭に言って確認させていただきましたけれども、そういう位置づけをされていますのに、そういう陵墓、これらの古墳は文化財保護法の適用外だ、あるいは文化財保護法に基づいた保護をとっていらっしゃらない。これはどうしてでしょうか。それは両方にお願いします。

○山口政府参考人 先ほど申し上げましたように、文化財保護法第二条の定義に合致します陵墓でございますれば、文化財保護法に言う「文化財」に該当するものという認識を私どもも持っております。
 ただ、陵墓は、先ほど来申し上げて恐縮でございますけれども、現に皇室において祭祀が継続して行われている、生きている墳墓でございまして、皇室と国民の追慕尊崇の対象となっているところでございまして、一般の古墳とは性格を異にするものでございます。
 その管理につきましては、宮内庁におきまして、皇室用財産として、静安と尊厳の保持を図ることを基本としながら、文化的意味における保全、保存という点にも配慮して万全を期しているところでございます。
 具体例で申し上げますと、古代高塚式陵墓、前方後円墳などの埋蔵文化財包蔵地につきましては、まずもって、現状を変更することなくできるだけ保存に努め、やむを得ず工事等を行う場合におきましても、事前調査を実施して遺構の残存状況等を確認し、工法を工夫、研究いたします。また、調査、施工の際には、文化財保護法に定められた諸手続を踏んで、遺漏のないようにしておるところでございます。
 このような観点から、陵墓につきましては、史跡という形での指定を行う必要がないという考えをしておるところでございます。

○銭谷政府参考人 一般に、史跡の指定につきましては、対象となる土地の所有者等の同意を得て行うわけでございます。したがって、陵墓である古墳につきましては、国有財産として宮内庁が管理しているものであることから、史跡として指定する場合には宮内庁の同意を得て行うことが前提となります。
 文化財保護の観点から最も重要なことは、その文化財が十分に保存されているかどうかということでございます。仮に重要な文化財が適正に保存されていない場合は、史跡等に指定することによってその保存を図っていくということが重要になってこようかと思います。
 文化庁といたしましては、陵墓の問題につきましては、宮内庁において十分な保存が図られているものと考えておりまして、文化財保護の観点から特段の問題はないものと認識いたしております。したがって、現段階で、史跡に指定して保存する緊急の必要性はないというふうに考えているところでございます。

○石井(郁)分科員 先ほど宮内庁の御答弁で、陵墓といえども文化財という認定に合致するということであればそういうこともあり得ると、ちょっとおっしゃいましたね。しかし、現にお墓として管理している、保存もしているので、特に史跡の必要がないということだと思うのですが、前段で、文化財としての価値が認められる場合には文化財保護法の適用もあり得るというふうに聞いたのです。その辺はちょっとぼやかしたように聞こえたのですが。

○山口政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、文化財保護法第二条に「文化財」という定義がございまして、陵墓でございましても、それに該当するものはございますので、それは文化財保護法に言う「文化財」でございます。これは申し上げました。
 その文化財につきまして、私どもは、第一義的には陵墓でございますから、陵墓としての管理が第一義でございますけれども、文化的意味における保存という点にも十分配慮しながら管理しておるところでございまして、その意味で、指定という形での文化財保護法の手続を踏まなくても十分管理ができているということでございます。

○石井(郁)分科員 その辺は少しきちんと考えなきゃいけないかなと思うのですが、ちょっと先へ進ませていただきます。
 実は、私は奈良県民でもあったことがありまして、今でも半ばそうなんですけれども、奈良県下の地元、あるいはまた全国の考古学研究者、歴史学研究者からは、佐紀盾列古墳群を文化財として保護して古都奈良の世界遺産に追加登録をしてほしい、さらに、大和古墳群、大阪の大山古墳、仁徳陵など、一帯の古墳群を世界遺産に登録をという声が近年高まっているわけでございます。
 世界遺産との関係で申しますと、世界遺産への登録は、国内法で保護措置がなされてなきゃいけない、公開されていることが原則です。国宝や重要文化財、特別史跡または史跡の指定が必要になっています。
 このことで文化庁にぜひお聞きしたいのですけれども、古都奈良を世界遺産に登録する際に、宮内庁所管の正倉院を、急遽、重要文化財、続いて国宝に指定されたと思うのですね。このことは間違いございませんか。

○銭谷政府参考人 正倉院を含む東大寺エリアは、古都奈良の文化財の構成要素として平成十年に世界遺産一覧表に登録されているところでございます。
 若干、経緯を申し上げますと、奈良市を中心に古都奈良の文化財の世界遺産一覧表への登録のための推薦準備作業を行っていた当時、歴史的にも地理的にも東大寺と一体である正倉院についても、東大寺とともに世界遺産として推薦することが適当であるということが言われたわけでございます。
 この場合、先ほどお話がございましたように、世界遺産として推薦するためには、文化財保護の観点から、国内法による保護措置がとられていることが必要でありますので、文化庁は、正倉院につきまして、文化財保護法に基づく指定をすることができるかどうか、正倉院を管理している宮内庁と協議を行いました。
 その結果、正倉院を国宝に指定するとともに、その周辺地域を史跡東大寺旧境内に追加指定することについて宮内庁の同意が得られたために、平成九年五月にそれぞれ指定を行うとともに、平成九年六月、東大寺とともに古都奈良の文化財として世界遺産に推薦し、平成十年十二月の世界遺産委員会において、世界遺産一覧表への登録が決定されたものでございます。

○石井(郁)分科員 どうもありがとうございました。
 今お話しのように、宮内庁所管でも文化庁と協議すれば文化財保護法に基づく指定は可能になるということでございます。ですから、私は、こういう事例が今出てきているという点でも、宮内庁として、本当に世界に類を見ない、また、日本が誇る土のモニュメント、この古墳を、国民的な関心にこたえて、また、地域の活性化に役立つという観点も含めて、文化財保護法に基づいて保護、保存するということに踏み出してもいいのではないかというふうに考えますが、いかがですか。

○山口政府参考人 先ほどの文化庁の方の御答弁と若干重複するかもしれませんが、正倉院の国宝指定の経緯につきまして、宮内庁の側からのお話をちょっとさせていただきたいと思います。
 宮内庁が文化庁からの協議を受けまして同意いたしましたのは、正倉院正倉が、もともと、東大寺に献納された聖武天皇の御遺愛の品々を納めた宝庫でございました。その宝庫は、朝廷の監督下にございましたけれども、実態的に、千有余年にわたりまして、東大寺によって管理されてきたという歴史的な経緯がございました。また、物理的な建物の位置、地理的な位置におきましても、東大寺の境内にあったということは御案内のとおりでございまして、そういう正倉院と東大寺の特別な関係にかんがみまして、先般の正倉院正倉の国宝指定ないしは世界遺産への推薦につきましては、宮内庁といたしまして同意をいたしたわけでございます。
 陵墓、幾つか例がございましたけれども、私どもといたしましては、そのような特別な関係があるのかどうか、むしろ、そういう東大寺と正倉院ほどの密接な関係はないのではないかという考えを現在のところ持っている次第でございます。

○石井(郁)分科員 先ほど来、宮内庁は陵墓として管理しているということを繰り返していらっしゃるわけですけれども、私は、皇室財産の管理と文化財としての保護、保存というのは別なものだというふうに思うのですね。分けて考えなくちゃいけない。文化財として保護できるのは文化財保護法しかないわけですよ。だから、宮内庁が幾ら、管理している、保護していると言っても、そこにはいろいろな制約、限界も出てくるだろうというふうに思うのですね。
 今、私が問題にしましたのは、世界遺産登録との関係で、佐紀盾列古墳群などが省かれてしまう。景観とその一帯が、何で古都奈良は世界遺産に登録しているのに、その部分は除かなくちゃいけないのか、その部分を一緒にしてほしい、これは世界遺産として考える上では当然出てくる話なんですよ。だから、陵墓を文化財保護法の適用外にしている限り、この矛盾が出てくるわけです。今、そこを正さなきゃいけないときに来ているということを強調しておきたいと思います。
 それからもう一点、その一帯の古墳群が史跡として整備されたり保護されていないために、今、いろいろな問題が起きている。道路建設で遺跡や景観の破壊という問題がございます。そういう点があちこちで起こっていると思うのですね。
 一例を挙げますと、天理市のバイパス道路の建設というのがありまして、文化財として保護されていない古墳の周辺に県道が計画される。そういう開発との関係でいろいろ問題が起きていると思います。
 もう一例も挙げますと、文化的価値のある奈良県の丸山古墳、大阪府の墓山古墳などは、農耕地、宅地開発が進んで、宮内庁が陵墓や参考地として指定した墳丘部分の一部分など以外を文化庁が保護し、地方公共団体が民有地を買収して公用地としているということで、宮内庁の指定部分というのは未整備になっているわけですね。このような古墳が四カ所あると思いますけれども、こういう例からも、今、文化財として明確に保護するということが本当に求められていると思います。
 今、このような状況を放置していきますと、私たちも陵墓を大切にしたいと思っていますから、まさに陵墓の持っている日本の文化財としての価値を台なしにすることにもなるということで、早急な保護措置が必要ではないのかということを強調しておきたいと思うのです。
 先ほど来申し上げましたように、今、人類共有の文化遺産を守るというのは世界でも新しい流れでありますし、古墳群の中でその重要な位置を占めているのが陵墓だ、前方後円墳だということになっているわけで、そういう価値のある財産を、国民共有の財産というか、まさに日本の歴史を解明する遺産としても重要だ。この陵墓をきちんと保護し保存する、そういう時期に来ているのではないかというふうに私は考えておりまして、重ねて宮内庁の御見解を伺っておきたいと思います。

○山口政府参考人 先ほど来御答弁申し上げておりますように、歴史的、学術的な価値の高い陵墓につきましては、私どもも、文化財という認識のもとで慎重な管理をしておるところでございまして、決して、宮内庁の管理地であるから文化的な面での管理が欠落しているということではございません。
 文化庁との連絡なども常々いたしながら、例えば、先ほど言いました埋蔵文化財包蔵地につきまして調査あるいは工事も行わなければならないという場合におきましては、文化財保護法に定められました手続を踏み、遺漏のないように努めておるところでございまして、私どもも、今後も引き続きまして、陵墓の管理という中に、その文化的意味における保存、保全という点にも十分な配慮をしてまいりたいと思っておるところでございます。

○石井(郁)分科員 確かに宮内庁は、この間、陵墓営繕工事の事前調査に附属して行われる限定公開への参加者枠を拡大しておられます。また、九八年の宮崎県によるメサホ塚古墳、ヲサホ塚古墳の両陵墓参考地の精密測量を許可したとか、一定の公開が進んでいるというふうに思うのですね。私は、この陵墓の学術調査と公開について、もっとこれを進めることをお考えになっていらっしゃるかどうか、その必要があるのではないかということで伺ってみたいと思います。
 今申し上げましたように、いろいろな形で考古学者、関係者や歴史学者の間から、この限定公開への参加をもっと公開的にしてほしい、いろいろな制約はつけないでほしいという要望も出ているかと思いますし、今まで以上の、充実した、実質的な公開をしてほしいという声が続いているかというふうに思います。
 先ほどの、台風の被害に遭った箸墓ですけれども、私も行ってきましたら、宮内庁は、ヤマトトトヒモモソ姫の墓として静安を守るというふうになっていますが、ここは卑弥呼の墓ではないのかとか、三世紀半ばの古墳である可能性が高いとか、大変議論のある、そしてまたロマンもかき立てられる、そういうお墓でございますけれども、こういう点では皆さんの期待にもっとこたえていいのではないかということが一点です。
 この場合、申し上げておきたいのは、考古学者の皆さんは、必ずしも、発掘調査、墓を全面公開せよと言っているわけじゃないのですね。周囲の確認とか外形の実測とか墳丘の形とか構造とか、外見でも確認できるようなところをやるだけでも随分とわかることがあるということでございますので、そういう点からも、しっかりした保存、保全のためにもっと学会の方々の御意向もくみ入れて、あるいは協議して、充実した公開に一歩を踏み出すべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

○山口政府参考人 先ほど来お答え申し上げておりますように、陵墓は皇室の御祖先のお墓でございますけれども、学術文化的な側面というのも高いものがございますので、私ども、その陵墓の本義といいましょうか、第一義的な意味での陵墓管理に支障を及ぼさない限りにおいてではございますが、傷みの進んだ陵墓につきまして保全工事を行う際には現地での見学会を開催いたしましたり、あるいは出土品につきましてはこれを公開いたしましたり、それぞれの調査結果につきましては書陵部紀要を通じまして各研究者のごらんに供しておりましたり、あるいはまた研究者からの要望、要請がございますれば、宮内庁の職員がかわりまして調査をして、書陵部紀要において公表していくというような努力も重ねておるところでございます。
 そういうことで、今後におきましても、先ほど来申し上げておりますように、皇室の御先祖のお墓である陵墓というその第一義、基本は踏まえつつも、学術文化的な面での役割というものにも十分意を用いてまいりたいと思っております。

○石井(郁)分科員 確認させていただきたいのですけれども、一九九九年から書陵部が行う発掘工事、これは文化財保護法五十七条一項の届け出で実施されているというふうに聞いています。だから、宮内庁管理の陵墓あるいは陵墓参考地を文化財として認めたからこういう届け出をしているというふうに考えられると思うのですけれども、この点はいかがですか。

○山口政府参考人 御指摘いただきましたのは、済みません、条文をちょっと忘れましたけれども、埋蔵文化財の発掘関係かと思っております。
 調査のための埋蔵文化財の発掘といいますのと、工事に伴いまして埋蔵文化財包蔵地を発掘する場合と二つございますが、いずれにつきましても、手続としましては、文化財保護法に文化庁への届け出の規定がございますので、私どももそれに従いまして手続を踏んで行っておるということでございます。

○石井(郁)分科員 最後に、陵墓参考地についても一点伺っておきたいと思います。
 参考地は、陵墓として主が特定できないということになっているわけでございますけれども、経過としては、明治十五年に陵墓見込地という制度を設けて、その後、参考地と名前を変えて、何となく慣例としてこうなっているというふうに私は承知しています。法的には、国有財産法三条二項三号を準用して皇室用財産と規定するなど、あいまいな拡大解釈がなされているのではないかと私は思います。きちんとした法的根拠はないのではないか。そしてまた、科学的、学問的根拠もほとんどないままに国が陵墓参考地としてきたということがございまして、ここには研究者は一切立ち入りできないということになっています。
 先ほどのお話にもありましたけれども、陵墓参考地にも、大型の見瀬丸山古墳など、貴重なものが幾つもあります。この公開を拡大する、公開を行うということは、日本の歴史解明に貢献するものだというふうに考えるわけでございますので、参考地についても、学会などとも協議して公開に踏み切るということはいかがでございましょうか。

○山口政府参考人 お答え申し上げます。
 陵墓参考地は、特定の被葬者が決定できないけれども、皇室の御先祖のどなたかのお墓であろうということで宮内庁の方で管理する、陵墓の一種類、一パターンでございます。
 御指摘ございましたように、陵墓参考地について、学会の方々、研究者の方々が入れないというお話がございましたが、私どもの陵墓保全工事に際しましては、陵も墓(ぼ)も陵墓参考地も含めまして、傷みの進んだものから順次手がけておる関係で、例えば、平成十一年には、奈良県にございます磐園陵墓参考地で、墳丘護岸工事に伴う事前調査を行いまして、そのときに現地で見学会を行いました。翌平成十二年には、兵庫県・玉津陵墓参考地におきまして、墳丘外堤護岸工事の調査がございましたので、このときも現地の見学会がございました。
 このように、参考地だから人を入れないということではございませんで、いずれも、陵墓の本義と学術研究上の要請とを検討しながら対応しておるというところでございます。

○石井(郁)分科員 時間が参りました。きょうは、私、質問させていただいて、いろいろとよかったなと思っているのです。宮内庁も、陵墓の文化的、学術的な価値というのは大変お認めになっていらっしゃるわけですね。そして、一定、文化庁とも協議をしながら、文化財指定にも道を開いているということもわかりました。
 そういう点で、今この問題で、もう二十一世紀ですから、新しい検討を始められていいのではないかというふうに思います。文化的な遺産の保存ということは大事だ、それから、科学的解明というのは、研究者あるいは国民がたって望んでおられることですから、そういう点で宮内庁がぜひ前向きな立場に立っていただきますように、これは御要望を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○木下主査代理 これにて石井郁子君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして皇室費についての質疑は終了いたしました。


機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


Copyright(C)石井郁子事務所 2001
本サイト内のテキスト・写真等全ての掲載物の著作権は石井郁子事務所に属します。
リンク希望の方は、お手数ですがメールにてお知らせください。


石井郁子トップページはこちらから